「空」
元日の晴れ渡った空を見上げて、ふと思ったことがある。子どもの頃、お正月になると「凧あげ」をよくしたものんだよなぁ、と。でも、最近はあまり凧をあげている子どもの姿を見なくなったような気がする。
そういえば、現在も紛争が続く、タリバン政権下のアフガニスタンでは、凧あげが禁止されていたという。理由はよくわからないが、日本に比べればずっと青く澄み渡った空に凧を飛ばしたら、どんなに気持ちのいいものかと思う。日本でいう「凧あげ」とは違うのかもしれないが、父親が凧を支えてやって、子どもが広い大地を一生懸命に息を切らして走っていく…。タリバン政権が崩壊し、暫定政権が成立したと伝えられているが、今なおアフガニスタンでは生活に苦しむ市民が多くいる。凧なんてあげている場合ではないのかもしれない。それでも、日本の元日に晴れ渡った空は、遠くの国アフガニスタンにまで続いている。
そういえば、2002年の今年、日本と韓国は、ワールドカップを共同で開催する。去年は靖国神社参拝や歴史教科書問題をめぐり、日韓関係が一時悪化した。靖国問題や教科書問題とはおよそ縁のないところで、民間交流活動が中止されるといった報道を耳にした。靖国問題や教科書問題が、日本に住む人間に比べると、韓国に住む人間にとって大きな意味をもっているのだろう。過去の歴史を私たちがあまりに知らなさ過ぎるのかもしれない。ワールドカップの日韓共催を契機に、私たちは過去の出来事について真摯に受け止め、将来のあるべき日本と韓国の関係を築いていかなければならない。なぜなら、日本の元日に晴れ渡った空は、隣の韓国にも続いているのだから。
そういえば、ヨーロッパでは2002年1月1日から、EU加盟国のうち12カ国が単一通貨ユーロを導入する。ドイツのマルクやフランスのフランが姿を消し、約3億人の人間がひとつの通貨を使用することになる。そもそも地続きのヨーロッパとはいえ、ユーロの導入によって、人や物の行き来がより一層盛んになることだろう。外国と国境を接することのない島国に住む人間にしてみると、それは幸か不幸かわからないが、うらやましく思えるところもある。交通手段が限られていた時代、四方を海に囲まれていることによって、外国からの侵入を拒むことが出来た。一方では、外国に行くためにはこの海を越えていかなければならなかった。しかし、交通手段が発達し、インターネットに代表される情報化社会では、物理的な距離さえも縮めてしまう。それでもずっと昔から、日本の元日に晴れ渡った空は、世界の国々に続いていた。
元日の晴れ渡った空では日が沈み夕暮れを迎える。ひとつに続く空の下、2002年もたくさんの出来事が起こるだろう。人それぞれによって、その出来事の大小は違うのかもしれない。それでも、この空は誰にも平等に広がっている。
(2002年1月1日)