替え歌投稿の問題点


[Caution] Posting Song
                           update 1997. 1.14

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// 転載されても構いません。転載先をemail にて lala-z@cg.NetLaputa.or.jp 宛に
// 知らせて戴けるとありがたいです。なお、改変は認めません。

時折、NetNews に歌詞を投稿する人が見受けられますが、

著作権法において以下に定義されているように、
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定め
 るところによる。
 一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、
  美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
 一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
 二 音楽の著作物

歌詞といえども著作権物です。歌詞を記事の中に書く場合は、
1. 著作権の期限が切れた著作物である。
2. 著作権者の許諾を受けている。
3. 引用の範囲
4. 時事の事件の報道のための利用
のいずれかでなければ、著作権法における複製権、有線送信権の侵害として
違法行為となります。

1. の場合は、作詞家の死亡以降50年なので、およそ第2次大戦以前に作詞家が
死亡している場合と考えればよいでしょう。
(以前、第2次大戦期間は数えないと書いていましたが、あくまで
 連合国国民の著作物に関するものであり、日本国民の著作物は対象外です。
 従って海外の著作物を利用する場合はその保護期間に注意してください。)
しかしながら著作者人格権には期限がありませんので、氏名表示権を尊重し
作詞家名、歌詞名の表記は行なっておくべきです。
およそ現在の歌謡曲やアニメソングで、1.の要件を満たすものはないでしょう。
「歌詞を教えてください」という質問への回答には、その歌の入ったCD/レコード、
歌詞の載った書籍などポインタを示せば十分です。
mail で歌詞を教える人もいますが、複製権侵害の違法行為です。

2. の場合は、著作権者との間で複製や有線送信の許諾を得れば、その許諾の
範囲であれば自由に利用できというものです。許諾に当たっては著作物使用料を
請求される場合もあります。
あなた自身が著作権者である場合(自作の歌詞の場合)は、JASRACの会員に
なっていなければ、御自身の判断で如何様にも利用することができます。
音楽の著作物は、著作者がJASRACに「著作権の許諾や著作物使用料の徴収の代行」を
依託している場合(大抵のプロは依託しています) JASRACが著作権の許諾や著作物
使用料の徴収を代行しています。
依託されていない著作者の作品の場合は、JASRACは全く関係ありませんので
直接、著作者に交渉する必要があります。Netnews で利用される歌詞の多くは
JASRAC に委託している場合ですので、以下はJASRAC に委託されている場合に
ついて述べます。


漫画などで歌詞を利用している場合、ワクの横にJASRAC承認番号が付記されて
いるのを見たことがあるでしょう。使用料金は、利用するメディアに従って
算定され、誰でも申請できますが、NetNews での利用に関しては今のところ
未定(というか非承認)です。
Nifty-Serve では、実験的に歌詞の著作物の利用を行なっていますが、
そのフォーラム以外への転載は禁止されています。

3. の場合は、著作権法において
(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合
 において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批
 評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければな
 らない。

とその権利が明記されています。
JASRAC 自身も「引用」を禁止したことはなく、「引用」の要件に合致した
利用での引用を勧めています。以前、「JASRAC は数フレーズであろうと引用とは
認めない態度を取っているように見受けられます。」と書いていましたが、
これは私の事実誤認です。漫画・雑誌などでは
歌詞が利用される場合、殆どの場合JASRAC許諾No.が掲載されており、
かつ、「引用」の要件を満たしていると思える場合にまでも許諾を得ている
ので、こうした勘違いをしてしまいました。
数万部を超える発行を行う雑誌では、制作費の中での音楽著作物使用料金は
軽微なものなので、万が一にも著作権者からの異議申し立てがないように
安全サイドを取っているのかもしれません。

JASRAC 自身は昭和43年5月10日発行 日本音楽著作権協会会報 132号
「節録引用、一部使用の取扱いについての決定」において
節録引用の正当性の範囲と条件について具体的基準を示しています。

現行著作権法は昭和45年に公布されていますから、その後改訂されて
いるかもしれませんが、一応参考の為に部分的に紹介します。

一 引用における正当性の基準
イ 歌詞相互間、楽曲相互間においては引用の必要性は認められない
# 「他人の曲を真似るのも、4小節までならok」は、この基準で
# 「引用」として主張できない

ロ (第32条にある評論、学術研究など目的などを示しています)
  絵画、写真、ポスターなど美術著作物の中に使用する場合は
  正当な節録引用とは認められない
(ハ、ロ省略)

二 引用の分量の基準
イ 歌詞、楽曲が単独で使用される場合において、歌詞の1節以内もしくは
  楽曲の二分の一を節録引用する場合はおおむね妥当な分量とみなす
  (以下略)
ロ 一節をもって全部とする短詩型のものについてはその全部を引用しても
  妥当な分量とみなす

一部使用における使用料の問題 として、第30条によって許容される
ものでないかぎり、使用された分量の如何を問わず全部を使用したものと
すべきである と当時は決められたようですが、

JASRAC Q&A 平成2年5月31日改訂版 p.23 
「著作権法第32条に規定する引用でない限り、短い部分の使用だからといって
自由利用は認められません。ただし、ごくわずかの部分の使用であれば、
部分使用として使用料が減額されます。」

のように、改訂されています。なお、上の文は、裏を返せば正当な引用で
あれば、自由利用を認めている と取れます。

signature に歌詞を載せている人がいますが、引用の目的上正当な範囲内とは
言えないでしょう。

4. の場合は、
(時事の事件の報道のための利用)
第四十一条 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場
 合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは
 聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該
 事件の報道に伴つて利用することができる。

として、歌詞の中にダイイング・メッセージが入っていた殺人事件があって、
その事件の報道の為に歌詞を利用する といった殆どまれな場合です。
「時事の事件の報道」なので、推理小説にこうした事例があっても、この場合には
当てはまりません。

以上に示した以外にも著作権者の許諾を必要としないとする条項はありますが、
NetNews への利用を前提とするならば、あまりに瑣末事になるので割愛しました。

なお、以前は歌詞を改変した「替え歌」ならば大丈夫だという判断があり
ましたが、「パロディー・モンタージュ事件」の最高裁判決の解釈の解説 *1)、
及び、JASRAC からの解説により、著作者人格権のうち同一性保持権の侵害、
翻案権の侵害に相当する、より重大な問題であることが判明しています。
(上の文章については、宮野さんのコメントを参照のこと)
現状、JASRAC はNetNews への歌詞の利用許諾に関しては保留していますし、
翻案(替え歌)に関しては認めないと表明していますので、替え歌の投稿は
故意の過失どころか、意図的な著作権侵害になります。
従って、替え歌の投稿は禁止と考えてください。

いずれにしても、歌詞を記事に載せることには注意し、
以上のいずれかに該当しない場合は記事の投稿は止めてください。

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)c( copyLight 1995  by  Hiroshi Matsuoka, lala 



From: miyano@sbl.cl.nec.co.jp (Hiroshi Miyano) Date: 21 May 1996 02:06:01 GMT Message-ID: <MIYANO.96May21110601@sirius.sbl.cl.nec.co.jp> References: <4not68$r3c@ircsu1.cam.canon.co.jp> In article <4not68$r3c@ircsu1.cam.canon.co.jp> lala@cam.canon.co.jp (Hiroshi Matsuoka) writes: >なお、以前は歌詞を改変した「替え歌」ならば大丈夫だという判断があり >ましたが、「パロディー・モンタージュ事件」の最高裁判決の解釈の解説 *1)、 >及び、JASRAC からの解説により、著作者人格権のうち同一性保持権の侵害、 >翻案権の侵害に相当する、より重大な問題であることが判明しています。 何度も指摘してきたことですが、パロディモンタージュ事件に関するこの解釈 は必ずしも正しくありません。 この事件での最高裁における上告審では、原告側は著作権に基づく請求は取り 下げており、争点は専ら著作人格権に関する部分でありました。また、最高裁 の判断はを要約すると、「著作人格権の侵害かどうかは程度の問題である。そ してこのケース<<では>>侵害であると判断される程度の利用がなされている」 というものでありました。パロディが常に著作人格権の侵害であるなどという 判断は下されていません。 なお、この上告審の後、下級審に差し戻され、下級審では再び原告は被告に対 して著作財産権に基づく訴えを含めた訴えを起こしています。この原審では著 作財産権に関する慰謝料支払には理由がないとして原告の訴えを退け、著作人 格権に関して慰謝料50万円の支払を命じ謝罪広告の請求を容認する判決を下し ています。再び舞台は最高裁に移され、謝罪広告を容認した判決を棄却する判 断を下しています。 ---- * " " " " 宮野 浩 * * [-O-O-]  通信・放送機構 横浜リサーチセンター * * ( ^ ) E-mail miyano@SBL.CL.nec.co.jp *