寂寞


 いつもの弓を射る音が弓道場から聞こえてこない。
 夕暮れ時になっているとはいえ、まだ、部活の時間である。自主練習の日であろうが、そこには部長である篠宮紘司が熱心に的に向かっているはずだった。

 不審に思い、引き戸に手をかける。
 鍵はかかっていない。静かに戸をあけると、そこには片袖を脱いだまま、的に向かって佇む篠宮紘司がいた。

 憂いを秘めた表情はどこまでも切なく、儚げで、声をかけることさえためらわれる。
 その硬く沈んだ表情でさえも、香り立つほどの色を放ち、見る者の視線を釘づけにさせる。片袖だけ脱ぎ、顕わになった肌は白磁のように白く滑らかそうだ。体育会系らしく、しっかりとついた筋肉が肩から二の腕まで緩やかで美しい曲線を描く。
 逞しい上半身でありながら、そのうなじは細く、どこか艶めかしい。

 無言のまま見つめていると、視線に気づいたのか篠宮の瞳が、ゆっくりと自分の方へと向けられた。

「………………」

 何か言葉を紡ごうとして、僅かに唇が震えたが、結局、声にならずに消えていった。

 熱く潤む瞳が、まっすぐ自分を見つめてくる。


 静かに歩を進め、そっと抱きよせた。

 篠宮は無言のまま、腕の中に収まっている。背中を這うように篠宮の手がまわる。
 自然と抱きしめる手に力がこもった。


「愛してる…………」


 そう、呟かずにはいられなかった。




こちらのSSは、な・・なんと『うさぎの卯』のシノリンさまが、
拙サイトの篠宮フリーイラストのイメージで書いて下さったSSなのですー(感涙)
憂いを帯びた儚げな篠宮v本当に美しいです。
このSSがうちの篠宮イラストにつけていただけたとは思えないくらいに美しい!
いや、寧ろ私のイラストが無い方がイメージを損ねることなく作品を堪能できますvv

そして、こちらのSS篠宮のお相手が誰か詳しくは書かれて無いのですが、み・・皆様は、
誰を想像されますでしょうか??(どきどき)
私は
丹羽です(笑)
シノリンさま!この度は、本当に嬉しいプレゼントを有り難うございました!!