平成21年11月 選句結果

                     
得点 兼題 「霧」 作者 戴いた人
9 風紋をしづかに崩す初時雨 暖流 霧子 ちあき 晶子 いくこ もも
零風 静歩 初凪 優美
3 時雨傘さしたる人のふつと消え だいご 可不可人 まさき 櫻貝
2 時雨るるや訃音にも慣れ遠目癖 ゆき ししうど 暖流
2 時雨るるや一村を包むダムの夢 まさき しおみ 七海
2 鎮魂の塚をなぐさむ時雨かな 晶子 西寿 春雪
2 残り葉のみれん根こそぎ横時雨 ししうど 狂平 摩耶
1 朝時雨そつと差しかけ男傘 初凪 おさむ
1 襟足を濡らして去りし時雨かな 春雪 すすむ
1 お隣の猫と見上げし初時雨 櫻貝 小自良
1 片時雨陽の差す方に郷の家 瓢七 ウクレレ
1 時雨るるやラジオいつしか歌謡曲 もも あきこ
1 咳のひとつ近づく夕時雨 あきこ 弓子
得点 雑詠 作者 戴いた人
4 語らへば心和みて紅葉径 だいご ウクレレ ちあき すすむ 優美
4 良く利くと茶髪の案山子かつぎ行く ゆき 弓子 西寿 ししうど 七海
3 蝦夷紅葉白樺樹間幕模様 しおみ ちあき 静歩 初凪
3 卓上に錠剤一つ冬の朝 櫻貝 しおみ 可不可人 優美
2 足踏のミシンかたかた冬隣 暖流 晶子 まさき
2 紅葉を積み重ねつつ金婚日 初凪 春雪 摩耶
2 小春日に夢のすきまを探しあて まさき ウクレレ すすむ
2 古書店の灯消えて霜夜かな だいご 弓子 もも
2 淡々と野猿眠らせ十三夜 晶子 小自良 まさき
2 九十九折り紅葉濃くして空広く  優美 春雪 狂平
2 どんぐりを拾う児投げる児天高し 西寿 もも
2 懐かしき手の温もりや柿落葉 まさき あきこ 桜貝
2 波音の聞こえる墓や秋の暮れ 七海 可不可人 晶子
2 廃線となりしトンネル秋深し 西寿 霧子 暖流
2 白馬よりK点越えのモミジ舞ふ 初凪 しおみ 暖流
2 日だまりを見つけ上手な老ひの猫 ししうど あきこ 摩耶
2 役目終へ孤立無援の案山子かな 西寿 霧子 静歩
1 北国の空は明るし黄落期 あきこ いくこ
1 碧を裂く雪釣りの縄黄金はゆ 狂平 桜貝
1 衿すこし深く重ねてそぞろ寒む ゆき ししうど
1 かえりみち枯葉に逐われ歩歩かろし 狂平 小自良
1 香る程姿拝めぬ土瓶蒸し 優美 狂平
1 かなしみてをればどんぐり肩をうつ 暖流 七海
1 弧も巻いて草加松原冬支度 静歩 零風
1 釣り人に時雨降りしも動じなく 霧子 おさむ
1 どんぐりで翁と孫がこま遊び 零風 初凪
1 梳きてまた風に梢の木の葉髪 瓢七 いくこ
1 冬ぬくし臍の緒嫁に託しけり 櫻貝 おさむ
1 物言えぬ姉を見舞いて返り花 いくこ 零風
私の選んだ一句
風紋をしづかに崩す初時雨 暖流 「とても静かに時を刻み平らかになっていく様子なのでしょうか」(ちあき)
「穏やかな句で水の静かさを表して、時雨を嬉しく思うさまが詠まれていますね。」(晶子)
「風紋をしづかに崩す初時雨、儚い風紋を叙情的に詠まれて、心が洗われます。」(初凪)
「風紋がポツンポツンと滴に消されていく様子。これも又砂丘の楽しみ方でしょうね」(優美)
時雨傘さしたる人のふつと消え だいご 「『ふっと消え』の叙景が良い。」(可不可人) 
時雨るるや訃音にも慣れ遠目癖 ゆき 「しぐれのうそ寒さや、はかなさ感と、その後の言葉が響きあっている。ことに遠目癖、には哀感がただよう。」(ししうど)
「 一人また一人と物故してゆく友人知己たち。いつしか訃音に心が乱れることも無くなり、そのかわり、ぼんやりすることが多くなった作者。 見上げる空は冷たい時雨模様。これは、胸に染みる切ない俳句です。」(暖流)
時雨るるや一村を包むダムの夢 まさき 「夢醒めて知る票の怖さあり。」(しおみ)
「八ツ場ダムを思い浮かべました・・・」(七海)
残り葉のみれん根こそぎ横時雨  ししうど 「寒々とした時雨の様子がよくわかります。紅葉した葉が少し残って晩秋の名残を感じているのにそれさえも風を伴った時雨がみんな散らしてしまった。もう冬はもうそこまで・・・・そんな思いで拝見しました。」(摩耶)
朝時雨そつと差しかけ男傘 初凪 「朝帰りする男に、そーと 傘を差しかける きぬぎぬの朝の風景」(おさむ)  
お隣の猫と見上げし初時雨 櫻貝 「物憂いその気分が何とも宜しい。」(小自良)
時雨るるやラジオいつしか歌謡曲 もも 「時雨の一日を良くとらえているのではないかと。聞くともなしのラジオは歌謡曲の番組にかわっているという、季語との取り合わせ良いと思いました。」(あきこ)
咳のひとつ近づく夕時雨 あきこ 「時雨に風情があるので、どれほどそこから離れられるか、で しょう。『しわぶき』が静かでよろしうございました」(弓子) 
語らへば心和みて紅葉径 だいご 「紅葉の中を散歩しながら、ボツボツと語らう素敵なひと時ですね」(ちあき)
「気の置けない人との会話。市川海老蔵さんと小林麻央さんもこんな感じでデートしていたのかしら。何とも羨ましい光景です。」(優美)
良く利くと茶髪の案山子かつぎ行く ゆき 「利く、が気になりますが、てらいが無く、ユーモラスな点景で好感が持てます」(弓子)
「案山子の茶髪に、何とも言えぬおかしみを感じる。鳥たちも、茶の髪に、違和感を覚えるのだろうか?」(ししうど)
「思わずふきだしました。刈入まで一生懸命お役をつとめてくれたでしょうか?」(七海)
蝦夷紅葉白樺樹間幕模様 しおみ 「緞帳のぼってりした感じが、漢字ばかりの句から想像しました」(ちあき)
「漢字揃いが斬新で、その情景がくっきり浮かびます。」(初凪)
卓上に錠剤一つ冬の朝 櫻貝 「年ごとに増え5〜6錠です。」(しおみ)
「テーブルにカプセル一個霧の朝」(可不可人)
「風邪薬でしょうか。私も薬の離せない歳になりました。」(優美)
足踏のミシンかたかた冬隣 暖流 「素朴な風合いが好もしく、若い方には見えない風情です」(晶子)
紅葉を積み重ねつつ金婚日 初凪 「早いもので結婚して50年!今年も紅葉の美しい晩秋になりました。過ぎ去った50年の歴史にはどんな人生が織り込まれてこられたのでしょう?幸せ多い50年であればよいですね〜〜」(摩耶)
古書店の灯消えて霜夜かな だいご 「たちまちのうちに、深い闇と静けさが広がり、冷気が身を包みます。さりげない言葉だけでも宇宙が描けますね」(弓子)
淡々と野猿眠らせ十三夜 晶子 「墨絵の世界、淡々とが良いね!」(小自良) 
「句の中の猿と十三夜月、この配置の取り合わせが日本画のようで面白いです。」(まさき)
懐かしき手の温もりや柿落葉 まさき 「あたたかい手の温もりはしあわせ一杯にしてくれますね。」(あきこ) 
波音の聞こえる墓や秋の暮れ 七海 「山陰の荒海が見える無人駅に下りた人の背を思い出す」(可不可人)
「墓もこんもりと木陰に居るのも結構ですが穏やかな波の音が聞こえたら寂しいことはありませんね。」(晶子)
廃線となりしトンネル秋深し 西寿 「秋から厳寒の冬にどうしても、向かう、凄く活躍したも、誰も振り向かない。冷たい、侘びしい物を感じます」(霧子)
「『トンネル』の一語で、風景がくっきりと浮かんできます。錦秋の輝きの中から隧道の暗闇に伸びてゆくレール。美しくも寂しい情景です。」(暖流)
白馬よりK点越えのモミジ舞ふ 初凪 「たぶん あの方当たれかし。」(しおみ)
「風の中、ジャンプ台のK点を越えて散ってゆく紅葉。類想を見ない斬新な表現に驚きを禁じ得ません。」(暖流)
日だまりを見つけ上手な老ひの猫 ししうど 「老い猫にも太陽の恵みが。ホッと和む情景です。」(あきこ)
「この辺りにも野良ちゃんがたくさんいます。夕方にはバイクに乗ったり自転車で餌を置きに来る人の姿を見かけるので栄養状態の良いのらちゃんたちです。人を怖がらずに堂々と暖かい日差しの中で毛づくろいをしているのです。ネコだって生きる権利はあるんだよ!人が人を平気で傷つけあう人間って怖いにゃん。(=^・^=)」(摩耶) 
役目終へ孤立無援の案山子かな 西寿 「(寒風にさらされ、着物もぼろぼろ成っても、凜と立つ案山子。役目終えても労わりの無いもの良く見かけます」(霧子)
衿すこし深く重ねてそぞろ寒む  ゆき 「上五と中七が、季語のそぞろ寒む、を上手に生かしている。さりげない句のようで、味わいは深い。」(ししうど)
かえりみち枯葉に逐われ歩歩かろし 狂平 「どんな良いことが有ったのでしょう?」(小自良)
かなしみてをればどんぐり肩をうつ 暖流 「さあ、元気をだして。どんぐりが肩をたたいて、そう言っています。」(七海)
釣り人に時雨降りしも動じなく 霧子 「太公望の真髄 ここにあり」(おさむ)
どんぐりで翁と孫がこま遊び 零風 「今、子供達の間でブームの駒あそび(ベイブレード)をよそに、孫と団栗で遊ぶその光景がほほ えましくて、心が温かくなりました。」(初凪)
冬ぬくし臍の緒嫁に託しけり 櫻貝 「息子より嫁の方が信用できる」(おさむ)