『棘よ痛みよ』



(我が胸に突き刺さる、棘よ痛みよ)
(何故おまえたちは、そのちからでわたしを殺さない)

(我が心に突き立てる、棘よ痛みよ) 
(何故おまえたちは、そのつよさでわたしを傷つける)


 ――それが痛みだというのなら、いっそ死んでしまえばいいのに。

 ――それが苦しみだというのなら、いっそ倒れてしまえばいいのに。


 雨はただただ降り続き、我が身を水で溢れさせ、わたしはただあえぐように唇を開けて。
 求めるものはくうき。
 なのに、この口に入ってくるのは汚れた水ばかり。
 それを飲み込むようにして、そうしてからその違和感に喉を詰まらせて。


 かけられる言葉などない。
 かけられる声などない。


 わたしは一人なのだ。

 どこまで歩いたとしても、ただ一人でしかないのだ。


 木の棘は奥深く突き刺さり、抜こうとするとそのささくれが中を苛む。
 その痛みは身中を傷つけ、心中を恐れで満たし、やがて熱くもゆるようでいて、それでいてひややかな体液が滴り落ちてくる。


(我が胸に突き刺さる、棘よ痛みよ)
(何故おまえたちは、そのちからでわたしを殺さない)

(我が心に突き立てる、棘よ痛みよ) 
(何故おまえたちは、そのつよさでわたしを傷つける)


 棘はことばを知らない。
 痛みはおもいを知らない。

 それゆえに、わたしは歩き出すことを知らない。


 ひややかな雨の中、一人たたずんで。

 昔歌った、小さな子守唄を歌おう。








2003/09/11(Thu) 01:48 裏掲示板にて
なんかへこむことがあったらしいんですが、よく覚えてないです。どのジャンルともとれるので、全ジャンルからリンク。