生活者ネットニュースこだいら No.74   2006年7月20日


子ども・市民の学ぶ権利を守ろう
      「愛国心」だけじゃない!教育基本法改正のここが問題

 11の条文からなる教育基本法には、すべての国民の学ぶ権利が謳われ「教育の憲法」とも言われています。この法律が、改正されようとしています。改正によって何が変わるのかを正しく知るため、小平・生活者ネットワークでは弁護士の石井小夜子さんを招いて学習会をするなど活動を続けています。

改正ではなくまったく新しい法律に

 教育基本法は、国が教育によって日本を誤った方向に導いた過去を反省してつくられました。ここで定められているのは、国民の教育のために国が守らなければいけないことで、国や行政は、外的な教育環境の整備のみに責任を持つことになっています。
  ところが新法案では、政府が作る教育振興基本計画や法律に基づいて、国や地方公共団体が内容にまで踏み込んで教育を実施する、となっています。これは国民がしなければいけない教育内容を定めたことになり、新しいどころか昔に逆戻り、180度の方向転換です。 

子ども・親だけでなく地域に関わる問題

 生活者ネットワークでは、子どももおとなもひとりの人格として尊重され、自らの力を育むために学ぶ権利があると考えます。この視点から見ても新法案には、大きな問題があります。
  法案には学校だけでなく、家庭教育や地域との連携、生涯教育の項目が追加されました。地域の人すべてが、国の決めた教育方針に沿って行動しなければならないということです。テーマによっては公民館での活動を断られる可能性もあるのです。

教育の目標が細かくびっしりと

 現行法で教育の目的は、大きな視点で基本精神のみが書かれています。それは教育が人権であることを示すものです。ところが新法案では、第二条で「教育の目標」が5項目にも及び、20を超える徳目が長々と書かれています。あまりの多さに、教育が息苦しくなってしまう気がしてなりません。話題の「愛国心」も「わが国と郷土を愛する」という表現でここに入っています。
  「国を愛する態度は人によって違います。戦争に反対することが国を思う心の表れの人もいるでしょう。そのような心の問題を『教える』とはどういうことなのか、具体的に考えてみる必要があると思います」という石井さんの言葉が印象的でした。

モラル・学力低下のまやかし

 政府が教育基本法の改正を急ぐ理由に、子どものモラルや学ぶ意欲・地域や家庭の教育力の低下、若者の雇用問題などがあります。しかし、こうした問題は教育だけでなく、私たちの社会全体が構造的に持つ複雑な要因と絡み合っているはずです。
  問題をすべて一くくりにし、一気に教育基本法改正で解決しようとする姿勢は、説得力がないだけでなく、課題をていねいに分析し解決を探る道筋を見誤らせる危険性さえあるのではないでしょうか。
  少年による凶悪犯罪の数はすでに60年代にピークを迎えており、学力についてはOECDの世界共通テストで1位となったフィンランドでは、日本の教育制度を見習い、学力が向上したという話もあります。
  学ぶのは私たちであり、私たちの子どもたちです。市民の声を抜きにこれほど大きな改正が進められていいわけはありません。小平市議会でも、2003年に、教育基本法の見直しに慎重な対応を求める意見書を提出しています。小平・生活者ネットワークでは改正の動きを注意深く見つめ、行動を提案していきたいと思います。

小平・生活者ネットワーク政策委員長  日向美砂子

※現行法、改正案は文部科学省のHPで見ることができます。http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/houan.htm


第31回オリンピック競技会の東京招致に関する決議案に反対!〜結果は賛成多数で可決

 都知事は東京招致に際して「日本の底力と成熟都市東京の存在を世界に対して示す手段」と明言。東京の力を世界に誇示する手段としてオリンピックを使おうとしており、海外の国々との共存を前提に平和や人権をベースとした人類の祭典であるオリンピックの趣旨とかけ離れています。都民への説明責任も果たさず、都知事の強い意向だけで招致合戦がすすんでいることには納得できません。
  また世界一コンパクトなオリンピックをアピールしており、都有地を有効活用すると言っていますが、一方ではオリンピックを契機に都心のインフラ整備を一気にすすめたいとも表明しています。6月末にJOCに発表された計画書によれば、施設整備費は4,956億円でうち東京都の負担は453億円。実際には国や民間からの出資をあてにしての数字であり、この金額でおさまるかどうかも未定です。莫大な税金が投入されることは間違いありません。
  8月30日には福岡か東京か日本での候補地が一本化され、2009年のIOC総会で決定されます。日本での開催が実現するかどうかもまったく分かりませんが、少なくとも東京での2度目のオリンピックは必要ないと考えます。そもそも、都知事選を来年の4月に控えたこの微妙な時期に、市議会としてこうした決議を上げること自体に意図的なものを感じ、決議案に反対を表明しました。


アロハで歓迎、環境自治体会議指宿会議
                                       苗村洋子


 
鹿児島県指宿市で開催された第14回環境自治体会議に参加しました。指宿市は三十数年前からアロハシャツを夏のユニフォームにしています。市職員をはじめ、参加市民のだれもがアロハ姿(しかも全部違う柄)でした。
  環境自治体会議は、毎年開催地の土地柄を生かして企画されていますが、今回最大の特徴は、フィールドワークです。11の分科会すべてにフィールドワークを取り入れました。わたしが参加した水環境の分科会は、水質浄化がテーマで、九州最大の湖「池田湖」に流れ込む「集川(あつまりがわ)」の浄化施設と、池田湖からせり上がる棚田を見ました。田植えの終わった棚田は、イネの若い緑がまぶしいほどに美しく、山の濃い緑とのコントラストや、棚田から湖越しに見える開聞岳も含めて、風景画みたいにきれいでした。
  もうひとつの特徴は、海外の事例を学ぶということでした。ドイツと韓国からゲストを迎え、全体会では海外の自治体で取り組んでいる温暖化防止政策について報告がありました。なかでもヨーロッパの14カ国、1300自治体が参加している気候同盟は興味深いものです。具体的なアプローチの話題ではわかりにくい点もありましたが、国との関係には先進自治体ならではと思えるものがありました。ドイツの自治体は京都議定書より高い目標を持ち達成しているため、国がそれを取り引きに使う議定書にフラストレーションを感じています。最終的に達成しない自治体があれば、国はお金を支払わなければなりません。ですから、そんなお金を払うかわりに、自治体に補助金を出して目標値を達成しようという考えになってきているということでした。
  日本では京都議定書の約束さえ実行が難しいと四苦八苦しているのに、気候同盟では2010年からの新たな取り組みを決めています。5年ごとに10%減らすというのです。自治体連携による意欲的な取り組みに圧倒されながら、自治体発で実施していくことの重要性を再認識したパネルディスカッションでした。


岩本ひろ子のどきどきコラム

地下水を身近に感じた井戸調査

 小平市では、まだたくさんの井戸が使われているのをご存知ですか? 震災対策用として登録されているものだけでも80箇所以上もあるのです。今回、市内の井戸を巡りながら身近な水について考えてみようと井戸調査が企画され、私も参加しました。
  調査項目は、掘った時期、深さ、日常どのように使っているのかなど、すぐに答えてもらえる簡単なものでしたが、飛び込みでの突撃インタビューでしたので、はたしてお話が聞けるものかと始めるまで心配でした。ところが多くの方が快く調査に協力して下さり、プレ調査を含めて、合計で50箇所以上のデータを集めることができました。みなさん、永年使用されているだけに井戸への愛着も深く、「井戸水で入れたお茶の味は格別」とか「うちの井戸はこれまで一度も涸れたことはないよ」など井戸自慢が始まることもしばしば。調査項目以外にも貴重なお話をたくさん伺うことができました。
  今回の井戸調査を通して、目に見える湧水や川のない小平にも、こうしてちゃんと水みちがあるということが再確認できました。地下水は大事な財産、小平市の水道水には約18%の地下水がブレンドされているわけですから、これからもずっと飲み続けられるよう、足元の地下水を涵養し、保全していくことが大切ですよね。
 訪ねた先々のお宅でご自慢の井戸水を飲ませていただきましたが、その水のひんやりと冷たくて美味しかったこと! この季節には生ぬるい水道水との違いに、一同びっくりでした。帰りには、季節の野菜を買い求め、収穫いっぱいの井戸調査となりました。

 

小平市障害者団体連絡会が発足

                                 小平市障害者団体連絡会代表 岡田眞人

 小平市障害者団体連絡会の設立総会が6月に行われました。身体障害、知的障害、精神障害の3障害の違いを超えて、また障害当事者、家族、施設関係者、在宅サービス団体など35団体が、垣根を越えて集まりました。そのきっかけは、今年4月に始まった障害者自立支援法です。身体・知的・精神3障害の統合、就労支援の重視、利用者の1割負担等が特色のこの法律には、膨れ上がる福祉経費の抑制という一面があります。低コストで効率のよいサービスが求められ、サービスを利用する側も提供する側も大変厳しい時代です。
  新法のもと、自治体の役割が大きくなりますが、様々な立場の違いを超えて連携しなくては市を動かすことはできません。特に、これから定める自治体の障害福祉計画が重要な意味を持ちます。私たちは、行政に要求するだけではなく、自分達も責任を持って提案をするという意味で、規約に「障害福祉政策に関する提言活動」を目的に掲げました。官と民が知恵を出し合って協力しないと、小平の地域福祉がつぶれてしまうという危機感があるからです。難しい時代ですが、これまでになかった横のつながりをつくって、よりよい地域福祉をめざしたいと思っています。


                                       戻る