平成22年09月 選句結果

                     
得点 兼題 「秋刀魚」 作者 戴いた人
5 七輪に昭和のけむり新秋刀魚 初凪 あきこ ゆき 暖流 優美
4 梵鐘の間遠くなりて秋刀魚焼く ゆき 晶子 春雪 いくこ まさき
3 白髪の春夫忍びて酢橘かな 晶子 七海 初凪 かれん
2 あばら骨一つも欠かず初秋刀魚 優美 だいご 和泉
2 岩手から目黒に届く秋刀魚かな 静歩 ちあき 弓子
2 七輪を外に持ち出し初秋刀魚 いくこ おさむ 狂平
2 初秋刀魚切っ先そろへ斜め切り だいご しおみ 西寿
2 百円の秋刀魚二匹を夕餉とす 七海 小自良 可不可人
2 ほろ苦き想い出数多秋刀魚焼く あきこ 零風 静歩
1 お隣りも今日の夕餉は秋刀魚なり 西寿 すすむ
得点 雑詠 作者 戴いた人
5 逢えぬ人逢えぬままなり九月尽 ゆき おさむ 弓子 だいご 七海 和泉
5 秋草を束ね一日の仏花かな あきこ 弓子 ゆき 春雪 初凪 優美
4 しやちほこをのけぞらせたる残暑かな 暖流 晶子 あきこ 狂平
3 秋の雲しばらく釈迦のかたちして 初凪 晶子 西寿
3 敬老の母装ひてはにかめり ゆき 小自良 可不可人 静歩
2 風の盆娘は風のように舞 静歩 あきこ 零風
2 軍神の遺影童顔秋暑し 晶子 しおみ 可不可人
2 子の指に恐れを知らぬトンボかな いくこ ちあき だいご
2 幸せに気づく幸せ虫の声 だいご 暖流 西寿
2 生涯に炎ゆる恋なし酔芙蓉 だいご ちあき 小自良
2 仲秋や稚魚の影散る梓川 桜貝 春雪 初凪
2 道聞かれ白秋の吹く方を指す 晶子 西寿 まさき
2 盲導犬腹で息する残暑かな まさき 暖流 静歩
2 湯上りの闇深まりしちちろ鳴く 西寿 狂平 まさき
1 秋の夜わずかにゆれる暖簾かな ちあき かれん
1 海光も揺らぎて九月まだ熱き 七海 すすむ
1 蟷螂に鼻を切られて鳴く子犬 零風 かれん
1 この炎暑保存できぬか如月へ しおみ おさむ
1 残暑なほ厳しき日々を耐えなばや 西寿 いくこ
1 新米と聴けば浮かびぬ父の顔 春雪 優美
1 七夕を過ぎて女に変身し まさき しおみ
1 日の匂ひ存分にして秋日和 あきこ すすむ
1 ひと欠伸妻にもうつす秋の夜 優美 零風
1 不揃いも旨さ劣らぬ秋の茄子 優美 和泉
1 短夜や今日の日いまだ始まらず 静歩 いくこ
1 夜業してふたつに分かつメロンパン 暖流 七海
私の選んだ一句
七輪に昭和のけむり新秋刀魚 初凪 「秋刀魚には郷愁の匂いと味がしますね、中七の『昭和のけむり』がなかなかよいのではないでしょうか。」(あきこ)
「七輪も昭和も遠くなりました、秋刀魚と七輪 渋団扇は良く似合いますね。」(ゆき)
「路地に七輪を持ち出して魚を焼く光景を、昔はよく見掛けましたね。まさに『昭和のけむり』。ぴったりの表現です。」(暖流)
「換気扇のなかった昭和時代 ただ懐かしくて秋刀魚を焼く匂いまで連想しましたよ。」(薫)
梵鐘の間遠くなりて秋刀魚焼く ゆき 「長閑な二人の夕餉を思いました。秋も深いですね。」(晶子)
白髪の春夫忍びて酢橘かな 晶子 「秋刀魚と言えば佐藤春夫ですね、♪あわれ秋風よ・・・酸っぱい感覚に浸りながら夢中で暗誦した頃を思い出しました」(初凪)
「秋刀魚といえば春夫 久須夜さんと同名ですね 確か最近 谷崎潤一郎か佐藤春夫かのご縁の夫人が逝去なさいましたね 千代夫人ではなかったと思いますが・・・・」(かれん)
岩手から目黒に届く秋刀魚かな 静歩 「秋刀魚と目黒とくれば 落語が即思い浮かびます。岩手から届くのですねーー」(ちあき)
「 『秋刀魚は目黒に限る』落語を逆手に取ったユーモアで 俳諧味横溢。ご馳走様」(弓子)
七輪を外に持ち出し初秋刀魚  いくこ 「路地か庭先での秋刀魚焼き マンションでは無理か」(おさむ)
初秋刀魚切っ先そろへ斜め切り だいご 「さんま2尾を斜め切り、腹・頭側は私が。」(しおみ)
百円の秋刀魚二匹を夕餉とす 七海 「豪華な夕食ですね!」(小自良)
「お二人で、仲良くでしょうね。」(可不可人)
逢えぬ人逢えぬままなり九月尽 ゆき 「逢えぬのは初恋の人か 戦地に行った限の許婚か」(おさむ)
「猫魔ホテルでは猫魔岳の猫王のお導きか、多くのかたと久闊を叙し、新たに多くのかたとの知遇を得たが、密かに最も再会を期待していたA女、遥か20余年前の一時期、骨髄バンク設立運動に熱く手をたずさえた彼女の姿は、無かった。句の心情そのままに晩夏は往く・・・」(弓子)
「9月尽。今年ももう3分の2過ぎてしまいましたね。」(和泉) 
秋草を束ね一日の仏花かな あきこ 「素朴にして秋空の如く爽やか。作句者の日常がしのばれる」(弓子)
「そろそろ秋の草を探る季節です、冬の来る前に花野をたのしまなくては・・・」(ゆき)
「お彼岸も近づき、極楽浄土にも涼しげな秋の草花を咲かせてあげたい思いです」(初凪)
しやちほこをのけぞらせたる残暑かな 暖流 「良い句が沢山有って迷いましたが、大胆な発想がこれを決めさせました。お見事!」(晶子)
「しゃちほこはいつでもあの形なんですけれど、なお 暑くてのけぞっているかもしれません。暑いときに見上げるとなお暑いかも。」(あきこ)
「とってもユーモラスな感覚の持ち主でいらっしゃっるなと 共鳴しました。しゃちほこのきらつきと 残暑の厳しさをマッチされて その擬人法に感心しました」(薫)
秋の雲しばらく釈迦のかたちして 初凪 「色々な形に変わりつつ流れていきます、こちらは心に仏を抱いてておいでなのでしょうね。」(晶子)
「姿を変える雲の姿を しばらくと捉えられやがての変化を楽しまれている様子がよく伝わってきますよね。」(薫)
敬老の母装ひてはにかめり ゆき 「良い情景ですね!」(小自良) 
「今ならば、買ってやれるよ。」(可不可人)
軍神の遺影童顔秋暑し 晶子 「そして2階級特進の名誉が。」(しおみ)
「ふいにとぎれる、蝉時雨。」(可不可人)
子の指に恐れを知らぬトンボかな いくこ 「無邪気なこどもも、トンボも なんの屈託もない様でしょうね。」(ちあき)
幸せに気づく幸せ虫の声 だいご 「幸せは身近に潜んでます、見つけるのは自分自身ですね」(ゆき)
「どんな境遇も自分が幸せと感じるなら、それは紛れもなく幸せなのでしょうね。不満に思うひとは、いつまでたっても不幸せ。しみじみ考えさせられました。」(暖流)
生涯に炎ゆる恋なし酔芙蓉 だいご 「炎ゆる恋はなかったけれど 淡いのはあったですよねーー 酔芙蓉の花のように 純白から ピンクへと、久々に追想にふけりました。」(ちあき)
「酔芙蓉落花無惨となりにけり」(小自良) 
仲秋や稚魚の影散る梓川 桜貝 「<梓川>槍ヶ岳に源を発し、上高地を経て奈良井川と合 流して犀川へ川の名も美しく、遊泳する稚魚の姿に心洗われます」(初凪) 
盲導犬腹で息する残暑かな まさき 「『腹で息する』という見事な措辞に残暑の厳しさが、どっと伝わってきます。写生句とはこうあるべき、と教えられるような佳句です。」(暖流)
湯上りの闇深まりしちちろ鳴く 西寿 「先ほど風呂から出てきました。網戸から射す風が心地よく我が家の裏庭からも虫たちの鳴き声が聞こえています。『闇深まりし』から、限りない空間の深さを感じます。」(まさき)
秋の夜わずかにゆれる暖簾かな ちあき 「だれもいないのに そっと揺れるのれん 秋見つけです」(かれん)
蟷螂に鼻を切られて鳴く子犬 零風 「可愛いとしか・・・・不思議に思って手を出したんでしょうね」(かれん)
この炎暑保存できぬか如月へ しおみ 「如月の氷は氷室に貯めて夏 献上したのに 反対は無理か」(おさむ)
残暑なほ厳しき日々を耐えなばや 西寿 「『たえなばや』の言葉にもう少しの我慢を感じました。」(いくこ)
七夕を過ぎて女に変身し まさき 「魚では成長過程で性転換して種族保持をしますね。」(しおみ)
不揃いも旨さ劣らぬ秋の茄子 優美 「趣味で畑をしていると不揃いな作品がたくさん出ます。器量は良くも悪くも味は同じ。」(和泉)
短夜や今日の日いまだ始まらず 静歩 「朝未だ早い時間に目が覚めて仕舞って布団の中でラジオを聞いたり、電気を付けて本を読んだり、朝に為るのを待つ心境・・・良く判ります。」(いくこ)