平成14年4月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
4 いちにちを桜にあずけ旅衣 あきこ 手毬 果林 静歩 久須夜
4 姉いもと心二つや蕗のたう 果林 みずき 手毬 静歩 洋司
3 炭焼に一息入れて山桜 ハシケン あきこ 244 洋子
3 新しき傷ありありと春の猫 ポテト まさき 弓子 洋城
3 動かむと山揺れてゐる朧かな 果林 小夜子 暖流 和泉
3 大の字にひとりの世界花筵 洋司 暖流 あきこ 洋子
2 山門に春の陽満ちて盲犬 洋城 小夜子 果林
2 春愁や湾の中ほど出でしより 洋司 夕花 244
1 山陰に潜むが如く落ち椿 久須夜 京子
1 避雷針傾ぐ農家に春の雨 洋城 まさき
1 幸せは足元に在り苜蓿 暖流 みずき
1 散る花に片手差し出す小さい手 輝子 おさむ
1 花筵一人でさへも楽しきを 暖流 和泉
1 薬屋に貰ふ六角紙風船 手毬 弓子
1 ひととせのおもひのたけを桜咲く あきこ 夕花
1 入社式会社の未来わかい顔 輝子 おさむ
1 春宵や雨の音して厨窓 ポテト 京子
1 寒時計亡き息子(こ)の部屋の時刻む 244 洋司
1 行く春や散華の名残りさらさらと 夕花 輝子
1 山つつじ部屋いっぱいが春になり 輝子 久須夜
1 湖に落花落日競うごと 夕花 洋城
1 観桜のそこだけ時が止まりけり 洋子 輝子
得点 兼題 「春雨」 作者 戴いた人
3 春雨や逢わずともよしカフェテラス みずき 弓子 和泉 244
3 幼子の傘の重たき春の雨 ポテト まさき あきこ 静歩
3 芽を出せと囁くやうに春の雨 果林 輝子 久須夜 洋子
2 わだかまり解けてゆきたり春の雨 あきこ 京子 暖流
2 春雨に片方の傘たたみけり 暖流 果林 洋司
2 春雨や少し熱めの茶をいれる 夕花 小夜子 洋城
2 主失せて無用の犬小屋春の雨 洋司 おさむ 夕花
1 春雨の乾かぬ九十九里の浜 244 手毬
1 春雨や昔話の爺の声 手毬 みずき
私の選んだ一句
幸せは足元に在り苜蓿 暖流 我が家の雑木林のような庭に花水木が3本植わっています。その周りに苜蓿を増やして居るんですがこれがなかなか凄い草で他の雑草の叢生を許さないのですね。それでふとこの句の面白さを感じ取りました(みずき)。
主失せて無用の犬小屋春の雨 洋司 17年一緒に生活した 愛犬を亡くした 私の思いがダブリました(おさむ)。
動かむと山揺れてゐる朧かな 果林 景の大きさが印象的です、また「朧かな」の季語に心象も感じられてとても好きでした(小夜子)。
わだかまり解けてゆきたり春の雨 あきこ いかにも暖かい春の雨らしい。 もうあたりも寒くなくて、ゆったりした気分がわかります(京子)。 
いちにちを桜にあずけ旅衣 あきこ こう言う旅をしてみたいものです。一日全部を桜に預け心ゆくまで。下五の旅衣の言葉もぴたりとあてはまり、素敵な句です(手毬)。

余白のそんなにない人生、たまには日程表通りではない、花任せの旅をしてみたい。それが桜の花ならなお余情が増すことでしょう。「桜にあずけ」がいいですね(果林)。

旅することが好きな私、目的もなく彷徨する楽しみが伝わる名句(久須夜)。
大の字にひとりの世界花筵 洋司 花筵に五体を伸び伸びと投げ出して、目を上げれば見えるものは満開の桜ばかり。この天地に在るのは花と作者のみ。静かに花びらが作者に降り注ぐ。そんな爛漫たる景が目に浮かびます。今回、私が投句した、「花筵一人でさへも楽しきを」という同じ趣旨の句に較べれば、味わいの深さと景の鮮やかさは際立っています。ただただ脱帽する他はありません(暖流)。
薬屋に貰ふ六角紙風船 手毬 この薬屋は配置売薬さんでしょうか。大型バンでスマートに巡回していく今どきの薬屋さんではなく、大風呂敷を解いて、まず子供達の頭を撫でてくれるような、そんな交流があった時代が、懐かしく思い出されました。「薬屋」と「六角紙風船」という即物的な取りあわせが、却ってイメージをふくらませてくれるようです(弓子)。
姉いもと心二つや蕗のたう 果林 人間10人十色といわれるように価値観も皆違います、たとえ姉妹でも(静歩)。
春雨や逢わずともよしカフェテラス みずき 俳句といえば 背景は自然豊かなものを読むことが多いのに、この句は街と都会人の心を読んでいます(和泉)。