進行性網膜萎縮
PRA(Progressive retinal atrophy)

 最近アメリカのIGのクラブで問題となってきた目の病気です。IGだけではなくいろいろな犬種におこります。そしてこの病気の怖いところは遺伝することと、発症が4〜5歳以後のことがあり、すでに子犬へとその遺伝子が受け継がれてしまってなかなか根絶できないことにあります。また劣性遺伝のため本人に症状が出なくてもキャリアーである可能性もあり、なかなか手強い遺伝性の病気です。
 PRAはまず夜間の視力の低下から始まり(夜盲症)、徐々に昼間つまり明るいところでの視力を失います。一般の家庭では、”夜ものにぶつかる”とか”暗くなると見えにくいようだ”というようなことから始まり、完全な盲目にと進みます。獣医学的には網膜電位図の検査で調べられますが、ごく一部の獣医科病院にしか測定できる施設がないのが実状です。気が付くのが遅い場合には、瞳孔が散大してしまってから病院へかかる場合もあり得ます。まさかその前に気づくだろうと思われるかも知れませんが、動物の視力は大変分かりづらいので、決して大げさではないのです。
 犬種により1歳以下で完全に盲目となる場合もありますが、IGでは、夜盲の現れるのは遅く、それが何歳までに発症しなければその個体が遺伝的に安全である、という保証とはなりません。現にアメリカの著名な犬舎のチャンピオンの中にも、発症してしまった犬がいます。繁殖年齢の低い犬の世界では5年で3代進んでしまいますから、もしその間に10頭の雌犬と交配し4頭ずつ生まれていれば次世代で40頭に受け継がれてしまいます。またこの病気は治療法がありません。発症を遅らせることも進行をくい止めることも出来ない遺伝病です。
 残念なことに日本ではこの病気を系統だてて根絶しようと言う運動はありません。もし愛犬が発症した場合子孫にまで影響しますから心を鬼にしてその遺伝子を廃絶するべきでしょう。

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