四六判/125×187mm/400頁/検印・シリアルナンバー入り/別冊付き
コデックス装/スリーブ帯/天アンカット/2012年
刊行委員:小堀純/小栗一紅/後藤小寿枝/高岡孝充/塚本修/広瀬泰弘/松本久木
造本設計+DTP:松本久木 装丁:高岡孝充
定価:3150円(税込み)
満たされた孤独
途方もない寂寥
人間の心の澱を、男は執拗に描いた
戯曲などという立派なものでは無い。私にとってのホンは、芝居の為に役者が踏みつけるもの。台本であります。云い換えれば、観客を前にしての上演される芝居が全てであり、台本はその為に付随する叩き台と思っている訳です。(大竹野正典「役者が踏みつけてくれたもの」より) 大竹野が「台本」と名づけた、ここに収められた八作品は役者たちが稽古場で、本番の板の上で、力いっぱい踏みしめたものだ。 大竹野が愛してやまなかった役者たちが時に鬼になり、時に菩薩になり、大竹野が憎しみ、愛した人たちの心の澱を絞りとる。ひとりの作家の妄想を超えた、登場人物たちの圧倒的な実在感がここには在る。そうして、それが成しえたものを私たちは「戯曲」と呼ぶのだろう。芝居は上演してこそ意味がある。否、“上演した”ものを「芝居」と呼ぶのだ。[中略] 文学、とりわけ演劇の醍醐味は「誤読」にあると思うが、大竹野が自らの言葉を役者に踏ませ、稽古場で再構築した結果のこれらの「戯曲」こそ「誤読」にふさわしいものはないだろう。ここにある台詞の背後にある、無数の「――」、書かれなかった句読点に思いを馳せてほしいと思う。 (小堀純「台詞の背後にあるもの 発刊の辞として」より)