戦場のピアニスト
監督 ロマン・ポランスキー。主演 エイドリアン・ブロディ。
第二次世界大戦。ドイツ占領下のポーランド。ユダヤ人たちは307ヘクタールのワルシャワ・ゲットーに押し込められる。その数46万人。主人公のピアニスト・シュピルマンもゲットー内での生活をよぎなくされる。戦争によって自由を・人間の尊厳を・あるいは命までも奪われた人たちの悲劇。
主人公は何もしません。ただ「見ている」だけです。そして観客である自分もまた「見ている」だけです。そこがこの映画のいいところでもあり、自分には不満なところです。
現実には無力な人間でも、映画の中だけでも現実離れしたい・大胆になりたい・と、そこが映画の魅力なのですが、この映画はあくまでも主人公は現実の人物ということもあり、人並みはずれたピアノの才能の持ち主という以外はあまりにも普通の人間、故に英雄的なところも、あるいは偽悪的なところもなく、行動は平凡そのものです。
映画はおしつけがましくなく、淡々と進み(退屈ではなく、まるでダイジェスト版のようにパッパと場面が進行していきます。そこが自分には食い足りない、物足りない)、当時の現状をリアルに伝えてきます。
良心的というか、まじめというか、観客にこびてない、サービス精神のない、自分にはちょっと上品すぎたような気がしました。もっとくどくて、安っぽい方が自分は好みです。
誠実な映画。その証拠に大げさに感動を盛り上げなくても、確実にそのすばらしさを読みとることができる人たちがいて、館内には泣いている人が多数いました。残念ながら自分にはこの映画を受け止める感受性がありませんでした。

一緒に見た人のコメント「良かった。ドイツ将校の前でピアノを弾くところとかがよかった。封印された感情がすこしずつ、やがてあふれでてくるところが」

呪怨
監督 清水崇。主演 奥菜恵。
ボランティアをしている仁科理佳は家主と連絡の途絶えた家の老婆の様子を見てくるようセンターからいいつかる。実はそこは幽霊屋敷で。。。
映画の構成が面白いです。短い話がテンポよく進み、まるでパズルみたいに最後に一枚の絵ができあがるような構成です。
各話ごとに時間が戻ったり、いきなり数年後になっていたり、あるいは過去と未来、現在と未来、現在と過去が一つのシーンで同居していたりと面白いです。
自分は時間軸の解体をしている映画が好きなので、この「呪怨」の中のエピソードでは、遠山親子の話が一番好きです。ホラーなのに親子の情とか愛を感じます。この親子の話があるため、「呪怨」はただの怖がらせるだけのホラーとは一線を画しているのではないかと思います。
ホラーなのに恐怖以外で褒めましたが、ホラー映画としても十分楽しめました。とても怖い。背筋がぞくぞくしました。特に伊東美咲のトイレのシーンなんかは夜、女の子だったら一人でトイレに行くのが嫌になるのではないかと思われるくらい怖かったです。手足や首がちぎれたり、みたいなスプラッタ描写はなく、雰囲気でおしきります。だから余計に怖い。
それと女優陣がきれいどころを使っているのもポイントが高いかも。
あと映画とは関係なく思ったことが一つ。幽霊の名前が伽椰子。珍しい名前。これはひょっとして「伽椰子のために」(原作・李恢成。監督 小栗康平。南果歩のデビュー作。在日韓国人二世と在日韓国人に育てられた少女の出会いと別れ。映画の終盤、夜中、地中の水道管の音を聞き取ろうと道路に耳をつける二人。大変物哀しいシーン。詩情あふれる映画)からとったのかなぁ? 
年齢を調べよう(自分と近かったら「伽椰子のために」を見てるはず)とパンフの監督の経歴を見たら、なんと! 95年小栗康平「眠る男」に見習いスタッフとして参加とありました。これは確実に伽椰子は「伽椰子のために」からとったのでしょう。

一緒に見た人のコメント。「それほど怖くはなかった。★★★」

リベリオン
米。監督 カート・ウィマー。主演 クリスチャン・ベール。
第3次世界大戦後、2度と戦争をおこさないために人類は薬物により、感情を抑制する。文学、絵画、音楽なども禁止。それらを隠れて活動する「反逆者」を取り締まるのはガン=カタと言う必殺法を身につけた聖職者と呼ばれる法の番人。
主人公はこの第1級聖職者。自分は無傷のまま一瞬のうちに相手を葬り去る腕の持ち主。その彼が薬を飲み損じて、しだいに感情が芽生えていき、全体主義の非人間性に疑問を持っていく。
「1984年」+「華氏451」+「マトリックス」と言った感じの内容です。ただその3本と違うのは、全体主義に対する批判はそれほどは重要ではなく、ただひたすら主人公の駆使するガン=カタを見せるための小道具にすぎません。映画としてはお手軽、軽薄、薄っぺら。とにかく骨太ではない。
だから何で反逆者たちは皆容易に重火器で武装できるのか、あっけなく世界が崩壊しすぎ、とかツッコミを入れてはいけません。
気楽に見ることのできる娯楽映画。面白かったです。DVD化したら買ってもいいくらいです。

一緒に見た人のコメント「シンプル、無駄な物がない。アクションのみ。犬のシーンに笑えた。★★★★」

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