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さすらいのカウボーイ |
1971年米。監督・主演 ピーター・フォンダ。
西部劇の大傑作。
ピーター・フォンダが「イージーライダー」の後撮ったそうです。とても地味な映画、小品なのですが、所々に70年代らしさ、気概が感じられます。
話は放浪に疲れた男(ピーター・フォンダ)が、7年前に捨てた妻の元に帰る。そこで性根を入れ換えて働き、しだいに妻も男を許すようになるが、7年一緒に旅をしていた友人(ウォーレン・オーツ、素晴らしい!かっこいい!きっとこの映画がベスト)がトラブルに巻き込まれ、男はそれを助けに再び家を出る。
まぁ筋立ては古典なのですが、映像は逆光を多様、ハレーション気味の映像とニューシネマっぽい。それといままでの嘘くさい西部劇に反発するような、細部にこだわった時代考証。
とてもリアル、といっても自分はアメリカに行ったこともなく、西武の開拓時代に生きていたわけでもなく、でもきっと当時の人たちはこんな風だったんじゃないかと納得させられてしまう力を持っています。
ピーター・フォンダからは旅の疲れがひしひしと伝わる。いい演技。ウォーレン・オーツは最高!もう男の中の男!
それと主人公が捨てた奥さんがポイント高いです。どこからみても百姓のかみさん。金髪のきれいな女ではなく、浅黒い中年女。これまたリアル。しかも貞淑に夫の帰りを待っているような人間ではなく、テラスで納屋から誰か使用人が自分のベットにやってきてはくれまいかと待ちこがれていたという告白。色気やロマンスなんかみじんも感じさせず、もっと原始的、動物的、とても土くさくて、人間そのもの、ていうかこの映画自体が人生そのものです。
凝った映像(でもすこしたどたどしい、稚拙な感じがあり、そこが愛らしくもあります)、凝った音楽。ソフトなのかと思いきやその実ズシリと重みのある映画。
自分の中の西部劇の勢力図を塗り替えてしまいそうな勢いです。
ちなみに自分の西部劇ベスト3は、
第1位「ワイルドバンチ」
第2位「天国の門」
そして今なら
第3位「さすらいのカウボーイ」
といったところです。
他にもいいと思うのは「許されざる者」「真昼の決闘」「駅馬車」「シェーン」「続・荒野の用心棒」などなどまだまだたくさん。
今回思ったのは、こういう西部の流れ者って一体どうやって生計をたてていたんだ? ということです。まさか皆が皆盗賊ではあるまいし。浮浪者というわけでもなさそう。酒代は持っているので、何か現金収入の方法があるらしい。 大道芸人にも見えない。セールスマンにも見ないなぁ。何か手に職でも持っていて、行く町々でその仕事をしていたとか。それともただたんに単純労働の口を探して行く先々でバイトでもしていたのでしょうか?
収入も住まいも安定していないから、暮らしぶりは大変そう。川魚を現地調達して食べたりしている。もちろん野宿。家に帰りたくなるのも納得。
★上の写真は雑誌スクリーン・シネストーリー1972年3月号から切り取ったモノ。日本初上映の時です。
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ある愛の詩 |
1970年米。監督 アーサー・ヒラー。主演 ライアン・オニール。
中学生の時、日曜洋画劇場かなんかで見たきりですから、約20年ぶりに見ました。「愛とは決して後悔しないこと」で有名な恋愛映画。
金持ち息子のオリバーと貧乏人(と言っても親はちゃんと店を持っているし、家もある。トレーラーハウス暮らしのホワイト・トラッシュではない)の娘ジェニファー。二人は大学の図書館で出会い、しだいに愛するようになり、オリバーの親の反対を押し切り結婚、仕送りをうち切られ貧しい生活、やがてオリバーが弁護士になり生活に余裕ができた頃、ジェニファーの白血病が発覚する。
今見るとオリバーがずいぶん子供に見えます。親の気持ち子不知ず、です。
仕送りをうち切られ奨学金を得ようとするも断れる、その理由には納得。他にももっと恵まれていない状況の苦学生がいるので、たかが親と不仲になったくらいで奨学金をもらおうとすること自体、世間をバカにしています。
でてくるオリバーの愛車MG(ちなみに父親はジャガー)がかっこいいです。いい趣味。当時としてもまわりの車に較べクラシック。音がいい。アメリカ仕様の左ハンドルではなく、本国仕様の右ハンドル。当時はまだアメリカも治安が良かったのか、こんなオープンカーでも路駐。自転車も家にはしまいません。
それと現在と違うのは向こうは何でもキャッシュカードで払うと聞いているので、当時は現金主義だったと言うところです。クリスマスツリーの件で、たくさんの札を二つ折りにした婦人がでてきます。
出会い、デート、告白(ジェニファーが好きと言う場面はちょっとした名場面)、結婚と映画はとばしまくります。テンポがよすぎ、もう少し余韻をもたせてもいいのでは、と思って見ていたのですが、ジェニファーの病気が発覚するところから映画は重みによって失速をはじめ、ラストには停止寸前までスピードを落とします。
スパッ、スパッと感情的な場面を切り落とし(ジェニファーが死ぬ場面を見せない。オリバーが泣き崩れるところも)ているので、後味スッキリ、でも哀しい映画です。
「愛とは決して後悔しないこと」
オリバーはジェニファーのおかげでただのどら息子から大人へと成長ができ、しかも彼女と出会わない人生と出会った人生ではかなり充実度も違ったはず。苦労はしても、今は悲嘆にくれようとも、決して後悔はしない時間を送れたであろうと思えました。
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卒業 |
1967年米。監督 マイク・ニコルズ。主演 ダスティン・ホフマン。
花嫁姿のキャサリン・ロスをダスティン・ホフマンが教会から連れ出すラスト・シーンが有名な青春映画。アメリカン・ニューシネマの最初期の映画。
成績優秀、運動でも表彰された優等生ベンジャミンが東部からロスアンジェルスに帰宅。実家は金持ち。両親は息子にアルファ・スパイダーを与え、パーティーと大喜び。とうのベンジャミンは将来の漠然たる憂鬱に捕らえられ、浮かれてもいられない。そんな時両親の友人ロビンソン夫人に言い寄られ、ベンジャミンは誘惑に負けてしまう。逢瀬を重ねる二人。ロビンソンの娘エレンが学校から帰郷する。ベンジャミンはエレンに惹かれ、ロビンソン夫人とのことをエレンに告げてしまう。
前半はかなり退屈。まぁ主人公もロビンソン夫人もたがいに人生に退屈しているので、映画自体が退屈なのはいたしかたないかも。
キャサリン・ロスが出てきてから映画はいきいきとしてきます。
主人公の悩みは自分に言わせればずいぶんぜいたく。学歴もあり、運動もでき、しかも金持ち。将来何になろうかなんて不安やら悩みを抱けるのは、選択肢のたくさんある奴だけがもてる特権。そうそう普通の人はこいつみたいに何週間もぶらぶらしていられないでしょう。まず食べるために労働をしなくては。親だって相当な金持ちでもなければ、こんな生産性のないごくつぶしは養えない。昼はプールでくつろぎ、夜な夜な車を飛ばして帰ってこないベンジャミンは、アメリカだからいいようなものの、日本なら確実に引きこもり、ヒッキー扱いされている(なーんて思うのは自分のヒガミです。たとえ環境はちがくても、若者なら、おそらく自分も若いときにはこんな言いようのない将来に対する不安・憂鬱をいだいていたはず)。
映画は前半さえ我慢すれば面白いです。有名なサイモン&ガーファンクルの音楽もしみてきます。今も自分の頭の中を「サウンド・オブ・サイレンス」が流れています。
最後に教会から逃げ出した二人がバスに乗り、後部座席に座って前を見ているところで終わり。座席に座ってからの二人の間がいいです。互いに目線を合わせることなく、はにかんでみたり、しだいに真剣な表情になり、画面がとぎれる。
それとやっぱりオープン・カーはかっこいい。アルファ・スパイダーが出番が多い。色は赤。ミラーはドアミラーではなく、フェンダーのドライバーよりについている。メーターパネルもかっこいい! 走る様もいい。ベンジャミン、乗り捨てるなよ! と自分は思いました。
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