著作権法文献案内

 

INDEX

T はじめに

U 体系書、教科書など

V 単行本、研究書など

W 判例集、雑誌、その他

X おわりに


T はじめに

 このところ「知的財産」や「著作権」といった言葉を耳にすることは珍しくなくなった。大学では「知的所有権法」や「著作権法」という授業が通年ないし半期の講義として開かれているところもあるし、また「市民のための〜」として様々な市民講座が開かれている。そこで、これから「著作権法」について勉強をはじめたり、講義やゼミなどでレポートや論文を書こうとする人もいるだろう。その際に「どういった本があるのか」は誰もが頭を悩ませるところである。そこで、ここでは自身の経験や図書館、書店を巡って、参考になる文献、または信頼がおける文献について紹介したい。ここであえて「信頼がおける文献」と理由をあげているのは、著作権法を含めた知的財産権法という分野は法律学の中でも比較的新しい分野に属する。学説や実務家の間でもその理解の仕方が分かれているところもある。一部のひどいものになると、一般の方が知らないことをいいことに、著作権法についてあることないことを書きたて、「資格が必要!」とか「わが協会に登録すると安心です」とうたっているものも平気で書店に並ぶことがある。そういった文献に引っかからないためにも、信頼のおける文献をここで紹介しようというものだ。なお、ここで紹介する文献はごく一部であり、新しい文献等について詳細が分かり次第更新していく予定である(なお、文献等の検索については「X おわりに」で紹介する)。また、これを読まれた方から、ここで漏れている資料があればぜひ情報を頂きたい。

U 体系書、教科書など 

 法律学の場合には、いわゆるその分野の「権威」と言わる先生が書かれた著作がある。例えば民法の分野なら我妻栄の『民法講義』といったところだ。これは、著作権法においても当てはまる。半田正夫『著作権法概説〔第10版〕』(一粒社、2001)や斉藤博『著作権法』(有斐閣、2000)が代表的なものだろう(後者には、斉藤博『概説著作権法〔第3版増補〕』(一粒社、1996)もあるが、学説変更されたところもありこの『著作権法』の方が参考になろう)。また、近時のものとして田村善之『著作権法概説〔第2版〕』(有斐閣、2001)がある。前述の半田『概説』や斉藤『著作権法』とは、著作権法に対する視点が異なり、体系そのものや制度のとらえ方にも違いが現れている。半田『概説』や斉藤『著作権法』に比べると、判例や文献の引用が豊富なので便利である。そのほか研究者によるものとしては東季彦監修=尾中普子ほか共著『著作権法〔全訂2版〕』(学陽書房、1996)や千野直邦=尾中普子『著作権法の解説〔三訂版〕』(一橋出版、2000)があるが、学説として引用するにはやや物足りないところもある。また、現行の著作権法の起草者による加戸守行『著作権法逐条講義〔三訂新版〕』(著作権情報センター、2000)は、条文ごとの解説が詳しい。著作権法が改正されるたびに担当した役人が解説を加えているので、この文献は起草者の見解としてたびたび引用されるものでもある。また、ここ数年の改正(平成9年、平成11年改正)の内容については『著作権法・不正競争防止法改正解説』(有斐閣、1999)が図などを用いて説明してあり、加戸『逐条』よりも分かり易い。文部省に関係した役人による文献としては吉田大輔『著作権が明解になる10章』(1999)、『明解になる著作権201答』(2001、いずれも出版ニュース社)や作花文雄『詳解著作権法』(ぎょうせい、1999)も参考になる。両者は大学でも教えている経験もあるので、起草者の見解と言うよりも、学説として参考にすることもできるだろう。また、弁護士による三山裕三『著作権法詳説 判例で読む16章〔全訂新版〕』(東京布井出版、2001)は、簡潔な記述で分かり易い。また、弁護士、弁理士が中心になった金井重彦=小倉秀夫編『著作権法コンメンタール〔上巻〕』(東京布井出版、2000)もあるが、加戸『逐条』の方が重要度が高く、必要に応じて参考にするのがいいように思われる。簡単に著作権法を理解したいのであれば『著作権法入門〔平成13年度〕』(著作権情報センター、2001)や『著作権法ハンドブック〔第4版〕』(著作権情報センター、2001)がある。いずれも文化庁著作権課内の研究会によるもので、特に前者はこのところ毎年改正されている著作権法に対応して毎年改訂されている。

 従来の仲介業務法に変わって2001年10月1日から施行される著作権等管理事業法については著作権法令研究会『逐条解説著作等管理事業法』(有斐閣・2001)のほか、ビジネス書として清野正哉『平成13年10月施行で著作権ビジネスが変わる解説著作権等管理事業法』(中央経済社・2001)がある。

 さらに、「著作権法」というタイトルだけでなく広く知的財産法の教科書の中から著作権法を理解することもできる。小野昌延『知的財産法入門 特許・商標・著作権の常識〔第3版〕』(有斐閣、1998)や紋谷暢男『無体財産権法概論〔第9版補訂版〕』(有斐閣、2001)、田村善之『知的財産法〔第2版〕』(有斐閣、2001)、土肥一史『知的財産法入門〔第4版〕』(中央経済社、2001)、角田政芳=辰巳直彦『知的財産法』(有斐閣、2000)がある。紋谷『概説』や土肥『入門』は、著作権法に関する記述が少なく感じるところではある。この点では角田=辰巳『知的財産法』も同様だが、インターネットに関して他の知的財産権を含め別に記述しているのは面白いところだろう。

 現行の著作権法は昭和45年に成立した。それまでに『著作権法』がなかったわけではなく、明治32年に制定された、「旧法」と称されるものがある。現在も判例として意義のある判決の中には旧法下のものもあり、また本格的に著作権法に取り組むとなると必要に応じて参考にする場合があるかもしれない。旧法についての体系書としては水野錬太郎『著作権法要義』(明法堂/有斐閣、1899)、荒木虎太郎『日本著作権法要論』(荒木特許事務所、1915)、榛村専一『著作権法概論〔改訂版〕』(厳松堂、1936)、勝本正晃『日本著作権法』(厳松堂、1940)、飯塚半衛『無体財産権法論』(厳松堂、1940)、城戸芳彦『著作権法研究』(新興音楽出版社、1943)、小林尋次「現行著作権法の立法理由と解釈』(文部省、1958)、蕚優美『条解著作権法』(港出版、1961)、山本桂一『著作権法(有斐閣全集52−U)』(有斐閣、1969)などがある。水野錬太郎は旧著作権法の起草者でもあり、「著作権」の名付け親でもある。その意味では重要な文献であろう(水野錬太郎「著作権ノ性質ニ就テ」法協21巻7号905頁以下(1903)参照)。しかし、これらの文献は発行年代が古く、数も少ないので、現在では古本屋でもほとんど手に入らず、また大学の図書館でも所蔵されていないところもある(自身も実物を見たのは2、3冊程度。研究書などで引用されているものから検索した)。さしあたり旧法について知りたいのであれば山本『著作権法』が図書館などで比較的容易に目にすることができるだろう。

V 単行本、研究書など

 法律学の場合、単行本用に論文が書き下ろされることはあまり多くない。どちらかと言うと一度雑誌や紀要(例えば、○○大学法学部が発行する『○○法学論集』)などに掲載された論文に加筆修正を加えて、1冊の本になることがほとんどである。雑誌や論文等に掲載される論文の検索については「X おわりに」のところで触れるとして、ここではこれらの論文をまとめた研究書や単行本、論文集などを紹介していこう。

 専門的な研究書を挙げるなら、半田正夫『著作権法の研究』(1971)、『著作権法の現代的課題』(1980)、『著作物の利用形態と権利保護』(1989)、『転機にさしかかった著作権制度』(1994、いずれも一粒社)や斉藤博『人格権法の研究』(一粒社、1979)がある。特に半田『著作権法の研究』と斉藤『人格権法の研究』は、著作権法を本格的に勉強するのであれば、一度は目を通すことになるだろう。主にドイツの判例や学説を資料として、著作権を著作者の人格の発露としてとらえる立場が、色濃くあらわれている。また、影響力の大きさで言えば中山信弘『ソフトウェアの法的保護〔新版〕』(有斐閣、1988)も重要な文献である。中山『ソフトウェアの法的保護』が出版された以降、著作権法研究に携わるほとんどの研究者が少なからず影響を受けていると言ってもいいだろう。半田、斉藤とは異なり、工業所有権法や競争法的視点から著作権法へのアプローチが見られ、どちらかと言うと情報の流通の点に重点をおく立場である。同様の視点から、著作権法だけでなく、知的財産法一般についての田村善之『機能的知的財産法の理論』(信山社、1996)、『競争法の思考形式』(有斐閣、1999)がある。別の観点として、著作物の流通を契約システムモデルによって構築する、いわゆる「コピーマート」を提唱する北川善太郎『技術革新と知的財産法制』(有斐閣、1993)、北川善太郎編『知的財産法制 21世紀への展望』(東京布井出版、1996)などがある。他には、苗村憲司=小宮山宏之『マルチメディア社会の著作権』(慶應義塾大学出版会、1997)がある。また、著作権法そのものを扱うものではないが、今後の著作権法の在り方を探る上では、ほかの法分野からのアプローチも欠かせない。例えば、法哲学の森村進『財産権の理論』(弘文堂、1995)や競争法から白石忠志『技術と競争の法的構造』(有斐閣、1994)、国際私法から石黒一憲『国際知的財産権 サイバースペースVSリアルワールド』(NTT出版、1998)などがある。著作権を含めた関連法領域を広く「情報法」として俯瞰するものとして浜田純一『情報法』(有斐閣、1993)や岩村正彦ほか編『岩波講座 現代の法10 情報と法』(岩波書店、1997)、『増刊ジュリスト新世紀の展望 変革期のメディア』(有斐閣、1997)、田村善之編『情報、秩序、ネットワーク』(北海道大学図書刊行会、1999)、高橋和之=松井茂記編『インターネットと法〔第2版〕』(有斐閣、2001)などがある。

 著作権法における論点ごとの文献としては大家重夫『肖像権』(新日本法規、1979)、『タイプフェイスの法的保護と著作権』(成文堂、2000)や、椙山敬士『ソフトウェアの著作権・特許権』(日本評論社、1999)や岡邦俊『マルチメディア時代の著作権の法廷』(ぎょうせい、2000)、牛木理一『キャラクター戦略と商品化権』(発明協会、2000)、内藤篤=田代貞之『パブリシティ権』(木鐸社、1999)などがある。これらの論点について簡潔に知るものとしては半田正夫=紋谷暢男編『著作権のノウハウ〔第5版〕』(有斐閣、1995)が分かり易い。著作権法によってコンピュタープログラムが保護されることによって、著作権法がひとつの転換期を迎えているとの見方もある。その意味では、コンピュタープログラムの著作権法における位置付けを理解することは重要だろう。前述の中山『ソフトウェアの法的保護』は必読のものであるし、コンピュタープログラムを著作権法で保護することを主張した弁護士の高石義一『コンピュタ法務 理論と実務』(にじゅういち出版、1987)などもある。また、著作権法上でどのように保護されているのかを簡潔に知るものとして紋谷暢男ほか『プログラム著作権とは何か』(有斐閣、1988)がある。コンピュタープログラムだけでなく、マルチメディアもふくめたものとしては、新書ではあるが中山信弘『マルチメディアと著作権』(岩波新書、1996)や名和小太郎『サイバースペースの著作権 知的財産は守れるのか』(中公新書、1996)、半田正夫『インターネット時代の著作権』(丸善ライブラリー、2001)がある。中山『マルチメディア』は、中山がまだ著作権法の体系書を書いていないため、研究論文の中でもしばしば引用されるものでもある。また、経済法の観点を含めた根岸哲編『コンピュター知的財産権−保護と競争をめぐる法政策−』(東京布井出版、1993)がある。

 研究書としてだけではなく、読み物としても読めるものに、多少古いものではあるが阿部浩二『著作権とその周辺』(日本評論社、1983)や、日本の著作権法の歴史を扱うものとして宮田昇『翻訳権の戦後史』(みすず書房、1999)や大家重夫『ニッポン著作権物語 プラーゲ博士の摘発録〔改訂版〕』(青山社、1999)といったものもある。また、著作権に関する実務を知りたいのであれば、安藤和宏『よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編、実践編』(1998)、『よくわかるマルチメディア著作権ビジネス〔増補改訂版〕』(2000、いずれもリットーミュージック)や弁護士による久保利英明=内田晴康『著作権ビジネス最前線〔七訂版〕』(中央経済社、1999)がある。法律と実務とでは、言い方が違う場合も少なくなく(例えば「印税」や「原盤権」など)、また、基本的な用語を調べるために、著作権情報センター編『新版 著作権事典』(出版ニュース社、1999)や北川善太郎=斉藤博監修『三省堂知的財産権辞典』(三省堂、2001)が便利である。

 次に、論文集をいくつか挙げておこう。これは、「○○先生の還暦を祝って…」のように複数の執筆者による論文が一冊にまとめられたものが多い。例えば、半田還暦『民法と著作権法の諸問題』(法学書院、1993)、紋谷還暦『知的財産法の現代的課題』(発明協会、1998)などのほか、知的財産研究所編『知的財産の潮流』(信山社、1995)、『21世紀における知的財産の展望』(雄松堂、2000)にも著作権法に関する論文が収められている。また、斉藤博=牧野利秋編『裁判実務体系27 知的財産関係訴訟法』(青林書院、1997)は、著作権法に関する論文に多くを割いている。中山信弘編『知的財産権研究T〜W』(東京布井出版、1990〜1999)には、研究者、実務家による論文が収録されている。論文集ではないが、大学に外部からの実務家などによる講演録を編集されたものに青山学院大学法学部『レコードと法』(1993)、『音楽と法』(1994)、『メディア文化と法』(1995)、『情報化社会と法』(1996)、『マルチメディアと法』(1998)がある。一般には市販されていないが、大学の図書館なら所蔵されているところもある。このような論文集に収められている論文を探す場合、『法律判例文献情報』(「X おわりに」を参照)では、検索にかからないこともある。丁寧にデータベースを作成している大学図書館なら、それぞれのOPAC(「X おわりに」を参照)で検索できる場合もある。

 また、場合によっては、外国法、特にアメリカ法に目を向けることもあるだろう。そこでアメリカの著作権法に関する邦語の文献をいくつか紹介しよう。土井輝生『アメリカ新著作権法の解説』(第一法規、1981)、小泉直樹『アメリカ著作権制度』(弘文堂、1996)、内藤篤訳『1980年代米国著作権法詳解(上)、(下)』(信山社、1991〜1992)、松尾悟訳『アメリカ知的財産法』(木鐸社、1995)、D.Sガラーシャ=椙山敬士『アメリカ−日本 コンピュータ著作権法』(日本評論社、1989)がある。さらに英米法の著作権法の歴史については古いものでは戒能通孝『著作権』(日本評論社、1950)があり、最近では白田秀彰『コピライトの史的展開』(信山社、1998)が詳細に検証している。

W 判例集、雑誌、その他

 法律を勉強する上で、判例を見ることは実際に世の中でどのような紛争が生じているのか、著作権法によってどのように紛争が解決されているのかを学ぶために重要である。法学部の学生が一度は手にするものと言えば斉藤博=半田正夫編『著作権判例百選〔第三版〕』(有斐閣、2001)がある(古い判例であれば池原季雄=斉藤博=半田正夫編『著作権判例百選』(有斐閣、1987)、斉藤博=半田正夫編『著作権判例百選〔第二版〕』(有斐閣、1994)を参照)。また、秋吉稔弘『著作権事件関係の研究』(判例時報社、1987)や土井輝生『知的財産権法基本判例〔三訂版〕』(同文館、1999)や、記念論文集の形で判例評釈を集めた村林古稀『判例著作権法』(東京布井出版・2001)がある。判例集としては、公式な判例集として『無体財産関係民事・行政裁判例集』(23巻以降は『知的財産権関係民事・行政裁判例集』)が年に4回発行されているし、公式な判例集ではないが、月に3回発行される『判例時報』や月に2回発行される『判例タイムズ』では新しい判決に触れることができる。また、著作権判例研究会編『最新著作権関係判例集T〜]』では、『判例時報』や『判例タイムズ』に収録されていない判例が載っていることもあり、適宜参照できるだろう。知的財産権関係の判例なら、何より最高裁判所ホームページが速報性、利便性の上で優れている。知的財産権判決速報のコーナーでは、遅くとも判決日の2〜3日の内に掲載される。また、知的財産権判例集のコーナーでは、判決速報の掲載から3ヶ月以上経過した判決や『無体財産関係民事・行政裁判例集』『知的財産権関係民事・行政裁判例集』に掲載された判決を検索したり、見ることができる。なお、最高裁の判決については最近の最高裁判決のコーナーか、最高裁判例集のコーナーを参照することになる。

 雑誌では、『コピライト』(著作権情報センター、月1回)が発行されている。著作権法についての専門の雑誌であるが、市販されていないため大学の図書館で閲覧することになる。また、著作権法の専門としては年に1回発行される学会誌『著作権研究』がある。工業所有権を扱っている『特許研究』(発明協会、年2回)、『パテント』(日本弁理士会、月1回)、『発明』(発明協会、月1回)などにも著作権法に関する論文が掲載されることもある。さらに、法律一般で言えば『ジュリスト』(有斐閣、月2回)、『NBL』(商事法務研究会、月2回)にも、著作権に関連する論文が掲載されることがある(なお、比較的最近では『ジュリスト』1132号(1998)、『ジュリスト』1160号(1999)で著作権に関する特集が組まれている)。

 また、著作権法の改正に至った経緯を知るには、著作権審議会の報告書やまとめをみると分りやすい。著作権審議会は文部科学省内に、学識経験者等を委員として著作権法の改正の提言等を行い、その後の法改正にも影響を及ぼす。報告書が公表されてからしばらく経過したものであれば著作権情報センターのホームページの著作権審議会報告のコーナーで見ることもできるし、新しいものなら文部科学省のホームページの審議会情報のコーナーから著作権審議会の報告書類を見ることができる。なお、2001年1月以降の著作権審議会については文化審議会内の著作権分科会に移っている。

X おわりに

 繰り返しになるが、ここで挙げている文献はごく一部でしかない。また、雑誌や紀要などに掲載された論文についてはまったくフォローしていない。本格的にレポートや卒業論文に取り掛かろうと思うと、当然このような論文も適宜参照する必要がある。しかし、このような雑誌類は逐次刊行されているため、ここで扱うのは適当は言えないだろう。そこで、最後の締めくくりとして、自分で文献や論文、判例を探す方法をいくつか紹介しよう。

 ひとつの手っ取り早い方法として、ここで掲げられている文献の参考文献や脚注で取り上げられている文献を「芋づる式」にたどっていく方法がある。ただ、この方法だと古いものへ古いものへとだけさかのぼることになってしまう。となると、新しい資料を探すにはあまり適当とはいえない。そこで、最近ではCD−ROMになっているものや、インターネット上で比較的最近の資料を探すことができる。1982年以降の資料については『法律判例文献情報』(CD−ROM版)で、法律関係の文献や判例を探すことができる。新しいものについては月1回、冊子の形で閉じられているもの(1年ごとに青いファイルにまとめられる)があるので利用することになる。また、法律に限らず広く雑誌に掲載された記事を探すには『雑誌記事索引』がある。CD−ROM版なら1975年以降の資料の検索ができる。また、大学によっては学生にパスワードを割り当て、インターネット上で『雑誌記事索引』を利用できるところもあり、最新の記事を検索することができる。著作権情報センターホームページ内の著作権データベースでは、著作権文献・資料データベースによって、タイトルや著者から検索することができる。また、判例の検索については前述の『法律判例文献情報』のほか、『リーガルベース』『判例体系』(いずれもCD−ROM版)が便利である。条文やキーワードによる検索もできるし、検索した判例についての評釈も知ることができる。また、CD−ROMではないが、雑誌媒体のものとして『民事法情報』(きんざい、月1回)もある。もっと新しいものを、と言うのならば直接図書館の雑誌棚から一つ一つ取り出して確認するという方法がいいということもあろう。

 このように検索した文献が、自分の大学の図書館に所蔵されているかをOPAC(各大学の図書館にどのような資料が所蔵されているか調べることができる。ほとんどの大学の図書館ではインターネットを通じて利用可能)を利用して所蔵状況や貸出状況、請求番号などをチェックすれば、あとは所定の書棚から文献を見つけることができるだろう。自分の大学の図書館に目的の文献が見つからない場合には、前述の著作権情報センターの資料室でも閲覧することができる。また、地元の公立図書館や他大学の図書館のOPACで調べてみたり、国会図書館で調べて閲覧することになる。国立情報学研究所が提供するインターネット上のNACSIS Webcatでは目的の文献がどこの大学図書館に所蔵されいるのか調べることができる。他大学の図書館を利用するには紹介状などが必要な場合もあるので、図書館のレファレンスに相談してみるといい。

 以上が、ごく大雑把ではあるが、著作権法を中心とした文献を紹介してきた。文献や資料集めはどちらかと言うと体力勝負なところでもある。いくつか資料が集まったところで、読み、いざまとめようとすると、これもまたこれで非常に難しい作業である。自身も資料の読み方やまとめ方についてはまだまだ勉強が足らないし、人にお披露目できるようなノウハウは持っていない。ただ、いくつか参考になるものを紹介すると広中俊雄=五十嵐清編『法律論文の考え方・書き方』(有斐閣、1983)や大村敦志ほか『民法研究ハンドブック』(有斐閣、2000)がある。特に、『ハンドブック』は、論文の構成や資料の読み方まで、具体的に丁寧な説明があり本格的な勉強をしたいと思う人には是非一度読むことを勧めたい。

 

(2001年11月1日更新)

 

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