『硝子の月は、燃える太陽に焦がされて溶け消ゆる』


 ――夜中に、ふと目が覚めた。
 
 別に何というわけでもない。ただ、ふっと目が覚めてしまったのだ。
 ボッシュは億劫げに数回瞬きを繰り返し、むくりと身を起こす。
 肌に触れる空気はひやりと冷たく、どこか鉄くさい臭いがした。
(そう、どこか血の臭いにも似た)
 ボッシュはどうでもよさそうに小さく鼻をならす。
 嗅ぎ慣れた鉄の臭いは、今更彼の神経を刺激することはない。
 ボッシュは無造作に寝台から起き上がり、ぎしりとスプリングをきしませて、床に転がる毛布の塊……彼の相棒であるリュウ=1/8192を見やった。
 基地の中でも有数の、まともなベッド。
 それは勿論、ボッシュ=1/64のようなエリートのために使われるべきものであり、リュウ=1/8192のようなローディーは床で寝るべきなのである。 
 ボッシュは今更その認識を改めることはなく、すうすうと規則的な寝息をたてる相棒を見下ろした。
 ……冷たい闇の中。
 昼も夜もない。ただ、明かりがあるかないか。……それだけ。
 そんな中で、リュウはボッシュの視線も知らない様子で、静かに寝息をたてて小さく丸まる。
 その小動物めいた様子に、ボッシュは口の端で小さく嘲う。
 それと同時に、弱いものに対する哀れみの情に似たものが湧き上がってくる。
 ……ボッシュの眼差しの下で、リュウがまた小さく身じろいだ。
(寒いのか?)
 空調は整っているとはいえ、光の届かない場所はどこまでも空気が冷たい。人口の光ならば、尚更だ。
 リュウは少しでも暖をとろうとするかのように、薄っぺらい毛布を懸命にかき抱いて、もぞもぞと身じろいでいる。
 ボッシュは、それを何か珍しい生き物でも観察するように見下ろしていた。
 窓の外できらめく人工の明かりが、室内を単調に照らす。
「……」
 冷たい明かりに照らされた、眠る相棒の頬は、ぞっとするほど蒼白く映った。
 ……青みがかった黒髪ともあいまって、その頬はひどく冷たく、白く映える。
 ボッシュは寝台から無造作に降りて、リュウの頬に触れた。
 体温の低いボッシュに触れられたことが嫌だったのか、リュウがそれから逃れるように小さく身を捩る。
「逃げるなよ」
 ボッシュは面白くなさそうに呟いて、リュウの頬をむに、とつねった。
「……んー…」
 痛いよう、というように、リュウの顔がもぞもぞと毛布に潜り込もうとする。
 ボッシュはそれがまた気に入らなくて、頬をつねっていた手を首筋に差し入れた。
 冷たい掌が、蒼白いうなじをあらわにする。
 ……その肌を、また冷たい明かりが照らし出した。
(青と、白か)
 ボッシュはその冷たい色合いに関心を示して、ふっと口元を歪める。
 ローディーのわりにはそこそこ腕がたち、ローディーだからか妙に生真面目な性格をしていて。
 ――あえて口に出す必要も感じていなかったが、ボッシュはリュウのことをかなり気に入っていた。
 多少内省的なところはあるものの、一度引き受けた仕事は最後までやり遂げようとする生真面目さも。
 ……その、地味ではあるが、案外に整った顔かたちも。
 ボッシュは、暖かい首筋にするすると指先を這わせた。そしてその冷たさにまたぴくぴく反応するリュウに小さく、しかしはっきりと笑う。
 かつて、まだ「空」というものが人々に与えられていた頃。
 昼には「太陽」。夜には「月」。
 時間を変えて交互に現れる光源が、世界を照らしているのが見られたという。
 太陽は金と赤。月は銀と蒼。
「…月は太陽の光を受けて、初めて輝くことの出来る光源だった」
 冷たい明かりに照らし出される、蒼白い肌のリュウ。
 その端正な面差しは「月」という単語の醸し出す、神聖で弱々しい印象に近いものを感じさせた。
 ボッシュは、くっ、と喉の奥で笑うと、冷たい掌に熱を奪われて身じろいでいるリュウの首筋から手を離し、未だに静かな寝息を立てている相棒を見下ろす。
「……ん…」
 さらりとした肌に、再びボッシュの掌が降りる。今度ははっきりとした目的を持って動いているらしいその掌は、じわじわとリュウの首筋、喉元、鎖骨の辺りをゆっくりと這い回った。 
「…んっ……」
 その蠢く掌に何か不穏なものを感じたのかどうか…、リュウは小さく呻き、薄目を開ける。
「……なに……、ボッシュ…?」
 その舌足らずな口調に、ボッシュはまた小さく笑った。それが好意的なものだったのか、それとも嘲りの意味を多く含んだそれだったのかは、寝起きでぼんやりしているリュウにはよく伝わらなかったが。
 ただ、ボッシュの掌がいやらしく服の中に潜り込んでいることは分かったので「ボッシュ、自分のベッドで寝ないのかな」とは思った。
「なあ、リュウ」
「……なに…?」
 ハイネックのリュウの上着をまくりあげ、当然のように彼の身体をまさぐりながらボッシュは話しかける。
「お前さ、月って知ってる?」
「ッ…! …え…?」
 リュウは服の下できつく乳首をつねり上げられ、甘い悲鳴をもらしかけた。しかしボッシュはそんなことにはかまわず(あるいはわざとそうしているのか)「まず質問に答えろよ」とリュウの身体に覆いかぶさり、首筋にきつく噛み付いた。
「ヤッ…! つ、ツキ…? って…」
 リュウは、まるで標本箱に突き刺された蝶のようになすすべもなく呻く。そして、そのまま時間稼ぎをするように「ツキ…?」とボッシュの投げかけた単語を復唱した。
「昔、空≠ノ、夜浮かんでたものでさ。光る、白いものだったって話だぜ」
 かぷ、と噛み付いていた首筋から口を離すと、そこにはうっすらと歯型がついている。はだけられた首筋にまとわりつく唾液が、偽物の明かりに照らされて、ぬらりと輝いた。
「……お前に、少し似ていたのかもな」
 ボッシュは口元に楽しげな笑みを浮かべたまま、目に欲望の陰をちらつかせた。
 力なく、彼の眼下に横たわるリュウ。
 月に似た、蒼白いリュウ。
 彼をこの腕の中で貶め、汚すことは、何処かしら冒涜めいたものを感じさせて、ボッシュの心を躍らせる。
 もっともっともっと汚して、貶めて、いやらしくリュウを喘がせてやりたい。
 そう考えて彼は口元を歪ませると「俺に似ていたの?」と首を傾げる相棒の唇を噛み付くように奪った。
「んっ……ふ、ぅん…」
「さあ…似てたのか、どうかなんて……知らない。……見たこと、ないからな」
「ん、……ふぁ……ぁ…ん」
 唇を柔らかく食み、舌を絡めて快楽を貪る。リュウは無意識のうちにか、薄く唇を開けて自分から舌を絡めた。
 ぴちゃ、と唾液が絡まって濡れた音が響く。
 ――今更初めての行為でもない。
 ボッシュは躊躇うことなくリュウを冷たい床に押し付け、上衣を剥ぎ取った。
「…ゃっ」
 背中が冷たい床に直接触れたのに驚いたのか、リュウの喉から小さく悲鳴じみた声が漏れる。しかし、ボッシュはそんな声にはかまわずに、愛撫を再開した。
 ……こうやって「相棒」と快楽を共有するようになったのは、いつからだったろうか?
 いや、ただリュウを散々喘がせて貫くだけ、というのでは「快楽の共有」とは言わないかもしれない。だが、いずれにしても、ボッシュはこんな風に従順に自分の下で、自分の思う通りに身体を跳ねさせるリュウが好きだった。
 彼はどこまでも従順で、愛しい、ボッシュの「もの」だから。
 こんな風に、自分に逆らうという選択肢も知らず、自分の言いなりになる彼が、とてもとてもいとおしいと思う。
 リュウは端正な面差しを歪めて「ひぁっ」と声をあげた。どうやら、ボッシュが脇腹に吸い付いたのが、予想外の反応をもたらしたらしい。
「お前ってさぁ…、ホント淫乱だよな?」
 ボッシュはくすくす笑いながら、軽く歯を立てて右の乳首に噛み付いた。それに反応してか、リュウがまた甘い吐息をもらす。
「ローディーって、皆そうなの? …それとも、こんなのお前だけ?」
「アッ……ぁ…、や…あぁ……」
 舌で嬲るようにころがすと、乳首はあっという間に勃起して固くなった。それだけで頬を赤く上気して、身体をよじるリュウをのしかかって押さえつけ、余った左手でリュウの股間を押さえる。
「……もうこんなに固くしてるな。……ホント、やらしい奴」
「ヒッ…」
 そのまま服の上からまさぐられ、リュウの身体がこわばる。ボッシュはことさら見せ付けるようにゆっくりと、乳首を舐め上げた。ざらりとした舌が、敏感な肌を這い回る。そうしてから、がちゃがちゃと音を立てて、リュウのズボンを下ろし、下半身を晒した。
 まだ幼くも見えるリュウの男性器は、ボッシュの施した愛撫のせいか、既に先走りを漏らしていた。
 その先端に軽く爪を立て、リュウの息を呑ませてから、ボッシュは低く笑った。
「……なあ、お前だけ? ローディーで、こんなにやらしい奴って?」
 応えはない。ただ、はあはあと喘ぐ声が返ってくるだけ。
 いやらしく頬を染めて、唇を噛んで、快楽に喘ぐリュウ。
「……なあ。言えよ?」
 ぐい、と爪を立てる。リュウの身体がびくん、と大きく跳ねた。 
「やめ…ッ、ボッシュ……」
 甘く掠れた悲鳴は、再度加えられた残酷な愛撫に遮られる。
 爪を立てたままきつく先端を擦られ、ねっとりとしごかれる。リュウは懸命に喘ぎ声を押し殺し、太腿をひくひくと小刻みに震わせた。
「あっん……ぁ、あ、あ……ぁあッ……」
 少しサディスティックなボッシュの愛撫にも、慣れた身体はあっという間に燃え上がる。リュウはもはや声を押し殺すことも知らず、腰を跳ね上げさせて絶頂を追いかけた。
「……あ、あ……も、だめ……ッ…、や、やぁッ……」
 もうすぐ、絶頂が訪れる。気持ちよくなれる。
 しかし、理性も慎みも忘れてその感覚を追おうとするリュウを裏切って、ボッシュは唐突に手を止めた。
「ぁ…?」
 いきなりお預けをくらわされて、リュウは戸惑ったように声をもらす。
 ボッシュはそんなリュウの表情を楽しむように、彼を見下ろした。瞳が、残酷な冷たさをたたえて、哂った。
 彼はそのままベッドに腰をおろして、勢い良くスプリングを軋ませる。そして、いかにも楽しそうにリュウを見て、こう言うのだ。
「なあ、お前最後まで俺にやらせる気なの?」と。
 その言葉に、リュウは呆然と目を見張って、のろのろと半身を起こす。
 彼が何を言ってるのかはよくわからなかったが、その意味は何となく伝わった。
「お前のことはこんだけ気持ちよくしてやったんだからさ――…、次は俺の番だろ?」
 ……つまり、そういうことなのだろう。
 リュウは、安眠妨害した挙句に勝手なことばかり言う相棒に困惑しながらも、彼の命じるとおり、ベッドに腰かける彼のズボンに手をかけた。そして、そのままゆっくりと取り出したボッシュ自身に唇を添えようとする……が。
「……そうじゃないだろ?」
 ボッシュは舌打ちしてそれを止めると、リュウの肩を押して床に転がした。
「…え?」
 どさっ、と冷たい床にころがり、リュウはきょとんと彼を見上げる。そんな彼に、ボッシュはやれやれと肩をすくめた。
「俺が言ってるのは、自分のモンくらい、自分で始末しろってコトだよ」
「……え?」
 リュウは困惑して眉を寄せる。
 ボッシュは何を言っているのだろうか?
 寝起きの身体にとんでもない仕打ちを施され、ようやく覚醒してきた脳みそが、今のボッシュの言葉を理解しようと懸命に努力する。 
「……自分で…、……始末?」
 のろのろと身を起こし、リュウは依然として理解できない様子で唇を軽く噛んだ。
 そうすれば正しい答が見つかるというわけでもない。案の定、答は見つからず、リュウは頼りなげな様子で相棒を見上げる。
「そう。……その、ビンビンにおったてたペニス、自分で擦って出しちまえよってコト」
 ボッシュは理解力の低い相棒に、とても優しい眼差しを向けてそう告げた。
「……え」
 リュウは、とても分かりやすく告げられた言葉に呆然として口を開ける。
 ギリギリのところで放り出されたリュウのペニスは、ボッシュの言葉を肯定するかのようにひくひくと震え、また先走りを零した。
「…や、やだよ…! なんでそんなこと……、大体、何で俺、いきなりこんなことされてるんだよ…!?」
 リュウはそんな己の反応を隠すように膝を立てると、脱ぎ捨てられた下着を探して目を彷徨わせる。
「俺がしたかったから、に決まってるだろ? 馬鹿か、お前」
 冷ややかな眼差し。
 ボッシュは躊躇うことなくそう答え、羞恥に頬を染めるリュウを不愉快そうに見た。
「いいから、とっとと俺に見せろよ。どうせこのままじゃ治まりがつかなくて、トイレに行って一人で抜くんだろ? それをここで公開するか、しないかだ」
 勿論、ボッシュはこの部屋からリュウを出すなんて間抜けたことはしないのだろう。
 結局のところ、彼にはただ一つの選択肢しか残されていないのだ。
「……ボッシュってさ……本当に…」
 だから、これはささやかな抵抗。
 リュウは甘い熱に潤む蒼い眼差しに、精一杯の怒りを込めて吐き捨てる。
「年中サカってるよな。…発情期のディクみたいだ」
 ボッシュはその言葉に目を見張り、けらけらと笑った。
「知らねえの? ローディー。ニンゲンも、年中発情期なんだぜ」
 そしてベッドに腰かけたまま足を組み、にぃ、と口の端をつりあげる。「だからさあ?」
「とっととサカってる俺様に、ワンナイトショウを見せてくれよリュウ? もっと足開いて、いやらしくしてさ」
 じゃないと突っ込んでやらねえぞ、淫乱。
 冷ややかに付け加えられた言葉と、冷たい笑み。
 ボッシュは本当にどこまでもボッシュだ、とリュウは麻痺しきった頭でそんなことを考え、躊躇った挙句、従順にこくりと頷いた。
 彼の望み通りに軽く足を開き、そっと自分の手を自身に添える。
 それだけで後孔がひくり、と反応したのを感じて、リュウは屈辱と羞恥に眉を寄せた。
(つっこんでやらねえぞ、なんて。……酷いよ、ボッシュ)
 拙い仕草で、先端をくじり、擦り上げる。巧みで乱暴な相棒の掌とは違う、自分の手。それでも、それをニヤニヤ笑いながら注視するボッシュの視線を感じるだけで、感じる快楽のボルテージは何倍にもなった。
「あ……はぁ…っ…ん、んぅッ……」
 くちゃくちゃ、と水音を漏らす先端からの先走り。これを何処に塗りつけて、そして誰に慣らしてもらうのか。(もしかしたら、このまま自分で慣らすことになるかもしれないが)それをしっかり覚えこんでいる身体は、後孔をひくひく震わせて、待ち望んでいる。
(誰が……突っ込んでもらわなきゃ治まりがつかないような身体にしたんだよッ……!?)
 はあはあと熱い吐息が漏らして、唇をだらしなく開く。目はきつく閉じて、ボッシュの視線を意識しないようにしているのに、それでも身体は彼の視線を感じて熱い。
「アッ……あ、あ、ああ……あっ…ああッ…!」
 リュウは待ち望んだ絶頂の瞬間に、高く顎をそらした。薄く目を開けると、狭い視界の中でボッシュがニヤニヤと笑っている。
 欲望の色を濃く映して、笑っている。
「ヒッ…! あ、アァッ…!」
 リュウはびくびくと身体を痙攣させて、そのまま達した。白濁した液が吐き出され、荒い息が漏れる。
 彼は力なく膝を倒し、快感に霞む目を相棒に向け「ボッシュぅ…」と甘く名前を呼んだ。
 懇願の声に、ボッシュもこくりと唾を呑む。
「……ちゃんと、しただろ…? なあ…、約束……」
 ゆるゆると足を開けば、先走りと精液が既に後孔まで垂れ落ち、そこを濡らしているのが見えた。
 ひくひくと、小さく開いたり、閉じたりを繰り返す後孔は、ボッシュが教え込んだ通り、順番を待っている。
 リュウはかぷ、と自分の指をくわえてたっぷりと濡らしてから、そこに指を押し合て、つぷりと沈めた。
「コレも…俺がやんなきゃ駄目かな……」
 呟く独り言のままに、彼はくちゅくちゅとそこをいじり始めた。慣れた身体は異物をすんなりと受け入れ、悦楽を呼び起こす。
「ぅッ…ぅうんッ……、ボッシュ……ってば…」
 早くきて、と喘ぐ彼。
(ああ、本当に月のようだ)
 ボッシュは乾いた唇を舐めて笑うと、リュウの指を無理やり後孔なら引き抜き、いきり立った自身を押し当てて貫く。
「……ァアアッ!」
 リュウはきつく身体をしならせ、喉の奥から嬌声を迸らせた。
 まだ充分に慣らしていなかったせいか、少し切れたようで、僅かな鉄の臭いがボッシュの鼻先をくすぐる。
「あっ、アッ……、あ、あんんッ…」
 痛みよりも悦楽が強いのか、それとも痛みさえも悦楽なのか。
 リュウは鉄の臭いにも構わず、突き上げるボッシュの身体にしがみついて悲鳴を漏らす。
 奥まで一気に貫き、またぎりぎりまで抜いて、貫く。
 ぐちゃぐちゃとかき回すように、ボッシュはリュウの熱さをたっぷりと味わった。
「ひゃぁ……んッ……あ、はぁ…、あ、ああッ…」
 がり、とまた首筋に歯を立てられ、リュウが大きく喘ぐ。
 僅かに血のにじんだそこを舐め上げ、ボッシュはまた別のところにきつく吸い付く。
(太陽の光を映すことしか出来ない月。誰かの言うなりになるしかない月)
 お前は確かにそれだ、とボッシュは確信し、また深々と相棒を貫いた。
 リュウは一際高く喘ぎ、またペニスを弾けさせる。けれどボッシュはまだ達していなかったので、構わず彼を突き上げる。
「あ……ぁあ……あっ、あ、…アアッ…」
 顎を舌先でなぞると、ふるふると身体を震わせた。
「……可愛いぜ…リュウ」
 快感に潤む瞳。赤く上気した頬。
 幾筋も悦楽の泪を零して、唇を噛む。
(―――俺の言いなりになって、俺の言うがままに足を開き、快楽を貪るお前)
 その顔はあまりにも扇情的で、壮絶なほどに美しい。
(だから俺はお前が好きなんだよ、リュウ)
 ボッシュは低く胸中で呟いて、にぃ、と笑った。
 ……きつくきつくきつく、何度も追い上げる。
 リュウは全身を震わせて、ボッシュの吐き出した白濁を呑みこんだ。
「アッ……あ、ああ、は、あぁ…」
 どくどくと注がれる感触に、どこか恍惚と目を細めて、ボッシュにしがみつく。
 その眼差しに、ボッシュはまたぞくりとくるものを感じながら、相棒にとても優しいキスをした。
「スキだ」
 ちゅ、と触れるだけのキス。
 瞼に、頬に、額に、耳元に、唇に。
 優しく、優しく降らせるバードキス。

「愛してるよ」

 幾度も幾度も囁いて、貫いたまま微笑めば、リュウはうっすらと唇を開き、微笑んだまま目尻にたまった泪を零した。

 偉大なる光を受け止め、反射させることで、美しく輝く月。
 そうであるからこそ、俺はお前を愛しているのだと傲慢な太陽は囁く。

「ボッシュ……」

 それでもいいのかもしれない、とどこか諦めながら、炎に焦がされ、光を放つ月は。

「…うん。……俺も、好き…だよ」

 この瞬間だけ許される睦言を紡いで、また、はらりと泪を零す。

 太陽はきつく月の唇を塞いで、舌を絡めた。

 永遠に我が物であれ、と命じるように、優しく冷たく、烙印を押すように、口付けを与えた。

END








一番最初に書いたボリュです。
なので、随分イメージもなんというか。エロヤバエリートと、逆らえないリュウというか。
これが私のボリュ原点です。最初からエロ満々のイメージでした。


モドル