『我侭で、愛すべき君と』
――例えば、貴方が誰かを起こすとしたら。
……どんなやり方で、目覚めの言葉をかけますか?
「朝」
ちちちと鳥の声と共に、けだるげな声を耳元に注いで。
「腹、減ったんだけど」
ぺろりと耳朶を軽く舐めて、ぞくと震えた体をからかうように抱き寄せて。
「……。……ッ…」
もぞもぞと、布団の中。
寒い肩口を守るように抱きしめる、腕を奪って、指先を一本一本丁寧に舐め上げて。
「……」
頬を染め、なんともいえない複雑そうな顔で起きてくるのをニヤニヤと眺めて、首をかしげ。
「メシ」
軽く、その唇に噛み付いた。
――例えば、貴方が誰かを起こすとしたら。
……どんなやり方で、目覚めの言葉をかけますか?
「……セクハラ」
少しだけ掠れた声で、一人前に毒づくのが愉しくて。
くくと笑って、ベッドから追い出して。
「トマトはなしな」
「…知らないよもう」
そう。ちなみに、これが彼の場合。
朝寝を満喫しながら、可愛くも愚かなひとの背中を目で追って、ただただ命令するばかり。
「いつか絶対返品してやるから。このワガママ犬め…!」
「ふうん。…で、いつかっていつ」
「……知るか、もう!」
朝から荒れ模様の飼い主に、彼はくくくとただ笑うばかり。
不機嫌にさせたいわけではないのだが。
…つつくと、面白いのだ。この飼い主は。
決してオススメしない起こし方ではあるが。
彼らの朝は、大概においてこのような雰囲気の、ようだ。
2003/03/27(Thu) 23:12 裏掲示板にて
犬ボッシュ×リュウ。…返品は無理だな。