生活者ネットニュース こだいら No.65       2004/4/20発行


誰のための受益者負担?
 
 
「受益者負担」、最近耳にすることが多くなった言葉です。ここ数年地方分権の流れと自治体の  財政難とを背景に行財政改革が行われています。これに伴って多くの自治体では、受益者負担の観点から使用料や手数料の見直しが行われています。市民活動の拠点となっている公共施設の 使用料について考えてみます。 

使用料の改定
 受益者負担が求められる根拠は、一般に負担の公平性、効率性、歳入の確保が挙げられています。しかし、よく言われる「受益者負担の原則」というほど普遍的で確立された考え方があるわけではありません。税で負担すべきサービスと利用者が負担すべきサービスの線引きは、時代や自治体の状況によっても変わってきます。
 小平市でも今回の議会で「小平市立集会室条例等の一部を改正する条例」が可決され、これにより公民館、地域センターなどの使用料が改定されることになりました。これは昨年12月に出された「小平市財政健全化推進プラン」の中の受益と負担の見直しという項目の中で示された基本方針に沿ったものです。行政サービスを分類し、原価計算を行い、それに負担割合をかけるという公式に当てはめて、金額を割り出しました。金額の根拠を明確にして誰に対してもきちんとした説明ができるようになったもので、結果は使用料が上がったところ、下がったところの両方あります。

議論を巻き起こそう
 ここで問題にしたいのは、決定にあたってどれほどの議論がされたのかです。市民委員の入っている行財政改革推進委員会では、大枠での使用料・手数料の見直しについて話されただけで、財政健全化推進プランの内容は検討されていません。また、公民館を利用する市民で構成する公民館運営審議会では、公民館条例の改正が話題にもなっていません。もちろん特別な検討組織をつくってもいません。こうした検討は、市民への影響が大きいことから幅広い議論が必要であるにもかかわらず、市民の議論を巻き起こそうとしてはいないのです。
 さらに問題なのは減免の原則廃止です。今回の条例改正では減免について変化があるわけではありませんが、財政健全化推進プランの基本方針には減免の原則廃止が記されています。現在、地域センターや公民館などの集会施設を使うときは、登録することによって実態として無料で使えることが多く、これがさまざまな市民活動を活発にする要因のひとつとなっています。ところが、減免の線引きが変われば、ほとんど無料という今の実態と変わってしまいます。これは、条例の金額改定よりも実際問題として市民への影響が大きいと言えます。だからこそおおぜいの市民が議論して決めていくべきものです。財政面だけでこの問題を論議するのは、たいへん危険です。

受益者とは?
 市民活動の拠点となっている集会施設は、受益者が果たして施設利用者だけなのかと考えると、市民活動によって利益を受ける人も間接的な受益者となるわけですから、受益者のとらえ方も難しくなります。今後、市民活動が豊かになっていくことを期待する面からも、使用料の実態をどうすべきか検討していく必要があります。市民サイドからの検討を積み重ねるためにさまざまなところで議論していきましょう。


「容器包装リサイクル法の見直しを求める意見書」の提出を求めて      林周子

 「2007年に改正される容器包装リサイクル法(以下容リ法)の見直しを求めて、市内の市民団体、生協が参加して『容リ法改正を求める小平市民会議』を昨年の10月に立ち上げました。11月には「どうしてごみは減らないの?―容器包装リサイクル法の落とし穴―」の学習会を開催し、市議会に対して意見書提出を求める請願活動を開始しました。その後、街頭署名や関係諸団体へはたらきかけをして、3054筆の署名を集めることができました。
 現行の容リ法は、リサイクル費用を行政が7割以上負担するようになっており、リサイクルを推進すればするほど税金が使われるしくみになっています。容器を製造、使用する企業側には負担が少ないので、リサイクルする容器はむしろ増加しているのが現状です。これでは、今必要に迫られている循環型社会の方向と逆行しています。私たち消費者がごみを減らすためにいくら頑張っても、街中に多種多様な容器があふれるのも当然です。そこで、リサイクル費用の負担が重い自治体側からも是非とも改正の意見書を国に対して提出してもらいたかったのです。
  請願は、3月10日の市議会生活文教委員会で審議、全会一致で採択され、3月23日の市議会本会議で「容器包装リサイクル法の見直しを求める意見書」が国に提出されました。
  このほかにも市民が直接国会に提出する「容器包装リサイクル法の改正を求める 国会請願署名」活動が全国 で展開されています。市民、 行政、議会と多方面から声 をあげて、ごみを生み出さ ない視点で国の容リ法見直 しを求めています。今後も この活動は容リ法の改正が行われるまで継続していき ます。


苗村洋子のわいわいコラム

「公の施設」ってなんだ!?

 最近やたらクローズアップされてきた(と私は思っている)のが「公の施設」という言葉です。
 法律用語らしく、地方自治法244条には「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という)を設けるものとする。」と書かれています。 これって市の施設はすべてあてはまりそうですが、そうではありません。典型的なのが市役所です。市役所は事務所であって、住民が利用する施設ではないのだそうです。他市では市役所の会議室などを市民が使えるようにしているところもありますが、自治法で、「公の施設」の設置や管理については条例で定めなければならないことになっているので、使える部分だけ「公の施設」と位置づけているか、運用でルールだけ決めて使っているかどちらかのようで、市役所を「公の施設」としているところはないそうです。
  わかったようなわからないような話ですが、いろんな人から聞いた話を総合すると、市役所のように事務所として使う施設は「公の施設」にあたらないというのが、残念ながらどうも定説のようです。でも、それと同時にグレーゾーンもかなりあることがわかりました。結局「公の施設」であるかどうかは、各自治体の判断で決まる、決めることができるということです。2000年施行の地方分権一括法で、法律の解釈も自治体ができる(それによって国と争うことも可能)ようになったのですから、当然だと思います。
  今回「公の施設」について調べていて、あらためて感じたのが条例に対する考え方の違いです。国に法律があるのと同様に、市には条例があって、基本的なことは条例で規定すべきものだと私は考えています。でも、行政の考えは違います。条例をつくるのはどうしても必要な場合だけで、法律がそのまま適用されたり、規則で対応したりするのが通常のあり方だと考えているのです。そして、小平市はその傾向が非常に強いところです。「公の施設」に限らず、条例をもっと使っていくことが必要だと思います。
  地方自治法に「公の施設」が位置づけられたのが1963年。旧自治省の解釈どおりこれまでやってきたんだろうけれど、そろそろ見直してもいいんじゃないかと強く思うのです。


障害者プランと市民参加       岡田 眞人

 市民公募委員として小平市新地域保健福祉計画(平成15年〜)の障害者計画(障害者プラン)策定に携わり、「市民参加」について考えさせられました。委員の活動と並行して、4団体とともに、「市民版・小平障害者プランをつくる会」を13年秋に結成しました。会では毎月の検討を重ねて、14年秋に「市民版・小平障害者プラン」を発表しました。他市の事例や、数字の根拠、経費等をできるだけ調べてつくりました。要求の羅列ではなく、市民の対案を出す力が問われると私達が一番こだわった所です。
 しかし、「予算がない」と、市側も市の原案(新しい進展が何もない)を譲りません。私達も提案を最重要の3点にしぼり、策定委員会(障害者計画部会)等で交渉しました。15年2月の最後の委員会でようやく生活寮の増設、就労支援センターや地域自立生活支援センターの設置など、私達の提案が採用されました。
最後に市民の提案が通ったのは、私達が身体・知的・精神の障害を超えて連携できたことが大きかったと思います。
 形だけになりがちな「市民参加」ですが、実のあるものとして生かすには、市民側の提案力と幅広い連携が大切だと今回の経験を通して痛感しました。