Word By 藤井美保

稽古場日誌 番外編

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天才みたいに

2009年7月20日

 「もおっ、そんなにがんばらんでええのに そんなにムリすることないのになんでっ…こんな早よっ しんでしまって…天才みたいに。」
大竹野さんの遺影の前で、天野君が泣きくずれてボロボロになっていました。(写真の中の大竹野さんは とても大きくて 素敵なものを見つめています。 大竹野さんの眼が大きくひらいて ぴかっとひかっていたから)

「あんな眼をした人はっ 他にいないのに」
「ずっと追いかけていたい被写体だったのに」
「あの眼がっ。」「あの眼がっ。」といって天野君はまたくずれてしまいました。後でハルオ君が言ってたけど、ハルオ君があっとうされてそして忙しくて うまく泣けなかったあの数日間にほんとうにたくさんの人がいっぱいいっぱいお酒をのんで同じくらいの涙が流れてゆきました。

こんなに特別な夏は初めてです。
あの日、日本海に行ってた大竹野さんは、こずえさんやハルオ君やリョウタ君やカオリンやしんちゃんやくたに君やおぐりさんと一緒に自動車で帰ってきました。おかえりなさいと50人くらいの人がいいました。 みんなでさっそくのみ会をしました。でもカンパイではなくケンパイというのです。 ケンパイ ケンパイ ケンパイ
たくさんケンパイをしました。この夜 みんなはひどく泣き上戸でした。


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おつや

7月21日

 いつ始まっていつ終ったのかわからないくらい 入れかわり たちかわり お寺初まって以来の人波が押し寄せました。もちろんおつやで飲んでそのままおそう式に突入の人たちもいました。 大竹野さんは「オレ 友だちおれへん」って言ってたけどそんな事なかったね
でも きっと気まずそーに笑ってから ずんずん歩いて 見えなくなってどっかの飲み屋さんに消えてしまうね、これ見てたら。

こずえさんは 暑っつー と言っていたけど こずえさんの着物姿カッコいいでしょ、ひとつも泣かなかったよ。カッコいいよ。大竹野さんのお芝居をたくさんの人に もっと見て欲しいから「大竹野くんのお芝居を絶対やります」って宣言した。


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おそう式

7月22日

おそう式の日は日食で おひさまが欠けるんだって。みんなが かわりばんこに 香住鶴のお酒をかけて お花をいれたね。お芝居みたいに「ペルシャの市場にて」の曲が流れていて いよいよ車に乗る時に 曲調が変わって すごい演出だったね、大竹野さん。

マイクロバスは 酒屋さんと大竹野さんの通った学校の前を通って山をのぼっていきました。現実なのかお芝居なのか日食のせいなのかわけがわからないけど 気がついたら 神妙なおももちで目の前の白い骨を見つめていました。

大きな骨つぼと小さな骨つぼがあって、みんなで順番にお骨をひろってゆきました。くりちゃんが、骨つぼに入りそうもない大きな骨を持ち上げた時には、皆いっしゅん緊張しましたが、きっと大竹野さんはこんなくりちゃんが大好きなのだと思います。 指の骨はいつでも台本が書ける様に一生けんめい全部あつめて入れました。大丈夫だね、大竹野さん。

帰ったら これから まだお芝居のビデオ上映会するんだって。毎日 毎日 連ちゃんでたいへんだけどね、酔っぱらったら てきとーにねて また ふっかつすれば いいからね
いつも みたいに