CBS Songs Ltd and others v.

Amstrad Consumer Plc and another〔1988〕All E.R.484

※貴族院の判決なので5人の裁判官が担当しているが、テンプル裁判官以外の4人はテンプル裁判官の意見に賛成しているので、ここではテンプル裁判官の意見について全訳を掲載する。

 

〔テンプル裁判官の意見〕 思うに、過去半世紀の間に、送信機、受信機、音楽や信号の録音、再製に関する科学や技術において、継続的に進歩している。これらの発展は戦争、スパイ活動、安全やコミュニケーションといった重大な目的の為に必要であった。その重大な目的の為に、得た発展の利益はレジャーや娯楽の目的で活用されている。そして、二つの繁栄した産業、つまり、電子機器産業とエンターテイメント産業を大量に生じさせた。電子機器産業は、それぞれの公衆が、その家庭内において、音楽や信号を受信し、発信し、録音し、再製することができる洗練された機器を製造販売している。エンターテイメント産業は莫大なスケールで、エンターテイメントを発信し、記録している。いずれの産業ももう一方に依存している。公衆のエンターテイメントに対する需要がなければ、電子機器産業はその機器を公衆に売る事は出来ないであろう。電子機器産業によって提供される設備がなければ、エンターテイメント産業はエンターテイメントを家庭に届けることは出来ないであろう、さらに、例えば、放送を20世紀の不協和音いっぱいにしたオーケストラを支えることや曲がなければ、歌を歌うがなければ、グループの録音物から満足のいく利益を生むことはなかったであろう。2つの産業は、互いに依存し、相互の満足に向かって繁栄しているけれども、その利益が衝突する場合がある。それは、電子機器産業の利益において、顧客にその産業が製造した新しい機器を購入する気にさせる様々な機器を市場に置くことである。それは、エンターテイメント産業の利益において、エンターテイメントを再製する際の独占を維持することである。電子機器産業によって公衆に販売される機器に組み入れられた記録用、再製用の設備はいくらかの公衆によって、エンターテイメント産業の発行した作品を複製するために利用されることになる。そうして、エンターテイメント業界自体のオリジナル作品や録音物への公衆の需要を減少させることになる。電子機器産業は記録を作り、複製することの出来る新しい、改良された機器を発明し、市場に出している。公衆はこれらの機器を利用して、レコード会社の配布したレコードの複製をする。そうして、レコード会社、作曲家、作詞家、その他エンターテイメント産業に従事する者の著作権を侵害する。それゆえ、電子機器産業とエンターテイメント産業との間で、これらの過程から生じた衝突が生まれる。

 この上訴は、レコードのメーカーと録音機器のメーカーとの衝突の最高点である。上告人、ブリティシュ・フォノグラフ社(BPI)はレコードメーカーを代表している。一方、被上告人、アムストラッドコンシューマー社とデクソン社は録音機器の製造者、販売者をそれぞれ代表している。BPIはアムストラッド社が、著作権が存在するレコード複製をするために、いくらかの公衆によって使用される録音機器を製造することは違法であると主張する。それにかわって、BPIはアムストラッド社が複製を促すような方法でその機器を広告してはならないと主張する。アムストラッド社とデクソン社は、精巧さによって工夫されているあらゆる録音機器を合法的に製造し、公衆に販売することが許され、これらの機器の利点を合法的に広告することができると主張する。

 1956年著作権法によれば、

「1.(1)作品に関する『著作権』とは、…この法律の規定に従い効果によって次のような排他的な権利を意味する。…その行為をすること、他人がその行為をするのを正当化すること(その行為とは)…その著作物に関して…この法律の適当な規定に基づいて、その記述した作品の著作権によって制限された行為をすること。

   (2)作品における著作権は、著作権保有者ではなく、それについて保有者のライセンスを得ないで、その著作物について言えるあらゆる行為をなし、または他人がなすことを正当化することによって侵害されるものである…この法律の適切な規定による範囲において…

 2.…(2)オリジナルの文学的、演劇的、音楽的作品が発行され(published)、その際この法律に基づいている場合、著作権はその作品に存する…

    (3)…この節の効果によって作品に存する著作権は著作者の死亡した暦年の最後から50年の期間の最後まで存続し、その時に満了する…。

    (5)文学的、演劇的、音楽的作品における著作権によって制限される行為とは−(a)あらゆる有形的な形式での作品を再製すること…(c)公衆でその作品を実演すること;(d)その作品を放送すること…

 4.(1)…作品の著作者はその作品に存するあらゆる著作権の権利を有する…

 12.(2)著作権は…どの録音物にも…存する…

   (3)録音物に存する著作権は…その録音が発行された暦年の最後から50年の期間の最後まで存続し、その時に満了する…。…録音物の作成者はその録音に存するあらゆる著作権の権利を有する…

   (5)録音物における著作権によって制限される行為とは、録音を具現化するレコードが、それらの行為がなされる際に直接的または間接的に利用されるかを問わず、以下のものを言う。つまり−(a)録音を具現化するレコードを作成すること;(b)その録音を公衆に聞かせ得るようにすること; (c)録音を放送すること…」

 48条による、「『再製』には、…レコードの形態での再製を含む」とし、更に、『レコード』とは、あらゆるディスク、テープ、穴の開けられたロール、その他音が自動的にその形態で(その他の道具を用いようが用いまいが)再製し得るような具現化される器具を意味する。

 そして、歌詞を伴う歌の実演の録音物には、3つまたはそれ以上の別々の著作権がそれぞれ別々に少なくとも50年間の異なった保護期間で含まれる。音楽の著作物に関しては作曲家に著作権が、文学の著作物に関しては歌詞家に著作権が、録音物に関してはレコード会社に著作権がある。ベートーベンやバッハやその他50年以上前に死亡した著作権保有者の場合、音楽作品の著作権はもはや存在しない。50年以上前に発行された、録音物の場合、録音物の著作権はもはや存在しない。しかし、あらゆる、歌詞を伴う歌の録音物のテープやその他のコピーには記録された作品や録音物において存在する著作権の侵害をする。

 BPIは音楽や文学の作品、録音物における様々な著作権保有者を代表している。録音物をテープ上に複製することを可能にさせる機器をアムストラッド社は製造を、デクソン社は販売をしている。アムストラッド社の機器の購入者は録音物を複製する目的で機器を利用し、記録された適当な作品や録音物における著作権のほとんど全てを侵害する。

 BPIに関する大まかに言って2つのタイプの侵害者がいる。一つは、たくさんの録音物の複製物を販売する目的で作る「海賊版」である。海賊版は通常、アムストラッド社が公衆に販売する機器を使わず、ローコストで侵害複製物を大量生産することが出来る異なった機材を用いる。侵害複製物は、多大な費用をかけて製造されたオリジナルの録音物と競合して売られることになる。多少困難であるが、我が国においては著しい効果で、BPIやその他の著作権保有者は売買に申し出される侵害複製物を見つけ、アントンピラー命令の手段によって海賊版を認識し、そして差止命令、没収、損害賠償の救済手段を得ることが出来る。

 二つ目のタイプの侵害者は「家庭内複製者」であり、いわゆるアムストラッドや録音物を複製が可能であるその他の機器を使用して、わずか1ポンド程度の支出をもって、5ポンドから10ポンドの価格であるオリジナルの記録を空テープ上に複製することが出来るいくらかの公衆である。家庭内複製者は、私的な独自の使用目的のために複製物を作成する。したがって、販売のために侵害複製物を作成する海賊版とは区別され得るべきものである。家庭内複製者の侵害行為は、ほとんど見つけることが不可能であり、一人の複製者への侵害行為に対する成功した訴えても、わずかに抑止する効果があるだろう。1984年の録音物の売れ行きは、4,000万に見積もられ、空テープの売り上げは7,000万またはそこらに見積もられる。空テープは、著作権を侵害しない目的で利用され、おおむねレコードを認められた複製目的で利用される。このように、2つの侵害複製物があるといえよう。

 家庭内複製者は、音楽放送の複製をなすことができるが、それでもなお、放送された作品の著作権を侵害することになる。1956年法の14条では、

 「(1)著作権は以下に存在する…(a)イギリス放送局(BBC)…又はインディペンデントテレビ局(ITA)によって作成されたあらゆるテレビ放送…そして、(b)BBC又はITAによって作成された音楽放送…

(2)…BBCまたはITAは、そのケースにおいて、自ら作成したテレビ放送または 音楽放送において存在する著作権を享有する資格がある。;そしてあらゆる著作権は放送 が制作された暦年の最後から50年間の最終まで存続し、その時に満了する…

(3)テレビ放送または音楽放送のおける著作権によって制限される行為は…(b)音楽放送またはテレビ放送の場合には、音を構成する限りにおいて、私的使用の目的を除き、その音または当該記を具体化するレコードの録音物を作成すること…

(5)テレビ放送または音楽放送に関して…課される制限は問題となった行為が放送の受信によって、またはレコード、プリント、ネガ、テープまたは放送が記録されたその他の物品を利用することによってなされたかどうかに適用される。」

(7)本条(4)項の目的のために、私的目的は除き、以下のあらゆる行為をなすあらゆる者によって、その行為の目的でなされる場合には録音物または録音を具現化しているレコードを利用する−(a)録音物を具現化するあらゆるレコード…あらゆる複製物を販売したり、貸与したりすること(b)その…録音物を…放送すること(c)その…録音物を…公衆に聞かせ得るようにすること…」

 そうして、生放送がされた場合、家庭内録音者は合法的に放送をその独自の「私的目的」のためにテープ上に記録することが許される。しかし、16条(6)項によって、録音物または放送における著作権は記録された音楽的または文学的作品または放送において存在するあらゆる著作権にくわえて、更に独立している。したがって、明らかに、家庭内複製者は、合法的にシューベルトの歌の生放送をテープに記録することができるが、ビートルズの著作権を侵害することなく、合法的にビートルズの歌の生放送をテープに記録することはできない。バッハやウオルトンの作品のライブコンサートを記録している家庭内複製者は、ウオルトンの作品の演奏中はその機器のスイッチを切っておくように注意しなければならない。また明らかに、録音物の正当な放送を、録音物における著作権および記録された作品において存在するあらゆる著作権を侵害しないで、家庭内複製者がテープ上に記録することはできない。

 1956年法の17条(1)項により、

 「著作権の侵害行為は著作権保有者の告訴において、起訴できる。:このような侵害行為に対してのあらゆる訴訟において、損害賠償、差止命令、勘定(account)その他のこのような全ての救済を原告は、その他財産権侵害に関して該当する手続きにおいて利用可能なのと同様に、可能である。」

 17条(3)項によって、裁判所が効果的な救済が原告にとって可能ではないと認められ、示された利益が侵害行為による被告に生じれば、裁判所は、侵害行為の悪名に十分な考慮に加えて考え、付加的な損害賠償を与えることが許される。

 18条(1)項により、

 「…彼が、あらゆる侵害複製物または侵害複製物を作成するために使用あるいは使用の意図を有するプレートの所有者による横領または留置に関して、当該複製またはプレートの所有者でありかつそれについて作成された時点からそれについての所有者である場合に、資格が与えられるのと同様に、あらゆる著作権保有者は、あらゆる者によるあらゆる侵害複製物の横領または留置に関してまたは、侵害複製物を作成するために使用ないしその意図のあるあらゆるプレートの関して、全ての権利及び救済を与える。…」

 21条は、罰金及び拘留により処罰されるべき特定の著作権違反を創出している。これらの違反は海賊版および売却、貸与または貿易の手段によって、侵害複製物を他人が扱うことに関わるものである。しかし、BPIはこの手続きにおいて、あらゆる家庭内複製者は以下のような21条(3)項に基づく刑事違反を犯していると主張する。

 「作品に著作権が存在する時点で、その作品の侵害複製物を作成するために使用されることを知りながら、プレートを作成または現に所有する者は本条に基づく違反ついて有罪である。」

 18条(3)項による「『プレート』にはあらゆるステロ版、石盤、ブロック、鋳型、マトリックス、転写画、ネガ,その他の器具を含む」とされる。

 その主張によれば、家庭内複製者が侵害複製物を作成するためにレコードを使用する意図で、レコードを借りてきた場合、借りられたレコードが「プレート」ということになる。私は、レコードがプレートになり得ることは是認できず、家庭内複製者が刑事違反を犯しているとは同意できない。1958年から1972年の実演家保護法によって、情を知って実演家の書面に寄る同意がなく、文学的、演劇的、音楽的または美術的作品の実演を記録することは違反となる。しかし、その記録が私的かつ家庭内での使用のみの為に作成されたことの証明は抗弁となる。

 1956年法の17条に基づきその効果によって、家庭内複製者は民事訴訟において、侵害に対し損害賠償を支払う責任があり、さらなる侵害に対しては差止命令によって抑えられ、その違法なコピーは著作権保有者によって没収される。少なくとも数十年の間、家庭内複製者を含めたいくらかの公衆は、製造者や小売商人からコンパクトコンソールに収容された再生・録音の機器を買うことが可能となっている。再生機能は、ハイファイスピーカーによって高められ、音楽放送やターンテーブルに取り付けられたディスクからレコードの再生やカセットに収められたりコンソールに組み込まれたカセットディスクに付けられた録音されたテープからレコードの再生にまで広がっている。録音機能には、あらゆる音楽放送、ディスクレコードやテープに録音されたレコードを空テープ上に、カセットディスクにくっついたカセットに収められ、録音する能力を含む。これらの録音機能は、合法目的にも違法目的にも使用される。生放送は聞くことが許され、家庭内複製者によって独自の使用目的のためにコンソールを使うことによって記録したり複製したりすることが許される。生レコーディングは合法的に空テープ上にすることができ、録音者の許諾を持って複製することが許される。著作権が存しないレコードは複製が許される。しかし、著作権を侵害して商業用レコードや商業用テープを空テープ上に複製するために使用されつつあるコンソールの録音機能を妨げるものはない。統計的に明らかなのは、全てではないがほとんどのコンソールが著作権を侵害して家庭内複製の目的で使用されているということだ。

 これらのモデルによって提供される機能を改良するためにコンソールの製造者間には競争がある。およそ1982年アイワ社は、録音されたテープが4倍で空テープ上に複製するスピードを高速化することによって自社の製品の録音機能を改良した。アムストラッド社、サンヨー社、フィリップス社、シャープ社を含む他の製造業者は2倍でテープからテープへの録音スピードを高速化した。BPIはアイワ社に対し、その唯一のハイスピードを他の製造業者の提供するスピードに落とすように申し入れた。アムストラッド社は、その際、BPIを偽善で陰険な広告形態によって刺激した。アムストラッド社モデルは広告によると以下のようである。

「リモートコントロールはハイファイシステムを操作し(スピーカーを装備)…ハイスピードのダブリング機能のついた2つ機能的なカセット機器、BSRベルトドライブ、ターンテーブル、ステレオアンプ…チューナー部分からなる。このすばらしい一画面(flush-look)システムは内部にそれぞれの棚につなぎ、きちんと調和します。曇りガラス扉やホコリ防止のためのふたや機動性のためのキャスターがいっしょについてきます。」

 そのモデルには明白なスピーチで説明がなされているように、そのモデルによって、購入者は放送送信を受信し、ディスクの記録を再生し、テープに録音された記録を再生することができる。さらに、空テープに放送、ディスクの記録、テープに録音された記録を記録することができる。その広告によれば以下のように、そのモデルを自慢している。

 「今、あなたは、あらゆるソースから直接に録音し、一つのカセットから別のカセットへ二重録音を可能にするコピーを作成できるハイスピードダブリングをフューチャーしています。そして、あなたのお好きなカセットのコピーを作成することもできます」

 テープ上の記録は再生の二倍のスピードで空テープに複製することができる。星印によって次のようなフットノートに注意を引いていた。

「特定の素材の録音やプレーバックは許諾によってのみ可能となります。どうか、1956年法著作権法、1958年、1972年実演家保護法を参照してください。」

 二倍のプレーバックスピードでツインカセットを組み合わせられ、アムストラッド社により広告され、デクソン社によって販売されていたコンソールは、モデルSM104、TS87、TS39であったBPIはアムストラッド社が以下のように断言していると述べている。

 「ダブルヘッド複製機能を提供するあらゆる機器を公衆に販売することによって、著作権のある録音物や音楽的作品を含む予めの記録やその他カセットの複製を助長したり、扇動したり、その他容易にしている。」

 また、BPIは、アムストラッド社の広告はテレビで放映され、「法を破るように助長するもの」だと断言する。何度かの対応の後、アムストラッド社は訴訟手続きに参加し、1984年2月2日の請求の原因及び趣旨によって、広告及び販売のためその機器の提供によって、それは違法に行為をしていない旨の宣言を求めた。CBSソング社は自らの利益およびメカニカリーライツソサエティー社およびEMIレコード社およびクライセイラレコード社の利益の為に告訴し、自らの利益およびBPIのその他のメンバーの利益の為に告訴をし、また令状を発行し、1984年11月16日付けの修正した請求の原因及び趣旨によって、アムストラッド社やディクソン社に以下のように請求した。

「被告が、原告やBPIのメンバーやメカニカルライツソサエティー社が保有ないし独占的ライセンスをされている録音物や音楽的作品における著作権が当該機器の使用によって侵害されないと確信するため、相当合理的であるように、用心を採らずに、モデルSM104、TS87、TS57のカセット再製機器(またはあらゆるこのような機器)の所有を譲り渡すことを制限する差止命令」

 原告は代表する能力を持って告訴しているので、上告人はこの判決の中では「BPI」として参照する。

 また、BPIは損害および利益の算定に関する調査を請求している。対話尋問(interlocutory proceeding)過程において、ウイットフォード裁判官はアムストラッド社に、アムストラッド社の異議を唱えられたモデルを購入した顧客から返却された全ての保証書を提示するよう命じた。アムストラッド社は、25,000枚の保証書を提示した。BPIはさらなる調査のため1,600枚を選び、結局、3人の代表する証人を呼んだ。一人目はアムストラッド社の広告を見ておらず、二人目は広告を見る以前に家庭内複製は違法であることを知っており、三人目は広告を見ていたが家庭内複製は違法であることもを知っていた。

 1985年6月17日に、ウイットフォード裁判官は、その行為は合法的である旨の宣言を請求するアムストラッド社の訴えを棄却した。裁判官によれば、アムストラッド社は侵害行為を正当化し、共同不法行為者であり、過失による不法行為に違反し、法律又はエクイティーに反する侵害行為を扇動し、周旋し、幇助し、教唆した罪があるとしている。控訴院は意見が一致しなかったが、1985年10月29日にアムストラッド社の広告は、家庭内複製者の対して1956年著作権法§21(3)に基づく刑事罰違反をなすように扇動するものであるとして、アムストラッド社の利益となる宣言をなすことを拒絶した。1986年5月8日ウイットフォード裁判官は、請求の原因及び趣旨が訴訟原因を明らかにしていないとして、アムストラッド社によるBPIの差止及び損害賠償を求めた訴えを棄却する旨の呼出状(summons)を審理し、棄却した。1987年2月25日控訴院は、BPIの訴えを棄却した。今、BPIは本院(貴族院)に上告し、要約すると、いずれの訴えにおけるウイットフォード裁判官の決定は、覆されるべきだと主張した。議論の過程において、BPI側の訴訟代理人は、BPIからの依頼に基づいて訴訟をし、BPIの求める救済を拡大した。BPIはアムストラッド社が複製機能を有する機器の販売をしないとの差止命令を求めている。その救済は、全ての製造業者に対して可能であるならば、家庭内複製を除くような唯一の救済形態てして見られるであろう。他の手段として、BPIはアムストラッド社がハイスピードな複製機能を有する機器を販売しないとの差止命令を求めている。これによって、家庭内複製が減少するであろう。製造や販売を制限する差止命令が適切なものとして考えられない場合には、BPIは、アムストラッド社が二倍速のテープ録音を使用しないようにし、アムストラッド社に著作物の複製は違法である旨の購入者への注意書きを義務付けることを強制する命令を求めている。これによって、家庭内複製について実質的な減少に影響を及ぼすかどうかは疑わしい。思うに、1956年法によってBPに与えられた唯一適切な権利はBPIのレコードを再製したり、他人が再製することを正当化する排他的な権利である。そして、法律によってBPIに与えられる唯一適切な救済手段は、BPIのレコードを再製したり、他人が再製することを正当化する者による、侵害行為を禁止する差止命令による救済手段である。法律には、合法的にも非合法的にも再製することを可能にする電子機器の開発、製造、販売または宣伝すること禁じるものは明示的にも暗示的にもない。

 BPIの最初の提出では、アムストラッド社が侵害行為を「正当化(authorized)」し、アムストラッド社は、著作権が存するレコードの侵害再製物を作成する目的でアムストラッド社の機器を使用したあらゆる者とともに共同不法行為者であるとする。

 1956年法第1条(1)によれば、レコードにおける著作権保有者には、「他人がそのレコードを複製するのを正当化する排他的な権利が与えられる。BPIは2倍速ツインテープレコーダーを組み込んだモデルを販売することによって、アムストラッド社はそのモデルの購入者が著作権が存するレコードを複製することを「正当化」し、したがって、アムストラッド社は著作権保有者の排他的権利を侵害すると提示している。思うに、ツインテープレコーダー、早いものでも遅いものであっても、やシングルレコーダーが録音再生機能に付加され、それによって空テープ上に、直接ないし間接的に、放送、レコードの記録、テープの記録である記録を複製することが可能である。空テープは記録用にも複製用にも利用することが可能である。複製は合法にも違法にもなり得る。あらゆるテープレコーダーによって、空テープの取得した操作者には、複製する機能が与えられる。また、2倍速ツインテープレコーダーによって、連続再生や連続記録のためおよび複製のために現代的で能率的な機能が提供される。製造業者も機器も購入者に違法な複製をすることを正当化するものではない。購入者またはその他のレコーダーの操作者は複製をするか否か、何を複製するか否かを決定する。レコーダーを販売することによって、アムストラッド社は著作権に違反する複製を助長することになるかもしれないが、正当化するものではない。

 BPIの次の提出では、アムストラッド社は広告によって、アムストラッド社のモデルの購入者が著作権の存するレコードを複製することを正当化しているとする。アムストラッド社の広告はそのモデルの利点およびそのモデルに組み込まれたレコーダーが現代的なレコードを複製する際に利用され得るという事実に注意を向けている。しかし、広告は違法なレコードの複製を正当化するものではない。それどころか、フットノートは何らかの複製には許諾が必要であることが警告してあり、アムストラッド社が許諾を与える正当な権限を有していないことは明らかである。アムストラッド社が著作権保有者の利益を考慮していれば、アムストラッド社はアムストラッド社のモデルに2倍速ツインデスクレコーダーを組み込むことを自粛したり、家庭内複製の違法性を広告していただろう。アムストラッド社が改良した録音機能を提供する利点を除いていたら、他の製造業者は利益を獲得していたであろう。家庭内複製の範囲での2倍速ツインデスクレコーダーの効果は、全く不確かである。アムストラッド社が家庭内複製の違法性を広告していたならば、その効果は最小限であったろう。アムストラッド社の広告は皮肉なものである。なぜならば、アムストラッド社は法を破るために利用され得る設備の能力を増加させる広告をしているからである。しかし、アムストラッド社の録音設備の利用者は、その他の全ての利用者と同様に、独断で録音か再生か、何の素材を記録しようか決定することができる。アムストラッド社の広告は厳しい批判を受けやすいが、アムストラッド社モデルの購入者は、モデルに組み込まれた設備またはアムストラッド社がレコードを複製するのに必要とされる許諾を与える正当な権限を有している若しくは有していると主張するアムストラッド社の広告から合理的に推論しないであろう。

 Mockton v. Pathe Freres Pathephone Ltd.事件において、バクリー控訴院裁判官によれば、「私の考えでは、レコードの販売者は、レコードの使用を正当化している。そして、そのような使用は音楽作品の再生(performance)であろう。」その事件において、レコードを使用することによる音楽作品の演奏は、確実に侵害使用であり、そのレコードはその目的の為に販売されていた。Evans v. E Hulton&Co Ltd.事件において、トムリン裁判官によれば、

「ある者が原稿に関する権利を他人にその製本する目的で他人に販売し、実際に製本した場合には、英語および常識の両方によって、彼にこの者が出版および発行を『正当化している』と要求した」

 販売、すなわち発行の目的は確実に侵害することになる。Falcon v. Famous Players Film Co事件において、被告は原告の劇に基づくフィルムを映画館に賃貸していた。被告は1911年著作権法によって与えられる劇の上映を正当化する原告の排他的権利を侵害すると判示した。またさらに、賃借人は侵害使用を唯一可能にする使用を販売していた。バンケス控訴院裁判官はMockton v. Pathe Freres Pathephone Ltd.事件やMockton v. Pathe Freres Pathephone Ltd.事件に従って、1911年法の目的のために、「正当化する」の語句は「認可(sanction)、是認(approve)および賛成(countenance)」意味すると理解した。アトキン控訴院裁判官によれば、

「『正当化』するとは、その意図が譲受人が自らの利益のためにもしくは譲渡人の利益のみのためにするものであるかを問わず、第三者に訴えられた行為をなす権利を与える又は与えると主張すること意味する。」

 本件では、アムストラッド社はそのモデルの使用を認可も、是認も、賛成もしておらず、著作権法のコンテクストにおいて、正当化が、明示的であれ黙示的であれ、訴えられた行為をする権利を与えることないし与え得ることを意味するという本件では、アトキン控訴院裁判官およびロウトン控訴院裁判官に私は恭しく賛成する。アムストラッド社は、購入者に複製する能力を与えているが、複製する権利をあたえたり、与え得ると主張していない。

 Moorhouse v. University of New South Wales事件での、オーストラリア高等院(the High Court)では、図書館の設備には写真複写機が含まれている場合において、ギブス裁判官によれば、

 「そのコントロールの下で、著作権侵害をすることになる手段−写真複写機のように−を有し、侵害行為をする目的で使用されようと知っているないし疑うに正当な理由を有し、かつ適法な目的に制限する合理的な手筈を採ること省略して、他人に利用可能にする者は、その使用から生ずるあらゆる侵害行為を正当化している。」

 この陳述について何と言おうと、アムストラッド社は、いったんそのモデルが販売されると、そのモデルの使用にコントロールは及ばない。我が国において、いくらかの図書館の義務が、1956年法§15に基づいて作られた、1957年著作権(図書館関連)規則(SI1957/868)により、定義されている。

 CBS Inc. v. Ames Records and Tapes Ltd事件において、ウイットフォード裁判は、レコードを貸出し、同時に空テープを割り引き価格で販売しているレコード図書館はレコードにおける著作権の侵害行為を正当化するものではないと判示している。彼によれば、

「思うに、通常な人間であるならば、authorizationは、authorityを有しまたは有すると称する者からのみ生じ、他人がその行為をなすこと単に可能にしたり、助力し得たり、助長さえもしているが、彼が与えることによってその行為を合法化authorityを有していない者によって、その行為は正当化されないと思うであろう。」

 これはまさにアムストラッド社を表現している。

 RCA Corp. v. John Fairfax & Sons Ltd.事件での、ニューサウスウエールズ最高裁において、ケアルニ−裁判官はLaddie Prescott&Vitoriaによる”the Modern law of Copyright”における以下の文章の一節を是認した。

「ある者が侵害の時点で他人に何らかの態様でコントロールを及ぼす場合には、他人が侵害行為をなすのに正当化しているといいうる。またはこのようなコントロールがない場合でも、他人の手においてその性質上侵害の目的のために使用されることがほぼ必然的である道具の設置について責任がある。」

 この提案は、私としても、幅広く言い得るように見える。

 ウイットフォード裁判官が、CBS Inc. v.Ames Record and Tapes Ltd.事件における指摘によれば、

「確かに、買ったレコードや借りてきたレコードから、友人や公共図書館で借りてきたレコードから、ラジオで再生されるものから、また、実際に費用をかけず、視聴期間に新製品奉仕価格で、新聞誌上で宣伝し、3、4枚のレコードを一定の視聴期間、無料で貸し出しているレコードクラブから得たレコードから、誰しもが家庭内録音ができる」

 これらの借りてきたレコードがすべての録音機器や空テープと共に、「その性質上侵害の目的のために使用されることがほぼ必然的である道具」にあたると言い得る。しかし、貸与者および販売者は侵害となる使用を正当化するものではない。

 このような理由は、控訴院判決において見られるように、アムストラッド社が侵害行為を正当化しているとは言えない。

 BPIは続いて、アムストラッド社は共同侵害者であり、つまり、購入者が著作権の存するレコードを複製すると決定し、すぐさま共同侵害者となる、いわば、アムストラッド社はアムストラッドモデルの直接の購入者と共に共同侵害者となるばかりでなく、将来あらゆる時点で、そのモデルをレコードの複製するために使用するその他あらゆる者と共に共同侵害者となる、と提示する。思うに、アムストラッド社は放送、ディスクレコードおよびテープレコードを受信し録音する機能を含むモデルを販売していた。これらの機能全ては合法ではあるが、録音機器は違法目的に使用されうるものである。いったん、そのモデルが販売されると、アムストラッド社はその使用にコントロールを及ぼしたり、利害関係を有しない。このような状況では、アムストラッド社が共同侵害者であるとの主張は、支持できない。Townsend v. Haworth事件において、被告は特許権侵害となる状態で購入者により使用される薬品を販売し、その特許権が有効である証明されれば、購入者に補償するものと応じていた。メリッシュ裁判官によれば、

「特許権を侵害する目的のためにその侵害使用とする者に道具を販売することは、たとえそれを販売した当事者は購入者が特許権を侵害し、購入者に補償すると知っているけれども、それ自体は販売している者が損害者とならない。販売者はそのような侵害をする者と共に当事者であり、実際の侵害をしているとならなければならない。」

 BPIの訴訟代理人はInnes v. Short and Beal事件における判決をよりどころにしている。そのケースでは、被告Shortは粉上の亜鉛を販売し、購入者が方法特許を侵害可能にする使用説明を与えていた。ビングハム裁判官によれば、

「なぜShort氏が粉状の亜鉛を販売するのかどうかの理由は定かでない。しかも、彼は彼からそれを購入した人々がInnes氏の特許権を侵害することになるような方法で粉状の亜鉛を使用するつもりであることを知っているまたは予期しているけれども、彼は正しくないわけではない。しかし、彼はそういった人々にそのような方法で使用するように要求してはならず、しかも、彼から粉状の亜鉛を購入させるためにそのような方法で使用するように要求してはならない。」

 この判決が正しいと仮定しても、BPIを補助するようなことにはならない。なぜなら、今回のケースでは、アムストラッド社は、あらゆる人を侵害行為となるような方法でアムストラッド社のモデルを使用させようと誘うものではないからである。

 Dunlop Pneumatic Tyre Co Ltd. v. David Moseley & Sons Ltd事件において、被告人はタイヤおよびリムについての結合特許について基本的な特徴となるタイヤカバーを販売していた。そのタイヤカバーは特許に示された態様で使用するために改造されているが、必ずしもそのような態様のみで使用のためだけではない。スインフェン・イーディー裁判官は、おそらくそのようなカバーのほとんどは究極的には、特許を受けた方法の一部またはその他の部分を構成するものであるが、「これらの結合物は、カバーをあわされた目的を使い果たし、その他のタイヤに関してその他の目的のために、役立つものである…」としてる。

 スインフェン・イーディー裁判官は、控訴院によって支持され、被告は侵害をしていないと判決した。

 The Koursk 事件において、二つの船の航海者が二つ別々の不法行為またはいずれについても不法行為者であるうち一つについての不法行為をなしたかどうか問題となる場合に、スクルトン控訴院裁判官はClerk and Lindsell on Tortsにおける以下の趣旨の一節を採用した。

「不法行為をなすについてそれぞれの役割が共通の構想(a common design)の助長する態様でなされる場合に、ある者が共同不法行為者と言いうる。」

 今回のケースでは、アムストラッド社とその他の著作権の侵害をなす者の間で共通の構想がない。

 Rotocrop International Ltd. v. Genbourne Ltd事件において、グラハム裁判官は、おそらく驚くかもしれないが、取り外し可能なパネルのついた堆肥貯蔵箱に関する特許に新しいものがあり、あまり驚くことではないが、部品説明の一部に侵害貯蔵箱を作成し、販売していたライバルの製造業者はその顧客と共同不法行為者であると判示した。そのケースでは、 Innes v. Short and Beal事件と同様に、売る人と購入者とには侵害行為を実行する共通の構想を有していた。

 Belegging- en Exploitatiemaatschappij Lavender BV v. Written Industrial Diamonds Ltd. 事件において、被告は原告が特許権を有する粉にする機械の一部として合成樹脂の中にはめ込むための粉にする機械を単に作成する目的のためにダイアモンドの粉末を販売していたとされる。バックリー控訴院裁判官は、被告は侵害者とはなり得ないとした、正し以下の状況は除かれるとした。

 「(被告が、)ホイールを粉々にする合成樹脂の中にあとの化合物に(顧客を)参加させる方法で、またはだれかれとそれに組み入れるような状況で販売する場合」

 思うに、共同侵害者とは2人それ以上の者が侵害行為の際に共通の構想に従ってお互いに関連した行為をなすことである。今回のケースでは、共通の構想がない。アムストラッド社は機器を販売し、購入者または機器の操作者は時々によってその機器の使用目的を決定する。その機器は合法目的にも違法目的にも使用されることが可能である。全ての録音機器およびその他多くの機器は違法目的のために使用されることが可能であるが、製造業者および小売業者は、購入者が法を破ることを選択した場合にも、共同侵害者とはならない。アムストラッド社は他の人々が著作権の存する録音物を具体化するレコードを作成させようとか、正当化するものではないので、アムストラッド社は1956年法によって著作権保有者に与えられる排他的な権利を侵害するものではなく、アムストラッド社は法によって課せられた義務に違反するものではない。

 しかし、BPIは、もし1956年法にそれらの保護に欠けるところがあれば、コモンローの保護を与えられる資格があると提示する。この提示の根拠として、BPIは法によって与えられた権利のクオリティーを高めることを求めている。BPIは、法律の第17条(1)において、侵害に対する訴えにおいて著作権保有者は、その他の財産権の侵害に関してあらゆる該当する手続きにおいて利用可能なもの同様の救済を与えられる資格があり、著作権は知的財産権の例であり、Macmillan & Co Ltd v. K&J Cooper事件においてアトキン裁判官が著作権侵害者が「汝盗むなかれ」という差止め命令に従わないといっていることを指摘する。思うに、これらの考慮することによって、著作権保有者の権利を高めたり、侵害行為の範囲を拡張するものではない。BPIの権利は成文法から由来するものであり、モーセの十戒から由来するものではない。これらの権利は国会によって明示されるものであり、牧師らや裁判官らによって明示されるものではない。1956年法によって与えられるBPIの権利は決して、その他のあらゆる法的権利より上位にも下位にもなるものではない。BPIが法律の真の構造においてアムストラッド社とデクソン社が法律によってBPIに与えられる権利を侵害することを証明できれば、裁判所は適切で効果的な救済および救済手段を与えるであろう。しかし、裁判所は付加的な権利を考え出し、新しい義務を課することはないであろう。

 BPIのために、たとえアムストラッド社が侵害行為を正当化せず、自身侵害者とならないにしても、それでもなお、アムストラッド社モデルの販売および広告におけるアムストラッド社の活動はコモンロー上の不法行為を構成すると提示する。提示された不法行為は総数で3つある。すなわち、不法行為をなすように扇動すること、刑事違反をなすように扇動することおよび過失による不法行為である。

 BPIはその陳述をLumley v. Gye事件におけるアール裁判官の述べるところの一節をよりどころとする。

「明らかに、権利侵害のあっせんは、物的、人的に関わらず財産権に対する、または人身の安全に対する権利侵害として、侵害が訴訟となり得る権利侵害となる全ての例において、訴訟原因となる。権利侵害をあっせんする者は共同加害者であり、訴えられた権利侵害に対し適切な訴訟において、単独または代行者とともに、告訴されることが認められる。」

 Lumley v. Gye事件において、オペラ歌手と被告の劇場オーナーは共同加害者であった。彼らはオペラ歌手が原告の劇場オーナーとの契約を破り、原告の劇場で歌うことを拒否し、代わりに被告の劇場で歌うとの共通の構想を有していた。原告のオペラ歌手に対する訴訟原因は契約にあり、原告の被告に対する訴訟原因は不法行為にある。しかし、オペラ歌手および被告いずれも違法な共通の構想に参画している共同加害者であった。

 BPIはBelegging- en Exploitatiemaatschappij Lavender BV v. Written Industrial Diamonds Ltd. 事件を参照し、そこでバクリー控訴院裁判官が言うように、

「原告らは被告による侵害行為を主張しているだけではない。原告らは被告らは他人が侵害行為をなすのをあっせんしたり、勧めたり、しか/または幇助しているとも言っている。これはおそらく、被告人ら自体による間接侵害の主張ということになろう、しかし私は他人による侵害行為をあっせんする別の提示された不法行為に関する請求であると考えている。(Lumley v. Gye事件におけるアール裁判官によって明言されている原則に基づいて)…」

 思うに、著作権違反をあっせんしている被告は侵害行為の結果として原告が被った損害について侵害者と共同して可分な責任を負うことは認める。被告が共同侵害者である。すなわち、侵害行為が起こりうるとの共通の構想を意図し、あっせんし、共有することである。被告は誘因、扇動または説得によって侵害行為をあっせんしていると認められるかもしれない。しかし、今回のケースでは、アムストラッド社は合法的な複製または違法的な複製のために使用される機器を販売していることによって侵害行為をあっせんしてるとは言えず、更に違法に複製を決定するであろうあらゆる購入者にその機器の魅力を広告することによって、侵害行為をあっせんしているとは言えない。アムストラッド社はあっせんすることとは関係がなく、違法な複製をあっせんすることも出来ない。購入者はアムストラッド社によって、誘引され、扇動され、説得されて違法な複製をするからと言って、違法な複製をしないであろう。購入者は違法な複製を選択するから、自らの意思で違法な複製をなすであろう。アムストラッド社の広告によって購入者はアムストラッド社の機器を買うように促されるであろうが、購入者の後者の決定に影響を及ぼし著作権を侵害することはないであろう。バクリー控訴院裁判官はBelegging- en Exploitatiemaatschappij Lavender BV v. Written Industrial Diamonds Ltd. 事件において「ある行為をなすのを助長することは明らかにある行為をなすのをあっせんすることとは区別される。」と示している。著作権の侵害行為をふくめ、合法目的にも違法目的にも使用される機器を公衆一般に販売および宣伝することは、その後にその機器を使用する公衆の一部らによって、著作権侵害を「あっせんする」とは言えないのである。概して、侵害行為への誘因、扇動、または説得は被告によって個々の侵害者に対しなされるべきであり、被告が共同侵害者として責任があるとするためには、個々の侵害行為について同一であると認識できるあっせんでなければならない。

 次にBPIによって示された不法行為は、刑事違反をなすように扇動したというものである。Invicta Plastics Ltd v. Clare事件において、被告会社は警察によるレーダースピードトラップに警戒をあたえる装置を製造、販売、広告していた。その装置には、必然的に決して与えられることのない許可なしに無線通信用を違法に使用されることが含まれる。被告は扇動したものと判決された。今回のケースでは、アムストラッド社はその機器の販売および広告により購入者が刑事違反を犯すように扇動する不法行為をなしたものと提示している。1956年法第21条(3)によって、「プレート」を侵害複製物を作成する目的で使用されることを知りなが、所持するあらゆる者は違反となるとしている。第18条(3)によって、「プレート」にはステロ版、石盤、ブロック、鋳型、マトリックス、転写画、ネガ,その他の器具を含むとしている。アムストラッド社モデルを購入した者は著作権のそんするレコードを所持し、レコードは「プレート」にあたり、購入者はそのレコードを複製する意図を形成するとすぐさま、第21条(3)に基づく違反を犯すことになると言う。

 この提示には2つの回答がある。一つは、解釈の問題として、レコードはプレートではなく、レコードが由来しプレートにあたるマスターレコーディングの製造物である。二つには、犯罪と不法行為を比較するのは誤りである。ある3人が4人目の者によって扇動されてある家に侵入し、損害を及ぼしたとすると、いずれの者も犯罪について有罪であり、それぞれ別々の刑罰を受けるであろう。扇動者は犯罪をなすように他者を扇動した刑事違反で有罪となろう。その他3人は侵入したことにつき有罪となるであろう。その時民事訴訟において、生じた損害が5000ポンドに達するとされた場合、損害を引き起こした3人は共同して可分な5000ポンドについての責任を有するに過ぎないであろう。扇動者が不法行為をなすことを扇動し、共同不法行為者であるならば、扇動者もまた損害について共同して可分な責任を有するであろう。

 最後に、BPIはアムストラッド社は過失による不法行為をなし、アムストラッド社は全ての著作権保有者に対し著作権を侵害しないようかつ許可しないよう注意する義務を負うものであるか、アムストラッド社はそのモデルの販売またはその広告によって、著作権の侵害行為を助長しないような義務を負うものである、と提示する。思うに、望まれた結果を作り出すのにあつらえの提案を立案するのは、どんなときでも容易である。Anns v. Merton London Borough事件によって、はけ口はびんつぼの中に収めることが出来るので、上流の原告は過失による不法行為を主張する。その弁論では、我々はパリサイ人やサマリア人同様に全ての同胞者であり、予見可能性は今では、あと知恵を反射したものであり、事故の起こりがちな世界においてあらゆる不運のせいで、支払能力のある誰かが損害について責任を負わなければならないことが推定される。Governors of the Peabody Donation Fund v. Sir Lindsay Parkinson & Co. Ltd.事件において、原告はその本人の不幸に関する本についての著作者であったが、結果について責任を有する一部の正当な権限をなすのを求めた。原告は清算して破産した預金管理(deposit-taking)会社に投資することを選択したYuen Kun-yeu v.A-G of Hong Kong事件では、原告は預金管理会社を登録する公の義務に関し責任がある委任者からの預金を償うように求めた。Rowling v. Takaro Porperities Ltd.事件において、過失による不法行為に基づく損害賠償の請求が、原告の利益のために公共の利益のために委任された成文上の慎重な判断を誠実になすこと辞退したことに対し王位の使用人に対してなされた。Hill v.Chief Constable of West Yorkshire事件において、警察暴力に対する損害賠償が犯罪の犠牲者の利益のために求められた。今回の訴訟手続きにおいて、過失による不法行為に基づく損害賠償および差止命令が、アムストラッド社が犯しておらず、アムストラッド社が参画していない成文法上の義務に違反するとして、アムストラッド社に対して求められている。BPIの権利は1956年法において見うけられ、その他ではない。その法律の効果およびそれに基づいて、アムストラッド社は著作権を侵害しない義務を負い、著作権の侵害行為を正当化しない義務を負う。それらは侵害行為に対し防止したり、思いとどまらせたり、警告したりする義務を負うものではない。

 BPIが訴え、控訴院は実際にそうであるように法律が不十分な状況にあることに同意した。現在の状況はBPIの観点からすると激怒するものである。なぜなら、もし5000万本の空テープの使用が抑止されれば、おおよそ3000万枚以上のレコードの売上があるであろうと心に抱いているからである。これは、そうはならないかもしれない。家庭内複製者に録音機器や空テープを与えなければ、彼らは、1ヶ月ばかりの間に永久的な思い出させる人に一瞬の魅了を唯一思い出させるポピュラーレコードを必ずしも買おうとも買うわけにいかないであろう。公衆が録音機器や空テープを保持できないとしたら、レコードに対する熱中は下がり、他の熱中するものに取って代わるであろう。しかし、現在の目的のために、著作権を侵害するものも含むレコードの家庭内複製が防止されたり、家庭内複製者に複製に対しライセンス料を直接的ないし間接的に払うことを要求すれば、レコード産業の利益は大幅に増加するであろう。

 社会の観点からすると、現在の状況は嘆かわしい。数百万の法律違反が家庭内複製者によって毎年なされているにちがいない。いくらかの家庭内複製者は広範囲にわたる知名度やレコード、テープ、フィルム上の警告文にも関わらず、法律を知らないでこれを破っている。いくらかの家庭内複製者は見つけられる機会がないだろうと見計らって、法律を破るであろう。いくらかの家庭内複製者はエンターテイメント産業およびレコード産業がすでに望ましくない独占や有り余るほどの支出、贅沢な稼ぎ高、途方もない利益の特色を示し、空テープはレコードの価格を更に増加させるのを唯一抑止するものと考えるかもしれない。たとえ家庭内複製がどのような理由にせよ、違法な複製物からのサージェントペパーズのビートやミゼレレの舞い上がる音は法の永続的な性質や良心の苦痛よりもパワフルである。このような軽蔑されたものとともに扱われる法律は修正するか廃止されるべきである。

 このような流れの中で、裁判所は全てのまたはいくらか選ばれたテープレコーダーの公衆への販売を禁止し、テープレコーダーについての広告を著作権保有者の利益のために裁判所によって検閲することを確実にするように求められている。裁判所にはこのような命令をする力はなく、裁判官には電子機器の製造または広告の中身に歯止めを利かせるかどうか決定する資格は与えられていない。誰も現在の状況に責任はないのである。著作権法は著作権保有者の作品について莫大な市場を創出するが、その権利が侵害される状況を提供する大量生産の技術や発明を予想することも出来なかったし、今対処することも出来ていない。国会ならば、特定のタイプのテープレコーダーの製造や販売を制限を課したり、広告の中に注意書きや警告を規定することも可能であろう。国会はこのような制限や規定が電子産業の発展への是認され得ない妨害を構築し、効果的でないという観点を採るであろう。

 国会ならば、家庭内複製を、まさに音楽放送の複製が明示的に「私的目的」ために正当化されると同様に、合法化することも出来よう。ウイットフォード委員会は1977年3月に報告された著作権および意匠に関する法律について考慮することを決定し(Cmnd6732)、いくつかの重要な注釈や勧告を行った。これらいくつかの注釈や勧告ではレコード産業の不満の種や家庭内複製に対処することの不可能さ、非難の的となる二倍速ツインテープレコーダーまたはその他のタイプのレコーダーを選び出すことの無用さや不公平さを説明した。ウイットフォードレポートには次のパラグラフが含まれる。

「292.テープ録音機器の使用、特に家庭内においては、録音物のみならず音楽その他の作品の幅広い権利侵害をもたらしていることは、一様に認められる…私的に行われる侵害行為を取り締まることについて実質的な問題点は著作権保有者がその権利を行使することが不可能であるということだ。

293.…1940年代および1950年代初頭にテープレコーディングは専門的な分野以外では、ほとんど使用されていなかった一方で、テクノロジーの進歩によって、テープレコーダーは家庭においても学校においてもほぼ標準的な設備となってしまいつつある。

294.〔1975年の調査では〕家庭の45%が録音設備を利用することができ、16歳以上の人の20%が何回か商業用のレコードないしテープから録音するために録音設備を使用している、と示している。〔1972年のサンプル調査では〕録音をしている三分の二が少なくとも時折ラジオから録音し、半分以上が借りてきたレコードを複製した、と示している…

301.1965年のドイツ著作権法では私的使用の1回の複製の録音をなすブランケットライセンスの見返りに、幅広い録音機器からの徴収を課している…

308.設備からの徴収に代わってまたは付加して、空テープからの徴収を課すことの可能性はいくつかの団体によって考慮されている。ほぼ例外なく、不十分なものとして拒否されている。理論上はこのような徴収はもっと正確に録音について実際の慣習をよく考えるべきであるが、より多くの工程が含まれ、設備と比較してテープに価格は小さく、テープは再利用されるとの事実を考慮して歳入はわずかしか生じないであろう。

322.私的録音について、唯一満足のいく解決策は録音設備の販売価格から徴収を導入することであると、我々は見る。私的録音の場合の大きな問題点は、他にこれを克服するようなシステムが見当たらず、取り締まることである。徴収というアプローチがこの困難さを効果的に満足させるであろうと我々は感じる。…」 

 ウイットフォード委員会が報告した1977年以来、空テープからの徴収はさらに好意的な考慮を得ている。著作権を侵害し得る電子機器の大量生産によって引き起こされた問題に固有の困難についての事実において、国会はまだあらゆる活動の指針を決定していない。これらの流れによって国会がレコード会社やその他著作権保有者の不平の種を思い出し、それと同時に国会の注意が家庭内複製が防止され得ず、幅広く実行され、その法律の評判を落としているという事実に向けられれば、有益な目的に奉仕されるだろう。その法律は今有効であるので、BPIの上告を棄却する。

 

 

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