ラフレシア円形劇場祭参加のための書き下ろし作品。初めての野外劇に挑む。周囲を客席に囲まれた円形の舞台は、中央に四角い舞台が設置され、まるで、密室で行われるひそやかな陰謀を覗き見しているようだ。

看護婦イシイは、最近日に三十回も鳴る無言電話に悩まされている。同僚のヨシダに相談したところ、夫の浮気相手に違いない、知り合いのセンセイに頼んで何とかしてやろうという。

ヨシダはイシイに、足りない資金は自分が貸すから駅前の新築マンションに皆で入ろうと持ちかける。最初、しり込みしているイシイも、やはり同僚で友達のツツミ、イケガミも既に購入を決めたと聞き、熱心に誘われた挙句その気になる。

イケガミのマンション。お茶漬けを食べている彼女に夫エイジがつきまとうように話し掛けている。無視しているイケガミだが、我慢できず、新築マンションに引っ越すからもう二度とつきまとうな、と叫ぶ。エイジは、ヨシダに騙されるな、と繰り返す。

病院の庭。ツツミがガン患者であるミチロウを車椅子で散歩させている。ミチロウはツツミに勧められた新薬を試してみる事にした、と告げる。ツツミは再度、効く可能性は五分五分だというが、ミチロウは決意する。夜中に目が覚めたとき、庭で真っ黒な小鳥が白木蓮の花を食べているのを見たという。ツツミは後日、辞典で調べて、それは小夜鳴鳥(ナイチンゲール)であるとミチロウに教える。

病院の休憩室。イケガミがヨシダに、二年前に死んだエイジの幽霊に悩まされている事を告げる。実は、ギャンブルでヨシダに多額の借金を作ったエイジを、ヨシダがそそのかして、イケガミ自身がツツミに助けられ殺害。その保険金をヨシダに返した事が明らかになる。更にツツミはイシイに、イシイの夫がヨシダに多額の借金をしている事を告げる。ヨシダは数年前夫に死別し、その時の保険金の大半を貸してしまった、という。

ヨシダのマンション。男とヨシダが密談をしている。男はヨシダに頼まれ、借用証書を偽造していた。どうやらかつてエイジの借用証書も偽造したらしい。イシイの家に無言電話をかけているのもこの男、ヒデキである。すべてはヨシダの指図である。友達を騙して保険金をせしめたヨシダをヒデキがからかうと、つまらない男に引っかかったイケガミの事を思って騙した、騙しつづける友情もある、世間知らずのお嬢ちゃんを苛め抜き、幸福は自分で掴むものだと分からせてやる、とうそぶく。

ツツミとイケガミによるエイジの殺害シーン。深酒をして寝込んでいるエイジの血管にカリウムを注射するイケガミ。ツツミは血圧計でエイジの血圧を測る。カリウムがうまく効かず、ヨシダに携帯で指示を聞くツツミ。ヨシダは血管に空気を入れろという。自分でやった事は自分で責任を取れといいながらエイジに繰り返し空気を注射するイケガミ。大きく下がるエイジの血圧を見届け、去るツツミ。放心しながらも救急車を呼ぶイケガミ。

イシイの家。女と暮らし、家を出ている夫を呼び出したイシイは、ヨシダへの二千万近い借金について問いただす。夫ゴウは、多少は借りたが、そんな大金では無いと否定する。ゴウは、子供に会いたい、女と別れるから家に戻りたいというが、イシイは借金を一緒に返そうと詰め寄る。ゴウは身に覚えのない事だ、とイシイを突き放し、家を出ていく。泣き崩れるイシイ。

ヨシダは投資していた株が駄目になり、どうしても今すぐ借金を返して欲しい、でなければ自分は破産する、とイシイに詰め寄る。ツツミとイケガミも一緒に、ゴウの殺害を説得する。頑なに拒んでいるイシイだが、やがてゴウの殺害を承知してしまう。

殺害方法の相談をしている四人に、ミチロウの危篤の知らせが入る。動揺するツツミを三人が支え、緊急手術に臨む。甲斐なく臨終を迎えるミチロウ。泣くツツミ。慰めるヨシダ。

決行の夜。制服姿の四人は、ナースキャップを捧げ持ち、ナイチンゲール誓詞を唱える。ヨシダは三人に、今夜一晩、ウチらは看護婦の精神を捨てる、と言い渡し、イシイを促してナースキャップに火をつけさせる。暗闇に燃え上がるナースキャップ。

 ―― 幕 ――