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越前岳山行記

平成21年度春山行 越前岳

仲 功

 

531日(日) 曇り 川越出発午前6時、川越帰着午後815

同行者:松崎中正、岩堀弘明、岩崎清彦、関口洋介、仲功、長島威、石井秀世、田村昭雄

    戸部秀明、宇津野正敏、加島篤人

 

「きょう俺はゴアテックスだぞ」、「前の方に雨男がなぁー!」川越を出発したバス車中でのそんな話である。今朝のインターネツトによる天気予報情報では静岡県裾野市・御殿場市方面は、どうも曇りで降水確率20〜50%らしい。

 

 今日の平成21年度春山行は越前岳(1504m)である。北陸ではないのになぜ越前岳なのだろう、その由来は知らない。富士山の南東側に位置して富士山より早くに活動を終了した愛鷹(あしたか)火山群の最高峰、富士山や駿河湾、南アルプスの眺めが素晴らしい、それに愛鷹連峰周辺にのみ咲くアシタカツツジがこの時期見ごろ、登山レベルは初心者向きとガイドブックにある。なにしろ富士山の眺めのロケーションが良く、昭和13年発行の五拾銭紙幣の図柄に岡田紅陽が撮影した写真は越前岳頂上から愛鷹登山口方面に降った富士見台から撮ったものだという。そういえば、忍野八海の近くにある岡田紅陽写真美術館を以前訪ねたことがある。                        

 

 それにしても今日は、期待している富士山の眺望は無理かもしれない。しかし顧問の松崎中正先生はアシタカツツジについて事前に植物図鑑で調査ずみでその蘊蓄をいろいろ教えてくれた。そしてそんな心配をこう言って元気付けてくれた。「花は3センチ内外で紅紫色、純粋種は雄しべの数が10本と交配種より多い。ひとに例えれば、それを覗きこんだりすれば少々品性をとわれるけれども、植物なのでじっくりと観察したい。それが出来れば今回の山行の価値は十分ありです」と。宇津野さんもアシタカツツジはこの地域の固有種で牧野富太郎の命名だという。

 

 バスは川越インターから圏央道、中央道の大月JCから須走ICを直進し、御殿場から国道469号を西進して8時20分に十里木高原駐車場に到着。すでに他のバス2台と普通車が10数台駐車していた。駐車場では30人ほどのパーティーが円陣を組んで準備体操に余念がない。われわれも靴ひもを締めなおし、腰を伸ばしていよいよ8時30分に出発した。天気は曇っているが薄日がさして雨の心配は無さそう。

 

 駐車場から直ぐに登山道でよく整備された展望のよい階段がしばらく続く。階段はかなり急で汗ばむ。階段は歩幅をあわせずらいので階段のわきを歩く。15分程で丸太づくりの十里木高原展望台に着いた。多分ここから間近の富士が素晴らしいのだろう。真下にいま出発してきた駐車場が見える。そよ風が気持ち良い、ウグイスも鳴いていた。一休みもなく歩きだす。しばらく緩やかな笹原を登る。二つ目の電波中継塔を過ぎてしばらく灌木帯をゆくと見晴らしの良い“馬の背”にでた。1098.9mの表示と三角点があった。ここまで出発から35分、木のテーブルとベンチがあり一休み。まだ富士山は雲の中、ここからも十里木高原駐車場がよくわかる。“馬の背”からは頂上まで視界がほとんど利かない樹林帯をゆく。健脚の関口さんと石井さんは視界から消えてしまった。岩堀さんと岩崎さんの後について登る。お二人は一歩一歩同じペースをくずさず確実に前進する登り方で年期が感じられる。ところどころにミツバツツジが咲いている。新緑が美しい。足元には知人の山野草展で覚えた“やぶれがさ”が沢山あった。登山道は木の根が露出して段差の大きい部分が多く、雨後の粘土質ですべりやすく苦労した。途中単独行の清水からきた60がらみの男性と前後した。何度も登っているらしく詳しい。川越からといったら「“つばさ”をみていますよ、川越の人たちは皆あんなですか?」と聞かれた。

 

 急坂が終わり、ゆるやかな斜面にでた。勢子ノ辻分岐の標識があった。ここから越前岳の頂上まであとわずか。長い樹林帯が開けやがて山頂に10時10分に到着、出発から1時間40分程だった。山頂からは富士山や駿河湾、南アルプスの眺めはやはり残念だったが、アシタカツツジが1本あり、雄しべ雌しべを十分覗きこむことが出来た。

山頂では14〜5人のパーティーが周りに大型ザックをおいて車座ですでに宴会中、にぎやかでした。われわれもここで昼食、当方は愚妻のにぎりめしだけど、長島さんのにぎりめしは遠目にも格別旨そう。戸部さんは山男よろしく立ち食い。食後に長島さんから小ナスの辛子漬けやらウイスキーの水割りやらを頂戴した。やはり旨かった。彼のザックは随分角張っているなーと思っていたら、なんと氷用の発泡スチロールの箱がはいっていた。できれば荷物を軽くしたいだろうに、皆のために重い氷を背負ってきてくれて本当にありがとう。

 

頂上で40分ばかり休憩して10時50分に下山を開始、往路を忠実にもどる。降りは登りより滑りやすく特に木の根にはより注意が必要だ。両側の木の枝にたよったり、危険箇所に張られたロープに?まったりしながら慎重に降りる。戸部さんからトレッキングポールが役立つよと教えてもらう。途中で登りの30名ほどのパーティーに2回出会う。ひと組は駐車場で入念な準備体操組だろう。やがて宇津野さんに追いつく。実家のある菅原町の自治会長は3代も世襲だとかしゃべりながら降る。

 

 やがて視界が開けた“馬の背”にでてベンチで休憩、見晴らしがよく、バスを降りた駐車場の道路の向こう側に十里木カントリークラブ、その左に富士山こどもの国のグリーンの屋根の建物と大きな駐車場が見える。座っておしゃべりをしているところへ四角いザックを背負った長島さんが合流。なんでも松崎先生、加島さん達と山頂から10分ほど降ったところにあったアシタカツツジの群落を発見したとデジカメを見せてくれた。彼らはその辺の鼻が利くらしい。馬の背を12時に出発し、途中岩崎さん、田村さんと一緒に降る。小川町の田村さんには初めてお会いしたので地酒の晴雲酒造、松岡酒造、武蔵鶴酒造の話や山岡鉄舟ゆかりの忠七めしの話をしながら下山、岩崎さんは友人と“二葉”に出掛けて忠七めしに秘伝のツユをかけずにめしあがったとか。そんな話をしているうちに階段道の上部まで降りる。登る時よりずっと急坂に感じられた。登山口の駐車場に12時35分に無事到着、皆さん水場で泥靴を洗う。

 

 1時にバスで十里木高原駐車場を出発、こんどは次の第二峰の富士の山をめざす。45分ほどで富士山表口5合目(2400m)に到着。小雨模様、残念ながら視界ゼロ、それでも途中の原始林の新緑は美しかった。駐車場からの登山口に今年は雪が多く現在入山禁止と表示があった。小生は中学二年の夏休みに富士登山をしている。金剛杖をつきながら夕方富士吉田登山口から歩き始め、寝ずに歩いて山頂でご来光を拝んだ。山頂では高山病で頭が割れるように痛かった。帰りは須走りを駆け下りた。もう50数年も前の話である。

 

 以上で今回の山登りは終了して、つぎは裾野市須山にある“ヘルシーパーク裾野”の温泉でひと風呂、新しく大きな施設でゆったりと入浴、その後はビールで乾杯、気分も最高でした。

 帰路は往路と同じ道をたどって帰り、全員元気で岩堀建設本社前に8時15分帰着。なんでも今回の下見に出かけるなど事前の準備やら、当日の世話役係を担当してくれた幹事の加島さん、宇津野さんのお二人と行き帰りのバスの中で進行役を務めてくれた長島さんに感謝します。本当にありがとう。

 

 ところで山岳部OB会の山行に今回初めて参加しました。岩堀さんには川越駅近くのドコモショップ付近の路上で、石井さんには川越西口前で、同期の澤田英教君にもときどき行きませんかと勧められていたのですが、普段から歩行訓練不足でそのたびに躊躇していました。今回は先日の山岳部創部90周年記念誌出版記念パーティーに出席して、記念誌を読んでいるうちになんだか出かけたくなったのです。それにやはり訓練なしでしたが、今回の山は初心者向きということも。そんな訳で申込締切日に宇津野さん宛にメールした次第でした。小生は2年前の高麗の日和田山以来の久し振りに味わった嬉しくも楽しい山行でした。帰りのバスのなかで中正先生が「登山の神髄は調べて、登って、飲む。そしてそれを語ってまた飲むということに有りではないでしょうか。」やや不正確でしょうがそんなことをおっしゃっていました。次回を楽しみにしています。