平成14年5月 選句結果

得点 雑詠 作者 戴いた人
10 こいのぼり降ろして今日の風たたむ 手毬 京子 さよこ まさき 暖流 静歩
夕花 陽炎 弓子 なぎさ 洋司
5 また元のふたりに戻り菖蒲の湯 果林 おさむ 竹峰 洋城 暖流 洋子
山桜そろそろ村の見える頃 洋司 京子 竹峰 果林 ハシケン
鯉のぼり熊野の海を泳ぎけり 久須夜 あきこ 洋城 夕花 弓子
2 エプロンに蚕豆あふれ婆来たる 手毬 みずき 陽炎
2 迷い来て春咲ききそう京の路地 陽炎 まさき 久須夜
リュック置き若葉の声に耳澄ます 暖流 手毬 ハシケン
沖に帆や小島の子らの潮干狩 ハシケン なぎさ
かたまった声過ぎ行くや春の山 静歩 さよこ
岸洗ふほどの川幅風うらら 京子 果林
たゆとうて季を流すや花筏 なぎさ 洋子
花冷えや明日も仕事の予定なし 洋司 手毬
母の日の母の笑顔を忘れまじ あきこ 洋司
ひらひらと散る花おしみ老夫婦 ポテト おさむ
晩春や風土記の丘の青き空 夕花 久須夜
熊野きて三山かなた藤の宿 ハシケン あきこ
潮鳴りを聞き育つ子や祭笛 夕花 静歩
子等の声風に乗り来る聖五月 あきこ みずき
得点 兼題 「うらら」 作者 戴いた人
4 うららかや軽き靴履き独り旅 まさき おさむ 手毬 静歩 夕花
3 うらら日を花の画集と過ごし居り 京子 まさき 久須夜 洋司
3 日うらうら一本道をしまひまで 果林 さよこ あきこ 暖流
3 いもやいもいもやわぎもこはるうらら 竹峰 みずき 果林 暖流
2 道標の指すままに往き里うらら 洋城 京子 弓子
2 うららかや縁のこぼれ陽孫を撫ぜ 志尾里 陽炎 なぎさ
1 うららかや郵便配達来て去りぬ 洋司 洋子
1 うららかや氏も素性も無い仲間 みずき 竹峰
1 泳ぐ雲笑うが如く海うらら なぎさ ハシケン
私の選んだ一句
また元のふたりに戻り菖蒲の湯 果林 子供たちは 独立して それぞれに 生きている? 菖蒲の湯を本当に心静かに堪能できる時が来た(おさむ).

子供の日、子供たちが孫を連れて遊びにきたのだろうか。日が暮れて賑やかな一団が帰ってゆく。途端に静まりかえる家の中には、また夫婦二人だけ。そんな二人のかなしみを菖蒲湯がやさしく温かく癒してくれる。実は私も夫婦二人暮らしですが、この句を読んで、一人立ちした子に残された親のさびしさと夫婦の穏やかな愛情をしみじみと感じました(暖流)。
こいのぼり降ろして今日の風たたむ 手毬 こいのぼり等には子への親の愛情が込められている。子や孫への思いは皆さん共通ですね。のぼりを揚げる時には元気に泳いでくれよ!降ろす時にはお疲れさまと一声かけて...。「風たたむ」すてきな言葉ですね。子への愛が伝わってきます(まさき)。

子供が立派に育つようにと端午の節句にあちこちで鯉幟を散見しますが、夕方になって家の中に取り入れた鯉幟の空気を除きながらたたんでいる様が目に見えますきっと大きな鯉幟だと思います、オジイサンやオバアサンが奮発して大きな鯉幟を孫のために買ってやったのではないでしょうか(静歩)。

こいのぼりの句は、風を受けて泳ぐ様子を詠んだものが多いなか、この句は、鯉のぼりをおろしてたたむという面白い着眼点です。そして今日の風をたたむの表現がとても素敵です(夕花)。

「風たたむ」にこいのぼりが風をはらんで泳いでいる姿、またその背景の五月の大空までもが目に浮かぶようです(陽炎)。
道標の指すままに往き里うらら 洋城 なんとも長閑な気分になる一句です。きっと桜も咲いていることでしょう。川も流れているかも。春日遅々がよくでています。(京子)
エプロンに蚕豆あふれ婆来たる 手毬 土着性のある健康な俳句です。明るさで選びました。(みずき)
いもやいもいもやわぎもこはるうらら 竹峰 何処が、なにがと問われたら困るのです。けれど率直でとても好きでした(果林)。
花冷えや明日も仕事の予定なし 洋司 「予定なし」と、簡潔に言い切った所に魅力を感じます。仕事がないのだから、寂しい気持ちなのでしょうが、あっさり、さっぱりと言い切る作者の心の持ちように惹かれました。花冷えの季語とも良くマッチしていると思います(手毬)。
鯉のぼり熊野の海を泳ぎけり 久須夜 五月の空を晴れがましく元気に泳ぐ鯉のぼりですが、いにしえの古道も残る神秘の熊野に泳いでいるのが面白いとおもいました(あきこ)。

熊野は霊地として、太地は早逝した贔屓女優ゆかりの里として、長年の憧憬の地ですが、おりしも今日、太地沖に遊泳するゴンドウクジラのニュースを耳にし、潮風を孕んで大空を遊弋する勇壮な鯉のぼりのイメージが、爽やかに重なりました(弓子)。
晩春や風土記の丘の青き空 夕花 和歌山市郊外の景。正に雄大。作句者の伸びやかな心情が伝わって来る。万葉の古歌か、それとも、新古今の和歌でも脳中に去来していようか(久須夜)。