――『甘いケーキとクリスマス』――
「ケーキはお好きですか?」
お決まりのように、二人で並んで帰る帰り道。
寒いなー、そうですね、雪降らねーかなー、そうですね、クリスマスに雪降ったらサイコーだよなー、そうですね。
……間髪いれずに繰り返されるそうですね、に、さすがに太一がなんともいえない顔になって。
なあ、お前話聞いてる?
そろそろそう聞いてやろうと思った、ちょうどそのタイミングに。
……非常に思いつめたようなカオでそんなことを聞かれて。
太一は言葉に詰まって……「いや、キライじゃないけどさ…」ともごもご呟く。
「………………」
光子郎はそれをじぃいいと据わった眼差しで見据えて。
「………………………そうですか」
それだけ応えると、スタスタとまた前を向いて歩き出した。
「……………………」
太一はそれをぼけーと見つめて。
「…………光子郎…くん??」
それがどうかしたんですかとか、なんでそんなに切羽詰まったカオしてんすか、とか、色々言いたい事も言えずに、ただただ立ち尽くしたのであった。
――――7日前。
光子郎は完全に据わった目で日々を送っていた。
特に何かしら不満があるわけではない。
ただ、そのコンピュータに匹敵するんじゃないかもしかしてと言われないコトもない脳みその演算能力をフル回転させて、ただひたすらに色々と考えているがゆえである。
しかし、はたからすればそれは大変に不気味なだけであった。
というか、怖かった。
「い、泉……?」
「はいなんですか先生」
授業中ですら先生をびびらせた。
「どこか身体の調子でも悪いのかな…? いや、無理をすることはない、保健室に……」
「いえ結構です」
「いやいやいや、無理はよくない」
「いえ結構です」
「そ、そうなのか…?」
「はい」
光子郎は据わった目できっぱりと言い切った。
「僕はすこぶる健康体です」
――――6日前。
相変わらず据わった目で、真剣かつ深刻にお台場内の各書店で雑誌を立ち読みする光子郎の姿がそこここで目撃される。
「光子郎……くん?」
不幸にもそれを目撃してしまった空が、恐る恐る声をかけてみたりしてしまった。
「はいなんですか」
ぐりん、と音がしそうな。
そんな機械的な動きで光子郎が振り返る。
「い、いいえ、いえ、何でもないの、そんな真剣な用事じゃないんだけど!!」
その形相は、善良な空をびびらせるに十分事足りるものだった。
そして、光子郎が真剣かつ深刻に立ち読みしていた雑誌のタイトルを見て、空はちょっと儚くなりそうになった。
「……………………………」
「そうですか、では僕はこれで」
彼はにこりともせずに述べると、手にしていた本を持ってレジに向かっていった。
「……………………………………………………買うの…………?」
途方に暮れたようにぽつりと呟いた空の目には『クリスマスまであと少し! カンタン・ラクラク編物講座で、カレのココロをあっためて♪』という愛らしいポップ体の字が躍っている。
――――5日前。
もはや教室ですら彼の奇行はイイカンジに表立ってきていた。
休み時間になると、かわるがわるに明らかに女性向けの特集雑誌を、この上なく真剣な眼差しで読みふけっているのである。
「な、なあ泉……」
一人の勇気ある少年が聞いた。
「何か?」
光子郎は簡潔に応じたが、眼は雑誌から離れない。
「……な、何でお前そんな本読んでんだ……?」
その勇者とも言うべき問いかけに、光子郎は無表情のまま、相変わらず据わりきった目を級友に向けた。
「何か、不都合でもありますか?」
「い、いいや、いやいやいや! 全然ないんだけど!!」
彼はある意味魔王であった。
ゆえに勇者は敗れた。
……魔王が勝ってしまう戦いも、稀にあるのである。
――――4日前。
とうとう思いつめた、据わった光子郎の目の下にクマが現れた。
勿論、肉食で蜂蜜を舐めてそうなアレではない。
いわゆる寝不足・疲労を抱えた人間によく見られる目の下の線だ。
「なあ、光子郎」
さすがの太一も聞いた。
………いつもの帰り道。
そうですね、すら言わなくなってしまった光子郎を真剣に心配して。
「お前、一体どうしたんだよ?」
尋ねる声に、光子郎は「何でもないんです」とだけ答える。
「…………なんでも、ないのか?」
太一はちょっと寂しそうな目をした。光子郎はそれにはさすがに罪悪感を感じたらしく「いえ…」と言葉を濁して。
「大丈夫、ですから。…心配しないで下さい」
久しぶりに浮かべた笑顔を愛しい恋人に向けて。
「………お前がそう言うんなら」
と、相変わらず心配そうな太一を無理やり納得させた。
3日前・2日前・1日前。
これらの日々の状況を語るのはやぶさかではない。
だが、これらの3日間、とうとう光子郎が自宅から出てこなくなってしまったこと、(休みだから学校にも来なかった)それを心の底から心配している太一が……それでも光子郎の言葉を信じて、でもやっぱりこっそり泣きそうだったこと、それを見た某「八神太一ファンクラブ」会長八神ヒカリがイイカンジにブチ切れ状態で「光子郎さん………覚悟はいいかしら……?」と明後日の方向を密かに睨んでいたこと……。
ひとまず、この一週間のとある努力を隠しとおしたがった一人の少年の思いを察して、この3日間に関してはこれらの事実だけを述べておこう。
――――そして、当日。
そう。今更わざわざ言うことではないかと思うが。
何の当日かというと、勿論。
「メリー、クリスマースッ!!」
パンパンパーンッ!!
紙ふぶきが勢い良く室内に舞った。
……イエス・キリストの生誕日と言われている、しかしクリスチャンでもなんでもない日本人にとっては単なるお祭騒ぎの日としか捉えられていない、12月25日である。
そしてちなみに、ここはお台場市内のとあるカラオケボックスである。
新旧選ばれし子供たちはここに各々のパートナーを連れて、パーティをとりおこなっていたのであった。
「僕、カラオケボックスに入るのは生まれて初めてです」
「だぎゃ〜」
生真面目な、少し緊張した面持ちでコメントを述べる伊織に、
「やーだあ、ぜんっぜん緊張することなんてないのよ伊織!」
と、これまた無意味に自信たっぷりにばんばん伊織の背中を叩く京も、実はカラオケ初体験である。
「いや、別にカラオケでパーティする理由は特になかったんだけどさ」
そんな二人に太一がちょっと笑って、その身体に先日帰国したミミが思いっきり飛びついた。
「そうっ! 実はコレは私のリクエストなのでーっす☆」
彼女はこれ以上ないくらいご機嫌に笑って、クスクスと太一にしがみつく。
「おいおい、ミミちゃん? まさかアルコール飲んだんじゃないだろうな?」
太一が心配そうに尋ねれば、それすらも嬉しいのかミミは更にご機嫌に。
「やっだー!! ちょっとやそっとのワインくらいでこの私が酔うと思ってるの太一さんーっ!?」
ばしばしばしばしーっと太一の肩を勢い良く叩いた。その横では「ミミ〜…」と不安げなパルモンが彼女を見上げている。
「…………………………随分と命知らずだよね……………ミミさんも…………」
「たけりゅう……?」
肩に哺乳類型なパートナーデジモンを乗せながら、某八神太一ファンクラブ副会長高石タケルが呟いた。何か暗黒系のオーラが見えるのは、果たして錯覚か現実か。
そのオーラに怯えてか、彼から最も遠く離れた場所でがたがた震えている一乗寺賢を、パートナーのムシモ………失礼、ワームモンがしきりと心配している。
「………………………ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう……俺の太一に俺の太一におれの太一に……」
ブツブツブツブツとかつてジュレイモンにそそのかされて大騒ぎをした某バンドマンこと、某八神太一ファンクラブ会員石田ヤマトがなにやら呟いている。それを労わるような目つきで、傍らのガブモンがそっと見上げた。
「ヤマト……俺はヤマトのそばにいるよ……?」
何か少し切なくなるような光景だ。
そして。
「だ・れ・がアナタのですか?」
どかっ!
某八神太一以下略会長八神ヒカリが、見事なキックを石田さんのむこうずねにヒットさせた。何が見事かというと、威力もさることながら、その蹴りをとりあえずガブモンと己のパートナー、あとはタケルにしか目撃させていないことである。
「タイチ〜、コレおいしーよぉ、コレ〜」
そんなことは勿論露知らず「光子郎、遅いなあ…」とちょっぴり切なくなっている太一の元へ、彼のパートナーデジモンがどすどすやってきた。(どうでもいいが、どうやって彼らがこのカラオケボックスに入ったのかというと、ボックス内に入ってから京がノートパソコンを立ち上げてゲートを開いて彼らを招き寄せたのである)
見ると、顔中をクリームでべたべたにさせながら、喜色満面でケーキをほおばっていたらしい。
「タイチ〜」
「うわっ、頼むからその状態でくっつかないでくれよ!!」
「なんで〜?」
「べたべたするから! うわあ、だからくっつくなって!!」
しかしアグモンはパートナーの懇願にも関わらず、べすっと突撃した。
いつものように大好きなパートナーにびったりと張り付いて「タイチ〜」と甘える。
「あーあーあー…………」
太一はなんだか少し泣きたくなりながら「やってくれたぜオイ」と見事にクリームだらけになった服を嘆いた。
「……太一、服、少し洗ってきたら? ハンカチ貸すわよ?」
「さんきゅ、空。………ていうかお前も気をつけろよ」
「え?」
そんな彼に親切にしてくれた空の背後で、やはり顔中クリームでべたべたになった彼女のパートナーが「うふふふ〜」とちょっぴり危険な笑い声を響かせながら「ソォーラー……」と声をあげる。
「え、ちょっ、やだ、ピヨモンそのクリームはまさかああっ!!?」
「ソラぁ〜♪ このケーキ美味しいのよ〜?? ソラにもあげるぅ〜!!」
「いやいやいやいや、いいのいいのいいの! 私はフォークとお皿で食べるからぁ!!」
それと殆ど類似した光景……としいうか、それの進行型が、その近くでも見られている。
「じょーおうう〜♪」
「ああああああ……ネクタイが………ブレザーが………! ゴマモン〜! なんてことをしてくれるんだよぉ〜!!」
「なんだよぉ? このケーキ美味いぞぉ? くえよー!」
「だあああ、壁を汚すな壁をぉ!!」
やっと受験から解放された最初のクリスマスだというのに、これでは丈も浮かばれないと太一はぼんやり思った。というか、この祭りの後、一体どうすればカラオケの店員に弁償料金を払わずに済むだろうかともちょっと考えた。
「ごぉぐるーは、しってるぅぜぇ、たたぁかいとぉっゆうきのぉーイミ〜っ!! いつでもぉそばぁでぇ、みてたぁぁぁっ♪」
「大輔、ゴーゴーっ♪」
「次私だからね、大輔ぇっ! さ、ホークモンデュエットよデュエット!」
「ぇええええ!?? でゅ、デュエットですか京さん!!」
「そうよお。……なに? 不満?」
「い、イエイエイエイエ!!」
疲れたようにめぐらせた視線の先では、どうにか「カラオケ」という場所を利用している大輔と京の姿が見られた。
「あのぉーひとぉからぁあ、おれぇーへっとぉっ♪」
「大輔ー、オンチー♪」
「じゃあ、神田川いきましょーっ♪」
「神田川……って京さんそれデュエットじゃないですよ!!!!」
…………気にしない気にしない……。
「一休み、一休み……」
太一はうっかり著作権にひっかかりそうなコトを言いながら、フラフラと廊下に出た。
確かに楽しいことは楽しいのだが、これは問答無用で疲れる。
(それに)
………太一はちょっと恨めしそうに、最近ようやく入手した携帯電話をちらっと睨んだ。
クリームでべたべたになった服を拭うためにトイレに向かいながら、覚束ない手つきで光子郎に教えてもらったばかりの受信メールのチェックをしてみる。
ピッ。
<少し遅れます。皆さんによろしく言っておいてください。光子郎>
……この上なく簡潔な、一言メール。
太一はそれにむむむーっとまた眉を寄せた。
(なんだよ! この一週間ヘンにコソコソしまくった挙句にコレかよ!!)
(光子郎のバカヤロバカヤロバカヤロ)
(テントモンだってかわいそうじゃねーか! せっかくアイツに会えると思って中で待ってんのに!!)
(俺だって。………俺だって俺だって俺だって!!)
太一は不満でいっぱいのまま勢い良く角を曲がって「光子郎のバカヤロ!」と口に出して吐き捨てた。すると。
「……そんな事言わないで下さい」
まるで苦笑するような、そんな優しい声。
そんな声が耳に届いて――太一は角を曲がった途端に鉢合わせした光子郎に、ぎょっと目を見張る。
「光子郎……」
「遅くなりました。……お待たせしてしまいましたね」
光子郎は優しく笑んで、ここ数日消えなかったクマの残っていない顔で、太一に「メリークリスマス」と告げた。
「…お」
太一は一瞬怒鳴ろうかどうしようか考えてから。
……ふいっとそっぽを向いて、ぼそりと言うに留めることにした。
「おっせぇよ……」
その拗ねたような呟きに、光子郎の顔が優しくほころぶ。
「すみません」
彼はそう詫びてから、クリームでべたべたな太一の服にふと目をとめて、くすっと笑った。
「どうしたんですか? この服」
「………ふん」
太一は鼻で笑ってから……「光子郎が来たら、思いっきりしがみついてやれ」と言い含めてきたテントモンのことを思い出してニヤリと笑う。無論テントモンも、ミミと空とヒカリと京が用意した巨大ケーキをヤケ食いしたせいでクリームだらけになっている。
(お前ももうすぐクリームの餌食だ)
太一はちょっぴりすさんだ笑みを見せながら「だからコレ、拭いに来たんだよ」と光子郎の後ろの方にある男子トイレを示した。
「……へえ。あ、コレって女性陣の力作ケーキですか? もしかして」
光子郎は太一の様子に釈然としないものを感じたらしかったが、とりあえず追及はせず、そう尋ねる。
「ああそうだよ。ま、あとで嫌っていうほど味見できるから楽しみにしてろよ」
太一はそう告げて、光子郎の横をすりぬけようとした……が。
「それは少しつれないんじゃないですか太一さん?」
クスリ、と明らかに何かを企んでいそうな光子郎に腕をがっしとつかまれて、踏みとどまる。
「……なんだよ」
――――嫌な予感嫌な予感嫌な予感。
太一は少しびびったようにひきながら、光子郎の続く言葉を待った。……しかし光子郎の唇からは次の言葉は出ず。
「んっ……!!」
代わりに、その唇が太一の唇に降ってきた。
「んっ、んっ、んぅうっ!!」
光子郎はそのまま太一の身体を壁に押し付け、散々口内を蹂躙する。
その挙句、くったりと力の抜けた太一の頬や首筋にも舌を這わせて「甘い」と一言のたもうた。
「ッッ……!!!」
バカヤロッ!! と勢い良く怒鳴ろうとして、また唇をふさがれる。今度もきついディープキスだ。
「ん……んぅぅ……ふぁっ…」
ぴちゃりといやらしい音を立てて離れた光子郎の唇が「騒ぐとヒトの迷惑でしょう?」とからかうように囁く。
かあああっ、と太一の頭に熱が上り「こんのスケベっっ!」と今度は小さな声で罵倒した。
「すみませんね」
光子郎は反省した様子もなくしれっと答え、ちゅ、と再び太一の首筋にキスを送る。……太一はもはや何も言わず、彼を振り払おうと腕に力をこめた。―――しかし。
「どうせならセーターにすればよかったかな」
まるで苦笑するように光子郎が囁いて。
ふわぁっと、その首に柔らかいものをゆっくり巻きつけたから。
……太一はなんだかキョトンとしてしまって。
「……………なんだ、これ…?」
鮮やかな、オレンジ。
視線をめぐらせた太一の目に真っ先に飛びこんできたのは、世にも眩しい太陽の色。
「マフラー、ですよ。……手編みの、ね」
光子郎はやや赤面しながら口早に告げて、ホッとしたように笑った。
「何とか間に合いました」
―――……。
……太一はその言葉に更にキョトンとして。
首を覆う、くすぐったい柔らかな感触に肩をすくめて……。
「なあ……コレ、くれるのか?」
つい、そんな間抜けなことを聞いてしまった。
しかし光子郎は間抜けだとは笑わずに「はい」と優しく答える。
「貴方のものです」
優しく優しく、恭しく。
「初心者が数日間で編んだ急ごしらえですから、きっとほつれも多いでしょうけど」
今回は、どうか勘弁してください。
光子郎は困ったように苦笑して、ようやく状況が飲み込めてきたらしい太一に笑顔を向けた。
「……メリー、クリスマス? 太一さん……」
その言葉に。
……太一はこくん、と子供のように頷いて。
「……さんきゅ、な……」
顔を真っ赤にして、俯いた。
「一週間、心配かけてすみません」
光子郎はそう囁いて、クリームでべたべたになるにも関わらず、ぎゅうっと太一を抱きしめた。
「……俺だって、プレゼント用意してねーってわけじゃないんだからな」
先を越された、とあんまり悔しくなさそうに呟きながら、太一がにこにこと光子郎に念を押す。
「はいはい」
光子郎はそれが可愛らしくてたまらないご様子で、やっぱり隣でにこにこ笑っていた。
「ココ」
二人がようやく二人は彼らが借りた部屋の前に到着し、太一は短くそう告げて、幸せそうにぬくぬくとマフラーに顔を埋める。
ココ、と告げたきりドアを開けようとしない太一に「僕が開けろってことかな」と光子郎はちょっと苦笑して、何の気構えもなくドアを開けた。
「…………。……ああああああっ!! 光子郎はんやぁあっっ!!!」
途端に。
「あらやだ光子郎くん!」
「まあまあ光子郎くん!」
「やああ、光子郎!」
部屋の奥から飛んでくるクリームだらけのテントウムシ型のデジモンに。
入り口近くに控えていた空、丈、ミミのクリームだらけのお三方に。
――――彼は一斉に洗礼を受ける羽目となったのだった。
「へへ、あったけえ」
太一は「うわああああやめてくださいよおおお」と悲鳴をあげる恋人に構わず、悠々とドアを通過し「おにいちゃんそのマフラーどうしたの?」と目ざとく発見した妹に、この上なく幸せそうな笑顔を向けた。
「クリスマスっていい日だよなぁ♪」
その蕩けそうに愛らしい兄の顔に、ヒカリは胸中で「ちちぃぃっ」と激しく舌打ちする。
(まさかその手でくるとは!!!)
手編みの奥義は女性専用と思ってうっかり油断していた。
(タケルくん、来年は手芸屋さんも要ガードね)
(全くだねヒカリちゃん★)
ひそかにテレパシーをかわして笑う二人の横で、大輔がノリノリでまだ歌っている。
(とりあえず、俺のプレゼントは今日の帰り際にでも渡してやるよ、光子郎)
太一はウキウキとマフラーに顔を埋めて、ニコニコと笑う。
(………一週間も心配させた、罰だと思えよ?)
……鞄の中に忍ばせてある、とびっきりのクリスマスプレゼント。
(俺だって負けないからな)
そんな微笑ましいような、どこかずれた事を思って太一はまた笑った。
――――その視線の彼方では、まだ光子郎がクリーム責めに遭っている。
「――――――――弁償は確実ですね」
伊織がぽつりと呟いた、そのセリフを聞いたものは。
――――言うまでもなく、皆無であった。
中途半端なギャグ。
珍しくデジモン出現率が高いですね。