平成19年8月 選句結果

                     
得点 兼題 「トマト」 作者 戴いた人
5 絵手紙は笊にあふれしミニトマト もも むらさき いくこ 夕花 静歩 ウクレレ
5 真清水に浮かべ嵯峨野のトマト売り 暖流 晶子 櫻貝 春雪 あきこ だいご
4 トマトいま真っ赤に熟れて退院す あきこ ちあき もも まさき 暖流
2 高ぶらず色鮮やかに冷えトマト だいご 桜桃 和泉
2 ミニトマト笑ひ転げて食卓に 春雪 小自良 雪音
1 赤茄子に茗荷を添えて朝の味 しおみ 零風
1 農の目の確かな目先トマトもぐ いくこ 244
1 はじめての箱植ゑトマト熟しけり 霜月 しおみ
1 古井戸に綱で下げられ冷えトマト まさき おさむ
1 仏前に朝採りトマト赤あかと 櫻貝 霜月
得点 雑詠 作者 戴いた人
5 飽きもせず三日三晩の冷奴 だいご おさむ 小自良 いくこ ウクレレ 雪音
4 大冊を終えて気付くや遠花火 しおみ ちあき むらさき 霜月 だいご
4 老いてなほ無くて七癖蟻ぢごく 春雪 ちあき 晶子 静歩 雪音
4 大海に青年の夏突き進む ちあき もも まさき 静歩 桜桃
3 来んといて蛍火すつと消えるかも 春雪 しおみ 夕花 桜桃
2 明日咲く蓮のぼんぼりとんがりて 緑茶 櫻貝 春雪
2 「暑いね」と二人同時に云いし午後 むらさき 暖流 霜月
2 片陰に犬伏せている原爆忌 むらさき 夕花 ウクレレ
2 兄弟は己が日焼けを競い合い 零風 おさむ いくこ
2 八月や伝へることと誓ふこと 夕花 春雪 あきこ
2 盆唄の恋はかなしき恋ばかり 暖流 しおみ あきこ
2 夕涼み仏のごとく指を組み 暖流 小自良 だいご
1 荒れ寺の軒に漂う女郎蜘蛛 まさき 零風
1 芋一つ忘るるなかれ終戦日 櫻貝 晶子
1 甲虫いつまで農にしがみつき まさき 櫻貝
1 肩寄せて波寄せる日のソーダ水 夕花 244
1 酒屋さんただ風鈴の鳴るばかり 静歩 和泉
1 つゆ草の青一点に空映える 緑茶 まさき
1 情け知り理(ことわり)知れど初の盆 瓢六 零風
1 花むくげ吾にも短き恋のあり だいご 和泉
1 星飛んで子らそれぞれに夢をもち あきこ 暖流
1 胸の波鎮まりて見る雲の峰 和泉 むらさき
1 胸ゆるる太鼓打つ娘の夏祭り 櫻貝 244
私の選んだ一句
絵手紙は笊にあふれしミニトマト もも 「こんな絵手紙を頂いて幸せですね」(いくこ)
「絵手紙の絵が想像出来ます。 葉書からあふれそうな真っ赤な色。この句同様絵手紙にも勢いがあることでしょう。」(夕花)
真清水に浮かべ嵯峨野のトマト売り 暖流 「嵯峨野ならではの光景ですね。トマト大好き人間ですから、奈良の道端で買った奈良漬けの天下一品だったこと。」(晶子)
「そういう出遭いをしてみたい。」(春雪)
トマトいま真っ赤に熟れて退院す あきこ 「入院の前に植えたトマトがいまや完熟し、退院を待っていてくれていた。赤い色は元気が出ます。順調の快復を祝っている感じです。」(ちあき)
ミニトマト笑ひ転げて食卓に 春雪 「健康そうな家族がみえますね!」(小自良)
「トマトがおしゃべりしているみたい、女の子のトマトですね、きっと」(雪音)
はじめての箱植ゑトマト熟しけり  霜月 「難波に新しく出来たなんでもありのビル。屋上に狭い家庭菜園があります。レンタルはさぞやお高いのでしょう。」(しおみ)
古井戸に綱で下げられ冷えトマト まさき 「冷蔵庫とて無い昔は冷やしたり、 腐り廉い物は井戸の中にぶら下げました。今は井戸を知らない子供も居る」(おさむ)
仏前に朝採りトマト赤あかと  櫻貝 「丹精込めたトマトの、その完熟したのを、感謝しつつ仏前にお供えする作者の姿と、その生活ぶりまで想像されますね。無駄な言葉の一切無く、俳句とはこうあるべきと、学ばせて頂く事が出来ました。」(霜月)
飽きもせず三日三晩の冷奴 霜月 「食欲の無い暑い日の食事には、冷奴は最適。毎日でも結構、かつお、梅干を乗せて」(おさむ)
「庶民の楽しみですね。夏の贅沢です。」(小自良)
「今年の私の夏は、のど元を過ぎるは冷え素麺ばかりなりでお気持ち分かる様な気がします。」 いくこ
「アハハハ、我が家と同じだわ。近頃、おいしい豆腐が増えたと思いません?」(雪音)
大冊を終えて気付くや遠花火 しおみ 「ふと現実にもどったら・・・・遠花火で面白いです。若いときは本に夢中になって、時間を忘れていました。再び、ゆったりした時間を持てるようになったのに、本を読むこと自体忘れています。大冊に挑戦する元気がないです。」(ちあき)
「「大冊を終える」と言う措辞で、長編なり、専門書なりを、一心不乱に読みふけっていた姿を表現なさった所に、技の巧みさと、新鮮さとを、感じさせていただきました。少し気になりましたのは、「気付くや」となさると、理屈が発生してしまうように思いました。偉そうなことを言いまして御免なさい。」(霜月)
老いてなほ無くて七癖蟻ぢごく 春雪 「わかりますね・・・悪い癖を直したいと思いつつ♪ わかっちゃいるけどやめられない!♪その繰り返しです。何歳になっても、抜け出したいの思いは、人生に誠実って事と思います。」(ちあき)
「近頃蟻地獄を見たことがありません。老いて懐かしむ。これも七癖のうちですね。」(晶子)
「これは自分のことだわ、蟻地獄、脱け出せなくて困っています」(雪音)
大海に青年の夏突き進む ちあき 「もう遠くに行ってしまった青春、走り行く青年の背中を見てふと、懐かしさが・・・ 。気持ちは若いつもりなのだが。」(まさき)
来んといて蛍火すつと消えるかも 春雪 「昔はこわかった蛍火もいまでは、懐かしい思い出のメッセンジャーなのです。」(しおみ)
「一読、印象的な句です。 関西弁のはんなりさで息づく一句です。標準語ではこうはいきませんね。」(夕花)
「もの凄く切なく感じたり初恋に似た感情が湧きました。蛍に見入る浴衣姿が目に浮かんで。」(桜桃)
明日咲く蓮のぼんぼりとんがりて 緑茶 「ぼんぼりが良いです」(春雪)
「暑いね」と二人同時に云いし午後 むらさき 「「二人同時に」に、このお句の眼目が置かれているのですね。思わず「暑いね」と口を吐いたら二人同時だったところに、あまり暑い暑いと言わずに、じっと耐えていた二人の姿が見えて来ました。お二人の、慎ましやかなお人柄を想像させたりして、優しい言葉の中に、広がりのあるお句だと思いました。」(霜月)
片陰に犬伏せている原爆忌 むらさき 「あの日のヒロシマ、あの日のナガサキも猛暑だったとか。そんなあれこれをストレートに詠まず、日影を見つけた犬が、むしろ象徴的で心に残る一句です。」(夕花)
兄弟は己が日焼けを競い合い 零風 「黒いのを通り越して皮がめくれて世界地図状に。河童の様に小川で日なが遊んだものです。今はプールで時間制限だから、水流のある川で泳いで溺れる子が多い。」(おさむ)
「我が家では、息子と孫が、日焼けを自慢しあってました。何処にでも有る微笑ましい風景ですね。」(いくこ)
八月や伝へることと誓ふこと  夕花 「そうです。立ち会った人すべての使命です。」(春雪)
盆唄の恋はかなしき恋ばかり 暖流 「お盆のつかのまに生まれた恋か、唄のなかのそれか、ぜったい前のほうだ。」(しおみ)
「詩情溢れる俳句をつくりたいと何時も思っているのですがなかなか、、とてもすきな句です。」(あきこ)
夕涼み仏のごとく指を組み 暖流 「夏の無聊を喝破してます。」(小自良)
芋一つ忘るるなかれ終戦日 櫻貝 「芋は嫌いではありません。あの時代の芋は不味かった。でも、飢えていましたから良く食べました。あの頃の栄養失調がS一桁に堪えていると言われます。」(晶子)
星飛んで子らそれぞれに夢をもち あきこ 「8月12日の夜、来年嫁ぐ一人娘と妻と私でペルセウス座流星群を観ました。それぞれの思いを載せて星は流れ続けました。作者のお子さん達が星に寄せた夢は何だったのでしょうか。しみじみと優しい気持ちになる佳作です。」(暖流)