明日に処刑を…
1972年米。監督 マーティン・スコセッシ。主演 バーバラ・ハーシー。
巨匠マーティン・スコセッシの商業映画デビュー作。
1930年代初頭。飛行機の墜落事故(しょぼいシーン)で父親を亡くしたバーサは貨物列車にただ乗りしながら放浪。途中であった仲間たちと列車強盗を繰り返す。はじめは面白半分であったが、しだいに追いつめられていく。
主演のバーバラ・ハーシーがすごい田舎くさい。田舎のヤンキーと言った感じで、地なのか演技なのか、とてもはまっています。
それと黒人がかっこいいです(名前は知らない)。デヴィット・キャラダインはちょっと歯切れが悪いかも。薄い印象。「タイタニック」のモリー・ブラウン役の女優がまったくかわらない姿で出ているのが不気味。
もっと終わりの銃撃シーンが凄いのかと期待していた(これが目当て)ら、たいしたことありませんでした。がっかり。
アメリカは野蛮な国だなぁ、と思いました。黒人と仲良くするだけで袋だたきにされる時代があったのですから。
鉄道会社に雇われたスト破りの連中もごろつきばかり。警官もごろつき。労働者もごろつき。出てくる人間のほとんどが犯罪者のようなものです(主人公はもろ犯罪者)。
最後、列車に磔にされたビルを追いかけるバーサ。ビルの上から俯瞰する構図で終わりますが、バーサが主人公なんだから最後にバーサのショットを入れた方が自然なのでは?
それともわざと?
ニューシネマの時期なので深い意味があるのか、それともないのか判別がつきません。
主人公たちを作り手が突き放している、ともとれます。
多少がっかりしたところもありましたが、でも「ギャング・オブ・ニューヨーク」なんかと較べるとこちらの方が面白いです。

殺しが静かにやってくる
1969年イタリア。監督 セルジオ・コルブッチ。主演 ジャン・ルイ・トラティニアン。
1898年、白銀の町スノーヒル。賞金稼ぎがのさばり、住民を狩っている。住民らにモーゼル銃をあやつる殺し屋サイレンスがやとわれ、賞金稼ぎのロコと対決する。
人気の高いカルト的名作。
コンセプトはいいのですが、映画自体は自分は面白くありませんでした。
アクションがしょぼすぎ。
カット割りがわるいのか、迫力がいっさいなく、かっこよくもなく、リアルでもなく、興ざめもいいところです。
まだ同じ監督の「続・荒野の用心棒」の方が100倍はましです。
あっちも弾着がないのが気に入りませんが、アイディア、作品自体、主人公の気迫が伝わってきて、見ると燃えます。
本作はなんだかなぁ、とても残念。
こう考えるとマカロニ・ウェスタンの「情無用のジャンゴ」はやはり傑作なのかも。「殺しが静かにやってくる」はDVD購入後1回しか見てませんが、「情無用のジャンゴ」はつまらないつまらない、と言いながらも5回は見ています。こっちもアクションは相当ひどいです。
マカロニ・ウェスタンを買いそろえない理由はアクション・シーンに弾着が使われてない、しょぼい、ということです。
この「殺しが静かにやってくる」もアクション・シーンさえもっとちゃんと作っていれば、自分は好きになったかもしれません。西部劇なのにアクション・シーンが貧相なのは致命的なのでは?
そう考えると「続・荒野の用心棒」「情無用のジャンゴ」なんかアクション・シーンがまともなら自分の中の傑作リストに名を連ねるくらいの優れた作品だったのかも。

地獄の7人
1983年米。監督 テッド・コッチェフ。主演 ジーン・ハックマン。
ベトナム戦争で行方不明になった息子を10年間探し続ける父、ジーン・ハックマン扮するジェイソン・ローズ大佐。執念の探索でついに捕虜収容所の場所を特定する。政府に救出の嘆願をしても無策、それどころか大佐の邪魔をする始末。大佐は同じく息子を失った境遇にある石油王マクレガーの援助を得て、かつての息子の戦友たちと捕虜救出に向かう。
テレビドラマっぽい作りで、画面も厚みがないのですが、脚本がよくできていて面白かったです。
「特攻大作戦」の縮小版といったところ。
主人公の父親としての執念。戦友らの無償の友情。援助する金持ちが息子に会えるのならすべてを失ってもいい、と吐露する場面。胸を熱くします。
自分は純粋に見ている時は楽しめたのですが、あとになって考えると、けっこう危険な映画なのかもしれません。
ヘリポートからヘリを3機も強奪したり、捕虜を救うために大殺戮もいとわない、収容所の看守をしていたからというだけで問答無用に撃ち殺されたのでは相手はかなわないだろうに。
悪=北ベトナム人
善=アメリカ人
それと救出されたあと、本国ではお祝いムードなのにもちょっとしらけてしまいます。そこまでアメリカ人はおめでたくはないだろうに、あるいはアメリカ人は実際はおめでたいのか、それとも諸手をあげて喜べないというのを、アン・ハッピーエンドに託したのか。
倫理を超越してしまった親子愛。あるいは親が子を思う気持ちの前では、常識なんか通用しない、常識の型にはめられていられるようでは、本当の親子愛ではない。
うーん、まぁ、あまり深く考えなければ面白い映画でしたし、勧善懲悪ではわりきれないところが人生というか、人間らしいということで。
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