中嶋誕に遅れること数日。ようやく絵を描きました(とほ)
なんといいますか、お絵かきリハビリ期間中なので、今回泣く泣く中嶋ピンです。
しばらくピンイラストが続くかもしれませんがお許しください…。

そしてっ!嬉しい事に葉月ましゃさんからこの絵にちなんだ、中篠SSをいただきましたv
とても幸せな中篠ですよ〜〜vv
本当にありがとうございます!

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ソレは、些細な偶然が幾つか重なって出来た、隙間の時間。テストも終わり、学校行事も一段落したある日の午後にした、待ち合わせの約束でのコトだった。
「・・・早い、な」
そう、白い息を吐きながら、横目で見た駅の時計。その針先が指しているのは、例の約束の時間よりも、まだ30分以上前に当たる、数字のトコロ。待たされ るのも好きではないが、待つのも余り好きではナイ。でもだからと言って、寮に戻る程の時間もナイ。なので手近で見つけたコーヒースタンドのドアを潜り、 少し奥まったコーナーの席を陣取って、ようやく手に入れた洋書を捲って、時間を潰す。ナニかに付けて細かい性格のアイツだ、恐らく10分もすればのこのこと出て来るだろう。だったらソレまで、待てば良い。連絡を入れるまでも、ナイ。そう決め込んで、広げる荷物。
オーダーしたモカ・マタリは、少しローストが過ぎていたが良い香りをしていた。ソレを少しずつ口に運びながら、捲るページ。すると案の定。
「・・・来た」
蟻の群れの様な人影が、忙しなく行き交う夕方のコンコース。寒さか、ソレとも昨今の余り芳しくない世情のせいか、やたらと丸まった背ばかりが目立つその中を、泳ぐ様にして歩いて来る、すらりとした長身。きっちりと着込んだコート、まるで子供の様にぐるぐると巻いたマフラーは間違いナイ、アイツの姿。だから指先の煙草をもみ消して、立ち上がろうとするのだけれども。
「・・・・・・」
ふと思いついた下らない閃きが、立ち上がりかけた足をすっと押し戻す。そして新たに銜え直す煙草と、上げる追加オーダーの声。こんなコト、全く以て下らないイタズラだとは思う。でも同時に中々出来るコトでもナイと言うのも、また事実。そう胸で呟き、運ばれて来た新たなカップを手にする。しかし視線はもう、手元の洋書には注がれなかった。そして。
5分、8分、12分と、流れて行く時間。じりじりと短くなる煙草、熱を失うコーヒー。そうやってナニもかもが少しずつ変わって行く中、唯一変わらないのはガラス越しの、その姿の様子。ソレは携帯アプリで遊ぶ訳でもなく、雑誌を眺める訳でも煙草を吹かす訳でもなく、ただただ黙ってその切れ長の瞳でずっと、忙しく行き交う人々の姿を追っている。その様子に、付いた頬杖の隙間から洩らすのは、喉が痒くなる様な苦笑。
時間にルーズと言う訳ではナイが、自分はどちらかと言えば、ギリギリで行動する方。だから待ち合わせには大抵、予定の時間の数分前に到着する。今日の様に30分を超えるタイムラグというのは、実はかなり珍しい。なのでふと思ったのだ、一体アイツはいつも、どんな風にして自分を待っているのだろうかと。
そして今日のこの空き時間は、その疑問を解決するには正にもってこいなシチュエーション。そう思い、立ちかけた足を再び折って席に着き、眺める姿。しかし。
約束の時間までには、まだ5分以上合った。だが丁度カップも空いたし、煙草も切れたというコトにして、立つ席。好都合なコトに、店には出入り口がふたつあった。しかもその片方は、アイツの視界からは死角になる位置。
ソレは、些細な偶然が幾つか重なって出来た、隙間の時間。テストも終わり、学校行事も一段落したある日の午後にした、別にどうというコトはナイ、待ち合わせの時間までのちょっとしたヒトコマでの景色。しかしそうやって、ただ自分を捜して待ち続けるその姿は、今の自分の目には何故かヒドく、頼り無さげに映ってしまって。そんなコトはあり得ない、でもどういう訳か今のアイツは、その流れに人波に飲まれて、消えてしまいそうに見えた。だから席を立った、群衆に紛れて流される前に、その手を肩を抱き止めたくて。全く、俺も大概ガキでコムスメだな。コレじゃあ啓太や哲のコトを、笑えない。いつからこんな風になったんだろう、しかもこんな変化のコトを、然程嫌とは思わない辺りがまた、コマリモノだ。そう、未だ止まらない忍び笑いを零しながら会計を済ませ、足早に出る店。知らなかった、どうやら俺は『待たされる』のも『待つ』のも、そして『待たせる』のも余り好きではなかったらしい。まさかソレを、こんなコトで知るとはな。そんな、思いがけない気持ちを噛み締めながら、するりと羽織るコート。そして今までのコトなぞ感じさせない様に落ち着いた表情で、遠くを眺める顔に、後ろから掛ける声。

「・・・待たせたな、篠宮」