『冷たい指先』




 君の指先は、いつもひややかで。

「……リュウ?」
「…うん」

 名前を呼ばれて、おれはいつものように曖昧に微笑みながら。

 ――その指先を、そっと口に含む。

「なに」

 まるで苦笑するような、そんな気配。
 おれも、なんでもないよ、と答えながら、小さくくすりと笑ってしまった。

 暗い部屋の中。

 ベッドの中、静かに寄り添いあって。

 その冷たい指先を温ませるように、口の中に含んで。

「……つめたい?」

 ボッシュが低く囁いた。

「うん」

 ちろり、と舌先で爪の先を舐めながら、おれは頷く。

「…つめたい」

 ボッシュの指先が、おれの上顎を内側からなぞった。

 その感触に僅かに身を震わせながら。

「……」

 そっと目を閉じて。

 ――…また、つめたい指先を温ませる。

 さながら儀式めいた、ヒメゴト。

 指を一本一本舐め上げて、小さく笑えば。

「…おまえも、つめたい」

 ボッシュの舌先が、からかうようにおれの首筋を這った。 










2003/03/19(Wed) 13:38 裏掲示板にて
多分、一番最初に書いた気がします。短かすぎだろう。