リスボン物語
1995年独・ポルトガル。監督・脚本 ヴィム・ヴェンダース。主演 リュディガー・フォーグラー。
「ウィンター助けに来い。音が要る。SOS。音機材を持ってリスボンへ。電話もFAXもない。手紙で返事をくれ」
友人の映画監督、フリッツから絵はがきをもらった録音技師ウィンターは、高速道路を乗り継ぎ、ドイツからポルトガル・リスボンへ旅立つ。
いくつかの困難を乗り越え、リスボンのフリッツの部屋を訪ねると誰もいない。やたらビデオカメラを回す近所の子供。残された本、古い手回しカメラ(木製パルヴォ型)、そのカメラで撮られたフィルム。そのセピア色のフィルムに映された映像を頼りに、ウィンターはフリッツを探し始める。
はじめの高速道路での移動のシーンから雰囲気があっていいです。ひたすら移動。ついた街・リスボンも景観が素晴らしいです。
普段の景色も、昔のサイレント期のカメラで撮ると、古い時代のものに見えます。カラーとの対比が面白いです。
少し眠くなります。長回しが続くからかと思えばそんなことはなく、短いカットの積み重ねなので、映画自体のリズムです。眠くはなるけど、面白い映画です。
主人公は映画に絶望したフリッツに言います。
「映画は今も発明された100年前と同じ力を持っている。今も人の心を動かせる」
100年前の映画はそれ自体が珍しく、当時としては画期的な技術だったから人々は受ける感激もひとしおだっただけ。普及して見慣れた今となっては「映画」と言うだけでは価値はないけど、その映画が本物なら主人公の言う通り「人の心を動かせる」はず。
ロードムービーなのに孤独感がないと思ったら、主人公のウィンターではなく、フリッツの方が孤独に浸り、魂がさまよっていました。フリッツの言わんとしていることもなんとなく分かりました。
でも映像なんて主観。
撮る人の意志のない、そして見る人のない背中越しの映像にはなんの価値もなさそう。人の心に訴える映像は、やはり撮る人もそれなりの強い意志がないと。垂れ流しの映像ではだめです。
孤独にやられすぎてフリッツはたかが映画に哲学的になりすぎて、精神が袋小路にはまります。それを友人のウィンターが助ける。たまの孤独は必要だろうけど、長すぎる孤独は害。
最後にフリッツとウィンターが二人で撮影に出る様は幸福感に満ちています。とても幸せな気分に浸れる映画です。

アメリカの友人
1977年。西ドイツ=フランス。監督・脚本 ヴィム・ヴェンダース。主演 デニス・ホッパー。
贋作売りをしているトム・リプレー。オークション会場で、その贋作のわずかな青の色調違いを指摘した額縁職人ヨナタン。リプレーは握手を求めると拒否されてしまう。リプレーはヨナタンに興味を持つ。その時、ヨナタンはすでに白血病に犯されていた。
すごくいい映画。面白いし、職人芸というか、かなり高度な映画です。
眠くなるテンポは相変わらずですが、それがいい味。画面の色調も、細かい描写も、特に出演者の仕草の細かさといったら素晴らしい。
難点をあげるとしたら、列車での場面の合成のちゃっちさ。そこだけ浮いてます。今の技術で撮り直してもらいたいです。
自分が好きな場面は浜辺で救急車を燃やすシーン。絵画のような構図。シュールな雰囲気さえ醸し出しています。
正直言ってなぜリプレーがヨナタンから友情を得ようと躍起になるのか、さまよえるヨナタンとリプレーの魂、みたいなことはどうでもいいし、何度みても話の内容もよくわかりません。深いことも細かいことも自分にはどうでもいいです。
映画全体の雰囲気を「感じる」映画です。


マンハッタン無宿
1968年米。監督 ドン・シーゲル。主演 クリント・イーストウッド。
アリゾナの保安官補クーガン。アリゾナで殺人を犯し、ニューヨークで逮捕された男の引き渡しを命じられる。
はじめての大都会ニューヨーク。肝心の犯人は刑務所内でLSD中毒にかかり入院中。引き渡すには退院を待ち、煩雑な手続きを経てからと警部補に言われる。
クーガンはそんなに待っていられないと病院に乗り込み、強引に犯人を連れ出す。空港で犯人の仲間に待ち伏せされ背後から襲われ、犯人と自分の拳銃を持って逃げられてしまう。
アメリカの僻地(映画ではそうらしい。文明が届いてないような描き方)アリゾナから来たクーガンが迷い込むサイケデリックな都ニューヨーク。田舎者と大都会の対比が面白いです。ニューヨークと当時の風俗が雰囲気満点。
同じイーストウッドでも、ダーティハリーのようなスーパーマンではないクーガン。大型拳銃をぶっ放す訳でもなく、足を使った(あと下半身も)執念の捜査を続けます。
彼の武器が「度胸」です。何があっても肝がすわっています。特にビリヤード場で敵に囲まれたときのこと。自分ならとっくに逃げ出しているところを、彼は丸腰のままでも一歩も引かない。「映画だから」と言ってしまえばそれまでですが、クーガンには一撃必殺の拳法のようなファンタジーはなく、当然多勢に無勢、ボコボコにされてしまう。
とてもリアルなアクション。ワイヤー・アクションとかを見慣れているから、余計にそう感じました。
最後のバイク(トライアンフ?)での追走劇も身の丈サイズのアクション。爆発・炎上いっさいなし。派手さはなくても迫力が伝わってきます。
なかなかいい拾いモノをした、というのがビデオを見終わっての感想です。

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