*こちらの小話は、セガミカイト様からいただきました絵を元にくろすが妄想して書いたものです。(GIFT内「セガミカイト様からいただいたお誕生日プレゼント」にセガミ様の絵を飾らせていただいてます。凄く素敵な山本が居ますのでですので見られてない方は是非ににセガミ様の作品をご覧になられて下さいvvセガミ様の絵は山本単体絵です。


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 乾いた空気、彩度の高い空、快活なイタリア語と音楽の流れるそんな空気とはまるで異質な衣服と雰囲気を纏った少年が、広場の端に位置するレンガ造りの花壇の端にすらりと脚を投げ出し腰掛けている。
 時折ぶらんとつま先に引っ掛けた草履を揺らしながら、くるくると一通り色んな方角を眺めては、最後に広場の入り口へと視線を戻す。
 纏っている着流しの、その合わせ目から覗く白い脚の内側は、少年の凛として清潔な雰囲気にも拘らず、背徳的な危うい艶を孕んでいる。すっと切れ上がった目尻であるのに大きな瞳を併せ持つ、鋭さとあどけなさという相反する性質を宿した目には、惹き込まれると決して逃げることの出来ぬ捕縛性すら感じる。
 ひっそりと佇んでいるのに誰をも振り返らせてしまう不思議な磁力を持った少年は、盛んに広場の入り口を気にしている。そんな所を見ると、どうやらかれこれ30分以上はその入り口を跨いで現れる誰かを待っているらしい。
 こんなに魅力的な少年をこんなにも長い時間待たせるとはどんな人物なのだと、この広場に居るおせっかいな観衆達が気もそぞろになり始めた頃、その少年の顔がふわりと、まさに花が綻ぶという表現を体現したかのような笑顔を浮かべた。
 いよいよ待ち人到来か!と、広場に居る人物の視線が一斉に入り口へと向けられる。初めは少年を随分と待たせた事に対する非難と多少のやっかみを孕んだ刺す様な視線だったのに、現れた人物の整った顔立ちと、それを引き立て飾り立てる豪奢な金髪があまりに現実離れをしている所謂『王子様』な風貌に、皆、驚きと感嘆の溜め息を乗せた視線へと摩り替わった。

「ディーノさんっ!」

 呼ぶが早いか、その少年は一目散にそのディーノと呼ばれた金髪の青年の元へと駆け寄る。

「や…山本っ!スマン!!!遅れちまった!!」

 そう言いながら、これまた少年に駆け寄る金髪の青年の、その願いは虚しくも届かず。少年に手が触れる寸前で、びたんと派手な音を立てて盛大に地面にキスをする羽目になった。
 二人が抱き合う光景を脳裏に浮かべていた広場の観衆達は、あまりの意外な展開に、普段の陽気ななりを潜め水を打ったように誰も一言も発しない、いや発せない。

「大丈夫ですか!?ディーノさんっ!」

 広場の誰もが動きを止めた中、少年…山本だけは目の前の金髪の青年ディーノを助け起こそうと、自分よりも大きな身長を持った身体を抱き起こそうとしている。その際に片膝付いて立てた脚が、着物の合わせ目から丸見えで、いけないと思いつつもついつい観衆の視線はその大腿に集中する。
 そんな気配を何故か敏く悟ったディーノは、がばりと、これまた倒れこんだ時と同じ勢いを付けて起き上がった。

「わっ!ディーノさんっっ!!」

 その勢いの所為で、後ろに仰け反った山本はそのまま地面に尻餅を付いてしまう格好となる。

「いっ…てぇ〜〜」

 地面に片手を付き片手で強かに打ちつけた尻を撫でる山本は、涙目で半身を起こしたディーノに視線を向けた。

「すまん!山本っ!!大丈夫か??」

「ん…ちょっといてーけど大丈夫っす!でもディーノさんこそ…無事で良かった」

 そう言って尻餅を付いた体制で両脚を広げ着物の合わせを全開にしたまま、潤んだ瞳と紅潮した頬で、自分の無事に安堵し微笑む山本を見てディーノは、今度は他の箇所が大丈夫じゃないと、悲鳴を上げる羽目になった。

「山本…行くぞ」

「えっ!?ディーノさんっ!?」

 山本が何も反論する隙も時間もなく、所謂お姫様抱っこという形で山本を攫い上げる。
その光景に、観衆たちの止まっていた時間も流れ出す。「今度は転ぶんじゃねーぞ」「ベッドの中ではヘマすんじゃねーぞ」等、口々に王子とその恋人の逃亡劇を勝手な人々は囃し立てる。
 そんな願いも虚しくディーノの足が再び縺れかかったその時、群集のなかの一人にキャバッローネファミリーの親愛なる部下の姿を目にし、寸での所で踏み止まり事なきを得たのだった。

「ディーノさん…いくらなんでもちょっと…恥ずかしいっすよ…」

 そう暗に降ろして欲しいとディーノに哀願してみたものの、ディーノの通りを駆け抜けるスピードと山本を抱える腕の力は緩まない。

「山本…オレ…このままグズグズしてっと……心配で気が気じゃねーんだ」

「へ?どういう意味ですか?ディーノさん」

 判らないといった風な口調でディーノを見上げる山本のきょとんとしたある種の破壊力を持つ目を今のディーノは目にすることが出来なかったが、きっとそれで命拾いをした事は間違いない。

「さっきの…広場で…皆山本の事……あんなやらしー目つきで……」

「何の事っすか??ディーノさん?」

 そう問いかけるも、ディーノの思考は深い所で巣を広げている所為か返事は返ってこない。そればかりか尚も不穏な独り言だけが山本の耳へと届く。

「そうだ…今度は内股が見えてもオレの山本だって判る様に…しるしを……」

 ぶつぶつと独り言を唱えてはたまに押し殺すような笑いが聞こえて来るディーノに、いくつかの疑問を抱えながらも、愛しい人物の温もりに包まれているという幸せな事実はその疑問に勝り、いつしか山本は安堵の寝息を無防備にディーノの腕の中で立てているのだった。


――――翌日――――



「う゛お゛ぉい!タケシ!どうした動きが硬ぇぞぉ!!」

 いつものようにうきうきと、山本を剣の鍛錬に誘ったスクアーロは、その剣を交えた時いつもの山本の動きとは微妙に違う事に気が付いた。

「ん…ちょっと待ってスクアーロ……あっ!!」

 普段なら避け切れるはずの一太刀が誤って山本の黒いズボンの大腿部分を切り裂いた。その隙間から今の太刀によって薄く引かれた線が徐々に赤く、ところどころにぷっくりと赤い珠を浮かばせながら面積を広げていく。

「う゛お゛ぉい!弛んでっぞぉ!んな事でどーすんだぁ!!まぁ、傷口を見せてみろぉ」

「えっ!?いーーって!!スクアーロ!!ちょっと唾付けときゃー治るって!」

「この所為でバイキンが入ってどーにかなっと、こっちの気分がわりーんだぁ!」

 そう言いながらじりじりと大きな木の幹に山本の身体を追い詰め、そこでスクアーロは山本のズボンに手を掛け、一気に下まで引き下げる。何だか犯している気分がすると、ちょっとだけ悦に入りかけていたスクアーロを現実に引き戻したのは、山本の脚の内側…殊更太腿の内側と、トランクスの中に続く箇所に所謂キスマークといわれる痣と、自分が引いた赤い線とは違う、赤く長い何か…そう例えば跳ね馬がいつも武器として携帯してるあの鞭の様なもので引かれた…そんな痕を一筋だけ目にしてしまった。だが、多少安心できるのは、その鞭の痕がある程度加減をして打たれたものなのだろうな…と言う事で…。いや、そんな事はちっとも安心する事象の内に入らないと気を取り直したスクアーロは、取りあえず目の前の山本にこの痕の事について糾弾してみる事にした。

「な…なんつープレイしてんだぁ!!!てめーらぁ!!!」

「えーと…あいのかくにん?」

 キスマークはともかくとして、鞭の痕のようなモノは何なんだ!?タケシはああいうのが好きなのか!?と意外と清純なスクアーロは、その夜何度も脳裏に鞭に打たれて啼きながら身悶えるタケシを妄想しては、一人色んな気持ちと生理現象を宥めてしまう羽目に陥ったのだった。

オシマイ

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こちらの小説は、セガミカイト様からいただきました、とても麗しい山本イラストを拝見して居ても立っても居られずに思わず手が動き出した勢いで書いた小話です。セガミさんの山本はGIFTページにあります!もう最高にエロスです!
ですが、見事にあの麗しい絵のイメージをぶち壊しにしてしまいそうだったので、分けてUPしました。最初は同じページにしてたんですが、あまりにも余韻をぶち壊しにしてしまったので…。
そして、ディーノさんが鞭プレイすみません…!!こう、何度も打つとかそんなんじゃなくて、一回だけ…みたいな感じで……あわわわわ。
そして、友情出演なスクアーロもなんというかアレな役回りで…。

本当は、小話冒頭部分のセガミさんから頂いた武の魅力を一杯語る為に書いた文章だったのですが、なんだか残念な結果に終わってしまいました。
もしもここまで読んでくださった方、お目汚しすみませんでした!!
そして、セガミさん!!本当に素敵な武をありがとうございましたー!