『我知らぬ懺悔』




 ……時折、ひどく泣きたくなるような。

 そんな瞬間があるのです。


「それはおまえが弱いからだよ、ローディー」


 相棒はそう言って笑います。

 そうなのでしょうか。
 弱いから、泣きたくなるのでしょうか。

 私は涙を拭って、また立ち上がります。
 そうでなければなりません。

 私は、そうして生きていくからです。


「這い蹲るようにしてでも、生きたいもん? …無様だね」


 相棒はそう言って哀れみます。

 そうなのでしょうか。
 私は、無様なのでしょうか。

 人として、真直ぐに生きてゆくこと。

 それは時に苦しく、時に切なく。
 痛いことばかりように、思えるのです。


 いっそのこと、明日死んでしまう方が楽なように思えるくらいに。


 それでも、私の心臓は未だとくとくと脈打ち。
 私の手足は、生きるためにもがこうとするのです。

 全てを投げ出してでも、生きようとするのです。

 瞼が、とても熱くて。
 …とても、切ないのです。


「…おまえ、また泣いてるの?」


 相棒がそう言って苦笑します。

 そうなのでしょうか。
 私はまた泣いているのでしょうか。


「…わからないんだ」


 私は頬を伝う水をそっと指先で拭って、ぼやけた世界を見つめます。

 相棒が、その指を捕まえました。

 ぺろりと、私から生まれた水を、舐めとります。


「…どうしてだろう。どうして、おれは泣いているんだろう」

「そんなの。俺が知るかよ…」


 相棒は呆れたように笑って、私を引き寄せました。

 暖かくて冷たい、相棒の腕の中。
 私はそっと目を閉じて、はらりとまた水を零します。


 また、ひどく胸が苦しくなりました。


 けれど不思議と、いつものように明日死んでもいいとは、思いませんでした。










2003/04/13(Sun) 14:39 裏掲示板にて
ボシュリュだかなんだか。「私」ですが、別に女の子リュウではないです。