『届け郵便、送れメール』




「ゆうびんですよー」

 とたとたとた。

 軽い足音を立てて、とむとむ、と彼は扉をノックした。
 ピンクのふかふか毛並みに、ふかふかのくまみみフード。
 見ているだけで何だかシアワセになってしまいそうな彼はポストペットのリュウ。
 インターネットワールドをたてたてよこよこに歩き回る、メールお届け可愛い子ちゃんなのだ。

 とむとむ、とむとむ。

「…るすかなあ?」

 リュウはこくん、と首を傾げて、困ったような顔をした。ちゃんとお手紙を届けて帰らなくちゃ、ご主人様に「おしおき」をされてしまうのだ。
 それは腐ったみかんを「オラ」とか言われて突きつけられることだったり、ぺしぺしクリックで頭をはたかれることだったり、と色々なのだけども。

「困ったなあ、困ったなあ。あのー、あのー、お手紙なんです。あけてくださいぃー」

 リュウはとっても困ってしまって、ぽふぽふとお届け先のおうちのまわりを歩き回った。
 こまったなあ、こまったなあともう一度呟く。
 
 手にしたお手紙の件名は「重要機密」である。

 恐ろしく難解な機密コードで記されたそれは、いわゆる特別機密事項というやつだ。
 そんなものをポスペに届けさせるのもどうかという意見もあるのだが、リュウの持ち主はそんなことは気にしない。
 リュウは30分くらいそこでうろうろしてから、ようやく諦めて溜め息をついた。

「やだなあ。おしおきされちゃうよう…」

 めそめそと早速潤んでしまいそうな目をこしこし擦りながら、リュウは気落ちして、手にしたカーソルをくりくりっといじった。
 きゅいん、という音と同時に、空色に整えられていた背景がくりりん、と変化して。
「えい」
 軽い掛け声と同時に、ぱっと背景がグレイに変わった。

「おう。帰ってきたか」

 見上げたところには、リュウのご主人様。
 頬杖をついて、退屈そうな顔でこちらを見下ろしている。

「ただいまー。あのねえ、ボッシュ。えるよんさんち、おるすだったの〜」
「ハア? 留守、だあ?」
「そうなの。…あのねえ、だからおれ、お手紙持って帰ってきちゃった。これ」
「…ったく。役にたたねえなあ、おまえ」
「……、おしおき…?」
「………」

 ご主人様の声にびくっとみみを震わせるリュウ。しかしご主人様は黙ったまま、彼をドラッグなでなでしてくれた。

「次やったら、みかんな」
「…! ふぇ…」
「クリックしてもいいけどなぁ? な、おまえ、どっちがいい?」
「やー、やー! どっちもやー!」

 リュウはぷるぷる首を振ったけど、とりあえず今はご主人様が優しくなでなでしてくれているので、えへえへとハートマークを出して甘えてみた。

 たとえばそんな。

 1stレンジャーボッシュ=1/64の、可愛いペットとの生活だったり。










2003/06/18(Wed) 02:24 裏掲示板にて
魔が差したんですごめんなさい勘弁してください…。