『赤く煙る現実の中で』
二階、廊下の角の隅っこ。
手を引っ張られ、埃の匂いのするそこに連れ込まれる。
「や…ッ! ぼ、ボッシュ…!?」
任務の直後。
衣服はディクの血にまみれて、鉄の匂いを放っている。
その匂いがボッシュの興奮を誘うのか、彼は戸惑うリュウをきつく抱き寄せて笑った。
「しようぜ? リュウ…」
誘う声は、低く掠れている。
リュウはその声にびく、と身体を震わせ、身を捩った。
「や、やだよ…! こんなとこ……誰が来るか…分からないッ…!」
「なんだよ、俺の声だけで、もうこんなになってるくせに…」
ゆっくりと服の上から股間をなで上げられ、リュウの身体が大きく震えた。
そして、口元を押さえて「いやだッ…」と吐き捨てるリュウを哂い、襟に隠された首筋に噛み付く。
人気のない廊下。
二人の息遣いが荒く、零れ落ちる。
這い回る掌は、ディクの血に濡れて、僅かにぬめっていた。
そのぬめる掌が、服の中にずるりと差し入れられる。
「や、やだって…! やめろよ、ボッシュ!」
「…うるさいよ、お前」
その感触に身体を震わせたリュウが、懸命にボッシュを腕で押しのけ、振り払おうとする。
それを不快げに見やり、ボッシュはきつくリュウの肩をつかんだ。
「アッ…!」
そのままきつく壁に押し付けられて怯えたような目をする相棒に、ボッシュは嬲るような笑みを向けた。
シュルッと彼の腰からベルトを抜き取ると「ちょうどいいな」とボッシュはくつくつと笑う。
「俺に逆らうなんて百年早いよ、ローディー?」
蔑んだような笑みを浮かべたまま、彼はリュウの手首をきつく縛り上げた。
そのまま、ぎりぎりと音を立てて「イッ…ゃあ…」とリュウが小さく悲鳴をあげるのにもかまわず、右手首と左手首を頭の上で纏めてしまう。
頬は返り血で濡れ、口元にも軽く血が飛んでいた。
既に乾きかけているそれを軽く舐め、ボッシュは相棒の血の味を確認する。
そして、自分をきつく睨みつける生意気な相棒を腕で囲い込み、ゆっくりと笑った。
「何で逆らうんだ?」
ボッシュは首を傾げて、笑う。
ビッ、と破るようにリュウの服を脱がせて、笑う。
晒された片側の乳首に噛み付いて、笑う。
「お前は、俺のものなのに」
「ヒッ、ァ…!」
リュウの押し殺した悲鳴が漏れた。
片肌を晒し、ズボンも中途半端に脱がされた状態で、息を殺す自分。
……それがあまりにも惨めで、リュウはゆるく首を振る。
「ん…フッ…んんぅッ…」
顎の先を舌でなぞり、目尻に薄く浮かんだ涙を舐め取った。
それだけで、また、ひくと身を捩るリュウ。
それをひどくいとおしく思いながら、ボッシュはリュウの唇をきつく吸う。
―――二階、廊下の角の隅っこ。
ボッシュはディクの血にまみれたまま、相棒を深々と貫いた。
「ヒッ…っぅくッ……、ァ…ァアアッ…!」
―――きつくけぶる血の匂い。
……それを味わうように、深く深く。
奥まで貫いて、引き抜く。
埃にまみれた場所で、相棒を抱き寄せる。
「……お前って。…ホント可愛いよな…?」
唇からもれる言葉は、愛しげで、ひどく優しい響きを帯びていて。
リュウは深く貫かれたまま、きつく唇を噛み締めた。
言葉というものの残酷さを思い知るように、きつく、きつく。……きつく。
……ゴメンナサイ。(…脱兎!)