連鎖関係詞節
 
 
 
 
連鎖関係詞節/関係詞連鎖
 
2004/8/7更新
目次を作り,ロイヤル英文法改定新版の記述を加えました。

入試問題などにもよく出てくる構文にもかかわらず、高校の英文法の教科書には載っていないし、参考書にも載っていなかったり、載っていても挿入文となっていたり、連鎖関係代名詞節と書いてあったりいろいろである。それでとりあえず自分の持っている参考書、文法書で調べてみた。あと英文法辞典でも調べてみるつもりだが、それらは調べる毎にここに追加していくつもりである。

 
目次
 
文法書では
01■Curme(1991), Syntax
02安藤貞夫訳(1989), アニアンズ高等英文法
03吉川美夫(1990), 英文法詳説
04安藤貞雄(1987), 続英語教師の英文法研究
05細江逸記(1980), 英文法汎論改訂新版
 
受験参考書では
06江川泰一郎(1991), 英文法解説改訂三版
07高橋潔、根岸雅史(1999), 基礎からの新総合英語
08宮川幸久他(1993), ロイヤル英文法重版
09山口俊治(1990), 全解英語構文=総合英文読解ゼミ
10高橋善昭(1991), 英文読解講座
 
入試問題では
11■早稲田大学入試問題:2002/11/26

 
文法書では
 
CURME(1931) "SYNTAX", Maruzen Asian Edition.
 
8. Case of Relative and Its Agreement with Its Antecedent.のfootnote
d. False Attraction に以下のように少し出ている:
 
Writers and speakers not infrequently place the relative pronoun in the accusative under the false impression that it is the object of the following verb, while in reality its grammatical function demands the nominative form: 'Instinctively apprehensive of her father, whom she supposed it was, she stopped in the dark' (Dickens). Here whom is incorrectly used for who, the predicate of the relative clause who it was, which is the object of the verb supposed. This incorrect usage was very common in Shakespeare's time: 'Arthur, whom they say is kill'd tonight On your suggestion' (King John, W, U, 165). p.232
 
格の誤用という視点で書かれている。シェイクスピアの頃には普通に使われたのか。規範文法がまだ発達していなかったということだろう。(10/29)
 

安藤貞雄訳(1989), アニアンズ高等英文法, p.130, 文建書房(8刷).
 
では挿入文扱いになっており、連鎖関係詞節とか関係詞連鎖という用語は使われていない:
There's Mr. Jones, who they declare is the richest man about here.
 

 
 
吉川美夫(1990), 英文法詳説, p.187, 文建書房(45刷).
 
では連鎖関係詞節となっている。説明も詳しい:
 
know, say, think, fear, hearなどの目的語である名詞節(内容を示す節)の中に関係詞節が入り込むことがある。これを連鎖関係詞節という。
 
例えば
some things which we thought would help you(君の役に立つと思われた物)は we thought (that) they would help you の they が関係代名詞 'which'となったものである。連鎖関係詞節では通例接続詞 'that'は言い表されない。
 
この著者の吉川美夫という人は旧制高等学校英語科教員検定試験合格だそうだ。たしか高検とか専検とかいう試験はえらく難しい物だったはずだ。英語学、英文学、英語教育それぞれから出題され、大学院の入試よりも難しいのではないかと思われる。
 
自分の所有している本のどれかに実際の問題が収載されているはずなのだが、どの本なのか忘れてしまった。またもう一人独学で英語を勉強して、大学の教授にまでなった田中菊雄の<『英語研究社のために』講談社学術文庫>は良い本である。

安藤貞雄(1987), 続英語教師の英文法研究, p.239, 大修館(再版).
 
説明:
 
"連鎖関係詞節" (concatenated relative clause)は、Jespersen (1927:196)の用語で、関係代名詞が埋め込まれた節中の構成素として機能している場合を言う。
 
(39) I have some sherry that they tell me isn't bad. (まずくはないとされるシェリー酒がある)
(40) We feed children who(m) we think are hungry. (腹をすかせていると思われる子供らに食事を与えるのです)
 
(39)では、that は isn't bad の主語として機能している。(40)の whom も
are の主語であるから who が文法的であるが、しばしば think の目的語と感じられて whom になる(関係詞牽引 (relative attraction) と呼ばれる現象)。
 
(39)の基底には、概略、次のような構造が考えられる。
(41) I have some sherry [s1 they tell me [s2 (that) it isn't bad]]
 
この it が isn't bad の主語であることは明瞭であるが、これを関係詞化してS1 の文頭に移動すれば−つまり、先行詞の直後に置けば−(39)が得られる。
 
この時、S1 に現れる動詞は、believe, hope, imagine, suppose, think, say, suggest, tell などで、これらの大部分は次のような"連鎖疑問詞節"にも現れる(§9.4.3)。
(42) a. Who do you think he will do?
   b. What do you suppose happened next?
 

細江逸記(1980), 英文法汎論, p.364, 篠崎書林(改訂新版).
 
ここでは例文は示されているが、用語は使われていない。
 
There's Mr. Jones, who they declare is the richest man in this city.
 
なお、pp.272-3では誤用例の中に連鎖関係詞節が現れている。
That it was I whom you thought was concealed in a room in your house. −Wilde.
 
上の文のwhom はthoughtに引かされた誤りであり、whoとすべきところだ、とある。これは明らかにカームから持ってきている。
 

受験参考書では:
 
江川泰一郎(1991), 英文法解説, p.84, 金子書房(改訂三版).
 
では先行詞の直後に I know, we think などが挿入される場合、とある
 
Many of those qualities who we think are typical of American in general were the result of this frontier life. (アメリカ人一般の特徴と考えられる性質の多くはこの辺境の生活から生じたものである)
 

これはうちの生徒が学校で支給されたもの
 
高橋潔、根岸雅史(1999), 基礎からの新総合英語, 数研出版(四訂版).
 
説明は:関係詞節中に他の節を含む場合として説明されている。
 
John is a boy who I think will succeed in the future. (ジョンは、将来成功するだろうと私が思っている少年です)
 
上の文は、who 以下の関係詞節の中に、who に接して別の節 I think が挿入されていて、ややこしくなっている。これは次のようにカッコでくくるとわかりやすい。
John is a boy who (I think) will succeed in the future.
 
この文は次の2文を1文にしたものと考えればよい。
John is a boy. + I think (that) the boy will succeed in the future.
I think につられて、a boy whom I think will 〜 としないよう。
 
関係代名詞の直後に、 I[we, etc.] know/think/believe などが挿入されると、主格の関係代名詞が省略されることがある。
He asked me some questions (that) he knew could not be answered.
(彼は私に、答えられないとわかっている質問をした)
 

宮川幸久他(1993), ロイヤル英文法, p.581, 旺文社(重版).
 
この本では<関係代名詞+挿入節>となっている。
説明:
 
関係詞の後に I hear, I think が挿入されることがある。
 
I saw a woman who I thought was a friend of my mother's.
(私はたしか母の友人と思われる婦人を見かけた)
改訂新版p.651で次の説明が付け加えられた。
 
※I saw a woman. と I thought she was a friend of my mother's. が結びついたもので,関係代名詞は I thought の目的語となる節の主語になっている。
また,挿入節の動詞についての説明が加えられた。
 

山口俊治(1990), 全解英語構文=総合英文読解ゼミ, p.224, 語学春秋社.
 
この本では二重限定と連鎖関係代名詞節との違いを明らかにしながら説明している。
 
1. He is the only boy that I know who cannot read English at all.
 
1.は the only boy という1つの先行詞に that I know と who cannot read English at all の2つの関係代名詞節がついているが、ただ並列的に the only boy にかかるのではなく、次のように二重に限定しているのをつかまなくてはならない。
 
つまりthe boy を that I know が限定し、その二つをさらに who cannot read English at allが限定しているわけで、いわゆる二重限定(Double Restriction) と呼ばれるものである。
 
訳は「彼は私の知り合いの少年のうち、英語をまったく読めないただひとりの少年だ」=「彼は英語を全く読めない、私の知り合いのただひとりの少年だ」」
 
 
2. He is the only boy who I know cannot read English at all.
 
2.はつぎの2文からできたもので、連鎖関係代名詞節(Concatenated Relative Clause)と呼ばれる構文である。
 
He is the only boy. I know (that) he cannot read English at all. を1文にすると、he が who(主格の関係代名詞)にかわり、2.の文になる。who cannot read ...の who という関係代名詞の直後に I know が挿入されたような形になるわけである。
 
訳は「彼は、英語をまったく読めないのを私が知っているただひとりの少年だ」=「少年のうち、英語がまったく読めないのを知っているのは彼だけだ」」
となる。
 

高橋善昭(1991), 英文読解講座, p.98, 研究社(6版).
 
この本の説明は、
 
名詞とこれを修飾している関係詞節がNRSVVX ないしは NRSV
SV の構造のものがある。この構造は関係詞がVの目的語に見えるので一段と難しく感じられる。一般にはこのSVは挿入だと言われているが、ここではこの一般論が誤りであることを、関係詞変形の手順を明示して証明し、正しい文意の把握に資するものとしたい。
 
と、少々難しい。詳しくは直接p.98を読んで貰いたい。
 

入試問題では:
 
早稲田大学の問題を読んでいたら,連鎖関係詞節が出てきた。<2002/11/26>
 
連鎖関係詞節 関係詞SVV
It is, however, a kind (that many people <,until they become well acquainted with it,> feel)is rather peculiar and even useless.
それは,しかしながら,多くの人々が,それをよく知るまでは,かなり得意で役に立たないとさえ感じる,種類のものである。
 
It is, however, a kind   that(関係代名詞)
               ↑
many people feel /(1)that it(= a kind) / is rather peculiar and even useless       
          
(1)(接続詞)省略,itも関係代名詞になったので省略
 
解答を見ると many people feel は挿入節となっている。参考書では挿入と書いてあっても正しいと思える場合と,そうでない場合がある。高校生に対してどの程度の解説をつけたらよいのか迷っているようだ。
 
文法学者が書いた英文法の参考書は,初版が良いと,よく言われる。大学院の時によく聞いた。しかし絶版なので手に入らない。改訂されるたびにやさしくなっていくようだ。
 
どの本で読んだのか忘れたが,問題集にしても,高校の方から難しいからもっとやさしくしてくれと要望が来るのだというから,参考書だってやさしくなるはずだ。思い出した『だれがこの国の英語をだめにしたか』 澤井繁男, NHK出版にそんなことが書いてあったっけ。
 
そういうわけで,どうしても参考書が中途半端になる。教える身としては,もう少し詳しいものがほしいと思うのだ。英文法シリーズを基本として,最近の知見を盛ったものが。