放送番組の録画テープのダビング・貸与依頼記事の問題点


[CAUTION] Rokuon/Rokuga Tape no KASIKARI & Dubbing   Version 1.31a
       update 1997.05.04

// 非営利・無償での利用に限り、この行からsignature 行までの文章を自由に
// 転載されても構いません。転載先をemail にて lala-z@cg.NetLaputa.or.jp 宛に
// 知らせて戴けるとありがたいです。なお、改変は認めません。
// 本内容は著作権情報センターの専任解説者の方からも大きな間違いはないとの
// 確認を得ました。

Version 1.31a
/稲川 史(fuhito@pop.biwako.or.jp)さんの指摘によりnetnork → network の訂正
Version 1.31
/参考資料:NIFTY-Serve FTVAにおける録画ビデオの貸し借り議論のまとめ
/の紹介を追加 ただし、link は張っていません。
Version 1.3
/kameyama@u-aizu.ac.jp (Kameyama -SRA-)さんより、私的録音テープの利用
/に関しての指摘があり、修正しました。
Version 1.2
/前Version では、譲渡/貸与を第49条と関連付けていた部分を変更しましたが、
/EH1T-KRD@j.asahi-net.or.jp 黒田さんの
/Message-ID: <4kipvl$len@panther.asahi-net.or.jp> で紹介された著作権審議会
/第5小委員会昭和56年6月報告書を追加した事で第49条を事由とせずに、私的
/使用の目的外使用の禁止を説明することにしました。


放送番組を見逃し/聞き逃してしまった時や録画/録音し損ねた時には、
誰かが録画/録音しているのではないかと、
NetNews に「録画/録音したテープを貸してください」とか
「ダビングして貰えませんか」といった記事を投稿したくなるかもしれません。

しかし、投稿する前にちょっと考えてください。

依頼記事を投稿する行為自体には問題がなさそうです(註1)が、
依頼記事を読んで親切にも貸して/ダビングしてくれる人には、
問題が生じないのでしょうか?

テープを貸そう/ダビングしてあげようとしている人は、放送番組を録音/録画
したテープを持っています。その放送番組は著作物ですから著作権者は
著作権法第21条複製権等の権利を専有しています。
ただ、個人的な放送番組の録画/録音自体は,
(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作
 物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内
 において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とする場 合 に
 は、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複
 製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されてい
 る機器をいう。)を用いて複製するときを除き、その使用する者が複製する
 ことができる。
として、著作権者の許諾を必要としません。その録画/録音したテープは、
個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内(「私的使用の範囲」)で
利用することができます。
(テープの包装に、「個人で楽しむ以外は、著作権上使用できません」といった
 但し書きを見た事があるでしょう)

こうして作成した録音/録画テープは、私的使用の範囲でのみ使用することが
できますが、逆に私的使用の範囲を越えて使用すると、放送番組を録画/録音
した行為が「私的使用の為」という目的ではなかったこととなり、著作権者の
権利(複製権)を侵害したことになります。

著作権審議会第5小委員会の昭和56年6月の報告書
|III 法第三十条に関連する録音・録画に関する著作権問題について
| 1 法第三十条の許容範囲を超える録音・録画問題
 (中略)
|法第三十条の許容範囲を超える録音・録画問題を考えるにあたつては、次の
|ように三つの類型に分けることが重要であると思われる。
|(1) そもそも法第三十条の許容範囲を超える録音・録画の場合
    (例は略)
|(2) 法第三十条の許容範囲内での録音・録画によって作成された物を事後に
|  私的使用の目的以外の目的に使用する場合((3)の場合を除く。)(例えば、
|  個人使用のために録音したテープを事後に事業のために使用したり、第三
|  者へ貸与したりするなど)
|(3) (2)と同様の場合であるが、その録音・録画が他の著作権の制限規定に該
|  当すると評価できる場合
	  (例は略)
|以上のうち、(1)及び(2)の場合には著作権者などの権利が及ぶこととなり、
|著作権者などの許諾を得ずに行われるときには著作権等の侵害(違法)となる
|が、(3)の場合には、制限規定によつて著作権等が制限されるので、著作権等
|の問題は生じないところから、両者を区別して論ずることが適切である。
(文献提供EH1T-KRD@j.asahi-net.or.jp)

ラジオ放送の録音テープの場合でも、TV放送番組の私的録画テープの場合でも
上の(2)に該当するので、その使用においては私的使用の範囲でなければいけません。
# 以前、『ラジオ放送の録音テープの場合は、私的複製物であっても、
#  第38条4により謝礼を受け取らない限りにおいて相手が「私的使用の範囲」
#  以外の人であろうと貸与できます。つまり、上の(3)の場合に該当します。』
# 『しかしながら、TV放送番組は映画の著作物と看做されますから、
#  第38条4は適用できず、録音テープを貸してあげようと思っている相手が
#  「私的使用の範囲」以外の人の場合、貸し出しを行うと上の(2)の場合に
#  該当し、著作権の侵害になります。この点は映画の著作物であるか、どうかで
#  大きく異なりますので注意が必要です。』と書いていましたが、
# と書いていましたが、とんでもない間違いでした。
(上の段落は、kameyama@u-aizu.ac.jp (Kameyama -SRA-)さんの指摘で修正しました)

なお、ダビング(複製)してあげようとしていた場合は、相手が「私的使用の範囲」
以外の人の場合、その複製行為は「私的使用の為の複製」とは認められませんし、
他に該当するの著作権の制限規定はありませんので、第21条の複製権の侵害と
なります。

NetNews の記事の読み手が不特定多数・特定多数であることを考えれば、
殆どの場合「私的使用の範囲」以外の関係になると言えるでしょう。
依頼記事の読み手から見れば、依頼者はその依頼記事を書いた特定者だと
言えそうですが、それでさえ記事を読む直前までは全くの未知の人であり、
依頼記事の投稿者/読者という関係だけもって「私的使用の範囲」に
含まれるという主張は成立しません。出会った瞬間に一目惚れして結婚という
特殊なケースがあるにせよ、network の上でnetnews を介しただけで
家族に準ずる関係にあるとは一般には言えないでしょう。
従って、netnews の依頼記事の投稿者に対して放送番組の録音/録画テープを
貸したり/ダビングしてあげると、元の私的使用の為の複製行為が第21条の
複製に抵触することになり、著作権者の許諾を得ていない以上、違法な複製
行為を行ったと看做されます。

訴訟人は著作権者になりますが、条文の要件を満たしていない権利の行使/
条文の要件に反する行為は実体法上違法行為となります。

著作権者による起訴により手続法上での違法性が判断されます。

第百二十三条 第百十九条及び第百二十一条の二の罪は、告訴をまつて論ずる。
2 無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物に係る前項の罪について告
 訴をすることができる。ただし、第百十八条第一項ただし書に規定する場合
 及び当該告訴が著作者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は百万円
 以下の罰金に処する。
 一 著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条
  第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使
  用の目的をもつて自ら著作物又は実演等の複製を行つた者を除く。)
 二 営利を目的として、第三十条第一項に規定する自動複製機器を著作権、
  出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者

# 文化庁著作権審議会の執行・罰則関係の専門部会報告により、この罰金額を
# 5倍に引き上げる法律改正案が来年にも国会に提案されようとしています。
# 日本経済新聞 1995.3.24

法律上問題なく録画/録音テープを貸したり、複製してあげたいのであれば、
著作権者に許諾を取ってから行なってください。
放送事業者は、放送権を許諾されているだけで、複製権に関する許諾権は
持っていません。しかしながら、契約上誰が著作権者であるかは知っている
ので放送局に問い合わせると紹介して貰えるかもしれません。

ところで、「代わりに録音・録画してください」という場合はどうなのでしょう。

第30条に「その使用する者が複製することができる。」とあるように録音/録画は
使用する本人が行わなければいけません。
従って、代理で複製(録音/録画)してあげる行為は、「私的使用の為の複製」とは
認められず、複製権の侵害です。
留守録の機械同様の行為を行っただけ、という理屈は成立しません。


なお、第49条は「公衆」への頒布、提示を持って適用されるものなので、
唯一個人を相手にした譲渡、提示にまで適用できるかは、甚だ疑問がある
とされましたので、条文の紹介に止めます。
 (複製物の目的外使用等)
第四十九条 次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つたものとみなす。
 一 第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第三十七条第二項、第
  四十一条、第四十二条又は第四十四条第一項若しくは第二項に定める目的以
  外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物
  を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者

以上の解説は、NetNews に「録画/録音したテープを貸してください」とか
「ダビングして貰えませんか」といった記事の投稿を禁止しているのではありません。
しかしながら、上記の事を考えれば自ずからNetNews に投稿することが相応しいか
どうかを判断できるでしょう。
もし、あなたが著作権者に交渉して放送番組を複製/貸与する許諾を得たので
あれば、その旨明示して依頼記事を投稿されればよいでしょう。
おそらく画期的な出来事としてInternet の歴史に記録される事でしょう。


ドイツの公法学者であるJellinekの言葉に「法は倫理の最低限である」があります。
法において判断を行う段階に至るまでに、倫理として判断することは人として
基本的な行動判断といえるでしょう。
# 「自由国民社 口語 刑法」より

(註1)
違法行為を招く行為として教唆犯と看做されるかもしれません。
しかし、詳しい事は分かりませんし、本記事の主眼点から離れますので、
判断は棚上げしておきます。


参考資料:NIFTY-Serve FTVAにおける録画ビデオの貸し借り議論のまとめ
http://www.tvguide.or.jp/etc/tvrec.htm
(1998.9 時点でこのURLは無効になっています)

ほぼこの文章と同じ判断になっていますが、弁護士の方も協力されたようで
より詳細といえるでしょう。参考文献のところも役に立ちます。

-- 
)c( copyLight 1997  by  Hiroshi Matsuoka