代表質問 苗村洋子
緑・ネットを代表して苗村洋子が代表質問をいたしました。
市長の答弁は載せていませんが、分権・自治の立場から質問しました。
これまでも、市政運営における市民の直接参加や、その前提となる情報の公開と提供など、言わば「市民自治」「住民自治」をめざすための手法をさまざまな政策課題に対して提案してきました。また、政策法務に代表される自治権の拡大――すなわち国からの分権を進める「団体自治」という点でも、条例づくりをはじめ、ときには国と対峙する姿勢が必要であることを訴えてきました。
私たちが一貫して主張してきたのは、サービスの提供量を増やせとか何かをつくれということよりも、むしろしくみづくりや市民ニーズの把握、説明責任といった、だれもが納得できるような市政運営が必要であるということです。これは、右か左かといういわゆるイデオロギーの議論や、最近になって再燃している大きい政府か小さい政府かという議論とは違う観点、違う座標軸であり、問われる自治力(自治する力)の向上は、完成形のない民主主義の実現を、絶え間なく努力して図っていくことに他ならないと思っています。
こうした普遍的とも言える前提に立って、今回の代表質問を組み立てました。3つの項目ですが、どれも小平市の将来を展望しながら、市政運営の方針や政策の大きな方向性について質問します。
参加と公開で市民がつくる小平のまち
市長就任の4月からこれまで、タウンミーティングや非核平和都市宣言、住民基本台帳の閲覧を制限するための条例など、新たな施策を意欲的に実施し始めているところがうかがえます。市長の基本姿勢である情報公開と市民参加は、その姿勢が具体的施策となったとき、初めて市民の目に見える形で姿をあらわし、市民は「変化」を実感するのです。
これからの時代を展望すると、人口減少は避けられず、一昔前のような経済成長はありえない社会全体の状況があります。人口については、せんだって人口減少が予想よりも早く始まったと伝えられましたが、少子高齢化の人口バランスは、これからどうがんばってもこの傾向そのものを変えることはできません。もちろん子どもを生み育てやすい社会の構築は、少子化に歯止めをかけるためというよりも、だれもが生きやすい社会をつくるという観点から必要ですし、そのための環境整備は政治の大きな役割です。しかし、それがうまくいったとしても、人口バランスの方向転換は相当先になるでしょう。つまり、良くも悪くも人口が減少していくこと、高齢者の割合が増えることを前提に、これからの社会を考えていかなければなりません。人口減少については悲観的な見方ばかりがされていますが、日本の国土の狭さを考え合わせると、人口が減ることを必ずしも悪くはないと前向きにとらえることもできるのではないでしょうか。人口バランスの問題はあるでしょうが、みんなで仕事を分け合い、富を分かち合うことによって、悲観論を払拭することができるのではないかと考えるのです。また、経済についても、金が金を生むことで投機に踊らされたバブル期とそれがはじけた後始末に日本中が苦しんだはずなのに、そのときの教訓はどこへいってしまったのでしょうか。私たちはそこから何を学んだのでしょうか。資源の枯渇や地球温暖化といった環境問題から考えても、過去にあったような大量生産大量消費にもとづく高成長経済はありえないと思います。それを踏まえたうえで、持てる者と持たざる者、勝ち組と負け組みといった階層の分化が進むこの国の社会のあり方、富の分配について考えなければならないでしょう。
このような時代を生きているという認識に立って、それでは自治体がどうあるべきなのか、自治体政府のなすべきことを考えてみたいと思います。
2000年4月、いわゆる地方分権一括法の施行によって、国と自治体との関係は大きく変わりました。それまでの上下関係から対等・協力の関係になったのです。税財源の問題や自治体の裁量を生かすことのできない法律、また特に教育分野では国の関与が強いなど、解決されていない課題はまだまだ多くありますが、国と自治体との関係は確実に変わっています。今後はさらに、決定も実行も自分たちが責任を持ってやっていく時代になっていきます。自治体としての自律性が問われる時代となっていることは間違いありません。
先日、私たちの会派は長野県泰阜村を訪ねました。田中長野県知事が住民票を移すと言って有名になった村、合併しないと宣言した村です。村長にもお会いして話を伺いました。高齢者福祉を軸に施策を進めています。財政力指数が0.15という村で、地方交付税がないとやっていけません。この6,7年交付税が減ってきて、昨年度は1990年度の水準になったけれど、行政改革を進めてとんとんでやってきたそうです。どうしても必要なもの、やらなければならないものにお金を振り向けるのもそのひとつです。世の中が効率やお金だけでものごとを判断するようになって、老人や山村は非効率だと切り捨てられる。そのことに異議ありと発言しています。実は、泰阜村の豊かな森林も、行ってみると下草刈りや間伐など手が入っているところと、人工林であるのにただうっそうとしていて陽の光が入りにくい手の入っていないところがあって、人手がないために山が荒廃していくのは、こんな風に進んでいくのかと思いました。このような山の森林を守ることは効率的ではないかもしれないけれど、都市の水源を守ることにもつながっています。村長の「最後は都市と農村の共生」という言葉は、環境保全という意味でも、交付税あるいはそれに類する財政調整制度のようなものの必要性を述べていると思います。
さて、村長は自治体の取り組みについてこのように述べていました。「その地域の住民が幸せに暮らすために地方自治がある。軸足を住民におけるかどうかがポイント。職員には住民のためになるなら何をやってもいいと言ってある」と。そしてゼロ予算の取り組みということで、金がなくてもできることを職員から募り、30〜40のアイデアが出されて、そのうち5つを採用したそうです。中には、高齢者の晩酌に付き合うというのもあります。また、情報公開の必要性についても触れ、村長レポートを毎月全戸配布している、10年位たってようやく住民も「村長はどうやら何も隠していないらしい」と思ってくれるようになった、7,8年はかかるよということでした。
小平でも、行政に対する不信感でかたまっている市民がいる中で、市民から信頼を得るのはかなり大変で、時間もかかるでしょう。しかし、これからの時代は、ニーズがどんどん多様化する中で、自治体としての意思、何を優先してやっていくのかを市民が納得するように決定し実行していかなければなりません。だからこそ、おおぜいの市民の参加で自分たちのまちのことを決めていく必要があるのです。
第三次長期総合計画基本構想は、これから15年後を見据えて策定しています。基本構想にはなかなか思想が盛り込めない制度のようで、それはそれで理解するところですが、もう少し具体的な施策を考えると、市長のカラーがもっと色濃く出てくると思われます。それが市長が選挙のときにつくったマニフェストです。ここに示された政策は、行政の仕事を網羅したものではありませんが、新たに取り組むこと、あるいはこれまであった施策を充実させたりリニューアルするなどのものを掲げています。そして、その大元に流れているのは、分権・自治をベースに市民参加と情報公開を基本姿勢として市政運営にあたっていこうという強い意志であると、私たちはとらえています。
そこで質問します。
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マニフェストの政策を実現していくために、最も必要なものは何だとお考えですか。
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市民の参加をどのように促していくのでしょうか。
実は、これまでも参加の手法やチャンネルを増やす努力はされてきました。審議会や協議会などに公募枠を設ける、学識経験者もなるべく小平市内に住んでいる人にお願いする、また、地域懇談会やワークショップの手法も取り入れて、なんとか多くの市民のみなさんに参加してもらおうとしてきたのです。でも、例えば小平市の今後進んでいく方向性を左右する長期総合計画のまちづくり懇談会を見ても、次世代育成支援行動計画策定のときの地域懇談会を見ても、残念ながら参加者は少なく、さまざまな意見を出していただくという感じにはなりませんでした。もちろん参加した人は熱心に意見を述べていて、こうした会を開くことの意義は大きいと思います。でも、なかなか参加の輪が広がらないのが現状です。参加の場は計画策定ばかりでないことは承知しておりますが、たいへん見えやすい形であらわれるのがこのような場なので申し上げるのです。参加が少ないいちばんの原因は、知られていないことだと思います。計画をつくることの意味や懇談会の目的、そしてそんなものがあることそのものも、知る人は少ないのです。たぶん、市報に掲載されていても、通り過ぎてしまう情報なのでしょう。多くの市民にお知らせして興味を持ってもらうことはたいへん難しいことではありますが、情報の伝え方を工夫していかなければならないことだと思います。今後も模索していくしかないでしょうが、情報の伝え方は、ホームページや市報といった媒体や見せ方だけの問題ではなく、相手に伝わる言葉、響く表現についても研究する必要があるのではないかと思います。
参加が少ない原因としてもうひとつ申し上げたいのが、参加した人が達成感、充実感を持つことができたかということです。これについては、私はこれまでも何度か質問で取り上げてきました。ワークショップに参加して意見をまとめたけれど、行政の計画はそれとは関係なくでき上がってしまったという話を聞くと、とても残念に思います。たぶん、職員はワークショップの意見をどう生かしたらいいのか考え、その中で採用できる部分をなんとか入れ込むという作業を進めたのでしょう。しかし、参加した市民にとって、出した意見やまとめた意見が生かされた、あるいは、こっちは入れられるけどそっちはこんな理由で無理と納得できるように説明されたというのでなければ、参加してよかった、また参加しようという気持ちにはなれません。参加の面白さはこのような参加者の達成感、充実感にあり、そのワクワク感が次の参加につながっていくのだと思います。
そういう意味では、この5ヶ月間に始めた新たな取り組みは、それをどううまく今後につなげていくのかという課題を持ちつつ、チャレンジしていくことを評価しています。例えば、タウンミーティング。市民と市長が直接対話し、市民どうしの議論に発展する集会は、参加者が多く、活発な提案や意見交換がされています。初めての試みという新鮮さも手伝って、市民にとっても参加を実感できる場になっているのではないでしょうか。また、交通体系のあり方懇談会とそれに伴う地域懇談会の進め方も新しさを感じます。あり方懇談会の会場を中央公民館ホールにして、おおぜいの傍聴者に聞いてもらおうという姿勢、地域懇談会では市民委員に議論を進めてもらい、合意形成を図ろうという姿勢は、まだ難しい点は多々あるものの、同じ情報を持ってオープンな議論をしようとする意欲が見られます。テレビニュースでも取り上げられ、同僚議員が、ニュースを見た市民からバスが赤字であることを初めて知ったと言われたそうです。情報がいろんな人に伝わり、議論がさらに広がることが期待されます。先日、市民参加の推進に関する指針が改められ、議会にも示されました。これまで指針の改定を求めてもきましたので、参加を拡げようとする改定は歓迎するところです。
このように、新たな取り組みを進めていますが、ここであらためて市民参加を促していく方策についてお聞きします。
3つめは、この2点目とも重なる質問で、参加を内実のあるものにしていくためには、行政に何が求められているのかという問題です。例えば、先ほどもお話したワークショップや地域での懇談会。市民自身がまだ議論に慣れていないということもあると思いますが、議論の内容や合意水準がなかなか高まらないというところがこれまで見られました。それは、市民の力をまだまだ引き出すことができていないということです。そのため、参加している市民にとっても策定される計画にとっても幸福でない事態が生まれてしまうのです。実りある議論をつくり上げるには、ある程度訓練のようなものが必要ですし、そこに参加した市民が持っている力を引き出すために、コーディネート能力やファシリテーターとしての能力が必要です。また、委員会や審議会などで、専門家とそうでない市民がきちんと議論できるようにするためには、ある程度基盤となる知識が必要で、そのため参加者へのレクチャーなども場合に応じて行う必要があると思います。もちろん、こうした役割は、職員が直接担わなければならないというものではありません。しかし、行政の役割として必要だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
来年度予算に向けて
21世紀は、さまざまな形容詞をつけて呼ばれることがよくあります。私たちは、この21世紀のテーマとなるのは環境と人権、すなわち「21世紀は環境と人権の世紀」であると考えています。いささか漠然とした大きなテーマですが、これまでに傷めつけてきた地球環境は、温暖化や化学物質、資源の枯渇やごみの問題など、どれをとっても喫緊に対策をとり実行していかなければならず、それも一朝一夕に解決できるものではないため、長期的な視野を持ってやっていかなければなりません。もう一つの人権についても、人種や民族、障がいの有無、また性差や年齢など、そのような違いによる差別をなくし、だれもがその人らしく生きられるような社会をつくっていくことが求められています。環境問題も人権問題も、別の言い方をすれば持続可能な社会のしくみをどうつくるかが、今世界中で問われているのです。
さて、自治体の予算編成は単年度ごとに行われていますが、長期的な視野を持ちながら、また時間的な広がりと同時に、世界や日本全体を見据えながら小平のことを考えるという地域的・空間的な広がりも踏まえて予算を編成していくことが大切であろうと思います。私たちは、地球環境を守っていく取り組み、また人権という視点で福祉や教育、とりわけ子ども施策が重要と考えています。
そこで1点伺います。来年度予算を編成する際に、どのような考え方で優先順位をつけていくのでしょうか。
今後のまちづくりは緑豊かな住環境の整備を
小平市の魅力は何かとたずねると、必ず返ってくる答えは「緑が多い」というものです。それほど小平の緑はまだ豊かで、まちの魅力として多くの市民にとって共通認識となっています。ところが、相続などによって雑木林や農地が宅地やスーパーマーケット、コンビニなどに開発されていっています。また最近では、企業のグラウンドや社宅などの土地が開発される例が増えています。緑が年々減っていくということは、小平の魅力が少しずつ失われていくということではないでしょうか。今後のまちづくりを土地利用の観点から考えたとき、緑をどうやって残していくかが課題であると思います。
長い目で見てみると、人口が減少しつつあることがわかっていながらどんどん宅地開発を進めていくことが、このまちの姿にどのような影響を与えていくのか考える必要があります。すでに、あちらこちらのアパートや借家で空家が目立つようになってきたという話も聞いています。つまり、古い住宅から新しい住宅への移動はあるけれども、住宅戸数の需給バランスは供給過多になりつつあるのではないかということです。23区内には古いマンションのスラム化問題があると聞きましたが、開発ラッシュは今後そのような問題を周辺に広げていくことになるのかもしれません。そして、一度開発されてしまった土地を緑地に戻すのは、たいへん困難なことです。
この4月から開発の手続きに関する条例が施行されています。この条例については「ようやくできたか」という感がありますが、これまでの要綱によるお願いの姿勢から、開発による環境の悪化を防ぐための方策を積極的に進めようという姿勢への転換であることを前向きに受け止めています。残念ながら、今のところ条例でできる規制そのものは少ないですが、今後この条例を運用していくことで出てくる課題を、まちづくり条例につなげていくこともできると思います。そして、環境悪化の大きな要素のひとつに緑の減少があり、市民と行政とが共通の目標を持って、緑の減少になんとか歯止めをかけていこうと工夫を凝らしていくことが大切です。
これからつくっていく予定のまちづくり条例や都市計画マスタープランを検討していくにあたっても、「緑」をさらにキーポイントにしていくことが必要ではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
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