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04年度 選手別評価


野手
1 福留 孝介  75点
   92試合  打率277 350打数 97安打 23本塁打 81打点 8盗塁 出塁率.367  1失策
(A) (B) (C) (D) (E) (F)

「四番の看板」が打撃を狂わせたと言うべきなんやろね。
右への長打の意識が強過ぎたために、03年まで持ち合わせていた対応力を失ってしまいましたな。
例えば、差し込まれ気味に左へ強打したケースはあっても、外角へのスライダーに上体を崩されながらも上手く合わせて左へ軽打した場面は、殆ど見た記憶がありまへん。
好機で凡飛・凡ゴロに終わるケースが目立ったため、周囲がチームの看板たる4番に寄せる期待に対しては、お世辞にも十分に応えられたとは言えないシーズンとなってしまいましたな。
五輪期間の不在はやむを得んとしても、キャンプ中のケガで調整不十分でシーズン・インし、シーズン後半には左手指への死球で骨折⇒終盤を全休と、
踏んだり蹴ったりやったという印象すらありますわ、

4番という新たな職場に就くに当たって、長打偏重へのバッティング・スタイルの変更で対応しようとしたわけやけど、結果的には長打は大して増えず(本塁打率:03年0.064⇒04年0.066)三振だけは大幅に増える(被三振率:03年0.223⇒04年0.266)ことになり、打率も大幅に低下してしもた。
無走者、走者一塁で一発を狙うのはええとしても、決定機では確率を重視したスタイルで打っていくのも一つの考え方やなかったかな。
これは明らかに技術的な欠陥によるものやけど、奴は最後までスタイルの方向性を変えようとはしまへんでした。
結果は「失敗」やったと断じられても仕方ありまへんが、私はこれを肯定的に捉えたいと思います。
この失敗の原因を直視し、もう一段階段を上るための糧としてくれることを信じてますんで。

……因みにスタイルを変えないという長打への拘りを見せるなら、送りバントなんかすんな、と。
   勝てばええと言うものとは違うで……。


もう少し細かく奴の打撃内容を見ていくと、次のようなことが分かります。
得点圏打率.261は決して高い数字やないけど、31安打で52打点はかなり高効率なポイントゲッターぶりを示してますな。
本塁打は多いとは言えまへんが、ツーベース中心のロングヒットが出ていること、1・2番コンビに助けられて犠飛、内野ゴロでの打点が多いことが理由として挙げられると思います。
一方では、特に阪神戦の成績が悪く、打率.228しか打ってまへん。
井川や吉野、ウィリアムスといった左腕に対して、分が悪いことが原因でしょうな。
左腕そのものを苦手にしているわけやないけど、G岡島なども含め、奴は以前から
大きく変化するボールを投げる左腕に弱い傾向があると思いますわ。
奴は「来た球に対応する」タイプなんやろか?
あれだけタイミングをズラしてくるボールに対しては、打撃技術に頼るだけやなく、配球を読んで対応せんと簡単には打てまへん。
この辺、もう少し研究する余地があるのと違うやろか。

技術的には上の写真で奴の04年度を、ある程度解説できると思います。
ポイントは長打を狙うために、@テークバックを大きくとり、その反動を利用してAフォロースルーまで大きくスイングする。
しかしこのために、(C)では
バットのヘッドが投手側に入り過ぎ、また右肩が下がって左肩が上がってしまいました。
ヘッドの入り過ぎは振り出しの際にヘッドが下がることになり、右肩下がりと左肩上がりも振り出しの際に、(D)のように逆に右肩上がり左肩下がりとなってヘッドを下げることになります。
やはり結果的に
奴のスイングはヘッドが下がり、アッパースイングになってしまったほか、振り出しで右肩が上がって脇が開くことから右肩のカベが崩れて身体が開くことになってしまいましたわ。
外角に流れる変化球にからっきし弱かったのは、このためやと断言できます。
当然、奴もこのことは認識してるはずだけに、05年に際してどのような打撃に方向性を定めてくるか、注目したいところですわ。

で、私としては長打を狙うなら大振りして飛距離を伸ばすのではなく、ボールにスピンをかける方向で対応して欲しいと考えてます。
これまでの奴は、ボールの中心をバットの芯で打ち抜くスイングをしてますが、このスイングでは角度が出ないため、ライナーの場合はフェンスで弾かれてしまいます。
ボールのほんの少し下を叩くことでボールに上向きのスピンをかけ、打球の弾道に角度を出すことが出来るわけやけど、これなら折角バットの芯でボールを捉えてもフェンスに阻まれることも減るでしょうし、当たり損ねたフライでも奴のパワーでオーバーフェンスすることが出来ると思います。
これは非常に難しいテクニックやと思いますが、元ミスタータイガースの掛布氏が4番・田淵のトレード退団でアベレージ打者からスラッガーへの転換を迫られた際に、これによって見事に変身に成功しました。
奴にも参考になると思うんやけどな。

さて奴はメジャーを意識し始めてるようやけど、今のままなら絶対にメジャーには通用せんやろね。
飛距離だけは国産砲ナンバーワンやと思いますけど、松井秀のメジャーでのアジャスト法であった「反動を使わないスイング」を会得しない限り、ムービングボールに苦しめられるのは必至やと思います。
もっとパワーをつけて最低限のボディ・アクションで強いスイングを出来るようにならんと、メジャーを口にするのは早過ぎますわ。
まぁ、それでもあの足と守備なら、十分以上にメジャーで適応するでしょうが…。

で、05年。
何やかんや言うても、
日本人スラッガーとしては奴がナンバーワンやと思います。
岩村、多村、小久保と日本人40ホーマーの打者が出現しましたが、「飛ぶボール」、狭い器で稼いだ本数にどんだけ意味があるのか、と。
飛距離でスラッガーの価値の全ては決まらんけど、不可欠な一要素であることは間違いありまへん。
そういう意味でも、かつ首位打者を取れるテクニックも備えとるだけに、(先の記述と相反しますが)スラッガーとして成功できる可能性を最も秘めた日本人スラッガーやと確信しとるだけに、海の向こうでも活躍できる存在になれるよう精進して欲しいと思いますわ。
(ホンマはドラで引退して欲しいんやけどね)
頑張れ!
4 アレックス O  85点
   138試合  打率294 520打数 153安打 21本塁打 89打点 3盗塁 出塁率.369  3失策
(A) (B) (C)

04年度はついにゴールデングラブを獲得。
イチロー以上と言われた強肩は健在、さらにセンター後方への打球勘も良く、長いストライドを生かして守備範囲も広い
ポカもありましたが開幕戦でのファインプレー等、勲章に相応しい実力を発揮して、12球団1のセンターラインの一角として守備面では十分な役割を果たしてくれたと思いますわ。

一方で打撃面では、全体的に昨季と印象は変わりまへんでした。
右ヒザの送りが出来ないため下半身が使えず、強く振ろうとすると上半身頼りのスイングになってしまうため、タイミングの変化に対して脆い傾向がありますな。
コンパクトに振ろうとした場合は右肩のカベが崩れないため、センター中心に向かって割と上手くミート出来ます。
6番に置けるなら奴も強振することを減らすかも知れまへんが、ドラの打線ではそれが許されまへんし…。
んー。

しかし孝介が五輪期間で抜けた間については、奴の活躍は見事でしたわ。
立浪が調子を落としていただけに、奴の決定力がどれほどチームに役立ったことか。
8/1のS戦最終回、絶体絶命の場面で五十嵐から同点打!
あれには痺れました。
あの頃の打撃では身体の反動を殆ど使わずバットだけをポンと出しとったように思いますが、あれこそ外国人特有の打撃であり、投手側から見れば一番たまらないものですわ。
ああいう打撃を安定して続けることが出来れば、問題はないと思うんやけどね。

さて05年シーズン。
奴に関して気掛かりなのは、ウッズの加入ですわ。
ウッズはメジャー経験のない選手やけど、年俸ではアレックスを上回ることになってしもうた。
本来日本なんかで野球していなければ、天皇と平民くらい身分が違っていたはずの関係だけに、バリバリのメジャーやったアレックスのモチベーションに問題が出なければええけどね。
ま、プロフェッショナルやから大丈夫とは思いますけど。
3 立浪 和義  90点
   134試合  打率.308 523打数 161安打 5本塁打 70打点 5盗塁 出塁率.364  8失策
(A) (B) (C)

押しも押されぬミスタードラゴンズ。
ホンマにここ数年は、今のドラゴンズは立浪のチームやというのを実感しとります。
長打はないものの、特に得点圏打率.372が示すようにゲームの流れを変えることのできる打撃や、メンバーに目を配り叱咤する姿には、私ゃ頼れるチームリーダーとして全幅の信頼を置いております。
既に35才と、現役生活のゴールも見えつつありますが、2219安打を2500以上になるよう今後とも元気に頑張ってもらいたいと願いますわ。

今季については、前半のペースが続けば評価点は100点がついてもおかしくなかったけど、8月以降は大幅にペースダウンしてしもうた。
前半については得点圏打率.500前後をキープする神懸り的な打撃を発揮し、特に5〜6月については打率.400以上をマークするなど、今ひとつ安定感を欠く主砲の孝介を十分カバーして打線の牽引役となっとりましたが、後半は完全に失速。
7月までの打率が.352、8月以降は一割以上も下がって.247。
昨季も同じように後半の息切れがあっただけに、年齢からくるガス欠現象かと心配になるんですが、本人談によると「今季は何かを掴んだと思っていたが、内角をしつこく攻められて、それを強引に打ちに行こうとしたら掴んだものを無くしてしまった」ということらしいですわ。
打撃の繊細さを端的に示したコメントやと思いますが、この言葉にウソがなければ来季以降も奴には期待出来ると思うんやけど。
来季はペナントレース勝負所の終盤で、奴らしいところを発揮して欲しいですな。

奴について感心するのは、ええ場面できっちり仕事をするところやね。
得点圏に走者を置いて156打数58安打に1本塁打62打点。
得点圏打率の高さもあるけど、それでも安打数以上の打点を稼いどるところに、奴の真骨頂があると思いますわ。
ヒットが出なくても、犠飛、内野ゴロでスコアする。
一番やってはいけない無意味な凡飛や三振が少ないことが、奴の勝負強さの源ですな。

課題としてはチーム別に成績のバラ付きがあり、特に上位2チームに対して打っとらんところやろね。
対G.240(打点14)、対S.264で打点5。
ポイントゲッターが打てなかったことが、両チームへの負け越しという結果に繋がったと言えますな。
強いボールを投げる投手が両チームに揃ってますが、どうしても詰まる印象がありますんで、古田らとの読み合いに勝って欲しいですわ。

フォーム的には、右手と左手を指一本分離して握るグリップを除けば、小さな身体で体重移動を上手に使う教科書的なフォームやと思います。
あれだけ大きく身体を動かしても、決して軸ブレせずに打てるところは見事ですな。
上の写真で(B)での軸足への重心の乗せ、(C)での右足の内側への絞りによって身体の真ん中でミート出来とるところ、非常に綺麗ですわ。
大きなケガや筋力・反射能力の衰えがなければ、まだまだやれると思うんやけどね。

来季も奴の役割は非常に大きいと思いますんで、頑張って欲しいところですな。
妙な脇目をせんように、フルシーズン安定した働きを期待します。
0 高橋 光信  40点
   35試合  打率.296 27打数 8安打 3本塁打 9打点 0盗塁 出塁率.457  0失策
(5月二軍戦にて)

シーズン前から落合野球で最も注目された
「右の四番」候補ナンバーワンとして騒がれながら、キャンプ中の故障で離脱。
その後チョロチョロと一軍に顔を出すものの、「四番候補」が泣くような精彩を欠くバッティングで降格してしまう。
個人的に今季ダメなら来季はないと思うてた中でオールスターを過ぎても一向にお呼びがかからず、シーズンの2/3まで全く戦力になれなかったところで「もう終わった」と思うてたら、ようやく8月になって一軍定着を果たしよった。
まぁ、その時にはファーストは守備力を優先した起用になっていたため、当初期待されたレギュラーやなく代打屋としての昇格やったけど。

しかし昇格以降はなかなかの活躍でしたわ。
出色はやっぱり、井上の代打として右投手の中村から押し出し四球を選んだG戦と、敗戦寸前の9回表に井川から同点スリーランしたT戦でしょうな。
ミートポイントが身体に近いところにあるためボールを長く見られる長所があり、このため変化球に崩されて空振りするとか打たされることが少なく、カウントを有利にして甘いボールを叩くことが出来ますな。
G上原の外角ストライク⇒ボールゾーンへ変化するカットボールを、ピクッと反応しながら見送ったシーンがあったんやけど、これは球種としては予想しとっただけに普通は手が出るはずであり、この辺に奴の真骨頂を見たように思いますわ。
「打ちにいく」のではなく「来た球を打つ」姿勢のため、崩されることが少なく、相手にとっては嫌なタイプの打者に該当するやろね。
特に変化球の捌きは上手く、先に述べた井川からのスリーランでも、やはり崩されることなく腰の入ったスイングを見せてくれましたな。

課題はストレートへの対応やないかな。
丁度上の写真に表れてますが、奴の場合は軸足に重心を残すのはええけど、逆に軸足に重心が残り過ぎて体重移動が少なくなり、結果としてバットの振り出しが遅れ気味になっとるように感じます。
もう少し重心の移動を考えて、鋭くスイング出来るようになって欲しいね。
また先述の「待ちの姿勢」が薄れた終盤は、浅いカウントから難しいボールを打ちに行って凡退するケースもあり、この辺が日本シリーズ.181という結果になってしもうたようにも思います。
代打屋は通常積極的でええけど、奴の場合はマイペース。
マイペースの中で、好球必打を意識して打席に立って欲しいですわ。

年齢的に上積みは難しいかも知れんけど、ようやく自分の居場所を見つけただけに、1シーズン安定した働きの出来る代打屋として頑張って欲しい。
久しぶりに「代打の切り札」として定着してもらいたいね。
6 井端 弘和  95点
   138試合  打率.302 562打数 170安打 6本塁打 57打点 21盗塁 出塁率.362  4失策
野手陣における私的MVP。
よくぞリーダーとして、最後までチームを引っ張ってくれたと思います。
昨季は途中から心がキレたかのように全く精彩を欠き、私ゃ優勝争いにさえ絡めなかったチームのA級戦犯と指弾したんやけど、今季は最後の最後まで魂の篭ったプレーを見せてくれましたわ。
これまでドラのリーダーと言えば立浪のワントップやったけど、ようやく新世代のリーダーが誕生したと胸を張って言えます。
いやホンマに、今季は頭の下がる働きでした。

まず守備面では、昨季に続いて安定感のあるところを見せてくれましたな。
例えば各チームのレギュラー遊撃手のエラー数を比較すると、次のようになります。

井端 4(138)
宮本 3 (90)
二岡 7 (91)
藤本 12(111)
シーツ19(134)
石井 10(131)     ( )内は試合数

他者の中では宮本はさすがやけど、その他の連中に対しては圧倒してますな。
ちなみに昨季も後半の欠場はあったものの、それを割り引いても他を圧倒するエラーの少なさを示しており、シーズン毎でも奴の守備力が安定していることを証明しとります。
守備範囲が狭ければエラーも少なくなりますけど、奴の場合は三遊間から二遊間にかけて広大な守備範囲を誇っており、非常に多くのアウトを安定して稼いぐことについては突出した存在になりつつあると思いますわ。
後方への飛球処理、前方ボテボテゴロに対する判断・処理、横の守備範囲、併殺プレー、捕球から送球までのスピードなど非常に高度。
地肩が強いわけではないため、三遊間の深い場所からノーバウンド送球でアウトを稼ぐようなプレーは出来まへんが、それ以外の要素については内野でのリーダーシップも含めて非の打ち所がないのと違うやろか。
今後数年のゴールデングラブは、二遊間については荒木−井端コンビで独占することになると思いますわ。

打撃でも持ち前の粘り強さを存分に見せ、初めて打率.300のカベを超えることが出ましたな。
基本は右中間狙い、状況によっては思い切り引っ張るなど、フィールドのどこへも打ち返すことが出来、また高低・内外角のどのコースにも対応出来るバッターやと思います。
2ストライク後でも打率.260をキープするなど、
「簡単にアウトにならない」ところを存分に見せてくれてますわ。
自分で打って良し、繋いで良し、出塁率も高いオールラウンダーぶりは、ドラにとって不可欠な存在ですな。

走塁面でも盗塁数が自己最多、スライディング技術もある。
その中で少ない奴の課題としては、盗塁成功率を上げるということやろか。
成功21、失敗10で成功率.677。
悪くはないけど、決定力のある数字やないですな。
.750〜.800程度の率があれば、安心して盗塁のサインを出せますわ。
まぁ、奴の場合は荒木のように勝負どころで盗塁を狙う選手やなく、エンドラン狙いのランナーと考えれば今のままでも問題ないわけやけど。

来季、チームは日本一を目指します。
その中心として、奴には頑張って貰いたいものですな。
2 荒木 雅博  90点
   138試合  打率.292 602打数 176安打 3本塁打 44打点 39盗塁 出塁率.322  6失策
(A) (B) (C) (D)

走攻守、全てにわたってチームに不可欠な存在になりましたな。
01年の本格デビューの後、02年、03年と伸び悩みを続けとっただけに、今季のトップバッター定着は嬉しい限りでしたわ。
今季は走・攻・守のどの要素も大幅に成長を見せ、ついにチームに不可欠な戦力として認められるようになりました。
元々、身体的ポテンシャルには出色のものがあり、レギュラー定着が待たれていただけに、これでようやく今後数年のセカンドにメドを立てることか出来たわけですな。

走塁面では持ち前のスピードに加え、
効果的な場面で盗塁を決める力がつきました。
例えば1回無死からトップバッターとして出塁、初球で盗塁、井端の内野ゴロで一死3塁、立浪犠牲フライで1点。
このように相手バッテリーの警戒感がピークの時に、それをかいくぐって2塁を奪うことが出来るようになったため、相手に与えるプレッシャーはさらに増し、今度はバッテリー側のバッターへの注意力が散漫になる。
チームに影響力のある、ホンマにええトップバッターになったと思います。

守備力では、以前から守備範囲の驚異的な広さが評価されていたものの、イップスによる送球難を抱えていました。
しかし今季は、春季キャンプでの猛ノックの成果(ドラのノックはスローイングまで完遂させる)か、送球難が完全に影を潜め、堅実さとアクロバティックな派手さを兼ね備えた
「ゼニの取れる」内野手になったと思いますわ。
奴の凄さは「取れるはずのない打球」を掴み、無理な体勢からでも性格なスローイングが出来るところやね。
しかしあの守備範囲は身体的な瞬発力だけで出来るものやなく、守備位置を含めた打球の読み、一歩目の判断、これらがなければ実現しまへん。
後は…、特に今でも十分やけど、歴史に残る名手になるためには、もう少し捕球からスローイングまでがスムーズになって欲しい気がします。
ほんの少し、少しだけ、ギクシャク感が残っとるかなと。
でも今後数年間は、奴がセカンドのゴールデングラブを独占するやろ。
それくらいのレベルにはあると、誇らしく思うてます。

課題は打撃ですな。
勿論、昨季までと比較して、格段の成長があったのは事実ですわ。
以前から奴は1番打者として自由に打たせるべきやと指摘してきましたが、今季はフォロースルーが大きくなり、ゴロを意識して手首でコネることも少なくなった。
レギュラーを張るだけの打力は身に付けたと思います。
…しかし1番打者として
出塁率.322は物足りまへん。
上の写真では(C)の形に悪癖が出てますが、腰が引けて身体が「く」の字に折れてますな。
多分、二番で小さいスイングをしとった名残りやと思うんですが、これなら強い打球は打てまへん。
腰からボールにぶつける感じでないと身体の軸が伸びまへんし、軸が直立しないと下半身の回転力がバットに伝わりまへん。
この辺は、是非修正して欲しいところなんやけどね。

また2ストライク後の打率.171というのも、出塁率を上げる上で大きなマイナスですな。
ファーストストライクから打っていくため四球が少ないというのはスタイルの問題やからええけど、追い詰められたら少しは粘って欲しいわ。
近くに井端という手本もおるから、カットして逃げる技術を磨いて欲しいですな。

もう一段、階段を上れば、T赤星を超えることも可能やと思いますわ。
頼むで!
9 井上 一樹  60点
   113試合  打率.275 283打数 78安打 11本塁打 30打点 0盗塁 出塁率.354  1失策
(7月) (8月)

今季も好不調のはっきりしたシーズンでしたなぁ。
開幕当初には、最後まで選手が固定できなかった左翼のレギュラーをゲットし、4月の打率は.373と赤ゴジラ・嶋の向こうを張る「青ゴジラ」と呼ばれたものなんやが(苦笑)、5月に.240、6月にはなんと.139と急降下。
7月にはやや持ち直したものの、最終的にはいつもの成績に落ち着きました。

上の写真は今季の7月とそれに続く8月のものなんやが、若干タイミングがズレてるものの、決定的に重心の置き方が異なっとるのが分かりますな。
7月は大きく右足を上げ、腰を投手側に突き出すようにして、何とか重心を軸足に残そうと努力してますが、8月では腰の据わり方を見ても一目瞭然、軸ブレを抑えようとして大きなアクションを避けとるようですわ。
いろいろトライするのは悪うないけど、
たった一月でこれだけフォームが変えるっちゅーのは、少なくとも好ましいことやないわなぁ。

開幕直後の好調は、8月頃のようにムダなアクションがなく、スッと真っ直ぐ立った状態から軸ブレせずに回転できたためでした。
奴の代名詞として「落ちるボールにクルクル回る」っちゅーのがありますが、元々奴は外角の変化球を左翼線に持っていくテクニックがある打者ですわ。
こうした長所が全開になり、かつ外角高めストレートも逆らわず左翼席へ叩き込む(甲子園)など、広範なコースのボールに対応し、広範なコースへ打球を運べるようになっとりました。
これが続けば大した成績を残してたはずなんやけど、案の定、一ヶ月足らずで失速してしもうたね。

しかしマークがキツくなり、身体の近いところにストレートを集められるようになると、ど〜〜〜〜〜しても詰まるのを嫌がって始動を早めたがる。
身体に近いところでミートすることがあの好調の理由やったのに、この傾向が出始めると全てが台無しですわ。
いつものように上体で変化球を追いかけるようになり、ストレートに詰まり、変化球に泳がされる。
2ストライクを取られると打率が.172に急降下するのも、理詰めで相手バッテリーが攻めてきた場合、最後のウイニングショットに至るまでで仕留められない限り、相手のシナリオ通りにしか打たせて貰えない、それだけの打力しかないことを如実に示しとるように感じます。


それでも日本シリーズを見て分かるように、ノッた時の奴の力は捨て難い。
「詰まっても構わない」、「ファールで逃げる」ことを前提にしたら、好調ももう少し持続すると思うんやけどな。
来季はレギュラー奪回に頑張ってや!

投手
11 川上 憲伸  99点
   27試合  17勝7敗 防御率3.32  投球回192 被安打173 与四死球42 奪三振176 自責点71
(A) (B) (C) (D)
                   (E)
 (F) (G) (H)

ようやく昨季、ルーキーイヤー以来私が念願してきた、
球界を代表するエースの一人まで上り詰めてくれました。
投手最高の栄誉である沢村賞を始め、MVP、最多勝、最優秀投手、ゴールデングラブ等を獲得し、優勝チームのエースに相応しい大活躍やったと思います。
MVPについては、立浪の働きがフルシーズン続いてたら、恐らく両者一騎打ちやったと思いますが、立浪の成績が落ちていったことで奴の受賞は確信してました。
(一部には古田なんちゅー声がありましたが、Most Valuable "Player"、プレイヤーとしての働きは段違いやったからね)
ただ10の貯金を稼いだだけやなく、絶対勝利が必要なチームの分岐点でことごとく勝利し、
「チームを勝たせる」存在でしたな。
これこそ大黒柱、絶対的エースという活躍やったと思いますわ。
こんな奴のピッチングを待っとったんです。
私ゃホンマに嬉しい!

さて、ここで先に述べた分岐点として、私は次のゲームを挙げたいと思います。

 ■5/15 vsBS 2-0
  私が初めて名古屋の地で観戦したドラゴンズのゲーム。
  5月のドラはここまで4勝6敗、うち3得点以下が7ゲームと貧打に苦しんでおり、憲伸も前回の登板で援護なく0-1で敗戦。
  前日も9回に岩瀬が打たれて敗れており、ここで憲伸が負けたらズルズル沈んでいきそうな前半最大のピンチ。
  このゲームも全く打線の援護が得られず、ジリジリするような展開の中、7回に憲伸自ら決勝ツーラン!
  憲伸は結局この日、無四球・13奪三振でチームを救う完封!
  チームはこの日以降、9勝2敗で5月を乗り切っただけに、いかに大きな勝利やったかが伺えますな。
  (雑誌Numberで川相もそのように告白)

 ■8/10 vsG 4-0
  首位を走るドラを必死に追走するG。
  「史上最強打線」がヤクルト、阪神相手に大爆発するなど絶好調でこの日を迎えました。
  ドラが初回に1点先取するも、スミ1が続く投手には非常にキツイ展開。
  しかも8回には一死2塁の大ピンチを迎え、元木、ローズを迎える通常ならリリーバーの救援を受ける場面。
  この修羅場を、奴は徹底的な力勝負で相手を捻じ伏せて、勝利を呼び込みました。
  ガチンコで戦って勝つことで相手の勢いをストップし、ペナントを一気に引き寄せるゲームやったと思います。

 ■10/22 vsL 6-1 (日本シリーズ第五戦)
  
このゲームこそ、奴の昨季のハイライトでしたな。
  2勝2敗で迎えたこの日、絶対負けられないゲームで、己の全てを出し尽くす素晴らしいピッチングを見せてくれましたな。
  通常投げとる
ストレート、カットボール、カーブから、引き出しに仕舞ってあったスライダー、シュート、フォークまで、持ち球全て
  を外角中心に配するピッチング。
  そして何より、
迸る魂!
  このゲームが終われば、もう一球も投げられないと思わせるような、正に鬼気迫る投球やったと思います。
  和田に一本ツーベースを打たれましたが、それ以外はG以上とも思えるレオの強力クリーンアップを封じ込め、チームを勝利
  に導くエースの名に恥じない活躍でしたな。
  8回を投げ切って交代しましたが全てを搾り出したピッチングは、チームを勝利に導くエースのピッチングでした。

次に投球内容に目を移すと、被打率が対右打者.251、対左打者.230と、左に強打者を揃えるセ・リーグでは出色の数字を残しました。
やはり球界隋一と言われるカットボールが、有効に機能しとることが伺えますな。
打者としては逃げるボールより、自分に向かって食い込んでくるボールの方が捌きにくいものであり、バットの芯を外して根っ子に噛み付く奴のボールほど、セの左の強打者達にとって厄介なものはないでしょうな。

チーム別の成績を見てみると、ヤクルト戦:防御率5.45 3勝3敗、巨人戦 防御率2.55 4勝2敗。
Gに対して安定していた一方で、ヤクルト戦での防御率が悪いのが目立ちますな。
地方球場でマウンドが合わずに1回KOされたのを含んでますが、ラミレスあたりには何度も痛い目に遭わされた印象がありますわ。
ただし、正直なところ憲伸が目を吊り上げて投げとったのは、序盤の阪神と、Gに対してだけやったのと違うやろか。
もちろん他のチームに対しても、先述の5/15BS戦のようにポイントになるようなゲームでは力を入れてましたが、大方は肩のシーズンのスタミナを考えてか、自らの燃費を考慮したエコノミーな投球をしとったような気がします。
ヤクルト戦にしても、打たれながらも結局は負け越してはおらんことから、要所はそれなりに抑えてたことが伺えますわ。
まぁ、個人記録(特に防御率)を気にせん限りは、エースとしてこれでもOKなんやけど、ファンとしては防御率のタイトルが欲しいしなぁ(苦笑)。
本来、評価点も100点やりたいところやけど、防御率のタイトルがないということで-1点なんやから。

技術的には、上の写真でケチをつけるところは殆どありまへん。
軸足への重心の乗り、最後まで割れない左ヒザ、強く張られた胸、ほぼ理想に近いフォームやと思います。
最後の(H)で左ヒザが伸びてるところが若干気になるところで、調子が悪い時はこれがつっかい棒になって体重移動を阻害することがあり、これが腕のスイングに悪影響して右肩の故障の遠因になっているように感じます。
きっちり身体を沈めること、きっちり右足で蹴れること、要するに下半身の鍛錬を怠らんように願いたいものですわ。


さて2005年。
大エースの座をさらに強固にするためには、
「隔年エース」をどうしても払拭する必要がありますな。
今季は最低でも15勝、そして昨季獲り損ねた防御率のタイトルも狙って欲しいところですわ。
まぁ、数字はある程度度外視しても、昨季のように「ここ一番」で必ず勝つ。
(今季おるかどうか分かりまへんが)G上原やT井川のような他チームの絶対的エースと投げ合っても、それでも必ず勝つピッチャーであって欲しい。
そして、
「全日本のエースと言えば川上憲伸」と、皆が口を揃えるピッチャーになってもらいたい。
今季も頼むで!ドラの大エース!!
34 山本 昌  90点
   27試合  13勝6敗 防御率3.15  投球回157 被安打153 与四死球45 奪三振120 自責点55
03年度での奴の評価は「勝ち切れんピッチャー」やったんですが、今季は7つも貯金を作り、再び「勝てるピッチャー」としての姿を見せてくれましたな。
しかも打高投低の04年度、憲伸を上回る防御率二位という安定感を示したのは、私と同じ39才という年齢を考えると大したものやと思いますわ。
さらに変化球ではなくストレートで三振を取れるピッチングスタイルでもあり、これを見る限りまだまだ第一線で活躍が期待できそうやね。

昌と言えばシンカーと言われたくらい代表的な切り札を持っとるわけですが、その実この2、3年は、ストレートとカーブが投球の軸になっとります。
特に右打者に対して、カーブを見せておいて内角ストレートで三振を獲るような組み立ては、何回見ても目を見張るものがありますな。
この配球の変化ついては、雑誌インタビューで谷繁が導いたものとのコメントがありました。
曰く、谷繁は移籍当初からスクリューよりもカーブを要求することが多かったが、昌自身はカーブの制球には自信がなかったため、その後きちんと練習したら勝負球にすることが出来たとのこと。
30才台後半になって新たなピッチングパターンを編み出したのはあまり例のないことであり、奴の投手生命を延ばすために、これから劇的な効果が表れるものと思われます。

さて、奴の投球内容を眺めて気付くのが、左に比べて右打者相手の被打率が変わらないこと(対右.260・対左.254)ですな。
これは、普通は右打者に向かって変化してくるカーブは餌食になりやすいところやけど、ボールの出所が分かりにくいことや、一度浮かび上がって鋭く食い込む球筋が効果的なんやと思います。
一方で問題なのが、投げる場所によって安定感が全然違うということやろね。
ナゴヤドームでの防御率1.52は素晴らしいんやけど、これがロードゲームでは格段に低下し、特に甲子園6.11(1勝1敗)、東京ドーム6.64(0勝3敗)は話にならんレベルですわ。
あれだけのベテランだけに、マウンドの傾向にかかわらず一定の結果を出して欲しいところやね。

今年は奴も40才。
しかし無理・無駄のない投球フォームや、新たに構築した投球パターンが、あと27勝に迫った奴の200勝達成を手助けしてくれるものと信じます。
今季もエース級としての働きを期待してまっせ!
13 岩瀬 仁紀  85点
   60試合  2勝3敗22S 防御率2.80  投球回64-1/3 被安打53 与四死球17 奪三振53 自責点20
(A) (B) (C) (D) (E) (F)

開幕直前に足の指を骨折、下半身の踏ん張りが効かない状態となり、「あー、これでGWくらいまで使えんなー」と思うてたんやけど、どうにか開幕に間に合わせて五輪期間以外はフルシーズン登板。
20試合の欠場がありながらも60試合登板やから、普通に投げてたら自己最多の70試合くらいは登板しとったでしょうな。
それでも6月以降は大崩れすることもなかっただけに、奴のタフネスぶりには今季もお世話になりましたわ。

さてその故障やけど、下半身の故障は痛みを気にして力が入れにくくなり、またランニングが出来ないために下半身の筋力維持も難しくなる。
このため、開幕から5月までの足の故障が癒えない間は下半身が全然使えず、何とか強いボールを放ろうとして上半身が頑張るため、右肩が開いて制球は定まらずストレートはおろか変化球にもキレがない状態。
苦心惨憺、ようやくカウント上でバッターを追い込んでも、勝負球に威力がないためファールで粘られて甘いボールを痛打される、安定感のない登板が続いてしもうた。
こんな状態やと普通なら二軍で調整になるところやったけど、最後まで首脳陣、本人ともにその方法は選ばんかったね。
ネット上では「岩瀬が潰れる!」と心配する声もありましたけど、私は苦境から逃げて欲しくないと思いました。
そして森コーチが言った、「岩瀬は一軍で投げ続けなければ復調しない」という言葉の真意が私ゃ今でも分からんのですが、結局は時間をかけながらも完全復活してくれましたな。
6月以降は、昨季まで頼りにしていた奴そのものでしたわ。
ただし評価点としては、不調が長引いたこと、ホンマにしんどい場面は岡本が頑張った印象がありますんで、奴としては低めのこの点としました。

こうした経緯を踏まえて今季の奴の投球内容を見ると、私の主観では昨季よりスライダーが減って、ストレートやシュートが増えたように思いました。
奴の復調も全てが揃って戻ってきたわけやなく、ストレートの球威が先に戻って、スライダーの大きな変化は少々遅れて戻ってきたように記憶しとります。
スライダーはキレは戻ってきても、変化が小さかったかな。
デビュー以来、徐々にスライダーの比率が高まってきた傾向に、ここでブレーキがかかった印象ですわ。
少々不調期間が長引いただけに例年より数字は悪化しており(それでも防御率2.80は立派!)、対左の被打率.186はさすがの一言やけど、対右は.260と奴の数字としては少々不満の残る内容ですわ。
例年、対右の被打率の方がやや落ちるんやけど、今季はやはり決め球たるヒザ元に切れ込むスライダーの威力の回復が遅れたことが、この数字の原因になっとるんでしょうな。
また、ずっと9.00前後を維持してきた奪三振率が、今季は7.42と極端に落ちたのは気掛かりですわ。
それがピッチングスタイルの変化を意味するものなのか、それともボールそのものの威力の低下を意味するものなのか。
来季を注目したいと思います。

ピッチングフォームは、バランスの良いものですな。
(B)で高く足を上げて(C)にかけて十分重心を軸足に乗せ、(D)で弓を引くように大きく胸を張り、(E)で十分ヒジを上げてリリース。
重心移動、力の配分などに無理・無駄がないため、疲労も蓄積しにくいええフォームやと思いますわ。

さて来季やけど、クローザーとして二年目を迎えますな。
開幕から体調十分で臨み、タイトルを獲るほどの活躍を期待したいものです。
18 朝倉 健太  20点
   14試合  3勝3敗 防御率4.08  投球回53 被安打64 与四死球23 奪三振38 自責点24
「こんなはずじゃないのに」、というのが私だけやないドラファン共通の思いでしょうな。
02年に200イニングを投げて11勝。
身体的ポテンシャルを考えれば、その後は安定して15勝出来るような投手になれると思うてたものが、スリ足を捨てて臨んだ昨季からドロ沼にはまって這い出すことが出来ない。
03年1勝、そして今季3勝と全く戦力になれず、マウンドでもがき苦しむばかり。
奴がその才能の翼を再び開いて飛び立つのは、一体いつのことになるのやら…。

今季を見る限りでは、復活には時間がかかりそうな気がしますわ。
不振に陥ってからはいろんなフォームを試してますが、上体が突っ込み、左肩のカベが崩れてしまうため、腕の振りが遅れてしまう。
身体より前でボールをリリースしなければならんところが、頭の後ろでリリースしとる感覚なだけに、ボールは殆ど高めに抜けてしまい、それをストライクゾーンに抑え付けようとすると逆に地面に叩き付けることになる。
これでまともにピッチングせぇと言うのが無茶ですな。
二段モーションとか色々小細工してますが、この辺の欠点は全く改善されんままですわ(5月にナゴヤ球場で見た時には、少々マシやったけど…)。
キャッチボールはちゃんと出来とるんやろな…?

しかし、まともに投げられんはずで、実際に被打率.303も打たれてるのに、防御率4.08は悪い数字やないし球速も常に145km前後は計時しとる。
とっくに故障してもおかしくないとさえ思える投球フォームでありながら、この辺に奴の怪物ぶりを感じざるを得ないんですなぁ。
ちゃんと投げられるようになったら、一体どんなに凄いボールを投げるんやろ?

とにかくキャッチボールに始まり、遠投、ブルペンでの立ち投げ、それらを経由してピッチング練習。
きっちり左肩にカベを作り、重心の位置を右足に意識しながら、指がかかったボールを投げられることを確認してから次の段階へ進む。
今は狂っとる
「投げるメカニズム」を思い出すよう、地味でも確実な練習をして欲しいですな。
コントロールとか変化球とかそういう練習は後回しにしても、このメカニズムが身体に定着すれば、それだけで格段に向上するはずですわ。
持てるポテンシャルはエース級だけに、来季は是非とも復活した姿を見てみたいものです。

頑張れ!
12 岡本 真也  95点
   63試合  9勝4敗 防御率2.03  投球回75-1/3 被安打60 与四死球28 奪三振85 自責点17
(A) (B) (C) (D)

「…ちなみに奴については、03年がキャリアハイであり、トレードに出すなら今や…と思うてたりします。」

これ、03年度評価で奴に対して私が書いたものです。
年齢、メンタル等を考慮すると、奴の伸びシロは少ないと思うたんやけど…、今にして思えばアホなこと書いたもんやなぁ。
自分の不明が思い切り恥ずかしいですわ。
岡本さん、すんまへんでした。

最優秀セットアッパーに選出されたように、岩瀬のクローザー異動後のセットアッパーとして、今季の奴は獅子奮迅の活躍を見せたと思います。
140km台後半を計時する直球の球威と、縦に落ちるスライダーのキレは相変わらず。
一方で制球については、内外角はアバウトやけど、縦の変化を武器にしとるだけに高低については悪うないのと違うかな。
奴の被打率.220は立派の一言やと思います。

昨季までは投球テンポやメンタルに問題があり、要所でボールを連発して、カウント不利から痛打されるケースが目立ったように思います。
自分のボールに自信を持ち切れんかったためか、打者から逃げる傾向があるというのが私のイメージでした(私ゃ逃げる投手が大嫌いなんですわ…)。
しかし今季は稀にそういう傾向が顔を見せたものの、堂々としたマウンド捌きで打者を見下ろして投げてましたな。
思い切り腕が振れてる時のボールは威力十分、また連投も効くタフネスぶりであり、切り札セットアッパーにはこれ以上ない適役やったと思います。

奴の投球スタイルは、下半身による体重移動や回転を生かすものやなく、メジャーばりに上半身のパワーで投げるものです。
しかし上の写真(D)にあるようにフォロースルーが小さく、奴はパワー全てを生かし切っとらんように見えますわ。
奴も来季はマークが厳しくなると予想されますし、何か上積みが必要になってくるはずやから、横の変化球を覚えて投球パターンのバリエーションを増やすとか、こうした投球フォームの改善を図るなどの対応が期待されますな。
…とは言うものの、久本と同じく奴も腕が縦振りだけに、横のスライダーの習得が難しいんやねぇ。
目先を変えるようなカーブがええかも知れまへん。

来季は勝負の年になると思いますんで、注目したいところですわ。
47 野口 茂樹  40点
   17試合  4勝8敗 防御率5.65  投球回78 被安打106 与四死球27 奪三振61 自責点49
(7/4)
(A)
 (B) (C) (D)
                   (E)
 (F) (G)
(8/21)
(A)
 (B) (C)
                (D)
 (E) (F) (G)

いよいよチームから放出されかねない苦境に立たされましたな。
01年12勝で防御率のタイトルを獲ってから、故障により02年2勝、03年9勝、そしてホンマの復活を賭けた今季は4勝。
昨季ある程度ローテーションを守っただけに、今季は腕を振ることへの恐怖心も払拭されて、元のスーパーレフティな奴を見られるかと内心期待しとったんやけどね…。
何やかんや言うても、一度ファーム落ちを経験した後、走り込みを行ったとして再昇格した直後に見事完封勝ちして見せたように、まだ一線級として活躍できるだけのポテンシャルは間違いなくあると思います。
それだけに自ら残した成績が招いたこととは言え、今の奴の境遇には暗澹たる気分を感じざるを得まへんわ。

上の写真は7/4と8/21のものなんやけど、7/4は私的にはボールは来てたと思うてたのに5回途中でKOされたゲーム、8/21は立ち上がりからヘロヘロで3回二死無走者から7失点と火達磨にされたゲームですわ。
7/4の(E)・(F)と、8/21の(E)を比較すると、8/21の方が明らかに左ヒジの位置の低さが伺えます。
では何故そうなるのか。
8/21の写真には、大きな問題が二つあります。
まず(D)から(E)にかけて右ヒザに割れがあり、特に(E)では外側に開いてしまっているのが分かりますな。
こうした身体の開きは腕を横振りにしてしまい、球離れを早くすることになってしまいます。
そしてもう一つは、7/4(E)と比べると8/21(D)では右腕が上がってまへん。
上げた右腕をグッと巻き込むことで反対の左腕が上がるんやけど、これなら先ほど問題視した左ヒジが上がるわけもありまへん。
これはピッチャーとしては故障の恐れもある、危険なフォームやと思いますわ。
7月は完封時の名残があったと思うんやけど、たった一月でフォームがボロボロやね。
球数は放れるしフィジカルには問題ないと思えるだけに、こんだけフォームが変わるとすると問題は何らかのメンタルやろか…?

奴の場合、現状ではローテーション投手としての資格はありまへん。
しかし
問題は安定感であって、ボールを投げる力量ではないと思うてます。
素晴らしいボールはある。
それをコンスタントに1ゲーム、1シーズン投げ切ることができれば、ええ時のイメージに近い野口が戻ってくるのと違うやろか。
少なくとも朝倉に賭けるよりは、分のええ賭けやと思うんやけどね。

あと一年、奴には時間が欲しい。
まだスーパーレフティに戻れる可能性は、大いにあるはずやから。
19 久本 祐一  60点
   38試合  1勝0敗 防御率3.83  投球回42-1/3 被安打47 与四死球18 奪三振32 自責点18
(A) (B) (C) (D) (E)
                 (F)
 (G) (H)

前半はストレートが全く走らず、制球もバラバラと、全くええところがなく、アッちゅー間に二軍落ちしてしもうた。
その後も少し上に顔出したと思うたらボコボコにされて、その都度二軍へ逆戻りさせられる始末。
奴と山北が機能せんかったことが、序盤のドラにどれだけマイナスやったことか。
前半戦の奴は、殆どチームに貢献することなく終わってしもうた。
オールスターの少し前くらいから一軍定着したんやけど、その後も敗戦処理を中心に登板しながら炎上するケースもあり、正直言うて私ゃ奴が登板する度にウンザリしたくらいでしたわ。

ところが五輪期間に入り、岩瀬が不在になった頃から奴の左腕が輝き出しましたな。
別人のようにストレートが威力を増して、以前にもなかった球速140km台後半をコンスタントに計時するようになり、滅茶苦茶やった制球もかなり改善してきました。
8月半ばには5〜6点あった防御率が最終的には3点台に落ち着いており、投球回数が伸びにくく防御率が下がりにくいリリーバーとしては、いかに後半は安定しとったかご理解いただけると思いますわ。
こうなると敗戦処理から、僅差のゲームでのセットアッパーへの配置転換となり、ようやく自分の働き場所を確保したようです。

奴の長所は上の写真(E)から(F)にかけて表れていように、右足が着地して左腕がスイング開始しても右肩が開かず、十分に重心の乗った軸足がバネのように身体を前方へ押し出せるところですな。
今季の奴の場合、シーズン途中で突然ボールが速くなりましたんで、どこが成長したのか分かりにくいんやけど、球威・制球とも劇的に向上したことを考えると、地味に下半身を強化し続けた成果が出たとしか考えられまへんな。
とにかく後半の内容なら、勝ちゲームのセットアッパーとしても十分使えると思いますんで、フィジカルを維持・向上させるようにオフの間は頑張って欲しいところですな。

課題としては、実は左打者対策なんですわ。
対右打者が.233に対して、対左打者は.375と、左打者は全員がイチローと対するような感覚で打たれてるわけです。
これは左腕の振りが完全にタテであること、横に動く有効な変化球がないことが原因なんやけど、逆に言えばスライダーやシュートを磨くことが出来れば、切り札的な存在に化ける可能性もあると思うてます。
来季も楽しみな存在ですな。