サブウェイ・パニック
1974年米。ジョゼフ・サージェント監督。ウォルター・マッソー主演。
4人組の男がニューヨークの地下鉄をジャックする。17人の乗客と車掌が一人。100万ドルを要求。公安当局と犯人たちの息詰まる攻防戦が繰り広げられる。
ブルー、グレー、ブラウン、グリーンと色で呼び合う犯人たち。これってタランティーノのレザボアドッグスと一緒? というよりこちらが制作年度からいっても先か。パクリ、ではなく引用の天才タランティーノ、レザボアでもほかにもたくさんの引用があるらしいです。自分は「続・荒野の用心棒」からの耳そぎシーンしかわかりませんでした。
最初のシーンに日本からサブウェイの視察に地下鉄の重役たちがくるというエピソードがあります。アメリカ人は日本人のことを異星人と同系列で見ているのだなぁ、とわかります。
犯人の身代金要求額が100万ドル。地下鉄側の人間は36セントの乗客にそんなに、といい、乗客たちは犯人に身代金の額を聞くと「そんなもんか」という。なかなか命の値段を決めるのはむずかしい。
パトカーの色が水色です。ホイールも水色。意外なところがかっこいいです。
バニシング・ポイント
1971年米。ノーマンスペンサー監督。バリー・ニューマン主演。
陸送の仕事をしているコワルスキーがコロラド州デンバーからサンフランシスコまで、70年型チャレンジャーを、途中で薬(もちろんドラッグ)代の賭けの対象にして翌日午後3時までという期限をつけて運ぶことになります。スピード違反で白バイに追いかけられ、それを振り切ってからというもの、マスコミを巻き込んだ大逃亡劇に発展。
この映画は70年代っぽさが如実にあらわれた、傑作です。アクションも、映画全体もなんかやる気のなさそうなチープな雰囲気に包まれて70年代という時代感を醸し出しています。あまり期待してみていなかったので、いい拾い物をしたと得した気分です。主人公に暴走をする確たる理由がないところがすごいです。別に親兄弟の命が関わる事情もない、大金がもらえるわけでもない、陸送の仕事から考えても無傷で商品(チャレンジャー)を届けなければならないのに、砂利道を走るはで届けたところで返品騒ぎになると予想されるくらいのぞんざいな扱い。主人公の過去がぶっきらぼうに挿入されますが、わかることは元レーサー、ベトナム戦争で負傷、ヒッピー女と海岸でマリファナ、「サヨナラ、リメンバー・ミー」と女は去っていく(死んだらしい)、とにかく何のヒントにもなりません。盲目のローカルラジオ曲のDJスーパーソウルがコワルスキー本人とは関係なく事件をもりあげていき、カリフォルニア午前10時4分、最後の検問にはテレビ局やら野次馬たちが集まります。
逃亡途中で出会う人物たちもこれがなかなか70年代。マリファナ吸飲をとがめられ警官にレイプされそうになる女、レイプを止める若い警官(コワルスキーだったらしい)、砂漠で蛇を捕まえてる老人に案内され宗教の集会(荒野のど真ん中、これがコミューンってやつ?)、そこの司祭が蛇と食料を物々交換にきた老人に「音楽があるから蛇はもういらない」(って今まで蛇は何に使っていたんだ? あと何でみんなで歌を歌っているんだ?)、車で旅をするホモの二人組、チョッパーバイクに乗るコワルスキーを手助けする若者と、おそらくその彼女と思われる関係の女、なぜか全裸でバイクにまたがっている。DJスーパーソウルをリンチする田舎者の白人たち。これはイージーライダーの白人たちとも共通する物があるような。
ぴあシネマクラブによると、1997年にロックバンド、プライマル・スクリームがこの映画にインスパイアされ同名アルバムとシングル「コワルスキ」を発表とあります。
この映画は傑作。70年代に興味のある方はおさえておくべきでしょう。

★後日分かったこと。
「アメリカン・ニューシネマ」の神話(ネコ・パブリッシング刊)によると、公開時日本でも「イージーライダー」と並び評されるほどで、その年のキネマ旬報ベスト・テンの第6位にランキング。
砂漠の宗教の集会でなぜ蛇が必要だったかというと、蛇をあがめていたらしい。そして今はなぜ歌っているかというと、歌うことで神に近づこうとしているらしい。
本国でもカルト・ムービーとして人気があるそうです。
ザ・ヤクザ
1974年米。監督 シドニー・ポラック。出演 ロバート・ミッチャム。高倉健。岸恵子。
日本のやくざ東野と銃の密売をしているタナー。トラブルがあり娘を東野に誘拐されてしまう。4日以内という期限を突きつけられるタナー。娘の服の切れ端を持ちタナーに「服だけじゃすまされないぞ」と脅しにくるやくざの幹部の首にはカメラが。思いっきり先行き不安にさせるオープニング。
助けを旧友のハリー(ロバート・ミッチャム)に求める。ハリーは元MPで日本に滞在していた経歴があり、そのとき英子(岸恵子)という日本人女性と同棲までしていた。女手一つで娘を育てていた英子をハリーが援助。ハリーは英子に結婚を申し込むが英子はかたくなに断った。高倉健はその英子の戦争から復員してきた兄という役所。妹を助けたハリーに恩を感じている。今はやくざ家業から足を洗い京都で剣道場の師範をしている。ハリーは高倉健に仲裁に入ってもらおうとする。
この映画はまぁ国辱映画と言ってしまえばそれまでなのですが、結構味わい深い物があります。日本のこと、やくざのこと、ここら辺の理解がめちゃくちゃなのは当然だとして、話の内容、映画自体もかなりファンキーです。
どれくらい話がファンキーかと言いますと(きっと誰も見ないと思いますので話の内容をもっと書きます)、実は高倉健は英子の夫だった、というどうでもいいような衝撃的告白やら、兄の息子を殺した高倉健が落とし前をつけると小指を詰めて兄にわたす。つぎになぜかハリーが自分の指を落とし高倉健に。「(たどたどしい日本語で)おわびのしるしにどうぞ」と差し出す。しかも二人とも思いっきり友情を感じあったりしている。
異国情緒あふれる画面、ぶっ飛んだ展開、眠くなるようなのびっきった緩いアクション。すべてが調和することなく勝手に映画はすすんでいく。なかなかこれはこれで貴重な体験で自分は面白かったと思います。

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