『夕陽の幸せ』




「貴方は今、幸せですか」
「……は?」

 唐突といえば、唐突すぎる質問に、太一は面食らって立ち尽くす。
 から揚げ棒は、セブンのものよりもホットスパーのそれの方が量が多くて花マルだ。
 嬉しそうにはぐはぐしていたところに、突然問われたこの言葉。面食らうなという方が、無理だ。

「突然なんだよ? もしかして腹減ったのか?」

 から揚げ棒は分けてやらないぞ。食べたかったら自分で買えとけちなことを言う先輩に、光子郎は「質問に答えてください」と難しいカオ。

「……」

 太一はかぷ、とまたから揚げにかじりついて。

「ま、幸せかな。ご飯も美味いし、健康だし、皆も、アグモンたちも元気だし」
「……そうですか」

 光子郎はその答に、こっくりと頷いて。

「それなら、いいんです」
「……そうなのか?」

 そのまま、会話を終わらせてしまった。
 ……太一は、食べ終わった棒を持て余すようにくるくる回しながら、小さく苦笑して。

「あのさー光子郎」
「なんですか?」
「昨日まで俺、口内炎がひどくてモノ食べるのきつかったの。…だから、滅茶苦茶ブルーだったんだけど」
「……」
「……もしかして、昨日俺がおまえの奢ってくれた肉まん受け取らなかったの、凄い気にしてた?」
「……そんなことを意地悪く訊ねる先輩には、答えてあげません」

 そんな、平和な帰り道。
 今日も彼らは、幸せな模様。

「あー。きっと明日、晴れるぞ。サッカーしてー」
「明日は雨ですよ。天気予報で言ってました」
「あたらないって。だって、ホラ」

 太一は笑って、空を見上げた。


「こんなに、夕焼けが綺麗だ」










2003/03/22(Sat) 23:01 裏掲示板にて
光太。無性に彼らが書きたくなったので。好きです、二人。