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「うわっ…!!」
「……チッ…哲ちゃんか…」
14時を回った土曜日の放課後。中天から少し西に傾いだとはいえ、何にも遮られる事なく降リ注ぐ夏の日差しは、白日に晒された者達の上を容赦なく焦がしていく。
そんな炎天下のBL学園の屋上に、学生会の二人が顔を突きあわせる。この二人の並びに、コンクリートの地面が揺らいで見えそうな屋上の気温が更に上昇する気配を感じるのも無理はない。
「たまに早く仕事が終わった土曜の午後ってぇのにさ、何でココでまた同じ顔を突き合せなきゃなんねぇんだよぉ」
丹羽は盛大なため息を落としながら、大きな身体で屋上の手摺りを抱え込む。
「それは俺のセリフだな、哲ちゃん。このクソ暑い中、お前の暑苦しい姿が視界に入るだけで、身体に取り込む酸素量が減るというものだ」
「んだとぉ〜?大体なんでお前ぇがココに居んだよ!」
「そういう貴様は、いつも仕事から逃げ回る時の様に海辺で昼寝でもして居れば良いじゃぁないか?まぁこの暑さじゃ、日が沈む頃には程よく干されて猫の餌にでもなってる事だろうがな」
まさに一触即発、売り言葉に買い言葉、ああ言えばこう言う。小学生並みの罵り合いを繰り広げながらも、二人の意識は同じ対象を追い収束する。
「「…篠宮か…」」
二人は、同時に溜め息を落とすとようやく緊張を解き、じりと焼ける屋上の手摺りに半身を預け、眼下の弓道場へと視線を遣った。
緑に囲まれた一角に建つ弓道場は、そこだけまるで夏の熱気を受け流すかのように清かで清涼だ。その様は、この弓道場に立つ男の空気そのものである。
練習日では無い所為で、弓道場には篠宮一人きり。静かに、流れるような所作で弓を引く姿は、ただひたすら神聖だ。
「…今日は弓道勝負はしかけなかったのか?珍しく殊勝な事だな」
「たまには静かに…篠宮が弓を引く姿を眺めるってぇのも良いモンだと思ってよぉ」
言いながら、二人の視線は篠宮から外れる事は無い。
「大体よぉ〜、ヒデこそ何でこんなクソ暑い中屋上なんかに居ンだよ。篠宮が見たいなら弓道場に行って後ろからながめてればいーだろ?」
その丹羽の問いに尤もだと頷きながら、中嶋はスラックスのポケットからシガレットケースを取り出す。
「弓道場じゃ篠宮が煩いからな。ゆっくり此処で一服と行きたかったんだが…やるか?哲ちゃん」
「いらねぇよ!俺は不味いモンがきれぇなんだよ。大体ライターの火を見るだけでも暑苦しさが増すってもんだぜ」
ライターの火を見なくとも、大きな男二人が肩を並べて手摺りにへばりついている様は暑苦しく、出来れば勘弁して欲しい光景だ。
音も無く、太陽がじりじりと緩慢な動作で二人の上を通り過ぎる。
じわじわと、二人の思考も焼け付きだす。
「だぁぁーーーー!!ったく俺達はよぉ、んな所で何やってんだよ!!」
暑さに参ったのか、大げさに頭を両手で掻きながら、とうとう丹羽の口から悲鳴が零れた。
「もう耐えられねぇ…俺は言うぞ…」
「何をだ、哲ちゃん。篠宮に愛の告白でもする気か?」
唇の片端を吊り上げ、嫌味な笑いを伴いながら問う中嶋には答えず、丹羽は屋上の手摺りから迫り出す勢いで、眼下の弓道場に向かい大声で叫び始めた。
「おい、篠宮〜〜〜っっ!!聴こえるかぁ〜!?篠宮〜〜〜っ!!」
只でさえ大きな丹羽の声が、BL学園全体に轟くかの勢いで響く。そんな大声に震える鼓膜を押さえ付けるかのように、隣にいる中嶋は大げさに両手で耳を覆う。
そんな大声に篠宮が気付かない筈もなく。弓射を終え、弓を所定の位置に置いた篠宮が、弓道場から屋上の丹羽に向かい何事かと怪訝そうな顔をして問いかけた。
「丹羽!俺に用があるのならば、そんな所から叫ばずともこちらへ降りてくれば良いだろう?大体学生会長が何事だ!他の生徒に示しが付かないだろう!」
篠宮が屋上に向かい叫ぶが、それを聴き取れているのかいないのか、丹羽は尚も篠宮に向かい何かを叫んでいる。
「いいかぁ〜〜っ、篠宮!!一回しか言わねぇからなぁ!よ〜〜っく聞いとけよぉ!俺はなぁ…篠宮…お前の事が…」
そこで一旦言葉を区切り、大きく息を吸い込む。
「俺は、篠宮のことが…」
と、丹羽が核心に触れようとしたその時、先程まで耳を抑えつつ成り行きを見ていた中嶋が、不意に横から丹羽と篠宮の間に割り入ってきた。
「篠宮…!聴こえるか?」
「どうしたんだ中嶋?一体何事なんだ??」
普段、中嶋がこんな風に声を張り上げる姿を見た事が無い篠宮は、思わず何事かと驚きの方が先に立つ。
「おい!篠宮っ!!明らかに俺の時とヒデの時とで態度が違わねぇか!?」
「フン。日頃の行いが違うからなぁ、哲ちゃん」
そう言いながら、何処か中嶋の顔が緩んでいる様に見えるのは、きっと気の所為ではないだろう。
「クソッ、脂下がりやがってよぉ、そのだらしねぇツラを篠宮に見せてやりてーぜ!」
「フン、ナンとでも言いやがれ、この、負 け イ ヌ」
二人が勝手に自分を呼びつけておきながら、いきなり屋上で掴み合いの喧嘩を始めた物だから、篠宮には益々二人が自分に何を話そうとしていたのかどうしたかったのか、訳がわからないし見当も付かない。
「二人とも、一体俺に何の…」
そう屋上の二人に問いかけようとしたところで、篠宮の言葉が不意に途切れる。それと同時に、篠宮が屋上の二人から弓道場の入り口へと視線を移した。
篠宮の向いた先に見えるのは、夏の陽を受け輝く、この学園には彼を置いて他には居ない銀の髪。
「ヒデ…取りあえず話は後だ…」
「あぁ、それが懸命だな、哲ちゃん」
先程までの睨み合いが嘘のように意見を纏めた二人は、階下の弓道場へと大きなストライドを駆使し駆け急ぐ。
まだまだ、アツイ放課後は続きそうだ。
End…(無理やり)
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ほとんど篠宮が出てないお話ですね。もうちょっと、三人が仲良しこよしな感じも書きたかったのですが!それが篠宮を好きになる事によって崩れるバランスとかも萌え。
私は、中嶋と丹羽二人の悪友関係がめちゃめちゃ大好きですv
もう、サーチのカテゴリに『友情:中嶋&丹羽』とかいうのがあったら絶対登録する!!
一生の友人腐れ縁だと思います。
ヒデにしてみれば、初めて身体抜きで本気で付き合える親友といった感じでしょうか。
いや、ゲームでは中丹羽中はかなり匂わせてますけどね、うん。シナリオライターさんが中丹羽お好きらしいので、ここら辺は仕方がないですが。まぁ、自分の中だけでも(笑)
あと、個人的にひっそり主張なのは、丹羽がタバコを吸わないシーンです(笑)
丹羽は、何度か吸ったことはあると思うのですが、基本的にタバコを吸うという『格好』よりもタバコが美味しいか美味しくないかの方に、タバコを吸うか吸わないかの判断を置きそうな気がするので。…あくまでも気がするだけですョ。
このお話では、二人ともが篠宮を狙ってますが、どちらか一方が篠宮を狙ってて、その事でアドバイスしたりされたり、協力したりしあったりという風な二人も美味しいですv
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