男たちの挽歌
1986年香港。監督 ジョン・ウー。主演 チョウ・ユンファ。
伝説の、というかこの映画自体が神話のような、男にとってはこれがバイブルにでもなりうる、男の映画です。
香港ヤクザのホー、相棒のマークは偽札をとりあつかっている。ホーは台湾で罠にはまり警察に捕まる。マークは単身復讐をする。ホーの弟はホーが服役中に刑事になり、兄のことを憎んでいた。
もう涙なくしては見られません。当時は香港映画はここまできていたのか、とそのレベルのたかさに驚愕しました。今で言うと韓国映画のようなモノです。「シュリ」を見たときのような衝撃。
今回久しぶりに見ると、もはや映像はくたびれたような、古びた感じですが、映画の輝き自体は失われていません。燦然と輝いています。燃えさかっています。
テンポがよく、ドラマの凝縮(真珠婦人なみ)、スタイリッシュなアクション、被さる過剰な音楽、俳優陣たちの力演、すべてがかみ合い、希有な傑作。
残念ながらチョウ・ユンファもジョン・ウーも、ハリウッドに渡りスケールを広げても、この作品を超えた仕事はしていないと思います。
マークの料亭殴り込みはひたすらかっこいいです。映像が呼吸しているような感じですばらしい。権力を握ったシンの登場シーンも。
タクシーの社長も泣かせます。ラストのホーの言葉にも涙、ていうか泣きっぱなしなのですが。
熱い男の映画。

バッド・テイスト
1987年ニュージーランド。監督・出演・製作・脚本・撮影ピーター・ジャクソン。
「ロード・オブ・ザ・リング」の監督、ピーター・ジャクソンのデビュー作。自主映画。新聞社に勤めながら休日を利用、仲間うちで4年間もかけて作った作品。
内容は異星人の地球侵略モノ。
ずいぶんと細かいカットの連続だなぁ、と思ったら、カメラがゼンマイ式で30秒しか撮影できない、とのこと。でも編集、カメラワークともども大変凝っていて、音とのシンクロの技術も高いです。
とても自主映画とは思えない、甘えてない作りです。ちゃんと自己中にならずにエンターテイメントになってるのがすごいです。
自分も大昔、高校生のころバイト代をためて買った8ミリカメラ(ぎりぎり新品がヨドバシにおいてあった時代。フィルムの末期。シングルしかなかったのでフィルムもフジしかなく、白黒フィルムは売ってなかった)で、映画監督気取りで作ってみたこともあったのですが、とても作品と呼べるようなモノではなく、映画の難しさ、映像になるまでの下ごしらえの長さ、困難さに挫折してしまいました。
かたや(比較するのもおこがましいのですが、当時はおなじアマチュアとして)ピーター・ジャクソンは、決してあきらめない、逃げない、その忍耐力、執念、行動力、イマジネーション、映画への愛、すさまじいです。
「指輪物語」を映像化できたのもこのピーター・ジャクソンでなければならなかったのが、このデビュー作「バッド・テイスト」からも伺えます。
「バッド・テイスト」および映像特典の「グッド・テイスト」を見ると、自分も努力しなければならないなぁ、と奮起してしまいます。

単純に映画としても面白いです。「グロっとさわやか」のコピー通りの内容で、笑い満載です。自分が受けたのはピーター・ジャクソンの脳みそを戻すところと、げろを食べる(湯気が出てる芸の細かさ!)、それと羊爆発・・・うーん、他にもたくさん笑ったところが。
車爆発も家屋爆発も、この映画で見ると大スペクタクルで、「ロード・オブ・ザ・リング」のローハン、ヘルム峡谷の籠城戦に近い迫力がありました。

片腕カンフー対空とぶギロチン
1976年香港。監督・脚本・主演ジミー・ウォング。
片腕ドラゴンに弟子を殺されたことを知った盲目の清朝の殺し屋封神。あだを討つべく片腕と見たら「空とぶギロチン」を駆使してくびをはねまくる。武道大会に乗り込み、なぜか出場者を味方につけた封神は、片腕ドラゴンに戦いを挑む。だがドラゴンの方は卑怯な手で次々と封神たちを血祭りに上げていく。
「キル・ビル」にて取り上げられた、ゴーゴー・夕張のゴーゴー・ボールの元ネタになった映画。
楽しみに見たのですが、そんなに手放しでは面白くなかったです。
アクションが擬音がうざいばかりでまったく迫力なし、とてもゆるいです。
でも片腕ドラゴンは希有なダーティ・ヒーローかも。何一つ肩入れできない、共感を呼ばない主人公というのも珍しい。
最後の戦いはドラゴン、封神、二人の手段をえらばない殺人狂同士のキチガイ対決で、この映画、くだらないと単に切り捨てられない迫力があります。
でも人にはオススメできません。
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