エル・トポ
1970年アメリカ=メキシコ。監督・脚本・音楽・衣裳・装置 アレハンドロ・ホドロフスキー。
まぼろしの映画。アメリカではカルト・ムービーになったそうです。ジョン・レノンが心酔して配給権を買ったとか。繰り返し見る人続出の体験する映画だったそうです。日本では寺山修司も見て感銘を受けたとあります。
日本で公開されたのは初公開から15年以上もたってから。当時(1987年)、19才だった自分は楽しみにしていて、わざわざ前売り券まで買い、パルコの映画館に見に行きました。
その時の印象はちょっと食いたりない、拍子抜け、みたいな感じでしたが、しばらくしてじわじわ映画のイメージが脳を浸食していったのを覚えています。
それと日本公開は失敗だったらしく、映画館も人が少なく、話題にのぼりませんでした。
話はガンマンのエル・トポが息子ブロンティス(なぜか全裸)とともに旅をしている。途中立ちよった村が賊に荒され皆殺しに。エル・トポは賊を倒し、ボスの大佐を去勢。ボスの女マーラにそそのかされ息子を捨て、円形の砂漠にいる4人のマスターを殺し、愛のあかしをみせることになる。途中女ガンマンが加わり、次々とマスターたちを卑怯な手で殺していくエル・トポ。4人目を倒したとき、マーラと女ガンマンに裏切られ、手足に銃弾を打ち込まれ(キリストと同じ傷?)瀕死の重傷に。そこを洞窟のフリークスらに助けられ、以後目覚めるまでに20年、仏のようにまつられる。
目覚めた彼は以前のような人殺しではなく、頭を丸め、フリークスらのために町へ出られるトンネルを掘るため、小人女とともに資金を町で集め、作業に取りかかる。
退廃した、人間の悪い部分が集まったような町。
そこで共に苦労をした小人女とエル・トポは結ばれ結婚を決意し、教会へ。教会の牧師は昔捨てた息子ブロンティス。親子の再会。ブロンティスは自分を捨てた父エル・トポを許してなかった。復讐を果たそうと拳銃を突きつける。
エル・トポと小人女はブロンティスにトンネル掘りが終わるまで復讐を待ってもらう。時間のかかる掘鑿作業。しびれを切らすブロンティス。エル・トポの提案でブロンティスも資金集めと掘鑿作業を手伝い出す。
9ヶ月後、ようやくトンネルが開通する。エル・トポの制止を振り切り、フリークスたちは町へとなだれ込む。
古い映画なのですが映像がきれいです。ユニークな人物、小道具、台詞。猥雑であり、清らかでもあり、エロ、グロ、笑い、涙とごった煮状態。
キリスト教に詳しければもっと楽しめるかもしれませんが、知らなくても大丈夫、十分堪能できます。
深い意味があるのか、ただの見せ物なのか、ホドロフスキー自体は山師っぽくうさんくささ100倍なのですが、この映画は見る者にとり、あるいは見たその時の状態により、印象が違う、何度見ても飽きの来ない、何度でも「エル・トポ」を体験したくなる魅力があふれています。
死と再生。
ロード・ムービーのような旅をしている錯覚におちいります。
すばらしき大傑作。
今回久々に見ても新たな発見があったりと魅力倍増。まったく古びません。
オススメです。

ロングライダーズ
1980年米。監督 ウォルター・ヒル。主演・脚本 ジェームズ・キーチ ステイシー・キーチ。
南北戦争後、実在したジェームズ&ヤンガー・ギャングの話。銀行強盗をしたり、仲間割れをしたり、結婚したり、探偵社においつめられたり、と色々あるわりにはドラマチックに盛り上げるでなく、出来事を淡々と素描しています。
自分には脚本が弱く感じて、あまり面白くありませんでした。映像はシャープだし、時代考証もしっかりしているらしいし、ジェシー・ジェームズのキャラクターもニヒルでよかったのですが、盛り上がりに欠け、娼婦のとりあいとかの件は見てると退屈退屈。全然面白くありません。それとそれぞれ兄弟俳優が役柄でも兄弟を演じているのが目玉らしいですが、だから何? と彼らをよく知らず思い入れもない自分は思います。
同じ題材で「ワイルド・ガンズ」(主演ロヴ・ロウ)という格下のしょぼい映画もあるのですが、そちらのほうが脚本だけみたら上等かもしれません。
おしい1本。
ただしアクション・シーンのキレは抜群(サム・ペキンパーから泥臭さをとったスタイリッシュさ)。さすがウォルター・ヒルと言った感じです。
西部劇に限らず映画では南部人と北部人は仲が悪い描写をみかけますが、実際に現在のアメリカもそうなのでしょうか?
いまだに南北戦争をひきずっていたりして。

自分はステイシー・キーチが主演した「ドク・ホリディ」という映画を見てみたいです。史実にもとづいたOK牧場の決闘だそうで、決闘シーンも20数秒でかたがついてしまうそうです。
古本市でパンフ(一番上の写真)を見つけ買ってしまいました。「’72〜5日比谷映画劇場」と書いてありました。パンフの中のクラントン一家の向かって左側の男の拳銃の握り方が普通は立ててかまえるはずが、奴だけ拳銃を真横! これってタランティーノがはやらせた握り方では?「フロム・ダスク・ティル・ドーン」でもやたらジョージ・クルーニーがしていた握り方。気になります。とても見たいです。
DVD化しないかなぁ。

レザボア・ドッグス
1991年米。監督・脚本 クエンティン・タランティーノ。出演 ハーヴェイ・カイテル。ティム・ロス。スティーブン・ブシェミ。マイケル・マドセン。
今とときめくクエンティン・タランティーノのデビュー作。
色のあだ名を付けられた、6人の男とエディ、ジョーの8人の朝食から映画はスタート。マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」論やらチップを払う払わないなどの雑談。彼らは銀行強盗のプロで、おたがい本名を知らず、今回だけの組み合わせ。宝石店に押し入るが、情報が漏れていて警官隊に店は囲まれていた。ちりぢりに逃げ出し、集合場所の倉庫に集まったのは銃弾を腹にうけ瀕死のオレンジ、それを担いできたホワイト、ダイヤを持ち逃げしたピンク、人質の警官を連れてきたブロンドの4人。この中に警察の密告者がいると、たがいに疑心暗鬼になる彼ら。やがてエディがきて、最後にボスのジョーが合流する。
自分ははじめてみたときは衝撃を受けました。まったく新しい映画だと思ったからです。実際にはかなり他の映画からのパクリというか、リスペクトだらけらしいのですが、元ネタを知らない自分はこの映画は驚きの連続でした。
最初の会話から圧巻。その台詞回し。それ以後こぞってB級映画はタランティーノの真似ばかり。世間的にもかなりの影響を与えた作品。そういえば邦画でも「SCORE」があった。これは傑作。
肝心の強盗シーンがないのも驚き。斬新な展開。「キリング・ゾーイ」の時、宣伝文句に「レザボア・ドッグス」のときは予算がなくて強盗シーンが撮れなかったから、この映画でタランティーノは描きたかった強盗シーンを撮った、みたいなことを言っていましたが、ぴあシネクラブを読むと、タランティーノが制作に名を連ねているのはただの名義貸しで、実際はなにもタッチしていないみたいです。でもまぁ、「キリング・ゾーイ」も面白いですよ。
話を戻して本編のこと。誰が裏切り者なのか、自分はまったく分かりませんでした。予想外。これにもびっくり。
最後の至近距離銃撃戦にもびっくりで、驚きの映画でした。

今回見て思ったことは、出ている人が今思うとやたら豪華。みな主役をはれる人ばかり。
それと最近だと思っていたら、実はもう13年も前(現在2004年)だったということ。エディの持ってるケータイがやたらでかい。
それと黒人差別ネタがけっこう多い。
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