『首輪』

「新しい首輪がいい」と彼は言った。

 黒くて、綺麗なクビワ。
 まるで、テツのクサリめいた。キレイな、奇麗なクビワ。
 首に巻けば、あつらえたようにピッタリはまる。

「よく似合う」と彼は言った。

 私は曖昧に笑う。


 クビワに触れれば、滑らかな黒の感触。
 そのいとおしさと苦しさに、私は首を振り、俯く。


「新しい首輪がいい」と彼は言った。

 黒くて綺麗なクビワ。
 ぴったりはまるクビワ。

「にげられないように」

 彼は笑って、指先で触れる。私の首に。
 ちりりと爪を立てて、赤い筋を残す。私の首に。

「しっかりと、つなぎとめるように」

 からかうようにつり上げられた唇は、まるで乾いた血のようで。
 赤い筋の混じった、黒いクビワ。
 そっと私は指先で押さえて。

「よく似合う」

 と。彼は言った。


 血の赤と、黒に彩られた私は、ただ俯く。

 ことばひとつもなく、ただ俯く。









2003/04/01(Tue) 18:48 裏掲示板にて
ただし、下書きはとあるお方の家にお泊りしているときに。