『キリトリ線つきラブコール!』
親愛なる、間抜けで、馬鹿で、どうしようない天然な相棒へ
よう。元気か。
いや、いい。言わなくてもいい。つうか知ってるし。さっきも会ったし。
じゃあ、何でわざわざ手紙を書いてるのかって?
空気読めよな、ローディー。
口じゃあ言いにくいことだからに決まってる。
なあ、お前、菓子とか好き?
俺は結構好きなんだけど。
最下層って、菓子とか殆どないのな。娯楽も大してあるわけじゃないし。
いや。そんなことはいいんだ。
なあ。お前が望むんなら、つれてってやってもいいんだぜ。
ここよりも、ずっと高いところへ。
お前が見たこともないようなものがたくさんあるところへ、俺だったら連れてってやれる。
すげえ簡単なことだよ、ローディー。
お前が一言、うんって言えばいいんだ。
そうすれば、俺が連れて行ってやる。
破格の申し出だろ?
ああ。言っとくけど、拒否とか。ノーとか。行かないとか。
そういう選択肢、ないから。
良妻賢母(りょうさいけんぼって読むんだぜ。分かる?)になるには、夫に逆らっちゃいけないんだからな。
まあ。要するにそういうこと。
答えは俺にはっきり口で言ってもいいし、態度で示してくれても、身体で答えてくれてもいいからさ。
早めにな。
…まあ、なるべくでいいよ。
それくらいなら許してやるから。
だから、絶対答えろよ。
…ああ。
口で言えないかもしれない間抜けローディーのために、一応これも書いといてやるか。
どうしても言えそうになかったら、この下のとこ(↓これな。コレ)記入して、切り取って、俺に提出な。
…間違ってもゼノ隊長にとか、提出するなよ。
これ、書類じゃないからな。
まあなんていうか。
とりあえずそんな感じ。
じゃあまた任務でな。
あと、俺の足引っ張るのはいいけど、俺以外のヤツを頼ったりすんなよ。
何でとかも聞くなよ。
むかつくから。
−−−−−−−−キリトリ−−−−−−−−−−
私は、ボッシュ=1/64と、未来永劫一緒にいます。
はい / いいえ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「…よし」
ごうんごうんと音を立てるリフトの上。
ボッシュは手にした封書を握り締めて、気合をいれた。
どうしたのボッシュ? と相棒がそれを見て首を傾げる。
少し間が抜けていたり、頭が足りなかったりするところ、あと少し地味なところがチャームポイントの相棒だ。
「…いや」
ボッシュは、彼にしては少しばかり躊躇うような口ぶりで言いよどんだが、すぐにかぶりを振ると。
「おい、リュウ。これ、さ」
と封書を握り締めて、ぐっと相棒に差し出す。
ごううん、と、そのとき丁度リフトが目的地に到着した。あ、とリュウがそこに向かって振り向くと、何故かナゲットの大群がそこで待ち構えていて。
えっ、ええ、何で! と叫びながら、リュウは咄嗟に剣を構えた。それはボッシュも同様なのだが、彼はそのとき手にしていた封書をはらりと落としてしまって。
地下のよどんだ空気に、それはふわりと漂って。
「…!」
ずばっと音がした。
彼の、反射神経とか、すばしこさに関してはそれなりに優れた間抜けの相棒が、反射的に自分に向かってきた対象をずばりと切り払ったのだ。
切れ味は、至って良好の様子。
ボッシュがせっせと書いた恋文は、はらはらりと二つになって、落ちた。
あげく、ほろほろ鳴いて突進してきたナゲットに、踏まれた。
「……!!!!!!!」
言葉にならないとはこのことだ。
相棒はどうしたの、とボッシュに声をかけたが、彼は上手く返事ができなかった。
彼の頭を駆け巡っていたのは、どうしようもない衝撃と、怒りと、やるせなさと、この一言だけだった。
らぶれたーがやぶれたー。
ひとは切なくてどうしようもないときほど、駄洒落が浮かんでしまうのだった。
(ちなみに、ナゲットはボッシュ一人で全滅させました。)(相棒談)
2004/05/11(Tue) 表日記にて。
私はエリートを何だと思ってるんでしょうね。ところで続編楽しみとのお言葉いただいたんですが、これって続編いるんですか…?(小首傾げて)