結局どっちが悪いのかって聞かれたら、多分俺が悪いんだと思う。いやきっと、全部全て俺が悪い。でも、でも君の方も悪いんだ。だって君は、優しすぎるくらいに優しいから、キレイすぎるくらいにキレイだから。故に俺はいつだって、こんな気持ちになってしまう。すぐにあんなコトをしてしまう、あんな言葉を吐いてしまう。本当の想いは違うのに、本音の囁きは違うのに。なのにどうしてもどうしても、ソレをキチンと表現出来ない、伝えられないバカな俺。だから間違っていると判っていても、頭の中で強く思って納得させる。今にもふたつに割れて裂けてしまいそうな、不安定な精神を落ち着かせる。そう、コレは俺だけのせいじゃナイ、君の方だって悪いんだ、と。


『R-18 - F -』


「・・・誰が休んで良いって言った?」

言いながら、携帯を握った侭の手でぱしっと叩く座った俺の脚の間に踞っていた姿の横っ面。次いで、下げてたストラップに付いてた小さな鋲で切ったのだろうか、その左頬にすうっと走った赤い線を指先で抑えつつ、怯えた上目遣いでおずおずとこちらを見上げて来た顔の、幾筋ものてらりとした雫を流す尖った頤を開いた二つ折り携帯の端で持ち上げながら、低く私語くひやりとしたヒトコト二言。ねえ、誰が休んで良いって言った?誰が赦すって言った?言ってナイでしょう、誰も。だったらちゃんとヤりなって、じゃナイと。

「じゃナイと、いつまで経っても終んないよ?」

まあ俺は別に構わないけど、でもやるって言ったのは君。俺の出した要求に、黙って頭を縦に振ったのは君の方でしょ。なら最後まで真面目にやれよ、サボってナイでさ。そんな言葉と共に携帯の画面で再び頬を打った後、その手を手触りも色も極上な甘い金茶のクセ毛の髪を乗せた頭に乱暴に掛け、そのままぐっと脚の間に押し付ける仕草。動きに、小さく上がった悲鳴みたいな声。でもソレは聞かなかった、聞こえなかった振りで更に下腹へと横向きで押し付ける小振りの頭。ソレから空いてたもう片方の手の指先を押し込み開かせる、いつもは少し渇いて冷えているけれども今はまるで温めた油でも塗ったかの様にべったりと濡れ、柔らかい熱を孕んでいる薄い唇を貼付けた君の口。そして差し込んだ指先で捉える、コレもまた唇同様に薄く熱い手触りを持つ君の舌。ソレに擦り付ける様にして押し当てるのは、長い舌戯に反応しじわじわとじっとりした赤黒い色合いと硬さ、温度とを孕んで疼き出している俺の一部の先端。その、独特のふっくらとした質感と丸いカタチを感じ取ったのだろうか、切ないラインに歪んで伏せられた切れ長の赤茶色の瞳。ひくりとチカラが入った舌先、零れた甘い掠れた声。ソレらを目で耳で受け止めながら囁く、ひやりとしたヒトコト二言。ほら、判る?まだこんな柔らかい。ってコトは全然足りてないって証拠、だから休むだなんて早いよ。そしてわざとその、未だに硬さを持たない先端で舌先と唇とを、音を立てて幾度か叩く仕草。するとそんな俺の言葉と動きとに促されたのか、行為を再会する為に根元を押さえようと伸びて来た、君のすらりとした指先。ゆっくりと下腹から起き上がり、ゆるりと立ち上がった塊を上から銜え込もうとする顔。でもそうやって絡み付いて来た手の甲は強い舌打ちと共に携帯を置いた手でキツくつねり上げ、痛みに思わず小さな声を上げてこちらを見た顔に向かい吐き捨てる、イカレた科白。

「ナニしてんの、口『だけで』って言ったでしょ?」

手なんか使ったらダメ、銜えるトコから全部『口だけ』でして。判った?言葉に、ひくりと困った様に揺れた君の表情。でも自分に向けられる俺の強い視線に観念したのか、赤く腫れた手の甲を二、三回ほど擦った後で再び下を向いた顔。おずおずと開く、薄い唇。しかし手を使わずに未だ充分に充血していないせいで硬さが足りず、結果ゆらゆらと鼓動や呼吸に合わせて不安定に揺れてしまっている俺を掴まえて口に含むなんて器用なコト、君が簡単に出来る訳はナイ。ソレにこっちだって、そう易々と銜えさせてやるつもりなんかナイし。そんなコトを思いつつ、さり気なく迫って来る君の唇から逃れる様に、右に左にと振ってやる先端。ソレを必死になって追い掛ける、薄い唇を貼付けた君の口。その様子はまるで、無心にエサを追い掛ける子猫みたいに愛らしく、そして同時に堪らなくいやらしく淫らなケモノの姿にも見て取れた。あのつんと尖って端正な横顔を歪ませ、かくんと頤を鳴らして俺を追い掛ける全身を甘い蜜に浸したかの様に濡らして蠢く、しなやかなイキモノ。そんな、普段の研ぎ澄まされたストイックな雰囲気なんか微塵も感じさせない表情に仕草に、舐められても触れられてもいないのにぐんとチカラを満たす俺の一部。ぴんと張り詰める先端、筋を浮かばせる中程から根元。じくりと疼く、俺の心の奥の方にあるヒドく凶暴で残酷な場所。ソレらを意識で感覚で感じ取りながら構える、更なる畳掛け。ほら、いつまで遊んでんの、手が使えないなら他を使って。俺の言葉に、一瞬止まった君の動き。でも次の瞬間、何かを思いついたかの様な顔で改めて俺の箇所へと顔を寄せ、そして。

「・・・そうそう、そういうコト」

精一杯に伸ばした舌で、すっかり張り出した部分の下の括れへとぬるりと巻き付け、自分の方へと引き寄せる仕草をして来た君。次いで寄せた先端に下唇を押し当てて固定をした後、舌を解いて再度頭から銜え込み始める吸い上げ、舌使い。その様子を、薄い笑いで見つめる俺。改めて手に取りぱちんと開く、メールを打ち掛けたままで放っておいた携帯。ソレじゃあ、その調子で頑張ってね。

「期待してるよ、梶本クン」


でもそんな軽口と余裕な態度とは裏腹に、俺の内心を満たしていたのは冷ややかな焦燥感。




本当は、朝まで戻らないつもりの外出だった。でも何故か突然に訪れた変な胸騒ぎに背を押され、取って戻った部屋。すると幸か不幸か、虫の知らせは見事に的中。道路から見上げた窓に明かりはなく、冷たく冷えたドアの向こうに居るべき姿はなかった。その現実に、ぞくっと冷えた背筋。脳裏を走る、嫌な想像。でもその反面、ドコかで感じた変な安堵感みたいなモノ。ああ、とうとう来たんだ、この瞬間が。君が俺から離れて行く、君が俺に裁きを下すその時が。そう、がらんと冷えた部屋の中を見つめ、ふっと零す渇いた息。そうだよな、コレは至って当然の結果。寧ろアレだけのコトをし続けて来たんだ、今の今まで関係が持っていたコトの方が奇蹟に近い。事実、昨日だって君がしていた俺が見たコトなかったピアスのコトで俺達は(いや、正確には俺だけが)散々に揉め、結局俺はそのピアスを君の耳から引きちぎって握り潰し、窓から外へと投げ捨てるってコトをしでかしてたし。そんなコトを脳裏で考えつつ、ぽいと靴を脱ぎ捨てて上がる玄関。そしてそのまま冷えた板の間にぺたりと座り込み、何をする訳でもなくただぼおっと、もう決して開く筈がナイだろう玄関ドアを眺めながら抱えるジーンズの膝。だからコレは、当たり前のコト。君が俺から去って行くのは、誰の目にも正しい。全てはドコまでも身勝手でワガママで堪え性のナイ俺の自業自得だと、項垂れ零す長い息と今更な後悔。トコロが、

”・・・え?”

そうやってドレくらいの時間が経っただろうか、ぴくりともせずに座り込んでいた俺の耳に届いた、ドアのレバーハンドルが回るかちりと言う音。次いで切れるみたいにして開いた、俺がココにいる以上は二度と開くことはナイだろうと思っていたドアの隙間から、するりと中へと入って来たすらりとした長身。その、俺が傷付けた耳朶を覆う白いガーゼが目立つ顔が、部屋の中で踞っていた俺を見つけ『どうして』と言わんばかりの青く引き攣った表情で固まる。でもそんな君以上に驚き、強張る俺の内心。何で、何で戻って来たの。もう良い加減うんざりしたでしょ、イヤになったでしょ、こんな俺に。だから出て行った、そうでしょう?なのに。その時だった。

『・・・誰、の?』

俺の鼻先をくすぐった、無言で俺の脇を通り過ぎようとした君の身体から漂った煙草の匂い。ソレは俺の紙巻きとは全く違う、つんとするメンソール。だから思わず、聞いてしまった。本当は、もっと違う言葉を言いたかったのに。昨日はゴメン、本当にゴメン、耳はどう?落ち着いた?でももしまだ痛むんなら、明日一緒に医者に行こうと、そういうコトを言いたかったのに。なのに瞬く間に込み上げて来た冷えた熱を孕んだ感情の侭に、聞いてしまった。ソレは誰の匂いだと、こんなメンソール誰が吸うのかと。でも君はどう言う訳かそんな俺の問い掛けに、

『・・・別に、誰でもありません』

と、短く低い声で言葉を濁した。そのヒトコトに、かちんと尖った俺の心。ナンだよ、ソレってつまり答えられない様な相手な訳?そんな相手と逢って来たの、今夜。俺の言葉に、困った様な音色で返る君のフォロー。そういう意味じゃありません、言う迄もナイ相手って意味です。でも一度ささくれた俺の神経が、そんな言葉ヒトツで収まる訳がナイ。だからまるで逃げる様にして部屋の奥へと向かおうとした手を背を掴まえ、だん、と放るみたいにして壁に叩き付ける細い身体。そしてバランスを崩しラグの上へと倒れ込んだ腹の上へと乗り上げ、襟首を掴んで持ち上げた顔に低く囁く言葉。良いから、ちゃんと答えてよ。そんな『言う迄もナイ』相手と、こんな時間まで一体ナニをしてたのかって。しかしやっぱり、俺の問い掛けに君は口を閉ざしついっと視線を逸らすばかり。その様子に、益々ひり付く胸の底。じわりとした嫌な温度の熱を放つ、頭の隅。そんな感覚に押される様にして、口から零すひやりとした私語き。つか、ホントは違うんじゃナイ?言う迄もナイじゃなくて言いたくナイ、いや言えない相手なんじゃあ。俺の言葉に、かっと鋭く光った君の瞳。何かを言おうと、喉元を締められながらも大きく吸い込んだ息。でもソレは赦さずに、更にキツく締め上げる襟元。畳掛ける、詰問の言葉。ナニ?そんな目をして、ナンか不満でもあんの。だったら言いなよ、誰とドコでナニしてたって。だから、誰でもありませんっ、煙草も知りませんっ。ふざけろっ、ナメたコト言ってんじゃねえよっ。キヨっ、苦しいっ。しかし。

『本当に、相手は誰でもナイんです・・・っ』

今夜は朝まで帰らないって、そう言っていたから。だから少しハナシをしただけです、昔からの友達で、たまたま耳のクスリを買いに出た時に道で逢ったんですっ。煙草の匂いは、行ったファーストフードの隣の席の女性が。しかしそうやって責め立てるコト数分、喉を締められる息苦しさにとうとう観念した君が吐き出した真実は、呆れる程に下らない内容。でも、だからこそ俺は煮え切らない。こんな些細なコトを、どうしてココまで隠すのか。だからその気持ちそのままと言ったカンジの、滾った音色で怒鳴りつける。襟を絞める手のチカラも、緩めない。ナニそれ、だったらどうして素直に言わないの、何であんな濁し方したのっ。そんな俺に返される、悔しさに引き攣った様な君の声。どうしてって、言ったら信じましたか、君は僕の言葉を信じましたかっ。

『信じるって、そんなのっ』

そんなの当たり前だ、当然だと叫びたかった。でも俺の喉からそのヒトコトが出るコトはなく、代わりに出たのは長くて重たい息。唇が綴ったのは、

『・・・どうだろう、君ってば結構ウソ付きだから』

だからそうだね、信じナイだろうね多分。などと言う、冷えたトゲを纏った言葉。俺のヒトコトに、哀しそうに歪んだ君の顔。すっと滑って横へと流される、視線。零れた、微かなため息。その様子に、きしりと嫌な軋みを上げすうっとヒビを走らせる俺の内心。込み上げる『ああ、また』と言う苦い気持ち。ああまただ、また俺はイラナイ邪心で君を汚した。君はまた、俺に余計な傷を付けられた。そんな今更なコトを脳裏で繰り返しつつ、小さく零す後悔の舌打ち。

こういう自分の性格を、疎ましいとは何度も思った。でも君はとてもキレイで優しくて、同時にこんな風に取り柄と言えば外面と空調子の良さばかりの、中身はグチャグチャに曲がって歪んでる俺のコトなんて、普通だったら視界の端にも入れない程に清廉で潔癖で。だからこうやって一緒にいて、何度も身体を繋いでいても未だに俺にはそんな君のコトを一体どうやって想えば、どうやって愛せば良いかが判らない。君の気持ちも、君の言葉も信じ切れない。優しい眼差しで尽せば良い?べったりと甘やかして、欲しい物をあげれば良い?愛してるって毎日毎日、喉が嗄れるまで叫べば良い?ダメだよ、そんなのドレも在り来たりなコト。ってかこんなコトきっと、俺じゃない他の誰かの方がよっぽど上手い。そうだよ、俺じゃナイ他の誰かの方が、きっとずっと。だから懸命に考えた、俺なりの俺だけのやり方を。そして結局、辿り着いたのはコレ。俺が君を繋ぎ止めるのに使ったのは『欲望』と『暴力』と、ソレからソレらとは相反する過剰なまでの『愛情』と言う、ねっとりと絡み付く手触りをした重たい3本の鈍色の鎖。先ずは『欲望(セックス)』と言う名の1本で君の身体を絡め取り、次いで『暴力(チカラ)』と言う名の1本で君の精神(こころ)を縛り上げそして君の全てが俺への怯えと恐怖に竦んだ瞬間を見計らい、君を戒めるその2本の鎖を甘い言葉での懺悔を零しつつゆっくりと解き、でもその陰で『愛情』と言う名の細く細く、でも最も強く強固な鎖を君の喉へと巻き付ける。そんな俺の行動や言動を、きっと君は未だに理解なんかしていない。当たり前だ、5分前まで自分を殴っていた手が、今は素肌を愛撫をしている。昨日まで自分を蔑み、追い詰める言葉しか吐かなかった唇が今は愛を囁き、キスを繰り返す。こんなヒドい裏表、君じゃなくたって理解なんか出来ない。でも案の定、理解は出来なくともそういう不安定な俺の姿は君の中にある産まれもっての強い『保護欲』みたいなモノを深く激しく刺激したらしく、危機は幾度かあったものの結局は君は俺の傍に居てくれた。俺をヒトリにする様なコトは、決してしなかった。そう、優しい君は理解をしようと努力をしてくれた。そして俺の心を乱さない様に、俺の感情を昂らせない様にと懸命に従順に俺に尽してくれた。その気持ちは正直、涙が出る程に嬉しかった。こんな俺でも、君に愛されているんだと実感出来た。しかし同時にそういう君の優しさは、俺の中に濁った感情を沸き上がらせて。バカじゃねえの?コレは『愛情』なんかじゃナイ、アタマのイカレた可哀想なガキへの単なる『同情』だよ。そうだよ、お前はそんな『同情』をあのコに恵んで貰って、そしてその『同情』を頭の中で『愛情』にすり替えて喜んでいる、ヒトリ善がりの惨めなマス掻きみたいなモンだと、冷たく低くせせら笑いながら吐き捨てるもうヒトリの俺の存在を造り上げて。だから俺はまた、性懲りもなく繰り返す。俺の歪んだ独占欲は、ドコまで君に通じるんだろう。そして君は、そんな俺をドコまで赦し包んでくれるんだろうって、何度も確認をしてしまう。でももう、そんなコトは止めなきゃイケナイ。そうしないと、今度こそ俺は君を失う。こんな俺の傍でも優しく笑っていてくれた大切なこのコを、永久に失う。そう思い、腹に吸い込む今度こそ本当に本心からの『ゴメン、やっぱり信じる、君を信じるよ』と言う素直な言葉を綴る為の息。しかしその時、

「・・・でも」

でも今のコトは僕が悪いですね、僕がおかしな言い方をしたから。だから謝ります、すみませんでした、気を揉ませてしまって。未だ俺に襟首を締められていた侭だった君が、苦しそうな息でぽつりと零したヒトコト二言。その言葉に、ふっと緩めてしまった指先のチカラ。思わず見つめた、暗がりでも良く判るつんと通った鼻筋と尖ったライン、ソレから澄んだ紅茶みたいな赤茶色をした瞳を持つ、君の顔。すると君は、そんな俺に弱く視線を合わせた後、チカラが緩んだせいで多少は喋りやすくなったのだろうか、さっきよりもやや大きな声で言葉を綴る。だけれども本当にナンでもナイんです、次に逢う約束もしてませんし、携帯の番号も住所もナニも教えていません。ソレだけは信じて下さい、そして赦して下さい、僕のウソを。でも俺は、君の言葉にすうっと胸を神経を冷やす。ナンだよ、ナニ言ってんの。赦して下さいって、何を赦すの。君はナニも悪いコトなんかしてナイ、悪いのは勝手に変な勘ぐりを掛けた俺の方。君が言葉を濁したのは、正直に話しても信じては貰えないだろうから。ソレどころかヒトリで勝手に妄想を募らせた俺にまた、理不尽な暴力を振るわれるかも知れないから。なのにどうして謝るの、謝るのは俺なのに、俺が謝らなきゃイケナイのにっ。そう脳裏で吐き捨てた瞬間、耳の奥にくすりと聞こえた微かな声。ソレはアイツの笑い声、俺の中のもうヒトリの俺が零した笑い声。その声が、俺に囁く。ほらほら、見てみろよあの顔。アレは『コレ以上ハナシが拗れると、後々で色々と面倒クサい。だからさっさと謝ってしまおう、悪いのは自分だってコトにしてしまおう』ってカンジの諦め顔、内心じゃあ少しもそんなコトなんか思ってナイ、保身を算段した小賢しい顔だと、からからと言う乾いた笑いと共に俺の挙げ足を取りつつ畳掛ける。そんなコトはある訳がナイのに、君がそんなズルいコトをする訳はナイのに。でも俺は、やっぱりどうしても君を信じ切れない弱くて情けない俺は、俺は。

「イヤだね、赦せない・・・っ」

言いながら、改めてぐっと持ち上げキツく強く締め上げる襟首。次いでつり上げた身体をラグへとだん、と落とした後で上から下へと一気にじゃっと緩める、黒いカットソーの胸のファスナー。そして露になった色白でなだらかなラインを持つ胸に爪を立て、赤い傷を刻みながら零す呟き。でも。

『でも俺のコト、口だけでイかせられたら赦してあげる』