生活者ネットニュース こだいら No.66      2004年7月20日発行


まちづくりルールを市民の手に

  小平市内のあちこちで、大規模・小規模の宅地開発が盛んになっています。突然、計画を知らされた周りの住民と建設業者との間でトラブルが起こることも少なくありません。街の環境が変わってしまうこともあります。こうした問題を解決するために何が必要なのでしょうか。

変わる街の姿
  「隣の雑木林がなくなって家が50軒建つんだって」「あの工場跡地に高層マンションができるらしいよ」。最近小平市ではこんな話題にこと欠きません。小平は、農地もまだたくさんあって、緑豊かな街です。また、ゆったりとした広い敷地を持った企業の研修所や福利厚生施設などが市内に点在しています。ところが、年々畑や雑木林が宅地化されて減っていき、企業の土地も戸建てやマンションに姿を変えているのです。街の環境を壊すような開発はやめてもらいたいものですが、住民がその計画を知ったときには、事業者によって多少対応がちがうものの、ほとんど変更不可能である場合が多いというのが実情です。

まちづくりルールの必要性
  市民が望む街をつくっていくために何が必要なのでしょうか。2つの視点でこの問題を考えてみたいと思います。
  まず、開発や建築事業者に対する規制的手法についてです。開発計画を早く知り対応していくことや、市としての規制を設けることで、住環境の悪化を防ごうというものです。これについては、市報などでご覧になった方も多いと思いますが、小平市でもようやく条例づくりや都市計画決定に向けて検討しています。今、市が検討しているのは、建物の高さの最高限度、敷地面積の最低度、開発時の公園・緑地割合の基準、大規模開発の事前周知の4つについてです。これまでは「開発・建築指導要綱」で事業者にお願いするという形で「指導」するしかなかったのですが、条例などによって強制力を持つことになります。

  もうひとつの視点が住民合意です。「市民が望む街」とはどんなものかを考えると、その合意点を見つけるのは、たいへん難しいことです。けれども、あるエリアで、例えば建物の高さや建ぺい率・容積率などを制限することも、住民が合意すれば可能です。このような合意のための手法を定め、市がそのための支援をするようになれば、バラバラに個人が描いていた「望む街」のイメージが、議論を重ねることによってひとつのものにまとまっていくのではないでしょうか。それが「地区計画」や「建築協定」というものになっていれば、とんでもない開発を防ぐことができます。住民が発意して自分たちの利害を調整してルールをつくっていのは難しいことですが、それが「まちづくり」の視点で今いちばん求められているのです。


まちづくり条例を市民の手で
  最近こうした「まちづくり条例」があちらこちらの自治体でつくられています。小平だけでなく、多くの自治体で同じ悩みを抱えていることの証しでもあります。
  現在検討中の規制的手法は、すぐにでも適用しなければならないので、急いでつくる必要があります。しかし、住民合意の手法については、おおぜいの市民が参加して議論することが必要です。先日成立した国分寺市まちづくり条例は、3年かけて市民や職員が議論を重ねてできたものです。この議論の積み重ねが、今度は条例を使って実際にルールづくりをするときに生かされていきます。
  条例は道具です。使いやすい道具をつくり、それを使っていくのは市民であり行政です。そのために、まずは自分が住んでいる隣にどんな建物が建つ可能性があるか、用途地域を調べることから始めてみませんか。


視察報告
「いいだ会議」は地域ぐるみで開催
         ―環境自治体会議に参加して―


  今年の環境自治体会議は、長野県飯田市で開催されました。毎回盛りだくさんの内容ですが、今年も充実した3日間でした。2日目には10の分科会があり、私は午前に環境マネジメントの分科会、午後には交通システムの分科会に参加しました。今年の飯田会議の特徴と思われるのが、企業の参加です。飯田市では「地域ぐるみISO研究会」をつくり、自治体、金融機関、製造業など27の事業所が参加しています。こうした背景があって、企業がこの会議に参加しているのだと思います。

  環境マネジメントの分科会は、航空機の部品を作っている多摩川精機という企業の会議室で行われました。60年前に建てられた建物は、昔の木造校舎のような風情で、傾斜地に細長い建物が何棟も建っています。ここでの議論の中心はISOの自己適合宣言で、ISO14001(環境マネジメントシステムの国際規格)の認証を受けた後、更新審査を受けるのではなく自己宣言することの有効性について、いろんな角度から議論されました。その中でとても印象的だったのが多摩川精機の社長の言葉です。「企業としての論理は製品をいかに売るかだが、地域に価値を見出している。自治体経営者は場所を移ることができない。事業者も、この場所で事業をやりきるんだと考えたとき地域が大切になる。地域の魅力や価値を上げるため環境に取り組んでいる」。この地で事業を続けている自負が、工場のたたずまいとともに伝わってきました。

  交通システムの分科会では、なんとかクルマを減らそうと試みている企業や自治体の報告がありました。また、名古屋大学の加藤博和助教授からは、「クルマ依存」から脱却するための都市づくりについて、ヨーロッパの都市の例を紹介しながらコメントがあり、その後、自分たちの1週間の行動で、使った交通機関によるCO2発生量を計算し、対策を考えるワークショップが行われました。
 全体会では中学生による人形劇や事例発表の場があったり、分科会報告も市民が担当するなど、「地域ぐるみ」を感じる環境自治体会議でした。                                                                               苗村洋子


岩本博子のどきどきコラム

「合計特殊出生率」1.29という数字から考える
 
  1人の女性が生涯に産む子どもの数「合計特殊出生率」が1.29になったと発表されました。与党が年金改革法案を強行採決して間もなくの発表で、マスコミはこの法案の数字的根拠が揺らぐものと大きく報じました。出生率の低下の問題はこの法案を批判する恰好の材料になったわけですが、ちょっと待っていただきたい。

  一連の報道を耳にし「私たちはこの国の年金を支える子どもを産むための道具なのか」と憤った女性も少なくないはずです。そういえば「子どもを産まない女には年金は出さなくてもいい」なんていう暴言をはいた閣僚もいましたっけ。まずはこういった男性の意識改革からおこなっていただかない限り、女性が安心して子どもを産める社会はありえません。

  国が少子化対策に力を入れているにもかかわらず、出生率の低下が止まらないのはなぜでしょうか。小手先の少子化対策では歯止めがかけられないことは、今回の数字に顕著に表われており、これを真摯に受け止め、少子化の原因を考えるべきです。女性の生き方も変わり、選択肢が増えている中で、結婚しないことを選ぶ人もいるし、結婚しても子どもは産まないという生き方もあるのです。それは今の日本の社会では、結婚も出産、育児も過度に女性に負担がかかるというのがひとつの大きな要因であることは明らかです。男性も含めた働き方を考え直さない限り本質的な解決にはならないことは、生活者ネットワークがずっと主張してきたところです。

  利潤と効率性だけを優先する企業での働き方とは全く対照的に、一見、非効率的で無駄が多いと感じられるのが子育ての仕事です。効率的な子育てなどはあり得ず、ゆっくり回り道しながら、豊かな子育ち、子育ての時間を持つことができる。出産、子育てが楽しく価値のあるものだと実感できる社会でなくてはならないはずです。企業社会の価値観を転換し、働き方が変わらない限り保育時間を夜の10時過ぎまで延長したり、土日も預かる保育所が増えるだけでは、問題は解決しません。保育環境の整備、経済的支援は当然必要ですが、一方で私たち自身が、本当の豊かさは何かを問い直し、多様な働き方が可能な社会をめざしていくべきではないでしょうか。


 楽しみながら森づくり              牛込 節子

「わっ!このスモークサーディン美味しい!ほら、えび焼けたよ!パエリアはプロ級だ。すごい!何だか今日は〈ランチを楽しむ会〉みたい!」5月のある日、栃木、喜連川の雑木林での楽しい昼食風景。
この日は、森から遠い街に住む私達が山を守るには何をしたらいいのか、と発足したボランティアグループ『森林(もり)を楽しむ会』の活動日。
  2年前から整備していたこの雑木林に陽ざしが入るようになり、この日、キウイ、びわなどの実のなる木を植えました。昨年置いた巣箱にも四十雀が巣づくりをしていました。いとおしいものです。森を守っているつもりの私達が作業に行って実は癒されていると感じます。
  私達のパワーは小平の公園整備にも発揮しています。中央公園「うさぎばし」そばの用水路端にベンチを設置しました。自分たちで切リ出した木です。他に、下刈り、枝打ち、間伐などのボランティア・ハイキング・見学会、など間口の広い活動をしています。
  山を守ることは国土保全につながるわけで、子供たちにたくさんの自然を残したいのです。問題は山積していますが、私達に出来る事を楽しみながらやってみようと思っています。

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