朝の真っ白な光が、シーツに横たわる二人の姿を照らし出す。

昨晩、寮則を破り成瀬の部屋で一夜を過ごした啓太は、ブラインドの隙間から差し込む朝日に無理矢理重い目蓋をこじ開けられた。
啓太が何度か目をしばたかせ周りを見渡してみると、自分を真っ直ぐに見詰める成瀬の瞳とぶつかる。

「す・・すいません!俺、成瀬さんの腕枕で眠っちゃったんですね!?」

頭の下に成瀬の腕を感じ、啓太は己の失態に自ずと頬が熱くなる。

「いいんだよ。ハニーの重さなら、寧ろずっと感じていたいぐらいなんだから」

ニッコリとそう言いながら成瀬が啓太の唇に己の唇を触れ合わせようとした瞬間、

「ま・・待って下さい!!成瀬さん!!」

成瀬が予想だにしなかった、キスを制止する啓太の声が、朝の白々しい部屋に響き渡った。

「どうしたんだい?何か気に障るようなこと・・・昨晩しちゃったのかな・・・」

成瀬が、心配げに啓太の顔を覗き込む。

「違うんです!!そういう訳じゃないんですっ!!」

成瀬の言葉を受けて、啓太は思わず身体を起し必死にかぶりを振る。

「今日は・・・成瀬さんの誕生日です・・・だから・・っ!!」

そう言うと啓太は、成瀬の吐息が触れるぐらい間近で、成瀬の瞳を見詰める。

「今日ぐらいは・・・俺からキス・・・させて下さい」

いつだって、啓太が求めるより早く、成瀬の唇は啓太の唇を塞ぐ。
いつだって、啓太がみずからキスをしたいと思った時でも、成瀬は先回りして、優しいキスをくれる。

「俺・・・いつも成瀬さんの優しさに甘えてばかりです・・・だからっ!!」

そう言うと同時に、ぎこちない唇が、そっと成瀬の上に下りてきた。
最初は、軽く触れ合うぐらいのキスだったのに、何時しかお互いの唇は熱を帯び、より深く、より貪欲に喰らい合う。求め合う。

「ハニー・・・・もう・・・僕、我慢の限界みたい・・・・」

角度をずらした唇の僅かに開いた隙間から、吐息混じりの成瀬の声が零れる。
それと同時に、熱く硬い感触が啓太の大腿に押し付けられた。

「な・・成瀬さん!?」

「だって・・・ハニーが可愛すぎるのがいけないんだよ?」

昨晩二人は、散々、もうこれ以上は無理だという位、お互いを激しく求め合った筈なのに、成瀬は再び啓太の身体に火を灯そうと、先程まで触れ合わせていた唇を啓太の首筋へとずらす。

「成瀬さん・・・っ!授業に・・・遅れ・・ますっ!!」

このまま本格的になし崩しに行為が行われれば、今日の始業に遅れることは、火を見るより明らかだ。
啓太は途中からBL学園に編入したという事もあって、毎回の授業は早く皆に追い付こうと必死の思いで臨んでいる。
だから、一教科だっておろそかにする訳にはいかない。
成瀬さんには申し訳ないけど、今の所は事を進めるわけにはいかない・・と啓太が口を開きかけた瞬間・・・

「授業と僕・・どっちが大事?」

成瀬の思いの外真剣な口調が、眼が、啓太の次の言葉を制した。

「成瀬・・さん・・・俺は・・・」

啓太はしどろもどろに言葉を搾り出す。
どうして良いか判らない。こんな風に強引に理不尽な答えを求める成瀬を啓太は知らない。

「啓太の何もかもを投げ打ってでも・・・僕の傍にいて欲しいと思う事は・・・いけない事?」

畳み掛けるように、成瀬の熱い言葉が唇から零れ出す。
その熱にじわりと侵蝕され、啓太の鼓動は早さを増す。

思えば、成瀬さんが我儘を言う事なんて今まであっただろうか・・・。

そんな事実に啓太の想いが行き着く。
その途端啓太は、強引とも思える言葉で、行動で、啓太を己の元へと縛り付ける成瀬の事を可愛いと思った。
愛しさが身体の奥底から込み上げる。

「成瀬さん・・・俺・・・成瀬さんの事が好きです・・・成瀬さんの望みなら・・・できる限り応えたいと・・これでも思ってるんです」

それは唐突に、自然に啓太の唇から発せられた。
一度堰を切った言葉は留まる事を知らず、流れのままに迸る。

「今日・・一日は・・・成瀬さんとずっと一緒に居させて下さい・・・。他の事なんて知りません!!・・・成瀬さんの・・傍に居たい」

啓太はそう告げると、そのまま成瀬の胸に身体を預けた。

「啓太・・・・僕は・・・その言葉に・・甘えてしまっても良いのかな・・・・?」

そんな成瀬の口調は、申し訳なさそうで・・・いつもの成瀬からすると頼りないぐらいの細い声であったが、表情には先程の緊張感とは裏腹に喜色が混じっていた。

「はい!勿論です!!俺の胸なんて・・頼りないけど・・どーんと飛び込んで来て下さいね!!・・・でも・・・その代わり・・・」

「ん?何だい??」

啓太の、常なら見せない交換条件に、成瀬は僅かばかりの不安と若干の快感を覚える。

「遅れた授業の分は・・・成瀬さんに教えてもらいますからね!」

「なーんだ!そんな事かぁ〜」

「そんな事じゃないです!!俺にとっては・・・・」

「ストップ」

そう言うと、成瀬は啓太の次の言葉を唇を触れ合わせ飲み込んだ。

「今日は、お小言はナシだよ、ハニー。だって僕の誕生日なんだからね」

そう言いながら、成瀬はゆっくりと優しく啓太をシーツの上に横たわらせる。
そして、もう一度優しいキス。
それを合図に啓太の手が、成瀬の広い背中に回される。


今日という日は、まだ始まりを告げたばかりだった。


ENDv



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自分が今までで描いた中で、一番甘いSSに絵なんじゃないかと思います(笑)
こちらは、成啓同盟さまにて開催された成瀬さんお誕生日企画に出品させていただいたものです。
成瀬さんおめでとう!という事で、ひたすら甘くvv
とにかく、パジャマ半分コをさせたかった!!それのみで突き動いてました(笑)
実はSSは当初全く予定してなかったんですが、急に手が動き出しました。成啓マジック・・!!
しかし、成瀬さんの顔や身体が今見るととても変で泣けてきます(涙)
啓太も乙女モード満開です。もうちょっとお尻を男らしいお尻にしたかった・・・。

本当に、こんなへタレ作品を提出してしまいましてすみませんでした!
もっと修行します。でも、大好きですv成啓vv