「好きだ…」
そう囁いた唇は俺の唇にそっと触れる。
ゆっくりと離れた唇はすぐに角度を変えて重なり合う。
焦がれたように触れた唇は熱くて何度も貪った。
瞳はいつの間にか雄の色を宿し頭をぐっと押さえ込まれさらに深く口付け息苦しく声を上げる。
「獄寺っ…」
息も絶え絶えに離された俺の唇は相手の名前を呼んだ。
また合わされる唇に瞳を閉じてこたえた。
目の前が白くなっていく。
―――― 好き…だ ――――
声は違うけど…昨日聞いた言葉だった。
突然のツナからの告白。
突然の告白は衝撃を受けた。
そして自分の気持ちに気付かされた日でもあった。
意識が浮上してゆっくりと目をあける。
「夢…か」
夢に決まっているけど唇に残る感触。
あまりにもリアルでそっと唇を撫でた。
それに相手は…獄寺だった。
「夢に見るのはツナじゃないんだ…」
はぁっと息を吐くと名残惜しむようにもう一度唇を撫でる。
「獄寺……」
あの感触は夢なのに…もう一度と願ってしまう。
絶対に触れ合うことのない仲間だと…そう思っていたかった。
そして夢にまで見るほど…夢の中での自分が求めてしまうほど…
自分は好きだったんだと…また思い知らされた。
ツナの告白がこれから先の自分に大きく関わっている事はわかりきったこと。
断ることはきっと出来ない。
もしアイツが…俺を…と、期待薄なことを知っているのに、そう思いたい自分がいた。

見上げれば薄暗い雲が今にも泣き出しそうで自分の心を写しているようだった。

学校の帰り道。
ツナは先に家へと帰っていた。
俺は部活でアイツは…何してたんだか…学校を出たところでバッタリ会って、どうせいく所は同じなんだからと歩き出した。
いつも行くところはツナの所。
そして肩を並べて歩き他愛ない会話。
ゆっくりと進んでいく時間とこの空気が心地よかった。
―――― 返事は…明日聞きたいな ――――
ふとツナの言葉が頭をよぎる。
聞きたいけど…聞きたくない獄寺の本心は。
唐突に口を開けば驚くだろう言葉を…いつの間にか口にしていた。
「なぁ…俺のこと…どう思う?」
「はぁ?なにいってんだ?おまえ」
「だな。俺も…なに言ってんだかわかんねー…でもよ、本当のところどうなんだ?」
内心ドキドキだった。
獄寺が俺のことを少しでも…と淡い期待もあったから。
「好きじゃねぇ」
聞きたくない言葉が耳に入る。
あぁそうなのか。獄寺の中に俺は少しでも居ないのか。
聞きたくない言葉だったのに、心のどこかで納得していた。
ことあるごとに俺と一緒に居ることを嫌がって…そっけなかった。
それは俺が奴の中に居ないということ。
「そ…か。そうだよな。俺なに聞いてんだ…へんなこと聞いたよな…」
―――― 山本が好きなんだ。ねぇ?山本も好きだろ? ――――
ゆっくりと闇の部分に飲み込まれていく。
―――― 獄寺クンは俺のことしか見ていないよ?聞かなくたってわかるだろう? ――――
ツナの声があざ笑うように俺を闇へと引きずり込んでいく。
―――― 期待しないで待っているよ。どうせ…ここに戻ってくることはわかっているけどね ――――
ツナの闇の部分に掴まった俺はもう…後には戻れない所まで来ていたのに。
もう…
もう。
「10代目の右腕のこの俺がドシロートのお前なんか…好きじゃねぇよ」
「右腕は俺だろ?そばにいんだしさ」
何事もなかったかのように笑いその場をやり過ごした。
獄寺の声も…もう遠くにいるようで聞こえなくなりそうだ。
ポツリ…と頬に雨粒が落ちる
「やべっ雨だ!早く10代目の所へ行こうぜ!」
「あー…忘れ物しちまった…先行ってろよ」
「どんくせぇなぁ〜…先行くぞ?」
ツナの所へ走っていく獄寺の背中をじっと見つめる。
どんどん遠ざかる獄寺。
―――― 好きじゃねぇ ――――
頭の中で何かが壊れていく。
獄寺の言葉が胸に突き刺って痛い。
何度も頬を冷たい雨が振り落ちていく。
冷たい雨の横を暖かい雨粒が頬を濡らす。
あぁ。そうか俺が悲しいから…雨は降り出して。
頬を濡らす涙を隠してくれているんだ。

「あれ?山本?」
後ろから聞こえる声に身体が震える。
「今獄寺君居なかった?」
「今、お前んちに走ってったぞ」
「えぇ?雨降ってきたから迎えに来たんだけどなぁ…」
一本無駄になっちゃった。そんな事を言いながら近づいてくる。
「ほら山本入れよ?風邪引くだろ?」
いつまでたっても声のほうへ振り向かない自分に痺れを切らしたのかひょっこりと後ろから顔を出した。
「だから…聞かなくたってわかるって言ったのに」
傘を差し出すツナの顔は笑っていた。そして昨日聞いた声色になっていた。
「俺、山本のそんな顔を見たくないから…先に教えたのに…」
頬にそっと触れて涙の痕をなぞる。
「ねぇ?返事聞かせてよ?山本も俺のこと好きだろ?」
首に腕を絡め引き寄せられていく身体にまた涙が頬を伝う。
―――― 離れられない…
「好き…だろ?」
「あぁ…俺…ツナのこと…好きだ…」
「俺も山本のこと好きだよ……ずっと」
そして触れる唇。
夢の中で触れ合った獄寺とのキスとは違う。
闇に掴まれて、闇に堕ちていく。
ツナの唇は凍るように冷たかった。
ツナの手から傘が落ちまた雨に濡れるはじめた。
「今は泣いていいよ…応えてくれたから…」
そういって濡れた頬をなでた。
降り注ぐ雨は俺の心を感じ取ったかのようにいっそう激しさを増して。
流れ落ちる涙を隠してくれるのだった。
 
 
 
続く?(続かないでしょう・・・?)










*あとがきコメント*
 
くろすさんとのチャットの時に出てきた話しの中に、
「もっさんの闇の部分・ツナとの見えない鎖」
があってその感じがふとした瞬間ドッと出てきたんですよ(涙)
それを書いたらこんなお話になってしまいました。
 
獄寺くんの言葉には「嫌い」ではなく「好きじゃない」を使ってます。
無意識に嫌いという言葉を使わなかった獄寺クン。
それは心のどこかでもっさんを否定していないということを意味してます。
 
そしてツナと付き合い出すんですかね。皆にナイショで。
好きだと気がついたもっさんは獄寺クンに否定されたと思って心の奥底に想いを閉じ込めてしまうのですね。おぉ辛い…(書いたのは自分)
 
初めて書いたリボのSSがこんな話しになってしまって書いた本人びっくりしています(笑)
こんなものを押し付けてしまってすいません〜そして読んで頂きありがとうございますv
 
 
どんどんはまっていくリボの世界に片足以上踏み込んでいそうな刹那71でしたv
 
刹那71  
07/06/21





わーん!刹那さんっっ!!
このたびは、サプライズなプレゼントを本当にどうもありがとうございます!!
獄寺への想いを断ち切ろうとする山本に、山本がたとえ獄寺を好きと知っていても、それでも尚山本を欲するツナ。そして、自分が山本の事を知らず好きだと未だ己の心に気が付かない獄寺。
三者三様,みんなが切なく、ぐっと胸が締め付けられてしまいました。
山本の中で、ツナは特別な存在で、ツナが望むならどんな事でも叶えたいという想いを常に抱えてて、それがこういう形でツナに求められてしまうと、何処か危うさを孕みながらも、お互いの手を取ってしまっちゃうのかなぁとか。ちょっと張り詰めた危うさをかんじてしまいます、ツナ山。

本当にこの度は、切なく胸が締め付けられるような、この梅雨の季節にじんわりシンクロしてしまうような、そんなお話しをありがとうございましたvv

もう、どんどん両足共々リボの世界に…そして山受けの世界に嵌っちゃってください!(刹那様は普段、ヘヴン&ナルトでご活動されてらっしゃいます)

くろす