情報社会における著作権および関連権の特定側面についての
ハーモナイゼーションに関する欧州議会および理事会指令2001/29/EU
欧州議会および欧州連合理事会は、
欧州連合を設立する条約を、特にその47条(2)および55条、95条を遵守し、
委員会からの提案を遵守し、
経済および社会委員会の意見を遵守し、
条約251条に規定する手続きに従って、
次のような事由に基づき、
(1)この条約では、域内市場およびその制度の規則を確立し、これによって域内市場における競争が歪められないことを確保する。著作権および関連権についての加盟国の法律を調和することによって、これらの目的を達成する。
(2)欧州理事会は、1994年6月24、25日にコルフ島において会談し、ヨーロッパの情報社会の発展を促進するために、一般的かつ柔軟的な法的枠組みを共同体の段階で、創設する必要性を強調した。これは、とりわけ、新しい製品およびサービスに対する域内市場の存在を求めている。このような効力を有する枠組みを確立する重要な共同体の立法は、すでに適切なものであり、その採択はもう進行中である。著作権および関連権は、新しい製品およびサービスの開発や売買並びにその創作的なコンテンツの創作および利用を保護し奨励しているので、この背景において重要な役割を担う。
(3)この提案されたハーモナイゼーションは、域内市場の4つの自由を実行することに役立つであろうし、法律、特に知的財産権も含めた財産権の基本原理、表現の自由および公共の利益に応じることに関連する。
(4)著作権および関連権について調和した法的枠組みは、法的安定性を増進することに通じ、しかも一方では知的財産権の高い水準での保護を規定することによって、ネットワークインフラストラクチャーを含めた、創作および革新への実質的な投資を促進するであろう。さらには、コンテンツの提供および情報技術、および幅広い産業的、文化的部門、さらに一般的に横断する双方の分野において、ヨーロッパ産業の競争を成長させ、増進させることになろう。これによって雇用を確保し、新しい労働の創出を助長することになろう。
(5)技術の発展によって、創作および製作、利用への衝動を増加させ、多様化させる。知的財産権の保護への新たな概念は必要とされないが、その一方で著作権および関連権について既存の法律は、新たな利用形態のように経済的な実状に十分に対応するため、適合させて補充させるべきである。
(6)共同体段階での調和でなくとも、国内の段階での立法活動が、いくつかの加盟国内で技術的な挑戦に対応するために、すでに始められているので、保護について重大な差異をもたらし、それによって知的財産権を含めたまたは基づいたサービスおよし製品の自由な移動への制約となって、域内市場および立法上の不一致に至った。このような立法上の差異および不安定による影響は、情報社会のさらなる発展と共に、一層重大なものになるだろう。情報社会は、もうすでに知的財産権の国境を越えた利用を大幅に増加させている。この発展はさらに増加し得るだろう。この保護についての重要な法的な差異および不安定によって、著作権および関連権を含む新しい製品およびサービスの経済的な規模を妨げるであろう。
(7)著作権および関連権の保護に対する共同体の法的枠組みは、したがって、域内市場が円滑に機能し得るのに必要な限りにおいて適合させ、補充しなければならない。究極的には、著作権および関連権について国内の規定は加盟国毎にかなり異なっていたり、または域内市場が円滑に機能し、ヨーロッパ中での情報社会の適切な発展を妨げる法的な不安定の原因ともなっているので、適合させるべきであり、さらに技術的発展に対し調和を欠く国内の対応は避けなければならない。同時に、域内市場の機能に不都合な影響を及ぼさない差異については、取り除いたり、防止したりする必要はない。
(8)様々な社会的、慣習的かつ文化的な情報社会の影響によって、製品およびサービスの内容について特別な特徴を考慮することが求められる。
(9)著作権および関連権についてあらゆるハーモナイゼーションは高い水準での保護を必要としなければならない。なぜなら、このような権利は知的創作にとって重要なものだからである。これらの保護によって、著作者、実演家、製作者、消費者、文化産業および一般的な公衆の利益において、創作活動を維持し、発展させることを確保することに役立つ。
(10)著作者または実演家が、その創作的かつ芸術的な作品を存続させようとする場合には、その作品の利用に対して適当な報酬を受け取らなければならない。これは、製作者がその作品に出資するためにも同様でなければならない。レコード、映画またはマルチメディア作品および「オンディマンド」サービスのようなサービスを製作するのに求められる投資は相当なものである。知的財産権を適切に法的に保護することは、そのような報酬の実現性を保障し、しかもこの投資への十分な利益への機会を確保するために必要である。
(11)著作権および関連権を保護するためには、厳格で効果的なシステムが、ヨーロッパの文化的創作および製作が欠くことのできない資源を受け入れることを確保し、しかも独立した尊厳のある芸術における創作者や実演家を擁護する主な方法のひとつである。
(12)著作物および関連権の目的となる物を適切に保護することは、文化的な観点からも、きわめて重要なものである。条約151条では、共同体にその活動の中に文化的な側面を考慮するように求めている。
(13)作品およびその他目的となる物を保護し、権利等について必要な情報を提供する技術的手段への共同した調査、およびヨーロッパ段階での一致した適用が、これらの手段の究極的な目的が法律に規定する原理や保障を実行し得る限りにおいて、必要不可欠である。
(14)この指令では、作品およびその他目的となる物を保護することにより、学問および文化を促進することを求めるべきであって、他方で教育および授業を目的とする公共の利益において除外または制限を認める。
(15)外交会議が、世界知的財産権機関(WIPO)の主催により、1996年12月開かれ、2つの新しい条約「WIPO著作権条約」および「WIPO実演、レコード条約」の採択に至った。そこでは、著作者の保護および実演家、レコード製作者の保護をそれぞれ扱っている。これらの条約は、著作権および関連権への国際的な保護を、とりわけ「デジタル・アジェンダ」に関して著しく更新し、世界規模での著作権侵害行為を取り締まる手段を改善している。共同体および加盟国の大多数は、すでにこの条約に署名し、共同体および加盟国による批准を準備する過程が進行中である。この指令もまた、いくつかの新しい国際的な責務の履行に資するものである。
(16)ネットワーク環境における活動についての責任には、著作権および関連権のみならず、その他の分野、例えば名誉毀損、虚偽広告またはトレードマークの侵害にも関わる。これらの責任は2000年6月8日の域内市場での情報社会サービスにおける一定の法的側面、特に電子商取引におけるヨーロッパ議会および理事会指令2000/31/EC(「電子商取引に関する指令」)において同等に強調されている。そこでは、電子商取引も含めた情報社会サービスに関する様々な法的問題を明らかにし、調和させている。この指令は、電子商取引に関する指令の履行についての期限と同様の期限内に履行されるべきである。なぜなら、電子商取引に関する指令は、この指令の重要な部分と、とりわけ妥当する原理や規定の調和した枠組みを規定しているからである。この指令は、電子商取引に関する指令における責任についての規定を妨げるものではない。
(17)集中管理団体が競争原理に従うこと関する、より高い水準での合理性および透明性を達成することを確保することが、特にデジタル環境から生じる要求に照らし合わせると、必要である。
(18)この指令は、加盟国における広範な集合的な許諾のように、権利の管理に関する取り決めを妨げるものではない。
(19)権利者の著作者人格権は、加盟国の立法や文学的及び美術著作物の保護に関するベルヌ条約、WIPO著作権条約、WIPO実演、レコード条約に従って、行使されるべきである。このような著作者人格権については、この指令の範囲外にとどめる。
(20)この指令は、この分野で現在施行されている指令、特に指令91/250/EEC〔コンピュタプログラムの法的保護に関する理事会指令〕、指令92/100/EEC〔貸与権及び貸出権並びに知的所有権分野における著作権に関連する特定の権利に関する理事会指令〕、指令93/83/EEC〔衛星放送とケーブル再送信に適用される著作権及び著作権に関連する特定の規定の調整に関する理事会指令〕、指令93/98/EEC〔著作権及び特定の関連する権利の保護期間を調和させる理事会指令〕、指令96/9/EC〔データベースの法的保護に関するヨーロッパ議会および理事会指令〕においてすでに規定された原理および規則に基づくものであり、それらの原理および規則を発展させ、情報社会の文脈に置くものである。この指令の規定は、この指令に特別の規定がない限り、これらの指令の規定を妨げるものではない。
(21)この指令は、様々な受益者に関して複製権の及ぶ行為の範囲を定義する。これはこれまでの共同体の総体(the acquis communautaire)に従ってなされる。これらの行為を広範に定義することが、域内市場内での法的安定性を確保するために、求められる。
(22)文化の普及を適切に支援する目的は、権利の厳格な保護を犠牲にすることによってまたは偽造もしくは著作権を侵害する作品を違法な形態で頒布することを容認することによって達成されてはならない。
(23)この指令は、著作者の公衆への伝達権を、より一層調和させる。この権利は、その伝達が生じる場所において現に存するものではなく、公衆へのあらゆる伝達に及ぶ広範な意味において解釈される。この権利は、放送を含め有線もしくは無線手段によって、公衆への作品を送信もしくは再送信するようなあらゆる行為に及ぶ。この権利はその他あらゆる行為には及ばない。
(24)第3条第2項に規定する目的となる物を公衆に利用可能にする権利は、利用可能になる行為が生じる場所において現に存するものではなく、公衆の構成員にその目的となる物を利用可能にする全ての行為に及ぶものと解釈し、その他のあらゆる行為には及ばないものとして解釈する。
(25)ネットワークにおける著作物および関連権によって保護される目的となる物をオンディマンドで送信する行為を保護する性質および水準に関する法的不安定は、共同体段階で調和した保護を規定することによって克服する。この指令によって認められる全ての権利者は、インタラクティブなオンディマンド送信の手段によって著作物またはその他あらゆる目的となる物を公衆に利用可能にする排他的な権利を有することを明らかにする。このようなインタラクティブなオンディマンド送信は、公衆の構成員がおのおのその選択する場所および時間において、その著作物等にアクセスすることが許されるという事情によって、特徴付ける。
(26)商業用レコードからの音楽を含むラジオもしくはテレビ放送によって、それについて不可欠な一部としてオンディマンドサービス内に利用可能にすることに関して、集中的な許諾に関する取り決めが、関係する権利の処理を容易にするために、奨励されるべきである。
(27)伝達を可能または伝達する物理的な設備の単なる提供は、それ自体ではこの指令の意味するところの伝達とはならない。
(28)この指令の下での著作権の保護には、有形物に含まれた作品の頒布を支配する排他的な権利を含む。作品の原作品またはその複製物を、権利者によりまたはその同意をもって、共同体において最初に譲渡することによって、共同体におけるその対象物の再譲渡を支配する権利は消尽する。この権利は、共同体の外において、権利者によりまたは権利者の同意をもって、譲渡された原作品またはその複製物については消尽しない。著作者に対する貸与および貸出権は指令92/100/EECにおいて創設されている。この指令において規定する頒布権は、その指令の第1章に含まれる貸与および貸出権に関する規定を妨げるものではない。
(29)消尽の問題は、サービス、特にオンラインサービスの場合には生じない。これは、また、権利者の同意をもって、ユーザーがそのようなサービスからなる作品またはその他目的となる物の有形的複製物について適用する。したがって、作品または目的となる物についての原作品およびその複製物を貸与および貸出すことが、はじめよりサービスとなっている場合にも、同様に適用される。知的財産権が有形的な媒体、すなわち商品に含まれているCD−ROM、CD−Iとは異なり、あらゆるオンラインサービスは著作権または関連権が規定する場合には、授権に従った行為である。
(30)この指令において規定する権利は移転し、譲渡し、契約による許諾を与えることが許され、著作権および関連権について適当な国内の立法を妨げるものではない。
(31)様々な範疇の権利者と保護の目的となる物の利用者間ばかりでなく、様々な範疇の権利者間の権利および利益の公正な均衡が擁護されなければならない。加盟国によって創設されている権利に対する既存の除外または制限は、新たな電子環境に照らして、再評価をされなければならない。一定の限定された行為に対する除外および制限における既存の差異は、著作物および関連権の域内市場が機能するのに直接的に、消極的効果を有する。このような差異は、作品の国境を越えた利用や国境を横断する活動のさらなる発展からすると、十分によりはっきりと表出するだろう。域内市場が適切に機能することを確保するためには、このような除外および制限は、より調和して定義するべきである。この調和の程度は、域内市場が円滑に機能する効果による。
(32)この指令は、複製権および公衆への伝達権に対する除外および制限について包括的な列挙を規定する。いくつかの除外および制限は、適宜複製権にのみ適用する。この列挙は、加盟国における様々な法文化をそれ相応に考慮し、他方では同時に域内市場を機能させることを確保することを目的とする。加盟国は、これらの除外および制限の一貫した適用を達成し、将来的には履行している立法を再評価するの場合に評価する。
(33)複製について排他的な権利は、一時的な複製について一定の行為を認める除外が適用される。この一定の行為とは、過渡的または付随的な複製であって、技術上の過程について不可欠かつ重要な一部をなし、しかも仲介者によって第三者間のネットワークでの効率的な送信し得るまたは作品もしくはその他目的となる物を適法に利用し得ることを唯一の目的として実行される場合である。この問題となる複製行為は、独立して別個の経済的な価値を有するものではない。その行為がこれらの条件をみたす範囲で、この除外は、キャッシング行為のほか、ブラウジングを可能にする行為を含める。さらに、仲介者がその情報を修正せずしかも情報の利用についてのデータを獲得するために、業界において幅広く認められ使用されている技術の適法な使用に干渉できない場合、送信システムが効率的に機能することを可能にする行為も含む。ある利用が権利者によって許諾または法律によって制限されていない場合には、適法なものとする。
(34)加盟国には、教育的かつ科学的目的にする場合のためや、図書館や記録保存所のような公共の施設の利益のため、ニュース報道のため、引用のため、身体障害を有する者のため、公共の安全使用のため、行政および司法手続きにおいて使用するために、一定の除外または制限を規定する選択が与えられる。
(35)除外または制限について、一定の場合、権利者はその保護される作品またはその他目的となる物の利用について、適当に填補するための公正な補償金を受け取る。その方式を定める際、詳細な取り決めやそのような公正な補償金についてふさわしい水準はそれぞれの特定事情を考慮する。これらの事情を評価する際に、金銭的な価値基準は、問題となる行為から権利者にあらゆる損害を及ぼすことになるだろう。権利者が、例えば使用料の一部としてのように、何らかの形態ですでに支払いを受け取っている場合には、特定または別個の支払いは適当ではない。公正な補償金の水準は、この指令に規定する技術的保護手段の使用の程度を最大限に考慮する。権利者への損害が最小限である一定の事情の下では、支払いについて何ら義務は生じない。
(36)加盟国は、このような補償金が要求されない除外または制限について選択的な規定を採用した場合にも、権利者のための公正な補償金を規定することができる。
(37)複写(reprography)について既存の国内の仕組みが存する場合、それは域内市場にとって主要な障壁を作り出すことはない。加盟国は、複写について除外または制限を規定することが許される。
(38)加盟国は、公正な補償金を伴い、その私的使用のための一定の種類の複製機材、視覚的および視聴覚的な物に対して、複製権に対する除外または制限を規定することが許される。これには、権利者への損害について補償する報酬制度の導入または継続を含む。これらの報酬制度間の差異は、域内市場が機能することに影響するけれども、この差異は、アナログによる私的複製に関しては、情報社会の発展に重大な影響を有しない。デジタルによる私的な複製行為はさらに普及するだろうし、一層経済的な影響を有する。したがって、デジタルとアナログの私的な複製行為についての差異は適正に考慮し、一定の側面ではその間について区別する。
(39)私的な複製行為についての除外または制限を適用する際、加盟国は技術的および経済的な発展、特にデジタルによる私的な複製行為や報酬制度について、効率的な技術的保護手段が利用可能な場合には、適正に考慮する。このような除外または制限は、技術的保護手段または回避に対するエンフォースメントの利用を妨げるものではない。
(40)加盟国は、記録保存所のほか公に利用可能な図書館や同様の施設のように、特定の非営利のために作られたものの利益のために、除外または制限を規定することができる。しかし、これは複製権の及ぶ一定の特別の行為に限られる。このような除外または制限は、保護される作品または目的となる物をオンラインで発信する文脈での利用には及ばない。この指令は、指令92/100/EEC第5条に従って、排他的な公衆への貸出権を排除する加盟国の選択を妨げるものではない。したがって、特別の契約または許諾が、不均衡になることなく、そのような施設やそこで提供される普及の目的に都合よく、奨励される。
(41)放送機関による短時の記録について除外または制限を適用する場合、放送者自身の設備には、放送機関の利益に基づきしかもその責任において行為する者の設備も含むものと解釈する。
(42)遠隔学習も含め、非商業的な教育および科学調査の目的についての除外または制限を適用する場合には、問題となる活動の非商業的な性質は、その活動自体によって決定する。その関係する組織的な構造および施設の設立の手段は、この点では決定的要因ではない。
(43)加盟国が、自ら作品の使用に妨げとなる身体障害を有する者が、作品にアクセスすることを容易にする全ての必要な手段を採用し、アクセス可能な形態に念入りな注意を払うことが、いかなる場合にも重要である。
(44)この指令に規定する除外または制限を適用する場合には、国際的な責務に従って、行使される。このような除外または制限は、権利者の正当な利益を害したり、作品または目的となる物の通常の利用と相反する方法で適用することは許されない。加盟国による、このような除外または制限についての規定は、そのような除外または制限が新たな電子環境との関係において増大する経済的な影響に、ことさら十分に反映する。したがって、一定の除外または制限の範囲は、著作物および目的となる物の何らかの新たな利用形態を生じる場合には、より一層限定されなければならない。
(45)しかしながら、第5条第2項、第3項および第4項に規定する除外または制限は、国内法によって認められている限りにおいて、権利者のために公正な補償金を確保するために企図された契約関係を定義することを妨げない。
(46)調停(mediation)に頼ることによって、利用者や権利者が紛争を解決するのに役立つ。委員会は、連絡部会内の加盟国と協力して、著作権および関連権に関する紛争を解決するための新たな法的手段を検討する研究を引き受ける。
(47)技術的な発展によって、権利者はあらゆる著作権、著作権に関連する権利またはデータベースにおけるスイ・ジェネリス(sui generis)権の権利者によって、許諾されない行為を防止し、制限するために企図された技術的手段を利用することができる。しかしながら、これらの手段によって提供される技術的手段を回避することを可能にしたり、助長したりするために、違法な活動が実行されているという危険が存する。域内市場を機能させることを、潜在的に妨げるような分断的な手法を避けるために、効果的な技術的な回避およびこのような効果をもたらす装置や製品、サービスの提供に対して調和した法的保護を規定する必要がある。
(48)このような法的保護が、他方では電子機器の通常の利用や技術的発展を妨げることなく、著作権、著作権に関連する権利、データベースにおけるスイ・ジェネリス権の権利者によって許諾されない行為を効果的に制限する技術的手段について、規定される。このような法的保護は、装置、製品、部品またはサービスが第6条が禁じているその他のものにあたらない限りにおいて、技術的手段に該当する装置、製品、部品またはサービスを企図する義務を課すものではない。このような法的保護は、均整を尊重し、かつ商業的に重要な目的を有し、または技術的保護を回避する以外に使用されるこれらの装置もしくは活動を禁じない。特に、この保護は、暗号化技術への調査を妨げるものではない。
(49)技術的保護手段の法的保護は、技術的保護手段の回避のための装置、製品または部品を私的に所有することを禁じる国内の規定の適用を妨げるものではない。
(50)このような調和した法的保護は、指令91/250/EECが規定する保護に関する特別の規定には影響しない。特に、コンピュータープログラムに関連して使用され、それについてその指令に限定的に強調されている技術的手段の保護には適用しない。指令91/250/EECの第5条第3項または第6条の文言にしたがって、義務を負い得る行為に必要な技術的手段を回避するあらゆる手段の発展または使用を禁じることも妨げるものではない。その指令の第5条および第6条が限定的に、コンピュータープログラムに適用される排他的な権利に対する除外を決定する。
(51)技術的手段の法的保護は、第5条に示されるような公の秩序または公の安全を妨げることのないように適用する。加盟国は、この指令にしたがって国内法に規定する一定の除外または制限の目的を達成することを調整するために、権利者によってとられる自発的な手段を、権利者とその他の関係当事者間の取り決めの締結および履行を含め、奨励する。そのような自発的な手段または取り決めが、合理的な期間内に整わない場合には、加盟国は権利者がそのような除外または制限による受益者に、除外または制限から利益を得る適切な手段を、実施されている技術的手段の修正またはその他の方法によって、与えることを確保するために適切な方法をとるべきである。しかしながら、権利者によるまたは加盟国による、そのような手段、取り決めの枠組みも含めて、整わないことを避けるために、そのような手段の実行において適用されるあらゆる技術的手段は法的保護を受ける。
(52)第5条第2項(b)にしたがって、除外または制限を履行する場合に、加盟国はその除外または制限による目的の達成を調整するために、自発的な手段の利用も奨励するべきである。合理的な期間内にそのような自発的な手段が適切にとられない場合には、加盟国は関連する除外または制限による受益者が、その除外または制限から利益を得ることを可能にする手段をとることが許される。加盟国による手段のほか、権利者とその他関係当事者間の取り決めも含め、権利者による自発的な手段は、権利者が第5条第2項(b)にしたがった国内法において私的複製についての除外または制限に一致する技術的手段の利用を妨げるものではなく、その規定の下での公正な補償金の条件および複製の回数を支配するように第5条第5項にしたがって様々な利用の条件間で可能な区別を考慮する。このような手段がないことを避けるために、その履行において適用されるあらゆる技術的手段は法的保護を受ける。
(53)技術的手段の保護によって、公衆の構成員がおのおの選択した場所および時間において作品またはその他目的となる物にアクセスすることが許されるような方法での、インタラクティブなオンディマンドサービスの設立に向けた安全な環境を確保する。このようなサービスが、契約による取り決めによって管理されている場合には、第6条第4項の第1段落、第2段落の規定は適用しない。インタラクティブではないオンライン方式の使用は、これらの規定の適用を受ける。
(54)デジタル形式での保護される作品および目的となる物の技術的な認証システムの国際的な標準化において、重要な進展がなされている。増加するネットワーク環境において、技術的手段間の違いによって、共同体におけるシステムの非互換性が生じる。異なったシステムの互換性および相互運用性(interoperability)が奨励されることがきわめて望まれる。
(55)技術的な発展によって、作品の頒布が、特にネットワークにおいて容易になり、権利者がその作品またはその他目的となる物、著作者またはその他権利者を認証し、そしてそれに付随する権利の管理をより容易に行うためにその使用に関する期間および条件について情報を提供する必要が伴う。権利者は上述の情報に加え、とりわけネットワーク上に作品またはその他目的となる物を置く際に、その許諾付与を示すマーキングを使用することが奨励されるべきである。
(56)しかしながら、それに付随する電子的著作権管理情報を除去もしくは改変するために、または許可なくそのような情報が除去された作品もしくはその他目的となる物を、その他頒布したり、頒布のために輸入したり、放送したり、公衆へ伝達したり、または公衆に利用可能にするために、違法な活動が実行される危険性がある。潜在的に域内市場が機能することを妨げる分断的な法的手法を避けるためにも、あらゆるこのような活動に対して調和した法的保護を規定する必要がある。
(57)このような上述の権利管理情報システムは、その設計次第では、それと同時に、保護される目的となる物の個人による消費傾向についての個人データを処理し、オンライン上での行為をさかのぼることを許してしまう。このような技術的手段は、技術的な機能において、個人データの所持およびそのようなデータの自由の移動についての個人の保護に関する1995年10月24日の欧州議会および理事会指令95/46/ECにしたがって、プライバシーの擁護に取り組むべきである。
(58)加盟国は、この指令において創設されている権利および義務の侵害に対して効果的な制裁および救済手段を規定する。加盟国は、これらの制裁および救済手段が適用されることを確保するのに必要な全ての手段をとる。規定する制裁は、効果的でつり合いのとれた、抑止的なものであって、損害賠償請求および〔または〕差止請求の実現性を含む。必要に応じて侵害品の押収を適用することも含む。
(59)デジタル環境において、特に仲介者のサービスが、違法な活動のために第三者によって利用されることが増加し得る。多くの場合、このような仲介者は、このような違法な活動を終わらせるのに最善の位置にある。したがって、可能なその他あらゆる制裁および救済手段を妨げることなく、権利者はネットワークにおいて保護される作品またはその他目的となる物を第三者が侵害すること伝える仲介者に対して、差止めを適用する実現性を有する。この実現性は、仲介者によって実現された行為が、第5条の下で除外される場合であっても、可能である。このような差止めに関する条件および方式は、加盟国の国内法に委ねる。
(60)この指令の下で規定する保護は、著作権または関連権の保護に影響する工業所有権、データ保護、条件付アクセス、情報公開およびメディアの利用についての時間的区分の原理(the rule of media exploitation chronology)のような、国内またはその他地域での共同体の立法規定を妨げるものではない。
(61)WIPO実演、レコード条約に一致させるために、指令92/100/EECおよび指令93/98/EECは修正する。
以上により、この指令を採択する。
第1章 目的および適用範囲
第1条 適用範囲
1.この指令は、域内市場の枠組み、特に情報社会に重点をおいて、著作権および関連権の法的保護に係わるものである。
2.第11条に規定する場合を除き、この指令は次に関係する既存の共同体の規定を妨げるものでも、影響を及ぼすものでない。
(a)コンピュータープログラムの法的保護
(b)貸与権、貸出権および知的財産権分野における著作権に関連する一定の権利
(c)衛星および有線の再送信による番組の放送に適用される権利および関連権
(d)著作権および一定の関連権の保護期間
(e)データベースの法的保護
第2章 権利および除外
第2条 複製権
加盟国は、次に掲げるものの全部または一部における、あらゆる手段によりかつあらゆる形態によって、直接的または間接的、一時的または恒久的な、複製を許諾または禁止する排他的な権利を有する。
(a)著作者について、その作品
(b)実演家について、その実演を固定したもの
(c)レコード製作者について、そのレコード
(d)映画を最初に固定した製作者について、そのフィルムの原作品および複製物
(e)放送機関について、その放送を固定したもの。これには、電線または電波によって送信される放送か否かは問わず、有線または衛星を含む
第2条 作品を公衆に伝達する権利およびその他目的となる物を
公衆に利用可能にする権利
1.加盟国は、著作者に、有線または無線によって、その作品を公衆に伝達することを許諾または禁止する排他的な権利を与える。これには、公衆の構成員がおのおの選択する場所および時間においてその作品にアクセスできる態様で、公衆に利用可能にすることを含む。
2.加盟国は、公衆の構成員がおのおの選択する場所および時間において、次に掲げるものについてアクセスできる態様で、有線または無線手段によって、公衆に利用可能にすることを許諾または禁止する排他的な権利を規定する。
(a)実演家について、その実演を固定したもの
(b)レコード製作者について、そのレコード
(c)映画を最初に固定した製作者について、そのフィルムの原作品および複製物
(d)放送機関について、その放送を固定したもの。これには、電線または電波によって送信される放送か否かは問わず、有線または衛星を含む
3.第1項および第2項に規定する権利は、公衆への伝達または本条に規定する公衆に利用可能にするあらゆる行為によっては消尽しない。
第4条 頒布権
1.加盟国は、著作者にその作品の原作品またはその複製物に関して譲渡またはその他の方法によって、公衆にあらゆる形態での頒布を許諾または禁止する排他的な権利を与える。
2.頒布権は、その作品の原作品またはその複製物に関して、共同体内では消尽しない。ただし、共同体においてその対象となる物の最初の譲渡または帰属の移転が、権利者またはその同意をもってなされた場合は除く。
第5条 除外および制限
1.第2条に規定する一時的な複製行為が、過渡的または付随的であり[しかも]技術上の過程において不可欠かつ重要な部分であり、かつその唯一の目的が、作品またはその他目的となる物について、
(a)仲介者によって、第三者間のネットワークにおける効率的な送信、または
(b)適法な利用
を可能にし、しかも独立した経済上の重要性がない場合には、第2条に規定する複製権から除外される。
2.加盟国は、第2条に規定する複製権に対して、次のような場合に除外または制限を規定することができる。
(a)権利者が公正な補償金を受け取る場合には、楽譜(sheet music)を除き、あらゆる種類の写真技術の使用によりまたは同様の効果を有する過程を通じてなされる、紙または同様の媒体での複製
(b)自然人による私的使用のためのものであり、しかも直接的にも間接的にも商業的でない目的のために、権利者が関係する作品または目的となる物に対して、第6条に規定する技術的保護手段の適用または不適用を考慮した公正な補償金を受け取ることを条件とした、あらゆる媒体での複製
(c)公に利用可能な図書館もしくは教育施設、美術博物館または記録保存所によって、直接的または間接的な経済上または商業的な利益を目的としない特定の複製
(d)放送機関による、自身の設備を手段とし、その自身の放送のためになされる短時の作品の記録。公共の記録保存所におけるこれら記録を保存する場合には、その例外的な性質により、認められる。
(e)病院または刑務所のような非商業的な目的を求められる社会施設による、権利者が公正な補償金を受け取ることを条件とした、放送の複製
3.加盟国は、第2条および第3条に規定する権利に対して、次のような場合に除外または制限を規定することができる。
(a)著作者の名前を含め、出所が示される限りにおいて、ただしこれが不可能であることがわかる場合は除き、授業もしくは科学調査のための解説を唯一の目的とする利用。しかも、これは非商業的な目的が達成されることが正当とされる範囲でである。
(b)身体障害を有する人々のために、直接的身体障害に関係し、かつ非商業的な性格を有し、その特定の身体障害によって求められる範囲での利用。
(c)報道による複製、または経済的、政治的もしくは宗教的な時事の問題に関する公表された記事もしくは同様の性質を有する作品もしくはその他目的となる物の放送を、公衆に伝達または利用可能にすること。これは、そのような利用が明らかに確保されていない場合で、しかもその出所が、著作者の名前も含め、示されている限りにおいてである。また、時事の事件の報道に関する作品またはその他目的となる物の利用については、情報を提供する目的のために正当とされる範囲で、しかもその出所が、著作者の名前も含め、示されている限りにおいてである。ただし、これが不可能であることがわかる場合は除く。
(d)批判もしくは論評等を目的とする引用。これは、その引用がすでに適法に公衆に利用可能にされている作品またはその他目的となる物に関係し、不可能である場合は除き、その出所が、著作者の名前も含め、示され、しかもその利用が公正な慣行に合致する場合であり、この特別の目的によって正当とされる範囲に限る。
(e)公共の安全または行政、立法もしくは司法手続の適切な運用または報告を確保する目的のための利用。
(f)公開された講演または同様の作品またはその他目的となる物の抜粋のほか、政治上の演説ついて、その情報を提供する目的のために正当とされる範囲での利用で、しかもその出所が、著作者の名前も含め、示されている場合。ただしこれが不可能であることがわかる場合は除く。
(g)公共の機関によって計画された宗教的な儀式または公共の儀式の間における利用
(h)公共の場において、恒常的に設置されている建築作品または彫刻作品の利用
(i)その他の素材への作品もしくはその他目的となる物についての付随的に含めること
(j)美術的作品の公の展示または譲渡を宣伝する目的で、その行事を振興するのに必要な範囲での利用。ただし、その他あらゆる商業的な利用は除く。
(k)風刺、パロディーまたはパスティッチョを目的とする利用
(l)設備の実物販売または修復に関係する利用
(m)建物または建物の線図もしくは設計図の形態での美術的作品について、その建物を改築する目的のための利用
(n)その所蔵品に含まれている購入条件または許諾条件に服さない作品に関して、第2項(c)に規定する施設の構内において公開の端末によって、調査または私的な調査研究の目的のために、公衆のおのおのの構成員への伝達または利用可能にすることによる利用。
(o)本条に含まれるその他の除外および制限を妨げることなく、アナログのみによる利用に関するもので、しかも共同体内における商品およびサービスの自由な流通に影響を及ぼさない場合に、国内法の下ですでに除外または制限が存しているさほど重要ではない一定のその他の場合における利用
4.加盟国は、第2項および第3項にしたがって複製権に対して除外または制限を規定している場合、認められた複製行為の目的によって正当化される範囲で第4条に規定する頒布権に対して除外または制限を同様に規定することができる。
5.第1項、第2項、第3項および第4項において規定する除外または制限は、作品またはその他目的となる物の通常の利用に相反せず、しかも権利者の正当な利益を不当に害しない一定の特別の場合にのみ適用される。
第3章 技術的保護手段および権利管理情報の保護
第6条 技術的保護手段に関する義務
2.加盟国は、次のような装置、製品もしくは部品またはサービスの提供を、製造、輸入、頒布、譲渡、貸与、譲渡もしくは貸与のための宣伝、または商業目的での所持に対抗する適切な法的保護を規定する。
あらゆる効果的な技術的手段を、
(a)回避する目的で、振興、宣伝または売買されるもの。または、
(b)回避する以外に商業的に限定された目的もしくは利用しか有しないもの。または、
(c)主に、回避することを可能もしくは助長する目的で、企図、製造、改良もしくは実行されるもの。
3.この指令では、「技術的保護手段」とは、著作権または法律によって規定される著作権に関連する権利または指令96/9/ECの第3章に規定するスイ・ジェネリス権の権利者により、作品またはその他目的となる物に関して、許諾されない行為を、その通常の操作過程において、防止または制限するために企図されたあらゆる技術、装置または部品を意味する。技術的保護手段は、保護される作品またはその他目的となる物の利用について、権利者により保護の目的が達成される、作品またはその他目的となる物の暗号化、スクランブル化もしくはその他変換のようなアクセスコントロールもしくは保護過程、または複製管理構造の適用を通じて、管理されている場合には、「効果的」であるとする。
4.第1項に規定する法的保護にも係わらず、権利者およびその他関係当事者間の取り決めも含め、権利者による自発的な手段がない場合には、加盟国は権利者が第5条第2項(a)、第2項(c)、第2項(d)、第2項(e)、第3項(a)、第3項(b)または第3項(e)にしたがって国内法が規定する除外または制限による受益者に、その除外または制限から利益を得る方法を、その除外または制限から利益を得る範囲で、かつ、受益者が関係する保護された作品または目的となる物に適法にアクセスできる場合に、利用可能にすることを確保する適切な手段をとる。
加盟国は、第5条第2項(b)にしたがって規定する除外または制限による受益者に関して、当該手段をとることができる。ただし、これには私的使用のための複製が、権利者によって、関係する除外または制限から利益を得るのに必要な範囲で、そして第5条第2項(b)および第5項の規定にしたがって、すでに可能になっている場合は除き、権利者がこれらの規定にしたがい複製の回数について適切な手段を講じることを妨げるものではない。
自発的な取り決めの履行によるものも含め、権利者による自発的に適用される技術的手段および加盟国による手段の履行による技術的手段は、第1項に規定する法的保護を受ける。
第1文および第2文の規定は、公衆の構成員がおのおの選択する場所および時間において作品またはその他目的となる物にアクセスできる方法において、合意した契約上の条件に基づき、公衆に利用可能にされた作品またはその他目的となる物には適用しない。
本条が指令92/100/EECおよび指令96/9/ECとの関係において適用される場合、本項は必要な変更を加えて適用する。
第7条 権利管理情報に関する義務
1.加盟国は、許可なく次のような行為を意図的に実行する者に対抗して、適切な法的保護を規定する。
(a)電子的権利管理情報の除去または改変
(b)この指令または指令96/9/ECの第3章の下で保護される、電子的権利管理情報が許可なく除去または改変された作品またはその他目的となる物を、頒布、頒布のための輸入、放送、公衆への伝達または公衆へ利用可能にすること
これらは、当該当事者が著作権、法律が規定する著作権に関連する権利または指令96/9/ECの第3章に規定するスイ・ジェネリス権を侵害することを、そうすることによって誘発、可能、助長または隠匿することを知っている、または知るのに合理的な理由を有している場合に限られる。
2.この指令では、「権利管理情報」とは、権利者によって提供される、この指令が規定もしくは指令96/9/ECの第3章に規定するスイ・ジェネリス権が及ぶ作品もしくはその他目的となる物、著作者もしくはその他あらゆる権利者、または作品もしくはその他目的となる物の使用条件および期間に関する情報、さらに当該情報を表示する数値もしくはコードを認証するあらゆる情報を意味する。
第1文は、あらゆるこれらの情報事項がこの指令が規定もしくは指令96/9/ECの第3章に規定するスイ・ジェネリス権が及ぶ作品もしくはその他目的となる物の複製物に結合している、または公衆への伝達に関して現れる場合に適用する。
第4章 一般規定
第8条 制裁および救済手段
1.加盟国は、この指令が創設する権利および義務の侵害について適切な制裁および救済手段を規定し、これら制裁および救済手段が適用されることを確保するために必要な全ての措置をとる。そこで規定する制裁は効果的でつり合いのとれた、抑止的なものとする。
2.加盟国毎に、その領土で実行された侵害活動によって影響される利益を有する権利者が、損害賠償を請求し、および/または差止めを請求することを確保し、必要に応じて、第6条第2項に規定する装置、製品または部品のほか、侵害品の押収を請求することを確保するのに必要な措置をとる。
3.加盟国は、そのサービスが第三者によって著作権または関連権を侵害するために利用されている仲介者に対し、差止めを請求する地位にあることを確保する。
第9条 その他法律規定を継続的な適用
この指令は、特に特許権、トレードマーク、デザイン権、実用モデル(utility models)、半導体の配置、タイプフェイス、条件付アクセス、有線放送サービスへのアクセス、国宝の保護、法律による納入の要件(legal deposit requirement)、企業間の競争制限協定に関する法律および不正競争、トレードシークレット、防衛、機密保持、データ保護およびプライバシー、情報公開、契約に法律に関する規定を妨げるものではない。
第10条 時間に関する適用
1.この指令の規定は、この指令が規定する作品およびその他目的となる物が、2002年12月22日時点で、著作権および関連権の分野での加盟国の立法により保護され、またはこの指令の規定もしくは第1条第2項の規定の下で保護の基準を充たす全てのものについて適用する。
2.この指令は、2002年12月22日以前に終結した行為および獲得した権利を妨げずに、適用する。
第11条 技術的適合
(a)第7条は削除する。
(b)第10条第3項は、次のように改める。
「3.この制限は、目的となる物の通常の利用に相反せず、かつ権利者の正当な利益を不当に害しない一定の特別の場合に適用する。」
2.指令93/98/EECの第3条第2項は、次のように改める。
「2.レコード製作者の権利は、その固定された後50年をもって満了する。しかし、レコードがこの期間内に適法に発行された場合には、最初の適法に発行された日から50年をもって満了する。第1文にいう期間に、適法に発行されず、レコードがこの期間内に適法に公衆に伝達された場合には、最初の適法に公衆に伝達された日から50年をもって満了する。
しかしながら、情報社会における著作権および関連権の特定側面についてのハーモナイゼーションに関する2001年5月22日の欧州議会および欧州理事会の指令2001/29/ECによる改正前の版において、本項にしたがって与えられた保護期間の満了によって、レコード製作者の権利が2002年12月22日時点で、もはや保護されていない場合には、本項はあらたにこれらの権利を保護する効果を有しない。」
第12条 最終規定
1.2004年12月22日までおよびそれから3年ごとに、委員会は、欧州議会および経済社会委員会に対し、この指令の適用について報告書を提出する。その中では、とりわけ、加盟国によって供される一定の情報をもとに、デジタル市場の発展に照らして、特に第5条、第6条および第8条の適用を調査する。第6条については、特にこの条文が十分な保護水準にあるか、および法律によって認められる行為が効果的な技術的手段の利用によって不利に影響していないかについて調査する。必要な場合、特に条約14条にしたがい、域内市場が機能することを確保するために、この指令への修正案を提供する。
2.この指令の下で、著作権に関連する権利を保護することは、著作権の保護を害するものでも、何ら影響を及ぼすものでもない。
3.ここに、連絡部会を設置する。これは加盟国の正当な権限を有する代表者によって構成する。この部会は、委員会の代表者によって統轄され、その委員長の主導に基づき、または加盟国の代表団の要求によって開催する。
4.この部会の掌握事務は次の通りである。
(a)域内市場が機能することに関して、この指令の影響の調査、およびあらゆる問題を明らかにすること
(c)適当な経済的、社会的、文化的および技術的発展のほか、立法および判例法における適当な発展に関する情報交換を助成すること
(d)私的な複製行為および技術的手段の利用を含め、作品およびその他商品のデジタル市場の評価に対するフォーラムとしての活動
第13条 履行方法
1.加盟国は、2002年12月22日前に、この指令に合致するのに必要な法律、規則および行政上の規定について効力を発する。加盟国はそれについて直ちに報告する。
加盟国が、これらの手法を採択する場合には、この指令への参照を含め、または公式の公表の際に当該条文を付随させる。当該参照の方法は、加盟国が定める。
2.加盟国は、この指令が決定する分野において採択した国内法の規定本文について委員会に連絡する。
第14条 効力の発生
この指令は、官報に公表された日に効力が発生する。
第15条 名宛
この指令は、加盟国へ宛てられる。
2001年5月22日、ブラッセルにて採択
欧州議会議長 N.FONTAINE
欧州理事会理事長 M.WINBERG
【出典】OJ L167、 22.6.2001、 p.10
【参考文献】駒田 泰士(訳)『欧州委員会理事会指令』(著作権情報センター、1996)
山本 隆司(訳)『情報社会における著作権および関連権の一定の側面のハーモナイゼーションに関する欧州議会および理事会ディレクティブ(案)−欧州委員会により提出』(著作権情報センター、1998)
島野卓爾=岡村尭=田中俊郎『EU入門』(有斐閣、2000)
杉浦 健太郎「EU著作権指令について」コピ480号20頁(2001)