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進士かおり(TOSS中学/三重アイリス)
1964年に開通した新幹線は、日本が誇る高速鉄道システムである。これまで未知の世界であった時速200kmを超える速度で運行するために、さまざまな技術が用いられた。また新幹線の開発によって、速度だけでなく乗り心地や安全面で高い水準が確保され、鉄道の価値が見直された。また環境対策でも最も進んでいる鉄道である。その背景には、日本のものづくりの歴史、技術者のたゆまぬ研究があることを伝えたい。
「新幹線」の模型を見せる。
発問1 新幹線です。どこを通っていますか。
発問2 最初に開通した新幹線は東京と新大阪を結びました。
開通したのは何年前ですか。
説明1 40年前の1964年に開通しました。時速200km。東京、新大阪間を3時間で結ぶ高速鉄道でした。新幹線ができるまでは時速110km、約7時間かかっていました。
空襲によって焼け野原になった東京の写真を提示
発問3 東京です。いつの写真ですか。
説明2 1945年、戦争が終わったとき、日本はこのような状態でした。
それからたった20年で、時速200kmを超える新幹線が走ったのです。
発問4 新幹線の計画はいつごろからあったのでしょうか。次から選びなさい。
A 第二次世界大戦の前
B 第二次世界大戦中
C 第二次世界大戦後
正解はB
説明3 中国に物資を運ぶため、東京から九州、そして中国までを結ぶ「弾丸列車計画」が1939年に計画されました。翌年から工事が始まりました。高速鉄道で都市を結ぶ計画は新幹線開通の25年前にあったのです。
説明4 すでに中国大陸では、時速150kmを出す列車が開発されて運行されていました。
戦争中に計画は中止されましたが、国内の大きなトンネル工事はすでに始まっていたのです。
発問5 戦後、時速200kmを目指した開発が再開しました。しかし速度をあげていくとさまざまな問題が起こってきました。どのような問題か、予想してノートに書きなさい。
・振動
・騒音
説明5 もっとも大きな問題は振動でした。一定の速度を超えると車体が異常に振動を起こし、蛇行道とよばれる揺れが起こりました。このため脱線する可能性があったのです。
その問題を解決する糸口がこの研究でした。
零戦の写真を提示。
説明6 零戦は過去に謎の空中分解を起こしていました。その原因が翼の異常振動にあると解明した人物、松平 精さんが、新幹線の開発に関わっていました。松平さんは、零戦の研究を新幹線に活かして、蛇行道を克服しました。
発問6 現在の最高速度は300kmに上がりました。使われている電力は昔と比べてどうなっていると思いますか。
増えた、減った、変わらないで挙手させる。
消費電力は開通当時より減っている。
220kmで走る初期の0系のひかりの消費電力を100とすると、最高時速300kmの500系で82、285km700系は90となる。(Yomiuri on-line 2004/2/4記事より)
説明7 速度が上がったにもかかわらず、消費電力は減っています。車両を軽くして速度を上げるとともに、省エネルギーが進められているのです。
発問7 戦後、新幹線開発の指揮をとった島秀雄さんが、開発にあたり技術者たちに言いました。「鉄道で何よりも大切なものは〜だ」 〜にあてはまる言葉を予想して、ノートに書きなさい。
説明8 島秀雄さんは言いました。
「鉄道で何よりも大切なものは安全だ。時速200kmの壁は未経験の新しい技術よりも、実証済みの技術を組み合わせよう。
発問8 安全を守るために、どのような工夫があると思いますか。思いつくことをノートに書きなさい。
説明9 新幹線は安全のため踏切をなくしました。
列車内に信号機を備え、信号の見落としをなくしました。
地震に備えて、地震をすぐに探知して、列車を自動的に止めるシステムも開発しました。
技術者の知恵を集め、鉄道以外の技術も取り入れて開発が進められたのです。
その結果、新幹線は開業以来、事故による死者はゼロです。これは世界でも類を見ない記録です。
新幹線は最高のスピードで最高の安全を届ける、日本がほこる鉄道システムなのです。
《参 考》
橋本幸康氏:執念が生んだ新幹線,インターネットランド2210316 http://www.tos-land.net/
『新幹線をつくった男 島秀雄物語』高橋団吉著 (小学館)
『新幹線がなかったら』山之内秀一郎著 (朝日文庫)
『技術者たちの敗戦』前間孝則著 (草思社)
『スーパーエクスプレス新幹線発達史』大平祥司著 (イカロス出版)
『プロジェクトX 挑戦者たち 復活への舞台裏』
NHKプロジェクトX制作班編(NHK出版)
『早さに挑戦する新幹線 高速鉄道開発物語』石崎洋司著 (学研)
『新幹線 のぞみ白書』大朏博善著 (新潮社)
『リニア中央新幹線で日本は変わる』 中央新幹線沿線学者会議編 (PHP)
『海を渡る新幹線』読売新聞中部社会部 (中公新書クラレ)
『新幹線「安全神話」が壊れる日」桜井淳著 (講談社)