平成18年3月 選句結果

                     
得点 兼題 「蓬餅」 作者 戴いた人
4 皺くたの手のひら丸く蓬餅 霜月 小自良 緑茶 暖流 夕花
4 母に供ふ見様見真似の蓬餅 暖流 門名無 霜月 おさむ 静歩
3 蓬摘む八十翁に聞きし場所 静歩 春雪 与作 弓子
2 草餅や兵舎の兄を訪ふ昔 春雪 だいご 244
2 摘みて茹でまあるく手のなか草団子 緑茶 福助 桜桃
2 母親は艾片手に子を諭し 零風 ちあき 唯人
2 蓬摘む微かな香り母の影 桜桃 桜貝 零風
2 さしも草義肢鞠ほどの軽さかな みずき もも まさき
1 おババ逝きあとの蓬は摘まざりき もも しおみ
1 竹篭に上着脱ぎすて蓬つむ ちあき あきこ
1 亡き母の想い出包む蓬餅 いくこ 晶子
1 古里は淡くなりたり蓬餅 あきこ いくこ
1 蓬餅笑ひ転げて丸くなる 夕花 みずき
得点 雑詠 作者 戴いた人
4 春時雨傘はあなたに貸したまま 夕花 緑茶 暖流 おさむ 244
4 落つるとき声を掛け合ふ椿かな 春雪 しおみ だいご 唯人 桜桃
3 死に方も生き方のうち春の星 あきこ しおみ 晶子 ちあき
3 どのあたり迄が人の世梅探る みずき 暖流 夕花 弓子
3 春めくや素足の少女風まとひ まさき もも 零風 桜桃
3 夕刊の訃報をたたむ春の雪 みずき 晶子 夕花 与作
2 告知時病状仔細二月尽 しおみ 小自良 福助
2 三寒四温五臓六腑も伸び縮む 暖流 おさむ 静歩
2 春宵や用件逸れし長電話 244 小自良 いくこ
2 春暁のそら白々と星残す 晶子 まさき 春雪
2 なに願う娘遍路の鈴の音 唯人 桜貝 零風
2 菜の花を抱いて不動の薩摩冨士 桜桃 だいご ちあき
2 白杖に道をゆずりて四温光 いくこ あきこ 霜月
2 春寒し深酒止める人もなし 244 緑茶 霜月
2 一重八重天神の梅香しき 門名無 あきこ いくこ
2 蛤や須磨の浜辺の砂を吐き 零風 みずき 静歩
2 ほろ苦き春をひとくちつくしんぼ 緑茶 門名無 桜貝
2 悠久の石垣に梅武家屋敷 桜桃 もも みずき
1 一日をかたかごの花揺れ通し あきこ 弓子
1 いくとせや箪笥の上の雛祭り 桜貝 まさき
1 春耕や懐深き父の面 霜月 福助
1 菜の花や花粉だらけの蝶の顔 静歩 門名無
1 野火這うて埴輪の瞳燃えさかる まさき 244
1 春近し畑のことは母に聴く 春雪 与作
1 ひとにぎり土筆つみつみ散歩終え ちあき 唯人
1 水取や廂もこがすお松明 唯人 春雪
私の選んだ一句
皺くたの手のひら丸く蓬餅 霜月 「こんな手で作ってくれる蓬餅、日向の香りがしそうで生唾ものです。」(緑茶)
「「蓬」という季語のせいか、似た感じの句が集まりましたが、この句が一番季語とぴったりの句だと思います。微笑ましくて好きな句です。」(夕花)
おババ逝きあとの蓬は摘まざりき もも 「亡きひとを偲ぶに大げさな行事よりは、些細な変わりなどが、追憶となっていく、その情感をみました。」(しおみ)
亡き母の想い出包む蓬餅 いくこ 「蓬を使って団子を作ったりするのは祖母か母です。思い出は、みじかにあって今は幻のようです。」(晶子)
春時雨傘はあなたに貸したまま 夕花 「貸した人は、異性ですよね。雨にぬれても歩きたい気持ち満々!」(緑茶)
「どのような状況で作者は傘を貸したのでしょうか。夜更けて帰ってゆく訪問者。もしくは、一夜明けうて部屋を出てゆく後朝の人。或いは単に家まで送ってくれた相手かも。 『あなた』という言葉が想像力をかきたてます。『春時雨』という季語の持つ美しいイメージがこの句をしっとりとした恋の俳句に仕立て上げました。また、文語ではなく現代語にしたことにより、 あかるくやさしい雰囲気が匂い立っていて、こころに響く一句です。」(暖流)
死に方も生き方のうち春の星  あきこ 「悲しみより、豪快さですね。いま金星が、夜明けの空にこれ見よがしに、 雄姿を誇示、死してワレ明星たらん。」(しおみ)
「生きざまと言う言葉を好みません。『死』を以って生の終局とするものだと考えました。春の星が合うかどうか。 むしろ冬の星で有りたかった。」(晶子)
どのあたり迄が人の世梅探る みずき 「梅園深く分け入って歩いていたらこんな気持ちになりそうです。夕刻の偕楽園によく出かけますが、こういう句で表現すればいいのですね、勉強になります。」(夕花)
夕刊の訃報をたたむ春の雪 みずき 「目に入るのは知人の訃報ですね。私を置いてという気がします。訃報をたたむという言い方が上手いですね。」(晶子)
「感想 とても丁寧に詠まれている句だと感心しました。」(夕花)
告知時病状仔細二月尽 しおみ 「よくまあ 厳しい句が出来たものですね!」 (小自良)
春宵や用件逸れし長電話 244 「春宵やは何と読むのでしょう?」(小自良)
春暁のそら白々と星残す 晶子 「暁の空、かすかに残る星の輝き。刻一刻と天の変わる様子は不思議な世界を覗いているようです。先日、早朝の太陽のあがる様子を観察していたら赤、朱、白 だんだんと変化していくんですね。感激してみていました。」(まさき)
春寒し深酒止める人もなし 244 「たまには、してみたい深酒。そして、体に悪いからもう止めてとーー言われたいですね。」(緑茶)
蛤や須磨の浜辺の砂を吐き 零風 「作者の感慨が偲ばれます」(みずき)