麻酔

ここでは麻酔の中でも全身麻酔について、特にイタリアングレイハウンドおよびサイトハウンドの麻酔について簡単に書きます。

麻酔とは、痛み、意識を取り除き外科手術に耐えられるようにすることで、動物でも現在ではほぼ人と同様な薬剤を使用しています。

全身麻酔薬は前投薬、導入、維持にわけられ、前投薬には麻酔の副作用を軽減すること、鎮静、鎮痛などを目的とした薬剤が用いられます。導入には短時間作用する麻酔薬や、吸入薬などが、維持麻酔には主に吸入薬が用いられることが多いです。

麻酔の中で問題となるのは、導入と、維持です。
あらゆる薬剤には大なり小なり望まれざる作用(副作用)があり、麻酔薬にももちろんあります。それは肝臓に対して毒性があったり、血圧が下がったり、不整脈を起こしやすかったり呼吸を抑制してしまったりとそれこそ命に関わるものがたくさんあります。その副作用が少なく、手術に適した状態を維持しやすい薬がよい麻酔薬といえると思います。しかし残念なことに副作用の全然ない麻酔薬はありませんから、それを軽減するために何種類かの薬剤を組み合わせて薬効はあるがそれぞれの副作用を最小限にくい止めるように工夫するわけです。

また麻酔をかける前には、出来れば検査(たとえば血液検査、心電図検査、レントゲン検査、心エコー検査など)をすることが望ましいのですが、去勢手術とか不妊手術では、術前の検査は省略されることも多く、必ずしも検査をしないことが珍しいことではありません。もちろん手術中にも心電図、体温、呼吸、血圧などをモニター出来ればより安全といえます。しかし獣医さんによっては人手の問題や、それら高価なモニター機器を持っていなかったりという理由から人ほどには完全とはいえません。(つい10年ほど前までは、吸入麻酔器すら設備していない病院も少なからずありました)

さて、サイトハウンドには他犬種には見られない特徴があり、それが麻酔の難しさを招きます。それはまず体脂肪率が極端に低いこと、血液中の赤血球容積が高いことです。IGもその例外ではなく、特に若いIGは痩せている場合が多いので体温の維持に注意が必要です。また他犬種ではなんの問題もなく麻酔の導入に使用されるバルビツレート系と呼ばれる注射による麻酔薬には特別敏感とされているので、サイトハウンドについて多少なりとも経験のある獣医さんを選ぶ必要があると思います。このようにIGは麻酔が難しいとされてはいますが必要な手術をも敬遠するようではいけません。

つまり、サイトハウンドについての知識があり、少なくとも吸入麻酔器を持ち、出来れば手術中に麻酔係をおけるだけの人的な余裕がある、手術がうまい(うまければ麻酔時間は短くて済む)と言われている先生を選ばれるのが良いでしょう。今かかりつけの先生が”イタグレは初めて見ました”とおっしゃっていてもサルーキーは患者さんにいるかも知れませんし、経験はなくても大変勉強熱心で麻酔についてすごく博識かも知れません。普段の診療中に何気なく質問してみても良いと思います。
その反面そんなことは何も知らなくても、手術中に事故など無いと豪語する先生もおられるでしょう(事故などしょっちゅう起こることではない)。皆さんが麻酔をかけるわけではないのですから、信頼できる先生を見分けることが大事だと思います。

麻酔は怖い!と言う皆さんの疑問の答えとなったか分かりませんが、一ついえることがあります。最後にその言葉で締めくくりとします。

医者選びも寿命のうち

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